うつ病の5つの治療パターン

まとめ:セロトニン系の代謝だけで見ると、うつ病には5つの治療パターンがあります。

(うつ病の治療法もTMSなどの代謝系以外の治療法もあります。うつ病と一口に言っても、セロトニン系の代謝異常のないタイプがあります。この記事は過去の記事の改訂版です。)

うつも疲労もコロナ後遺症も同じ病態であり、一般的には最後はセロトニン経路の疲弊に至ります。

セロトニン経路の前駆物資である必須アミノ酸のトリプトファンは95%以上が腸内細菌が作っており、口から摂取したトリプトファンが脳内に届くのは数パーセントに過ぎません。

この図は腸活の大切さを示していますが、この関係をセロトニン経路から細かく見ていくと、うつ病の治療パターンは5つに分類できます。

①口から摂取するトリプトファンは、腸内細菌が作る量に比べると微々たる量ですが、多くの方は腸内環境が十分に機能しておらず、トリプトファンが十分には作られていませんので、経口摂取が決め手になってきます。

プロテインを飲んで元気になる人が多い理由は、セロトニン代謝経路や腸内フローラに問題を抱えていたとしても、経口摂取した量が、脳内のトリプトファン量に即時的に直接反映するからです。

サプリでトリプトファンを摂ったり、トリプトファンを含むタンパク質を摂取しても同じ効果があります。

運動すると気持ちが良くなる理由は、血中のBCAAが筋肉に取り込まれて、血中のトリプトファン濃度が相対的に高くなり、脳内のトリプトファン濃度が上がるからです。

②5-HTPをサプリで摂取する方法は、うつと睡眠を一気に治す方法です。

経口摂取した5-HTPは、脳血液関門を通過して、キヌレニン経路に邪魔されること無く、セロトニン経路の燃料となり、ダイレクトにセロトニン経路を活性化させることが出来ます。

問題は、セロトニンからメラトニンへ代謝されるので、5-HTPは長時間型の睡眠薬のような効き方になります。

具体的には、個人差はありますが約12時間の睡眠作用があるので、明朝の7時に起床したい人は、前の日の夜の19時に服用する必要があります。これも即効性のある治療法です。

③抗うつ剤は、セロトニン系の代謝経路や腸内環境に問題があったとしても、その障害に関係なく、シナプス間隙でのセロトニン濃度を強制的に上げて、セロトニンの効果を増強させます。

抗うつ剤は効果がないと言う一般医者もいますが、経験的にも理論的にも有効な治療法です。

一方で、抗うつ剤のノンレスポンダーが存在するのも事実だと考えてます。

この治療法は即効性が無く、効果発現まで少なくても1週間程度は要します。

④トリプトファンの主要代謝経路はセロトニン経路ではなくて、キヌレニン経路です。このキヌレニン経路は、炎症やストレスによって活性化されて、セロトニン経路は阻害されてしまいます。

このストレスには心理的なストレスも含まれますので、食事療法が出来ていても(①と⑤)、大きな心理的ストレスが加わると、うつや不眠が出てきます。

肥満があると脂肪細胞による炎症、糖質過食による炎症のためにセロトニン経路が阻害されてうつ病に罹りやすくなります。

これが肥満型のうつ病の方が、糖質制限で痩せてくるとうつ症状が改善する理由です。

肥満以外に隠れている慢性炎症として、腸カンジダ症やSIBOなどがあります。これらの潜在性の慢性炎症に対する治療がうつ病への根治療法となる場合もあります。

慢性炎症の震源が特定できなくても、抗炎症作用のある食事やサプリなどの治療が奏功する可能性もあります。

ナイアシンやナイアシンアミドがうつや不眠に効く理由は、このキヌレニン経路にネガティブフィードバックが掛かり、セロトニン経路が賦活されるからです。

心理療法がうつ病に有効である理由は、この心理的ストレスを軽減することによって、セロトニン経路を再稼働させることが出来るからです。

心理療法だけでうつ病が治る場合もありますが、代謝経路で見ると、食事療法と心理療法を併用する方が効率的です。

⑤腸活(腸内フローラの活性化)は食事療法がある程度以上のレベルで完成していないと出来ない時間が掛かる治療法です。

毎日快便が基本中の基本で、下痢や便秘があるようでは腸活が出来ていません。

また個人の腸内フローラバランスによって、腸内フローラの能力に差があります。

腸活が出来ていても、④炎症・ストレスが発生すると、セロトニン経路は阻害されてうつ病になる可能性もあります。

腸内環境が整っていればトリプトファンだけでなく、5-HTPを直接作るルートもありますので、腸活をしっかり行っておくことが、うつ病の治療と予防には最も重要な方法になります。