腸カンジダ症〜自閉症と便移植との関係

■自閉症と腸カンジダ症

腸内の酵母(特にカンジダ・アルビカンス)は、ヒトが吸収した食物から炭水化物とミネラルを奪い、毒素を排泄することが知られており、自閉症との関連が示唆されています。

2016年にKantarciogluらは、415人の自閉症の便サンプルから338の酵母菌株を分離しました。酵母株のうち、81.4パーセントはカンジダ(特にカンジダアルビカンス)でした。

2017年にIovenらは、便の培養検査で自閉症の57.5%にカンジダを認めましたが、コントロール群では認めなかったことを報告しています。

2012年にEmamらは、便の培養検査で、自閉症の重症度とカンジダ・アルビカンスの関係を報告しています。

2017年にStratiらは、便中の遺伝子のITS領域のDNA塩基配列解析によって、カンジダが自閉症の人の方が正常な人よりも2倍多いことを報告しました。

2018年にHughesらは、抗カンジダアルビカンスIgG抗体を測定し、ASDの子供たちの36.5%(19/52)、典型発達の対照群では14.3%(4/28)でした。胃腸機能障害は、抗カンジダアルビカンスIgG抗体陽性のASD児の約半数に見られることを報告しています。

2012年にBurrusは、カンジダ・アルビカンスが放出するプロビオン酸とアンモニアから、ベータアラニンが生成されて、これが脳血液関門を通過して、GABA受容体のアンタゴニストとして働いて自閉症症状を誘発することを推測しています。

まとめとしては、腸内フローラの乱れと腸カンジダ症が、自閉症と密接に関係しています。

■便移植と腸カンジダ症

2019年に松尾らは、マウスの実験で、腸内細菌の定量的動態が、カンジダ・アルビカンスの数と逆相関することを報告しました。さらに、一旦カンジダコロニーを形成したマウスに、健常マウスの便移植をすることによって、カンジダコロニーを縮小することを報告しています。

炎症性腸疾患に対する便移植の高い有効性が報告されていますが、2020年にLeonardiらは、潰瘍性大腸炎の便移植治療において、便移植によってカンジダが減少して、炎症性免疫応答を減弱させることを報告しています。

2018年にZouらは、クロストリジウム・ディフィシル感染症の便移植治療において、便移植によってカンジダ・アルビカンスの存在量が減少することを報告しています。さらに、便移植前の患者便中のカンジダ・アルビカンスの存在量の多さ、ドナー便中のカンジダ・アルビカンスの存在量が予後の悪さと関係することを報告しています。

まとめとしては、便移植の有効性は、腸カンジダ症と密接に関係しています。