多汗症

多汗症(Hyperhidrosis)は、エクリン汗腺が過剰に活動しているために、皮膚表面に放出される汗の量が増加する状態です。

ガイドラインでは、原発性と続発性に分けられます。

不安とうつ病は、原発性多汗症の患者によく見られることが以前より指摘されています。(2020年、Kristensenら)

不安とうつ病の有病率は、多汗症のある患者でそれぞれ21.3%と27.2%、多汗症のない患者でそれぞれ7.5%と9.7%であり、有意に多いことが報告されています。(2016年、Baharら

発汗によって、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、鉄(1963年、Consolazioら)、および亜鉛、セレン、銅、コバルト、ヨウ素、ストロンチウム、モリブデン、ニッケル、鉛、クロム(1964年、Consolazioら)などの微量ミネラルが、大量の発汗を引き起こす条件下で汗に排泄されることが報告されています。

摂取されたヨウ素の90%は尿中に排泄されますが、それ以外は汗で排泄されるために、激しい運動による発汗でヨウ素欠乏症を起こすことが報告されています。(2001, Mao)(2005, Smyth)逆に無汗症では、ヨウ素蓄積が起こる可能性があります。

多汗症によって、鉄、亜鉛、マグネシウムが不足する場合があることが報告されています。(1995年、Rabibら

多汗症の患者で、Se、Fe、Cu、Zn、Ca、およびMgの赤血球レベルは、多汗症の患者で有意に高く検出されました。さらに、Cu、Ca、およびMgの血清レベルは、多汗症の患者で有意に低く、Se、Fe、およびZnの血清レベルは、2つのグループ間で統計的差異を示しませんでした。(2011年、Guderら

原発性多汗症の患者の血清Mgレベル、ビタミンDレベルの低下があり、これが多汗症の不安とうつに繋がる可能性が示唆されています。(2022年、Manavら

夏場や運動時は、ミネラル入りのスポーツドリンクを飲むことで、発汗量を低下させ、体重減少を防ぎ、体内へのミネラルの維持作用つながることが報告されています。(2019年、松本ら

汗と尿に含まれるアルミニウムの量の比較から、ヒトにおけるアルミニウムの排泄の主要な経路は、発汗であることが指摘されています。(2014年、Minshallら

ストレスに起因する多汗症に四逆散が奏効した症例が報告されています。(2023, 玉野)