薬剤による糖質制限の注意点

2020年10月10日

どうしても糖質制限が出来ない人に薬剤を使って血糖値を下げる方法があります。

薬剤による糖質制限の最大の注意点は、糖質制限を始めたらすぐに薬剤を中止することです。

抗腫瘍作用が期待出来て、低インスリン療法であるビグアナイド剤とSGLT1阻害薬が候補として上げられます。

1.ビグアナイド剤はミトコンドリアストレスが注意点

ビグアナイド剤の作用機序は「糖新生の抑制」と考えられていますが、細かい話をすると少し話が変わってきます。

メトホルミンは古くからある糖尿病用薬剤で、日本では1961年から使われるようになりました。主な作用機序は、肝臓で貯蔵しているグリコーゲンを分解してブドウ糖を供給する「糖新生」を抑制することで、血糖値の上昇を抑えます。しかし、副作用の「乳酸アシドーシス」の危険から、添付文書に適用制限が書き加えられた1977年からは使用が敬遠されてきました。

その後の研究で、同じビグアナイド薬でありながら、メトホルミンが水溶性で、フェンホルミンは脂溶性という大きな違いがあり、水溶性のメトホルミンはミトコンドリア膜への親和性が低いが、脂溶性のフェンホルミンはこの膜への親和性が高く、ミトコンドリアでのエネルギー代謝障害を起こしやすいことが明らかにされました。

また1990年代の大規模研究で有効性が報告されて再評価されて、乳酸アシドーシスの危険性の少ないメトホルミンが2型糖尿病の第一選択薬となりました。

その後、糖尿病におけるインスリン抵抗性の研究が進み、メトホルミンにはインスリン抵抗性を改善する作用があることがわかってきました。インスリン抵抗性には脂肪組織だけでなく、筋肉も関与しています。運動時の骨格筋細胞では、消費するエネルギーの増加を補うため、ブドウ糖の取り込みを促進する「AMP(アデノシン1リン酸)活性化プロテインキナーゼ(AMP-activated protein kinase・以下AMPK)」が活性化します。AMPKは、骨格筋細胞内でATP(アデノシン3リン酸)が消費されて増加したAMPを検知し、積極的にブドウ糖を取り込むスイッチの役割を果たします。細胞内に取り込まれたブドウ糖は即座にグルコース-6-リン酸に代謝され、解糖系と呼ばれる糖の代謝が亢進します。同時に細胞のインスリン応答も改善させます。メトホルミンはAMPKを活性化する作用で骨格筋による糖の取り込みを進め、血糖値を下げるのです。

 一方で、ビグアナイド系薬剤はミトコンドリア膜に結合して電子伝達系を抑制します。電子伝達系は、解糖系で作り出した乳酸の前駆物質であるピルビン酸を利用して、効率よくATPを作り出します。しかし、メトホルミンの影響で電子伝達系が抑制された結果、過剰なピルビン酸は乳酸に代謝されて筋肉に貯蔵されることになり、結果、乳酸が蓄積することになります。つまり、メトホルミンは解糖系の促進で乳酸を作り出し、一方でミトコンドリアの機能を妨害し乳酸を蓄積させる、という、2方向から乳酸アシドーシスを引き起こす作用を持ち合わせた薬剤ということができます。

2型糖尿病の第一選択薬のメトホルミンでさえも、作用機序が完全には解明されていません。

乳酸アシドーシスになるほど、③の乳酸が蓄積するので、これはTCA回路がある程度は抑制されていることを意味します。これをミトコンドリアストレスと言います。

ビグアナイド剤の適応外とされる方は、1型糖尿病患者、インスリン高度枯渇2型糖尿病患者、肝障害・腎不全患者、高齢者、心不全、 COPDなど易低酸素状態、下痢・嘔吐・仕事等で脱水になり易い方、大量飲酒者、手術前や感染症、妊婦・妊娠の可能性、アスリートです。

適応外とされる方は、TCA回路に問題のある方(身体的リスクのある方)、乳酸が蓄積しやすい方などです。

乳酸アシドーシスの重篤例は、もともとTCA回路に問題がある人と考えます。

TCA回路が抑制は一般的な副作用として報告されていませんし、水溶性のメトホルミンはミトコンドリア膜への親和性が低いので、ミトコンドリアでのエネルギー代謝障害(ミトコンドリアストレス)がフェンホルミンほどは強くありません。

しかしながら、ミトコンドリアストレスによって、エネルギ−の源であるATPの産生不足が起こるので、脱力感、倦怠感、疲労、うつに繋がる可能性があります。

2.SGLT2阻害薬は利尿作用が注意点

SGLT2阻害薬の機序は、上図だけみると「薬剤性糖質制限」そのものですが、詳しく見ていくと少し話が変わっていきます。

代謝への影響で見ると、グルカゴンのような異化作用があることが分かります。

グルカゴンのような異化作用があるということは、ケトン体を産生するので、1型糖尿病の方には使いにくいですし、2型糖尿病でもケトン体が上がっている方には注意が必要です。

逆にケトン体が少ない人は、ケトン体を増やす、つまり痩せる作用が期待出来ます。

尿糖だけを選択的に排泄するのではなくて、尿も一緒に排泄するために、脱水を起こす副作用が懸念されています。

血圧低下もありますので、利尿薬としての作用があるということです。

尿路感染症は尿に含まれるブドウ糖が増えるために、これが細菌に栄養を与えて感染が起こりやすくなります。

特に尿路感染しやすい女性についての話です。

高血圧、男性、肥満、ケトン体が少ない糖尿病の方が候補として上がって来ます。

結論としては、糖質制限をして薬は飲まないのが原則です。