遅発性ウイルス感染症

2021年2月24日

これまでに診させて頂いた疾患で何の疾患が一番印象が強かったかと言えば、遅発性ウイルス感染症です。この疾患は潜伏期間が約10年と極めて長い神経系のウイルス感染症です。有名なものは麻疹に感染した後に、数ヶ月から数年間をかけて神経症状の進行が見られる亜急性硬化性全脳炎です。具体的には、性格の変化、知能低下(学業成績低下、記憶力低下)、脱力発作(例えば、手に持っている物を本人の意思とは無関係に落としてしまう、など)、起立歩行障害などが起こります。さらに進行すると、不随意運動、痙攣、摂食障害、自律神経の異常が現れてきます。 最終的には意識も消失し、その後に死亡するという転帰をたどることが一般的です。お父様が息子さんの記録を書かれたものがあります。その他に類似疾患として、クロイツフェルト・ヤコブ病、狂牛病、クールー病などがあります。これらはすべて、進行性の重篤な神経症状を呈して、最終的には寝たきり、認知症となります。脳が海綿のようにスカスカに変性することが共通した特徴です。原因としてはウイルスではなく、病原性タンパク質のプリオンと呼ばれる物質が提唱されており、これに関してノーベル賞が2名に授与されましたが、動的平衡で有名な福岡先生が、原因はウイルスであると看破されています。今まで数回ほど、遅発性ウイルス感染症の方の診察をさせてもらいましたが、あらゆる神経学的所見が出ていて驚きました。この疾患の方の脳を病理解剖する話がありましたが、当時は感染経路が不明なのでビビってしまい、二の足を踏んでいたのを覚えています。狂牛病はBSE問題として一時期はニュースを騒がせていました。狂牛病はウシの遅発性ウイルス感染症で、1990年頃からイギリスを中心に、感染したウシの脊髄や脳を含む飼料を食べたウシに感染が伝搬して、そのウシを食べた人にも感染したものです。日本でも問題になり、フランス料理店から有名な子牛の脳を材料にした料理のテット・ド・ヴォーが消えました。クールー病はパプアニューギニアの風土病で、クールー病で亡くなった人の遺体を食べる習慣のカニバリズムによって感染が広がりました。遺体を食べるのは主に女性と子供であったため、発症者は女性と子供に限られていました。これらはプリオン説は横に置いておいて、長く脳に感染するウイルス疾患であり、ヒトが脳を食べることで、ウイルスが体内に入ると考えるのが自然です。遅発性ウイルス感染症は脳への感染ですが、B型およびC型肝炎ウイルスは長く肝臓に感染して肝硬変や肝臓がんとなります。輸血や血液製剤を投与した際にその中に残っていた肝炎ウイルスやワクチン接種の際に注射針の交換をしなかったために針先に残っていたウイルスなどを介して伝染して、国が給付金を払って来た歴史があります。これも一種の遅発性ウイルス感染症です。ヒトには、3つのバリアがあります。皮膚バリア、腸管バリア、脳血液関門です。これらは発生学的には外胚葉由来であり、選択機能を持っていることが特徴で、エサを取り入れて、毒を排除します。このバリアによる選択機能が、いわゆる脳機能そのもののことです。脳の遅発性ウイルスは、口から食べた脳が、腸管バリアと脳血液関門さえもを通過してくるのでやはり恐ろしい存在です。麻疹やB型・C型肝炎ウイルスは、バリアを破られなければ、全く脅威にならない弱いウイルスです。事故などでバリアを突破されたことで、体内の親和性の高い組織で繁殖することで発症してしまいます。ところで、コロナワクチンの摂種が始まり、短期の副作用はインフルエンザワクチン並とのデータが出ましたが、長期の副作用はどうなのでしょうか?皮膚のバリアを人為的に破って、体内によくわかっていないウイルスの遺伝子を入れると後々起こって来ることが心配です。