パーキンソン病とうつ病
まとめ:パーキンソン病およびパーキンソン関連疾患の約40%でうつ病が合併します。
パーキンソン病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症の3疾患の総称をパーキンソン関連疾患と呼びます。
うつ病は、パーキンソン病患者の約 40% に合併することが知られています。(1992年、Cumingsら)
8304人の参加者を含む129件のメタアナリシスによると、パーキンソン病におけるうつ病の有病率は 38% でした。(2022年、Congら)
パーキンソン関連疾患である188人の進行性核上性麻痺のうち56%、286人の多系統萎縮症のうち43%がうつ病の可能性があったことが指摘されてます。(2010年、Schragら)
パーキンソン関連疾患である大脳皮質基底核変性症では、うつ病の頻度が進行性核上性麻痺よりも高いことが報告されています。(1998年、Litvanら)
うつ病は認知症と強く関連していることが知られていますが、241名のアルツハイマー病および71名のレビー小体型認知症を比較して、うつ病の合併頻度は、AD (8.7%) よりも DLB (19.7%) で有意に高かったことが報告されています。(2017年、Chiuら)
レビー小体型認知症では、脳の外側の層(灰白質、または大脳皮質)全体にレビー小体が形成されます。パーキンソン病患者の約40%が、パーキンソン病認知症を発症します。パーキンソン病認知症では、パーキンソン病の病変がみられる部位である黒質という脳の部位にレビー小体が形成される傾向があります。
レビー小体型認知症とパーキンソン病認知症は、1つの病気が異なる現れ方をしたものである可能性があります。この病気では、シヌクレイン(神経細胞間の情報伝達を助ける脳のタンパク質)が形を変えて(異常な形に折りたたまれ)、その大部分が脳内に、一部は消化管と心臓にゆっくりと蓄積していきます。
シヌクレインが異常に蓄積したものをレビー小体と呼びます。レビー小体内部の、異常な形に折りたたまれたシヌクレインは、別のシヌクレインが異常な形に折りたたまれる原因になり、その結果さらに多くのレビー小体が形成されることになります。レビー小体が蓄積すると、脳損傷が起こります。このようにして脳損傷の原因になる、異常な形に折りたたまれたタンパク質をプリオンと呼びます。プリオンは、 クロイツフェルト-ヤコブ病などの脳の他の病気を引き起こします。