虫歯予防には糖質選択

2021年6月30日

野生動物にとって歯は生存の決め手になるものです。歯を失うということは、すなわち死を意味します。太古の昔の人類にとっても歯は生存の要で、歯ブラシも歯磨き粉もありませんでしたが、虫歯や歯周病は存在していませんでした。ウエストン・A・プライスが20世紀初期に行った調査報告では、未開の狩猟採集民族では虫歯や歯周病が存在しておらず、歯磨きの習慣がないことを報告しています。一方で同時に、近代化の影響を受けた狩猟採集民族では、虫歯や歯周病が蔓延していました。人間の身体は、ちくわの様な構造をしていますが、生誕するとその表面にはびっしりと細菌で覆い尽くされます。特に細菌の数が多いのは数百兆個の細菌が存在する腸内フローラですが、口腔内にも約1兆個の口腔内細菌が存在します。この口腔内フローラを乱して、虫歯や歯周病の原因となる最大の食べ物は、精製糖質の砂糖です。砂糖は口腔内の虫歯菌や歯周病菌の急速な増殖を促し、唾液などによる口腔内環境の改善が追いつかない状態になり、虫歯や歯周病が発病します。砂糖だけでなく、単糖類、二糖類、はちみつ、果汁、シロップも虫歯の原因となることが知られています。2014年にWHOから虫歯予防のために、砂糖の摂取量を減らすように提言されています。現代食の象徴である砂糖を摂る前提で、医学も歯学も成り立っていますが、実は問題の根本は現代食にあります。子どものむし歯予防は食生活がすべて 4人の子どもに歯を磨かせなかった歯科医の話を読みました。砂糖を避けて、玄米食を中心とした伝統日本食で虫歯を防いだという話です。虫歯の歴史を調べてみると、縄文時代や古代バビロニア時代に既に虫歯の報告があり、穀物を栽培する農耕革命の影響を受けた文明では、虫歯が存在した記録があります。砂糖を摂ると、虫歯菌が糖分から酸を作り出して歯垢のpHが低下します。平常時は平均的にpH6.8ですが、飲食によりpH4〜6に急低下します。これにより歯の脱灰が進む臨界pHのpH5.5を超えると歯のエナメル質が脱灰され溶けはじめます。その後唾液の力で1時間くらいの間にゆっくりとpHが回復し、再石灰化が起こり通常は歯が元の状態に戻ります。穀物に含まれるデンプンは、多数の糖が重合したものですが、pH5.5〜6.0程度にしか下げないので、虫歯の原因にはならないのではないかと議論されてきましたが、でんぷんは唾液中のアミラーゼによって分解されて、グルコースやマルトースになって、虫歯の原因なり得ることが現在は明らかにされています。咀嚼についてですが、農耕革命以前は、ほとんど硬いものしか口にしていません。硬い食べ物は必然的に「噛む」行為を強いますので、その分唾液が分泌し、口内の細菌を洗い流すとともに「酸」を中和する作用が働いていました。「煮る」「炊く」などの調理法を人類が覚えて食べ物が柔らかくなると、噛む回数も減りはじめました。一説によると、一回の食事で「噛む」行為は、縄文時代には4000回、戦前で1500回、そして今や600回といった具合に激減しています。同時に柔らかい食べ物は歯にこびりつきやすく、虫歯や歯周病の原因となる歯垢(プラーク)が生じることになります。甘い物やでんぷんが虫歯の原因で、虫歯から守ってくれるものは唾液です。これが舌回しが有効と言われる理由です。以上から虫歯の予防には、糖質選択をきっちり行って、甘い物を避けることが基本です。穀物や根菜などのでんぷん、果物も砂糖ほどではないにせよ、虫歯の原因になり得ますので注意が必要です。