腸内フローラ移植による若返り
まとめ:糞便微生物移植により、老化に伴う認知障害の改善、長寿効果、外傷性脳損傷の改善、アルツハイマー病の改善、脳卒中の改善、骨粗鬆症の改善などが次々に報告されています。
若いマウスから高齢のマウスへの糞便微生物移植は、認知障害を軽減し、海馬代謝物を変化させて、末梢および脳の免疫応答のいくつかを逆転させることをが報告されています。(2021年、Heijtzら)
2種類の早老症モデルマウスへの野生型マウスからの糞便微生物叢移植による健康寿命と寿命の延長が報告されています。(2019年、Barcenaら)
外傷性脳損傷のモデルマウスに対する糞便微生物叢移植は、腸内細菌叢の腸内毒素症を回復し、おそらく外傷性脳損傷後のTMA-TMAO-MsrAシグナル伝達経路を介して神経学的欠損を軽減することが報告されています。(2021年、Duら)
APP/PS1トランスジェニックマウスにおけるアルツハイマー病のような症状が、健康なマウスからの糞便微生物移植によって軽減されました。糞便微生物叢移植治療により、アルツハイマー病モデルマウスの酪酸の減少が大幅に逆転し、抗アルツハイマー病のメカニズムがSCFAの酪酸の増加に関連している可能性が示唆しました。(2019年、Sunら)
糞便微生物叢移植後のアルツハイマー病の症状の急速に改善した症例が報告されています。(2020年、Hazan)
アルツハイマー病のモデルマウス由来の糞便微生物叢移植は、結腸の炎症を増加させることによって神経新生を減少させ、それによって記憶喪失を起こさせることが報告されています。(2021年、Kimら)
アルツハイマー病のモデルマウスから外傷性脳損傷のモデルマウスへの糞便微生物叢移植が有害な影響を及ぼし、神経炎症反応と神経学的転帰を悪化させることが報告されています。 (2022年、Sorianoら)
無菌マウスへの若いマウスと高齢マウスからの糞便微生物叢移植を比較した結果、高齢マウスからの糞便微生物叢移植によって、宿主のSCFAを減少させ、認知機能を低下させことが報告されています。(2020年、Leeら)
長寿の人々からマウスへの微生物叢の糞便微生物叢移植は、老化に関連する指標を減らし、大きなα多様性、より多くのプロバイオティクス属(ラクトバチルスおよびビフィズス菌)、および短鎖脂肪酸産生属(ローズブリア、フィーカリバクテリウム、ルミノコッカス、コプロコッカス)を有することが報告されています。(2020年、Chenら)
脳卒中モデルマウスに対して、若いマウスと高齢マウスからの糞便微生物叢移植を比較した結果、若いマウスからの糞便微生物叢移植により腸内細菌叢を改善し、脳と腸の炎症が抑制されることを報告しました。微生物配列解析とメタボローム解析により、若い糞便にはSCFAが多く含まれ、関連するSCFA産生菌4種(Bifidobacterium longum, Clostridium symbiosum, Faecalibacterium prausnitzii, Lactobacillus fermentum)がより多く存在していました。これらのSCFA産生菌は、脳卒中後の神経障害と炎症を緩和し、脳卒中モデルマウスの腸、脳、血漿のSCFA濃度を上昇させました。(2020年、Leeら)
若いラットからの糞便微生物叢移植によって、腸内細菌叢の組成と腸のバリア機能を改善することにより、老人性骨粗鬆症の老齢ラットの骨量減少を軽減することが報告されています。(2021年、Maら)