糖尿病とウジ虫治療

岡田 匡先生の「糖尿病とウジ虫治療」を読みました。

糖尿病は、精製糖質の食べ過ぎで尿に糖が出る病気ですが、進行すると足に壊疽が出来て、切断しないといけない場合があります。

1917年第一次世界大戦の戦地で、負傷者の治療に当たっていたウイリアム・スティーブンソン・ペア医師は、大腿骨の開放骨折の重症患者の傷口に沢山のウジ虫が集っているのを見つけました。

急いでそのウジ虫を取り除いてみると、傷口は美しい肉芽組織を形成して、傷口は綺麗に治りかけていました。

その経験を元に、糖尿病性壊疽患者などの傷口の治療にウジ虫が応用出来るのではないかとの着想ではじまった治療が、マゴットセラピーです。

著者は元々は田舎の開業医に過ぎませんでしたが、1人の患者さんとの出会いをきっかけにこのマゴットセラピーを始めて、現在は一般社団法人ジャパンマゴット治療教育推進協会理事長となっています。

「なぜウジ虫治療で、傷が治るのか」が問題です。

ウジ虫は、5分で自分の体重の半分のタンパク質を食べる旺盛な食欲で、すでに壊疽している組織を食べ尽くす(デブリードマン作用)と同時にウジ虫は抗菌ペプチドを排泄して抗菌作用を発揮することが解明されています。

3つ目の作用として、肉芽組織の形成がウジ虫が排泄する物質によって促進されます。

人がいてハエがいる。たまたまある種のハエは人と身近な存在である。好物は腐った肉である。人の深い傷には腐った壊死組織ができる。そこに卵を産んでウジ虫が湧く。虫は壊死組織だけを食べ、人に危害を加えたりはしない。食べて成長したら土にもぐって蛹になる。そしてハエになって飛び立つ。一方、残された人の傷が早く治る。つきつめれば、これだけの自然の絶妙な営みである。このことを共生の一種とよぶのは適切ではないにしても、何かのつながりがあったのはたしかである。

生物とは突き詰めれば、「遺伝子の乗り物」に過ぎないが、その遺伝子は個体内部に限定されておらず、個体外部にも延長されている。

すべての生物の遺伝子は互いに関係し合っており、ウジ虫と人類の遺伝子の繋がりが何処かで生まれたのではないだろうか。

生物は他の生物との共生を基本としてこそ、生命として成立しています。

想像力をかき立てられる内容でした。