食物繊維で痩せるメカニズム
2017年にThompsonらは、水溶性食物繊維と肥満の軽減との有意な関係について12本のRCTを解析して報告しています。
作用機序については、胆汁酸排泄の増加、食欲抑制ホルモン、および栄養吸収と胃内容排出を遅らせるインクレチンホルモンの変化が報告されていますが、短鎖脂肪酸の効果が最も強いと考えられています。
食物繊維から、大腸の腸内細菌叢で発酵が行われて、短鎖脂肪酸が産生されます。
3つの短鎖脂肪酸の主な生理作用は以下です。
酪酸:主に大腸上皮細胞のエネルギー源となって、蠕動運動を促し、排便を調整する。
酢酸、プロビオン酸:血中に吸収されて、ケトン体として組織のエネルギー源になる。
全身に短鎖脂肪酸レセプターがあり、様々な生理作用を発揮する。
肥満に対する作用として、短鎖脂肪酸は脂肪細胞にある短鎖脂肪酸受容体に作用して脂肪細胞へのエネルギーの取り込みを抑え、脂肪細胞の肥大化を防ぎます。
また、神経細胞にある短鎖脂肪酸受容体にも作用し、交感神経系を介してエネルギー消費を促すなど、エネルギーバランスを整える働きがあります。
短鎖脂肪酸のひとつのプロビオン酸は、脂肪細胞の受容体に結合して満腹ホルモンのレプチンを分泌させ、食欲抑制効果があります。
酪酸やプロピオン酸は腸管のL細胞からGLP-1のほかPYYのような腸管ホルモンも分泌します。
GLP-1やPYYは、脳に作用して食欲を抑える働きがあり、満腹感を持続させて過食を防ぎます。
また、酢酸はそれ自体が脳に直接作用して食欲を抑えるという研究報告もあります。
食物繊維の発酵で生じる短鎖脂肪酸の割合は以下です。
理論的には、便秘に効きそうなのがレジスタントスターチ、肥満に効きそうなのがグァーガムとなります。
どの食物繊維も、便秘にも肥満にも有効性があるとも言えます。
これら以外に短鎖脂肪酸は、大腸のバリア機能、発がん予防、糖尿病予防、免疫機能の調整に関与しています。
食物繊維を含む野菜や果物なども肥満の解消に有効ですが、お菓子のような糖質量の多い炭水化物は逆効果になる場合もあります。