糖質制限と子供の成長抑制

(2022年6月8日の記事を加筆修正しました)

まとめ:極端な糖質制限で誘発される飢餓のような状態が、子供の成長抑制を招きます。

ケトン食療法の副作用の記事で、子供にケトン食療法を行った場合は成長を抑制することが報告されている原因について、食事全体に脂質の占める割合が高くなるために、タンパク質の摂取量が減ることが主な原因と考えられていますが、糖質制限(低インスリン食)によっても成長抑制が起こる可能性を指摘しました。

■てんかんのケトン食療法による成長抑制は、低たんぱく食が原因ではない。

2019年にArmeroらは、難治性てんかんの子供45人にケトン食療法を2年間実施した結果、成長抑制が認められたことを報告しました。推奨タンパク質摂取量(1日あたり1g / kg体重)が提供されました。

2020年にRuiz Herrerroらは、難治性てんかんの子供26人にケトン食療法を長期間(最大6年)実施した結果、成長抑制が認められたことを報告しました。タンパク質摂取量(1日あたり1g / kg体重)タンパク質摂取量は、毎日のタンパク質推奨値に従って計算されました。(通常、1歳以上の子供では1日1キロあたり1 g、1歳未満の子供では1.5)

2019年にFerrarisらは、難治性てんかんの子供34人にケトン食療法を1年間実施した結果成長抑制が認められたことを報告しました。動物由来のタンパク質の最低0.8〜1 g(例:、卵、牛乳、肉、鶏肉、魚)は体重1キログラムあたりに供給されました。

ケトン食療法中の成長抑制はケトン体のレベルと相関することが報告されています。(2009年、Suppleburら

骨格成長に最も関係するインスリン様成長因子1(IGF-1)が、ケトン食療法(2000年、Fraserら)や飢餓状態(2019年、Rarmaniら)で低下することが報告されています。

末端肥大症の治療目的で、ケトン食療法が応用されるパイロットスタディが報告されています。(2020年、 Coopomansら

筋肉量が少ないために、筋肉内のグリコーゲンが使いにくく、アセトン血性嘔吐症のようにケトン体質に傾きやすい子供の場合は、糖質制限には注意が必要です。

■低インスリンによって成長抑制が起こります

多くの報告は思春期前および思春期の一型糖尿病患者の成長障害を強調しており、この障害は最適とは言えない血糖コントロールと罹病期間に影響されているようです。しかし、最新のデータでは、現代の強化インスリン療法を受けた小児は最終的に正常な成人身長に達することが示されています。(2019, Santi)

インスリン・成長ホルモン(GH)・インスリン様成長因子(IGF) は密接に関連する内分泌軸を形成します。この軸は 胎児期〜小児期の正常な発育と成長(最終身長の一部)に深く関わる。IGF1 受容体欠損は 重度の低身長 や発達異常と関連する。(2024, Bang)

小児期の肥満は、成長促進と成長障害の両方の報告があり結論が出ていません。肥満が少女の思春期の兆候の早期出現につながることを示す明確な証拠があります。さらに、肥満の女の子は、高アンドロゲン症のリスクも高くなります。男の子では、過剰な肥満は思春期の進行と関連している研究もありますが、他の研究では思春期の発症の遅れが報告されています。(2013, Marcovecchio)