内的家族システム療法〜理論編
内的家族システム療法、私の中に住む人たち: IFS(内的家族システム)へのお誘いのまとめと考察を記事にしたいと思います。
内的家族システム療法(IFS)は、1990年代前半からリチャード・シュワルツ氏が体系化した心理療法です。一人の人間の中に存在する複数の人格(=パーツ)を、家族療法を行うように扱う治療法です。
インナーチャイルドセラピーやパーツ関係の心理療法で、ケースによっては返って悪化する場合があります。その理由は、パーツ間の交通整理が不十分であることです。その交通整理の方法を提供してくれています。
IFSを含めて複雑性トラウマ系の心理療法は、最終的には大元になった記憶を扱うことが重要視されていますが、その前提条件としてパーツ間の交通整理をしっかりやるべきという考えです。
トラウマ治療とは、ある程度はトラウマを思い出すこと(暴露)を前提としていますが、この暴露によって、人格システム全体がシャットダウンすることを防ぐための、防衛パートが存在しており、トラウマを扱う前に、この防衛パーツを扱うことを重視しています。
パーツは身体感覚や感情であることが多いですが、思考、動き、視覚イメージなどとして姿を現します。
パーツは良い意図をそれぞれ持って存在しますが、役割としては真逆になっていることが多く、対立し合っており(二極化)、全体としては混沌とした状態になって症状として現れてきます。
家族やチームがまとまらない状態と同じです。
IFSでは、セルフ(SELF)という概念を用いるところが大きな特徴です。
セルフは千手観音のような存在で、様々なパーツを手の中に包み込み、パーツのリーダーとして全体をまとめます。
セルフが現れている時は、神様や太陽のような資質(好奇心、明晰さ、思いやり、穏やか、自信、勇気、創造性、繋がり)が出てきます。
感情がうまくコントロール出来ない状態では、パーツが全面に立ってセルフが隠れている状態になります。
太陽が雲で覆われて見えない状態と同じです。パーツにスペースを譲ってもらうことでセルフが現れて来ます。
IFSの治療として唯一の目指すところは、セルフとパーツとの繋がりの回復です。セラピストは、セルフとパーツとの仲人役に過ぎません。
セラピストの資質としては、忍耐、我慢強さ、存在、展望、遊び心の5つです。
リーダーとしてのセルフとメンバーとしてのパーツとの信頼関係を回復させて、全体としてのチームを再構成してまとめることを助けます。
一つ一つのパーツの存在に気づき、その都度、承認を得ながら、意見を丁寧に聞いて行きます。
都合の悪く見えるパーツを排除せず、そのパーツの良い意図を汲み取り、そのパーツの役割をサポートします。