リーキーガット症候群

(2019年7月28日の記事を加筆・修正しました)

まとめ:リーキーガット症候群は直接診断する方法がありません。

第一選択としては遅延型食物アレルギー検査を勧めています。

教科書レベルで認知はされていませんが、Leaky gut syndrome(腸漏れ症候群)は頻度が高い疾患です。正式名はIncreased Intestinal Permeability(腸管壁侵漏症候群)です。

主な原因は3つあります。

1.消化されにくいグルテン、ガゼイン、大豆製品に含まれるレクチン、サポニンのような細胞毒やアレルゲンとなり得るタンパク質が、小腸粘膜を傷つけて、粘膜の障害が起きる。

2.SIBOの状態となって、大腸菌が発生したガスによって小腸壁が、伸び縮みを繰り返して粘膜の障害が起きる。(もともと小腸壁は大腸壁と違って、伸縮する性質が少ない)

3.カンジダ菌は、常在菌として人体に存在していますが、抗生剤投与や免疫力が下がったときなどに日和見感染を起こして、身体全体に繁殖する可能性があります。このカンジダ菌が腸内で繁殖した場合も原因となります。SIFO(small intestine fungal overgrowth、小腸真菌異常増殖症)という病態です。

2016年にMuthuiluranらは、食物アレルギーや腸カンジダ症の治療によりリーキーガット症候群の患者が回復することから、腸カンジダ症が引き起こす炎症が小腸壁の透過性を上げると推測しています。

腸カンジダ症の検査は、尿有機酸検査、血液抗体価、便の培養検査などありますが、高価で偽陽性もあり得るので、腸カンジダ症の重症度とリーキーガット症候群の診断のために最も正確な方法は、腸カンジダ症の治療を優先的に行うことであると主張しています。

病理所見は、いずれの場合も絨毛の萎縮が起こって、粘膜が障害されると言われていましたが、粘膜が正常のケースも少なくないことが報告されています。

2013年にLudvigssonらは、スウェーデンの大規模な内視鏡検査で、セリアック病と自閉症との弱い関連性と、腸粘膜が正常でセリアック病血清学的検査が陽性の人の自閉症リスクが著しく高くなることを報告しています。

この論文では、セリアック病(小腸絨毛の萎縮、炎症所見、セリアック病血清学的検査が陽性)26995人、絨毛の萎縮はないが炎症所見だけある人12304人、粘膜が正常であるがセリアック病血清学的検査が陽性の人3719人が報告されてます。

(小腸を傷つけずにリーキーガット症候群を起こす人、小腸の門が開きやすい人達が居るというという意味です。)

小腸の役割は、消化と吸収であり、必要な栄養素を選択的に吸収するのが本来の役目ですが、この選択性が失われて、「ダダ漏れ」状態になるのがリーキーガット症候群です。

本来は身体に入ることが出来ない未消化なタンパク質、細菌などが体内に侵入して、免疫システムに負担を掛けます。様々な疾患に繋がっていきます。

近年は、自己免疫疾患や多くの精神疾患との関連が指摘されています。

グルテン関連障害、SIBO、リーキーガット症候群、過敏性腸症候群は、かなりの部分がオーバーラップしています。

それぞれの診断方法の方向性が異なるだけで、よく似かよった病態と言うことです。

リーキーガット症候群は、グルテン関連障害やSIBOが原因となって生じた症状、病態、状態像を表した病名です。

ゾヌリンはリーキーガット症候群を可逆的に調節するタンパク質です。消化管と肝臓で合成されます。ゾヌリンは、消化管上皮細胞間のタイトジャンクションの分解を誘導するので、ゾヌリンが高濃度になることは、リーキーガット症候群の増進と関係しています。ゾヌリン検査は、リーキーガット症候群の臨床マーカーになります。

その他にも、尿有機酸検査、カンジダ抗体・抗原検査、セリアック抗体検査、SIBO検査、総合便検査などありますが、優先的には遅延型食物アレルギー検査を勧めています。

リーキーガット症候群を直接的に確実に診断する方法はないと言うことです。