酪酸菌は単なる善玉菌か?

まとめ:プロバイティクスは合う人と合わない人がいますので、摂取には注意が必要です。

酪酸菌を推奨する「すごい酪酸菌 病気になる人、ならない人の分かれ道」「酪酸菌を増やせば健康・長寿になれる~今、話題の酪酸・酪酸菌のすべてが分かる!」の2冊の書籍が出版されました。海藻、イモ類、野菜、果物、穀物、豆類などの食物線維を摂取して酪酸菌を増やすことやプロバイオティクスを勧める内容です。

酪酸菌の癌、免疫、長寿、炎症性腸疾患に対する有益性を総括されていますが、肥満に関する矛盾した報告もあります。

過敏性腸症候群は人口の10〜15%の有病率の下痢、便秘、腹痛などの症状を示す疾患です。近年の過敏性腸症候群に対するプロバイオティクス治療成績は、有効性を示さない結果が散見されます。(2019年のDaleら2021年のHalvatら2020年のLiら

腸内細菌がつくってくれる短鎖脂肪酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸は、一つの菌が作るのではなく、「酸のバトンリレー」を行って腸内細菌が連携してつくります。(2013年、Ramacrishnaら

健康な腸(A)に比べて、短鎖脂肪酸が不足した腸(B)では、腸の機能(上皮バリアの完全性の低下、抗菌ペプチドの産生、細胞増殖、抗炎症)に問題が起こってきます。(2019年のVenegasら2018年のWangら

2018年にWangらは、酪酸の腸に関する総論で、酪酸の肥満に対する抑制作用と促進作用の両方の報告があることを指摘しました。