五臓五神理論で精神疾患を改善|論文
まとめ:五臓五神理論では、精神・認知・情動・行動を心藏神、肝藏魂、脾藏意、肺藏魄、腎藏志として五臓に対応させ、精神疾患を単に「心」や「脳」だけの問題ではなく、五臓と五神の協調失調として捉える。掲載論文では、不眠、抑うつ・不安、強迫様抽動障害、トゥレット症候群、自閉症、注意欠如・多動症、脳卒中後不眠などについて、心神の異常は精神・情緒・睡眠、肝魂は思考・情動・不随意運動、脾意は注意・記憶・思慮、肺魄は感覚・反射・本能的行動、腎志は意志・自制・記憶などの異常として現れると考え、それぞれの五神を本来の五臓に安定させる治療を行っている。特に不眠では、入眠困難を心不蔵神、多夢を肝不蔵魂、就寝時に思考が止まらない状態を脾不蔵意、浅眠・易醒を肺不蔵魄、早朝覚醒を腎不蔵志として辨別するなど、症状そのものから五神の異常を判断する方法が示されている。つまり、「どの精神症状があるか」から神・魂・意・魄・志の異常を見極め、対応する五臓を整えることで、精神と身体を同時に治療する「形神同治」が五臓五神理論による精神疾患治療の中心的な考え方である

胃食道逆流症に伴う不安・抑うつを、単なる「肝胃不和」ではなく、五臓神の協調失調による形神同病として捉えている。病機は、心神失守を統領、肝魂妄動と肺魄失宣を胃気上逆の直接的な枢機、脾意過用と腎志不充を病の根本とし、治療は「調神復序」を基本に、安神定志・柔肝宣肺・運脾固腎を組み合わせる。心神失守の実証には桂枝甘草竜骨牡蛎湯(桂枝、炙甘草、竜骨、牡蛎)合旋覆代赭湯(旋覆花、代赭石、人参、半夏、生姜、炙甘草、大棗)、虚証には天王補心丹合甘麦大棗湯を用い、肝魂妄動・肺魄失宣には四逆散(柴胡、白芍、枳実、炙甘草)合半夏厚朴湯(半夏、厚朴、茯苓、生姜、紫蘇葉)、脾意過用には四君子湯(人参、白朮、茯苓、炙甘草)、肾志不充には六味地黄丸または金匱腎気丸を用いる。症例では肝鬱脾虚を中心とした胃食道逆流症・不安抑うつに四逆散合半夏厚朴湯加減を投与し、反酸・胸やけと精神症状が改善した後、香砂六君子湯合交泰丸へ変更して3か月間補強し、1年間再発を認めなかった。五臓に宿る神を整えることで全身の気機を整え、消化器症状と精神症状を同時に治療する「形神兼治」が本論文の中心的な考え方である。(2026年、曹文巧)
五神(魂・神・意・魄・志)がそれぞれ肝・心・脾・肺・腎に安住できないことを不眠の中心病機と捉え、不眠の直接的な現れから五臓を判定する「不寐五神分型診断法」を提唱している。すなわち、夢が多く乱れる→肝不蔵魂、寝つきが悪い→心不蔵神、考え事が止まらない→脾不蔵意、眠りが浅く音などですぐ目覚める→肺不蔵魄、早朝覚醒→腎不蔵志と分類し、「和五臓・安五神」を治療原則とする。 Analysis of t...five spirits'_L…肝不蔵魂には酢柴胡・白芍、竜胆・黄芩、合歓花・合歓皮、珍珠母・竜歯、心不蔵神には竜眼肉・酸棗仁、丹参・当帰、茯神・党参、黄連・半夏、脾不蔵意には党参・黄耆、蓮子・益智仁、肺不蔵魄には竜骨・牡蛎、百合・生地黄、半夏・陳皮、腎不蔵志には山茱萸・茯苓、遠志・茯苓という薬対を用いる。つまり、「どのように眠れないか」を五神の異常として捉え、対応する五臓を治療して五神を本来の臓に帰すことで睡眠を整えるという考え方である。(2026年、李振輝)
強迫様抽動障害は、抽動と強迫的思考・刻板行動が併存する特殊な病態であり、本論文ではその中心病機を**「五神失序」と捉えている。まず心神動揺・君主不明によって五神を統率できなくなり、肝魂妄動から風が生じて不随意な抽動が出現し、さらに肺魄失司**によって瞬目・咳払いなど本来は自動化された動作の調節が乱れ、反復・刻板化する。一方、脾意不蔵では思考を収めることができず観念が粘着して反復し、腎志不堅では意志・自制力が弱く、抽動や強迫思考を抑制できないため病態が遷延すると考える。したがって治療は「調神」を総綱として、安神定志に竜骨・牡蛎、填精固志に熟地黄・山茱萸・亀甲・菟絲子、健脾蔵意に茯苓・白朮・山薬・太子参、柔肝息風に白芍・天麻・釣藤鈎・僵蚕、斂肺固魄に五味子・百合・麦門冬などを用い、単に「肝風を鎮めて抽動を止める」のではなく、心神・肝魂・肺魄・脾意・腎志の秩序を回復させ、抽動という「形」と強迫思考という「神」を同時に治療することが重要としている。症例でも、魄・意・志の虚弱を中心とした「魄弱意弱、志弱神散」と弁証し、調神定志・斂魄安魂・柔肝息風を中心に治療することで、抽動と強迫様症状の双方が改善している。(2026年、張寧)
小児トゥレット症候群について、文仲渝は**「五臓失調・五神失司」を中心病機とし、病位は肝を中心に心・脾・肺・腎にも及ぶと考えている。小児では肝常有余→魂易動、心常有余→神易擾、脾常不足→意易散、肺臓嬌嫩→魄易乱、腎常虚→志易弱という特徴があり、肝魂失調では眨眼・肢体抽動・易怒、心神擾動では激しい抽動・汚言・不眠、脾意不専では注意力・記憶力低下、食欲不振・痰、肺不蔵魄では吸鼻・清嗓・突発的抽動・外感による増悪、腎志薄弱では慢性化・反復・疲労・意志力低下が現れるとする。 Wen Zhongyu's... Five Spirits_Y… 治療は「調五臓・安五神」を総則として滋陰潜陽・平肝熄風を行い、自擬の滋陰潜陽寧神熄風湯(熟地黄、山茱萸、茯苓、山薬、沢瀉、牡丹皮、釣藤鈎、山梔子、蝉退、黄精、竜骨、牡蛎、亀板、全蝎、蜈蚣、僵蚕、天麻、甘草)を基本方とする。六味地黄丸を基礎に肝腎脾を補い、竜骨・牡蛎・亀板で潜陽安神、全蝎・蜈蚣・釣藤鈎・天麻で熄風して魂を安定させ、黄精・山薬で肺脾を補って魄を収め、茯苓・沢瀉で脾運を整えて意を強めることで、「神有所帰、魂有所定、意有所専、魄有所静、志有所堅」すなわち五神をそれぞれ本来の状態へ戻すことを目標**としている。(2026年、余瑜)
自閉症スペクトラム障害について、賈竑暁は五神蔵理論から、社会的交流・相互作用の障害と反復・常同行動を中核症状と捉え、病位の中心を腎・心、核心病機を「腎虚神弱」としている。先天の腎精不足により髄海・脳竅が十分に養われず、さらに心腎不交から心神が失養すると、注意散漫、情感淡漠、社会的回避、言語障害、反復・常同行動などが現れ、肝魂失守を伴えば易怒・固執・行動異常・不眠など、脾虚不運を伴えば記憶力低下、食欲不振、偏食、消化不良などが加わると考える。 Jia Hongxiao'...tric Symptoms_Y… 治療は補腎・養心・益神を基本に、疏肝・調脾を組み合わせる。腎虚神弱・心肝火旺には六味地黄丸(熟地黄、山茱萸、山薬、牡丹皮、茯苓、沢瀉)を基本に蓮子心、菊花、釣藤鈎などを加えて滋陰補腎・清心瀉肝を行い、腎虚神弱・陽明熱盛には六味地黄丸を基礎として熟地黄を生地黄に変更し、増液承気湯(玄参、麦門冬、生地黄、大黄、芒硝)を合わせて滋陰補腎・清解陽明を行う。腎虚神弱・脾虚不運には六味地黄丸合四君子湯(人参、白朮、茯苓、炙甘草)を用いて滋陰補腎・益気健脾を図る。つまり、「腎藏志」を先天的な知能・注意・記憶・意志活動の基盤とし、腎精を補って志を養い、心神を養うことを自閉症治療の中心に据え、肝魂・脾意など五神全体を調整するという治療体系である。(2026年、尹霞)
正常な睡眠は神は心、魂は肝、魄は肺、意は脾、志は腎にそれぞれ安住することで成立するとし、その中でも脾意を五神をつなぐ「中気」と位置づけ、脾不守意を思慮紛々型不眠の中心病機と捉えている。過度の思慮によって「思傷脾→意傷→さらに思慮が止まらない」という悪循環が形成され、脾気が損なわれると営血の生成が不足して意を養えず、就床後も考えが次々に浮かんで止められず、入眠困難となる。 Discussion_on...ra-spleen_yi'_W… 治療には補中益気湯を用い、**黄耆・当帰で補気養営して「培意之基」、升麻・柴胡で升清健脾して「暢意之行」、白朮・党参・炙甘草で脾の運化を強めて「強意之能」**とし、脾気・営血を充実させることで「意有所養、思緒得平」となり睡眠を回復させる。症例では睡前に思慮が止まらず、多夢、倦怠、食後膨満などを呈する24歳女性を「脾不守意」と弁証し、補中益気湯加減(生黄耆18g、当帰9g、升麻3g、北柴胡6g、炒白朮9g、党参15g、茯苓6g、熟地黄6g、玫瑰花6g)を投与したところ、睡前の思慮が減少して睡眠が深くなった。つまり、鎮静・安神薬で直接眠らせるのではなく、脾を補って「意」が安定して宿る場所を回復させることで、過剰な思考を鎮めて眠りにつかせる「調脾安意」が本論文の核心である。(2025年、呉彬)
張星平は不眠の核心病機を**「五神が五臓に安住できないこと」と捉え、患者が直接訴える「眠れ方」から五神・五臓を定位する不寐五神分型診断法を構築している。すなわち、入眠困難→心不蔵神、夢が多く乱れる→肝不蔵魂、就寝前に考えが次々と浮かぶ→脾不蔵意、眠りが浅く音などですぐ目覚める→肺不蔵魄、早朝覚醒・再入眠困難→腎不蔵志と分類し、それぞれ清心寧神、養肝安魂、運脾存意、安肺摂魄、補腎安志を治法とする。心不蔵神には清心寧神湯(黄連、黄芩、夏枯草、酢柴胡、鬱金、赤芍、白芍、陳皮、法半夏、炒白朮、茯苓、炙甘草)、肺不蔵魄には安肺摂魄湯(黄連、炒枳実、竹茹、陳皮、半夏、茯苓、竜歯、炙甘草)、脾不蔵意には運脾存意湯(陳皮、半夏、茯苓、白朮、党参、烏梅、遠志、竜歯、炙甘草)、腎不蔵志には補腎安志方(熟地黄、山茱萸、山薬、枸杞子、菟絲子、胡桃肉、五味子、牛膝、炙遠志)を用いる。肝不蔵魂では柴胡、鬱金、当帰、赤芍、白芍などを用いて疏肝理気・養肝活血・柔肝滋陰を図る。臨床研究では清心寧神湯によって睡眠の質だけでなく、不安・抑うつや日中の身体機能なども改善し、再発や副作用も少なかった。動物実験でも睡眠潜時の短縮、睡眠時間の延長、海馬神経細胞障害の改善などが認められた。つまり、「どのように眠れないか」を五神に対応させて病位を決め、五神をそれぞれ心・肝・脾・肺・腎へ帰すことで睡眠を回復させる**ことが本研究の中心的な考え方である。(2025年、胡龍涛)
脳卒中後不眠は、脳卒中という「形」の病によって五臓の精気が損なわれ、五神の均衡が崩れることで生じる形神共病と捉えられる。五神の異常を神亢意任、魂強魄弱、志用不足の3型に分類し、神亢意任では心神の亢進と過剰な思慮によって入眠困難、睡前の多思、易怒などが現れるため、安神平意を基本として朱砂安神丸を加減する。魂強魄弱では肝魂が過度に亢進する一方、精血津液の消耗によって肺魄が弱くなり、浅眠、多夢、焦燥、易怒、記憶力低下などが現れるため、安魂益魄を基本として琥珀多寐丸を用い、柴胡、香附、枳殻などで疏肝理気し、人参、党参、白朮などで肺気を補って魄を養う。志用不足では腎精不足によって志が養われず、浅眠、難眠、思考・判断力低下、近時記憶低下、耳鳴、腰膝酸軟などが現れるため、河車大造丸を基本として熟地黄、紫河車、亀板、鹿角、肉蓯蓉などで補腎填精・養志する。症例では脳梗塞後に浅眠・易醒・多夢、頭痛、易怒、近時記憶低下を呈した47歳女性を魂強魄弱と弁証し、琥珀多寐丸加減(炒酸棗仁30g、人参12g、制遠志12g、防風12g、当帰15g、川芎15g、茯苓15g、琥珀粉3g、石菖蒲9g、生甘草6g)を投与したところ睡眠、頭痛、易怒が改善し、その後、麦門冬、阿膠、白朮などを加えて肺魄を養うことで記憶力も改善した。脳卒中後不眠を心神・脾意、肝魂・肺魄、腎志の相互関係から捉え、五神の均衡を回復させる形神共治が本論文の中心的な考え方である。(2024年、劉晋)
張星平は、不眠の基本病機を**「五神がそれぞれの五臓に安住できないこと」と捉え、五臓の気血陰陽を調和させ、五神を本来の臓へ帰すことを治療の基本としている。不眠の直接症状から、入眠困難→心不蔵神、多夢・悪夢→肝不蔵魂、就寝前に思慮が止まらない→脾不蔵意、眠りが浅く物音ですぐ目覚める→肺不蔵魄、早朝覚醒・再入眠困難→腎不蔵志の5型に分類する。心不蔵神には清心寧神湯(黄連、黄芩、夏枯草、酢柴胡、赤芍、白芍、鬱金、陳皮、法半夏、炒白朮、茯苓、炙甘草)を用いて清心安神し、肝不蔵魂には養肝安魂湯(酢柴胡、当帰、赤芍、白芍、鬱金、炒白朮、茯苓、鶏内金、炒山楂、葛根、香附、珍珠母、炙甘草)を用いて調肝収魂する。肺不蔵魄には安肺摂魄湯(黄連、炒枳実、竹茹、陳皮、半夏、茯苓、竜歯、炙甘草)を用いて化痰寧肺・安魄し、脾不蔵意には運脾存意湯(陳皮、半夏、茯苓、白朮、党参、烏梅、遠志、竜歯、炙甘草)を用いて健脾益気・燥湿化痰・存意し、腎不蔵志には補腎安志湯(熟地黄、山茱萸、山薬、枸杞子、菟絲子、胡桃肉、五味子、牛膝、炙遠志)を用いて益腎填精・安志寧寐を図る。つまり、「どのように眠れないか」という特徴から障害されている五神と五臓を直接定位し、心神・肝魂・脾意・肺魄・腎志をそれぞれ本来の臓に安住させることで睡眠を回復させる**という、五神を中心とした不眠の弁証論治体系である。(2025年、胡龍涛)
小児の注意欠如・多動症について、**「臓腑失和、五神失調」を核心病機とし、形神合一の観点から五臓と五神を同時に整える「和五臓、暢五神」**を治療原則としている。肝火旺盛・魂失所鎮では、多動、衝動、易怒、落ち着きのなさなどが現れ、竜胆草、黄芩、山梔子、菊花、夏枯草、青皮、鬱金、合歓花、白芍、当帰、生地黄などで清肝瀉火・疏肝解鬱し、肝陰不足には白芍、烏梅、枸杞子、亀甲、鼈甲、生地黄、山茱萸などで滋陰斂肝する。熱擾心神・神失所蔵では、多動、多語、衝動、睡眠障害、注意力低下などが現れ、青礞石、釣藤鈎、黄芩、黄連、生竜骨、生牡蛎、珍珠母などで清熱瀉火・鎮心安神し、心陰不足には酸棗仁、柏子仁、百合、甘草、浮小麦などで養心安神する。脾気虧虚・脾意失寧では、注意散漫、健忘、思考遅延、物事を最後まで遂行できないなどが現れ、太子参、黄耆、白朮、茯神、陳皮などで健脾益気し、痰蒙清竅には半夏、石菖蒲、痰火内擾には青礞石、黄芩、竹茹などを用いる。肺気不足・肺魄不斂では、焦燥、多動、感覚・空間認知能力低下、浅眠、易醒、多夢などが現れ、桑白皮、玄参、黄芩などで肺気を宣降し、太子参、黄耆、山薬などで補肺し、肺陰不足には沙参、麦門冬、百合地黄湯などで養陰斂魄する。腎精虧虚・腎志不定では、学習能力や長期記憶、自制力の低下、行動の遅さ、発育遅延などが現れ、熟地黄、黄精、肉蓯蓉、巴戟天、淫羊藿、黒順片、枸杞子、墨旱蓮、女貞子などで補腎填精し、髄海・脳神を養う。症例では脾虚肝旺・痰火擾神と弁証した10歳男児に礞石滾痰丸合温胆湯加減(生牡蛎10g、竹茹8g、生青礞石10g、酒大黄5g、姜半夏6g、生浮海石8g、生竜骨10g、塩益智仁10g、酢五味子8g、茯神10g、珍珠母10g、炒酸棗仁8g、制遠志10g、首烏藤8g)を投与し、多動、注意力、衝動性、睡眠が改善し、8か月後に服薬を終了、その後半年間再発を認めなかった。つまり、肝魂・心神・脾意・肺魄・腎志のどこに失調があるかを見極め、主となる臓を治療しながら他臓も調整し、五神を暢達させることで多動・衝動・注意障害を改善する「形神同調」が本論文の中心的な考え方である。(2024年、蘇琪)
王素梅は、小児自閉症を陰陽失和、五臓失調、五神失用、官竅不利として捉え、病位は脳竅、神機失用を核心病機、痰を主要な病理因子とし、「五臓―五神―五官」を軸に弁証する。心―神―舌の失調では不語・少語・語遅、反応遅鈍、健忘、睡眠不良など、肝―魂―目の失調では視線回避、目に神がない、易醒、夜泣き、易怒、多動など、脾―意―口の失調では理解力・注意力低下、健忘、反応遅鈍、動作の遅さなど、腎―志―耳の失調では学習・記憶・指示理解の低下、動作の不器用さなど、肺―魄―鼻の失調では感覚過敏または鈍麻などが現れるとする。治療は益智醒神開竅を基本とし、陰精不足・脳竅失養には左帰飲、地黄飲子、六味地黄丸などを用いて滋補肝腎・填精益髄し、脾虚・心血不足には帰脾湯、六君子湯合四物湯などで健脾養心・補気生血する。脾腎陽虚・痰蒙清竅には附桂益智湯(制附子、肉桂、熟地黄、法半夏、陳皮、合歓皮)で温補脾腎・化痰開竅し、心気・心陽不足には柴胡加桂枝竜骨牡蛎湯合甘麦大棗湯で温養心気・安神定志する。心肝火旺・痰熱擾神には礞石定志湯(青礞石、山梔子、石菖蒲、竜胆草、黄連)を用いて清心平肝・化痰寧神する。また、化痰通絡・益智開竅を治療全体に貫くことを重視し、二陳湯、当帰、丹参、川芎、地竜などを加え、孔聖枕中丹(亀甲、竜骨、石菖蒲、遠志)も積極的に用いる。症例では脾腎陽虚・痰蒙清竅と弁証した3歳5か月男児に附桂益智湯合孔聖枕中丹加減(黒順片5g、生竜骨15g、亀甲12g、肉桂5g、党参8g、熟地黄8g、合歓皮6g、遠志8g、石菖蒲6g、益智仁12g、枸杞子6g、法半夏5g、菟絲子8g)を投与し、康復訓練を併用したところ、情緒、睡眠、注意力、言語・理解能力、社会的交流が改善した。つまり、五臓を整えて心神・肝魂・脾意・肺魄・腎志を回復させ、さらに痰を除いて脳竅を開き、神機を再び働かせることが自閉症治療の中心とされている。(2022年、崔霞)
精神障害を従来の臓腑弁証だけで捉えるのではなく、心神・肝魂・脾意・肺魄・腎志という五神の働きから精神症状を直接分析することを提唱している。心神は注意および情緒の体験・表出、肝魂は知覚と情報の統合、思考の発散・連想、脾意は思考・動機形成・記憶の取り出し、肺魄は感覚・本能的反応・思考の収束と判断、腎志は記憶の保存・意志・行動の持続を担うと整理する。このため、感覚過敏・鈍麻は肺魄、錯覚・幻覚は肝魂、思考障害は主に脾意、注意障害は心神、記憶障害は脾意・腎志、情感障害は心神を中心に五神の異常として弁証する。具体的には、抑うつは心神衰弱を中心として養心振神を行い、養心湯合瓜蔞薤白半夏湯を用いる。妄想は脾意紊乱を中心として健脾寧意を行い、四君子湯合半夏厚朴湯を用いる。焦慮は肺魄不安による過憂と捉え、益肺定魄を行い定魄丸を用いる。強迫は意志亢盛によって短期的な情報が過度に長期記憶として固定され、繰り返し想起され行動化される状態と捉え、益意寧志を行い安神定志丸を用い、強迫的な連想を伴えば安魂、抑うつを伴えば養神を加える。治療では精神症状だけを見るのではなく、温心陽・養肝血・補脾営・益肺気・填腎精によって五臓を整える治療と、安神・安魂・寧意・定魄・寧志など五神を直接調整する治療を組み合わせることを重視する。つまり、精神障害の複雑な症状を五神のどの機能が亢進・衰弱・失調しているかに分解し、辨病・辨証・辨症を組み合わせて五臓と五神の双方から治療することが本論文の中心的な考え方である。(2021年、王法帥)
不眠を**「五臓に五神が安住できない状態」と捉え、とくに浅眠・易醒型の不眠を肺魄不安**から論じている。五神はそれぞれ五臓に蔵され、五神が安定していれば正常に眠ることができるが、臓が損なわれると神も傷つき、五神が本来の居所を離れることで不眠が生じる。肺は気を主り、気は魄を舎すため、肺気が充実し肺陰が十分であれば魄は肺に安住するが、肺気虚や肺陰不足になると魄が養われず、睡眠が浅い、すぐ目覚める、夜間に何度も覚醒する、多夢、悪夢、驚いて目覚めるなどが現れ、悲しみ・憂い・懊悩などを伴うこともある。このような肺魄不安による不眠には、肺陰を養い、肺気を整えて魄を肺へ帰すことを治療原則とし、加味沙参麦冬湯を用いる。基本となる沙参麦冬湯(沙参、麦門冬、玉竹、天花粉、桑葉、白扁豆、甘草)に夜交藤、合歓皮、酸棗仁、柏子仁、生竜骨、生牡蛎を加え、養陰潤肺・理気・安神を図る。肺気虚には黄耆、党参、太子参、肺中伏火には桑白皮、地骨皮、粳米、肺絡瘀阻には桃仁、川芎、虎杖、鬱金、痰湿蘊肺には貝母、栝楼、枇杷葉、痰熱蘊肺には貝母、麦門冬、百合などを加減する。つまり、浅眠・易醒・頻回覚醒・多夢・悪夢を「肺不蔵魄」の特徴として捉え、養肺陰・理肺気によって「魄有所養、魄有所蔵」の状態を回復させ、睡眠を深く安定させることが本論文の中心的な考え方である。(2021年、張暁楽)
中医の**五神(神・魂・魄・意・志)**について、その起源と発展、五臓との関係、病因病機、治療法、神経・精神疾患への応用を体系的に整理した研究である。五神はすべて心神の働きとして統括され、心神を主導、腎精を根本として、五臓・精気・気機の昇降出入を介して精神・認知・感覚・行動・記憶などを調節する「生命活動の最高調節体系」と位置づけられている。神は生命活動全体と精神・意識・思惟を統括し、魂は能動的な精神活動や情動、魄は感覚や身体に伴う本能的反応、意は思考・注意・記憶、志は意志や記憶の保持に関係し、心蔵神、肝蔵魂、肺蔵魄、脾蔵意、腎蔵志として五臓と対応する。五神の異常は、情志不遂や五志化火、五臓の気血精の虚損、邪が臓腑を侵して神が安定できなくなることなどによって生じる。治療は調神を先とし、同時に精気を調えることを基本とし、直接心神を調える方法と、五臓の虚実に応じて祛邪安神、扶正安神、重鎮安神、通竅醒神などを行う方法に分けられる。臨床では、症状からどの五神が失調しているかを判断し、対応する五臓へ治療を結びつける**「五神―五臓」弁証**を用いる。注意散漫は意不足・志衰弱、過度な注意集中は志弱魂亢、多発性チックは志不足・意不定・魂亢と捉える。強迫症では、肝魂不寧によって強迫観念が生じ、心神がこれを制御しようとしても魂が強く神が弱いため「神魂相搏」となり、強迫と反強迫が繰り返されると考える。抑うつは神魂不足・意鬱・志衰・魄抑、焦慮は志意不定・魂強魄弱、老年性認知症は心神受損・腎志不蔵を中心に捉え、それぞれ五神と五臓の関係から治療を組み立てる。つまり五神理論は、精神疾患を単に「心」の異常とせず、神=全体統括、魂=能動的精神・情動、魄=感覚・身体反応、意=思考・注意、志=意志・記憶保持に分けて病態を分析し、五臓弁証へ結びつける理論である。(2020年、唐思詩)
焦慮障害を単なる臓腑の虚実ではなく、神・魂・魄・意・志という五神の均衡が崩れた状態として捉え、五神―情志―五臓の関係を調整することで心理的な側面から治療することを提唱している。神は感知・認識・思考・想像・情感など精神心理活動全体を統括し、魂は潜在意識・注意力・思考・推理・判断、魄は身体感覚・本能・反射・無意識的行動、意は思考活動が生じる初期段階、志は意志・志向および思考を実際の行動へ移す段階を担う。広泛性焦慮では、過度の緊張・心配・思慮を神亢と捉え、琥珀、朱砂、生地黄、茯神、鉄落、黄芩、水牛角などで鎮心・清心安神し、慢性化して心血を消耗した神弱には人参、茯神、遠志、当帰、柏子仁、熟地黄などで養心補血安神する。身体的焦慮や運動性不安は主に魂亢魄弱と捉え、口乾、悪心、咽喉閉塞感、腹痛、下痢、呼吸促迫、胸部不快、動悸、頻尿、多汗、振戦、筋緊張、浅眠、多夢、夜驚などが現れ、魂亢には夏枯草、黄芩、牡丹皮、山梔子、川楝子などで清肝安魂、牛膝、代赭石、竜骨、牡蛎、磁石などで鎮肝安魂、白芍、当帰、五味子、烏梅などで柔肝斂魂し、魄弱には麦門冬、阿膠、人参、白朮、黄耆などで補益脾肺・益気強魄する。意志亢進では多思多慮、焦燥、易怒、音への過敏、緊張、易驚、心悸、浅眠、多夢などが現れ、檀香、香附、蒼朮、半夏、厚朴などで解思定慮・安意定志し、慢性化して意志不足となれば、情感淡漠、過度の思慮、記憶力・注意力低下、意欲低下、浅眠、不眠などが現れるため、熟地黄、亀板、鹿角膠、黄耆、人参、山茱萸などで補精気・強意志する。驚恐発作は神惑から魂亢魄散に至る病態と捉え、突然の死への恐怖、制御不能感、心悸、胸悶、呼吸困難、過換気、発汗、振戦、手足のしびれなどに対して、琥珀、朱砂で清心安神し、青礞石、石菖蒲、竹茹、胆南星、黄連などで清熱化痰・開竅醒神し、遠志、茯神で安神定志する。つまり、焦慮障害を神亢・神弱、魂亢・魄弱、意志亢進・意志不足、神惑・魂亢魄散など五神の動的な失調として分析し、五神の均衡を回復させることで心理症状と身体症状を同時に治療することが本論文の中心的な考え方である。(李鑫)
癲狂証を単なる痰・瘀・火などの病理産物だけから捉えるのではなく、神・魂・魄・意・志という五神の失調を精神・心理・行動異常の根本病機として捉え、五神と五臓、七情五志の関係から治療する体系を提唱している。人体は「形神合一」の統一体であり、五神が乱れると気血津液の運行も失調し、気鬱、痰結、血瘀、化火などが生じて神明を乱し、癲狂に至ると考える。神は精神・意識・思考・認知を統括する最高位の働きであり、癲証では神用不及によって精神倦怠、恍惚、淡漠、寡言、記憶力低下などが現れるため、酸棗仁、柏子仁、遠志、小麦、鶏血藤などで滋陰養血安神し、狂証では神機惑乱によって精神亢奮、易怒、妄想、破壊行動などが現れるため、琥珀、朱砂、貝母、石菖蒲、胆南星、遠志、茯神などで清熱滌痰・重鎮安神する。魂は潜在意識、注意、思考、推理、判断などに関係し、魂体不足では思考・反応・判断力低下、情緒制御困難などが現れるため、杜仲、枸杞子、亀板、地黄、当帰、白芍などで滋補肝腎・養血安魂し、魂越失控では焦燥、易怒、過度の思慮、精神恍惚、四肢躁擾、強迫思考などが現れるため、竜骨、牡蛎、磁石、琥珀、青礞石、夏枯草、川楝子、黄芩などで清肝瀉火・重鎮安魂する。魄は先天的な本能動作・感覚・無意識活動に関係し、魄用不足では精神恍惚、抑うつ、記憶力低下、低声などが現れるため、麦門冬、阿膠、人参、白朮などで益気強魄・補益肺脾し、魄機惑乱では躁擾、健忘、暴力・破壊行動、言語・行動の混乱などが現れるため、朱砂、琥珀、遠志、茯神、酸棗仁、石菖蒲、佩蘭などで寧神定魄する。意は目的性をもった思考が形成される初期段階を担い、意気不足では意欲低下、反応遅延、頭脳昏沈などが現れるため、柏子仁、遠志、五加皮、茯苓などで健脾強意し、意気亢進では敏感、多疑、思考への固執、情緒変動などが現れるため、地黄、竜眼肉、朱砂、合歓皮、鬱金などで安意定意する。志は記憶・動機・決心・意志の維持に関係し、志気不足では抑うつ、意欲低下、表情淡漠、行動遅延、腰膝酸軟などが現れるため、熟地黄、党参、亀板、杜仲、牛膝、茯苓、酸棗仁、茯神、首烏藤などで補腎益髄・増智養神し、志用亢進では性格暴躁、浅眠・易醒、過度の思慮、過剰な自己制御などが現れるため、丹参、竜眼肉、当帰、石菖蒲、檀香、防風、柴胡などで抑志安志する。症例では情緒暴躁、易激惹、抽動・穢語、思考不連続、幻視・幻聴、喀痰などを呈した15歳患者を痰蒙神竅・神機惑乱と弁証し、朱砂、竜骨、牡蛎、栝楼、薤白、半夏、檀香、砂仁、丹参、紅花、川芎、紫蘇梗、山梔子、牡丹皮、甘草、徐長卿などで理気化痰・安神定志し、その後石菖蒲、羚羊角粉、僵蚕、蝉退などを加えることで精神・思考・行動および抽動が改善した。つまり、癲狂証を「神・魂・魄・意・志」のどの機能が不足・亢進・惑乱しているかに分解し、対応する五臓と気血津液を同時に調整する「形神俱治」が本論文の中心的な考え方である。(2019年、馬彤彤)
抑うつ症を従来の肝鬱気滞だけで説明するのではなく、神・魂・魄・意・志という五神すべての失調から捉えることを提唱している。五神は心理・精神活動と身体活動を結びつける基礎であり、五臓が五神を蔵し、五神から五志・七情が生じるため、抑うつ症では五臓と五神を一体として弁証する必要がある。神は感知、認知、精神、意識、思考、判断を統括し、さらに魂・魄・意・志を統率するため、心陽不足によって心神が養われず神機不振となると、悲憂、多思多慮、反応遅鈍、倦怠、寡言、絶望感、自責、自殺念慮などが現れる。意・志は脾・腎に蔵され、外界への適応、精神情緒、意欲や行動を調節するため、脾腎陽虚になると志意の働きが低下し、情緒低下、興味減退、少気懶言、自責、意欲低下などの抑制症状が現れ、さらに脾虚による痰湿や腎精不足による髄海失養が神機を障害する。魂・魄は肝・肺に蔵され、魂魄の機能低下は睡眠障害や焦慮などと密接に関係し、肺気不足・肺気鬱閉による魄の失調では悲哀、哭泣、自責などが現れ、肝気鬱結が化火して肝血・肝陰を消耗し魂を蔵せなくなると、心煩、不眠、多夢、さらに幻聴、幻覚、妄想などが現れる。治療では、心神の異常を心神不足・心神迷惑・心神散乱・心神不舒などに分け、黄耆、茯神、女貞子、竜骨などで養精安神し、志意の異常を志意不定・志意不安・意志卑弱・志意沉潜などに分け、人参、巴戟天、竜眼肉、合歓皮、遠志などで強志定意し、魂魄の異常を魂魄不足・魂魄離守・魂魄昏蒙などに分け、朱砂、琥珀、牡蛎、蘇合香、羚羊角などで強魂定魄する。また抑うつ症には鬱と虚が多いため、木香、厚朴、砂仁、檳榔子、牛膝、枳殻などによる理気活血と、人参、黄耆、山薬、杜仲、熟地黄、麦門冬などによる補益を組み合わせる。つまり、抑うつ症を「肝鬱」という一臓の問題に限定せず、心神・肝魂・肺魄・脾意・腎志の失調として分析し、五臓と五神を同時に整える形神一体の治療体系を構築することが本論文の中心的な考え方である。(2017年、張筱)
「精神萎靡状態(少神)」とは、精神的な疲労、表情の乏しさ、寡言、反応低下、周囲への関心低下などを呈し、「得神」と「失神」の中間に位置する状態であり、慢性疲労症候群、神経衰弱、亜健康状態などがこれに含まれる。 Preliminary_A...its”_Abnormal_L… 中医学では精神活動を五神、すなわち心の神、肺の魄、肝の魂、脾の意、腎の志として五臓に配属し、精神萎靡はこれらの失調から生じると考える。神不足では意欲低下、注意力低下、思考遅延などが現れ、益精・摂神を図り、定神散や遠志、天門冬、石蓮肉、薄荷などを用いる。心神と腎精が不足すると精神活動が円滑に働かなくなるため、寧神・鎮神を図り、安神定志丸、人参遠志丸や人参、遠志、茯苓、黄耆、石菖蒲、酸棗仁などを用いる。魄が弱い場合は感覚・運動・反射などの働きが低下し、胆怯、退縮、焦慮などを呈するため、強魄・摂魄・斂魄を図り、沙参、酸棗仁、茯苓、麦門冬、紫石英、竜眼肉、続断、竜骨などを用いる。魂の失調では情緒や精神活動の調節が乱れ、抑うつや精神萎靡を呈するため、安魂・定魂・清魂・和魂を図り、安魂散や牛黄、羚羊角、竜骨、琥珀、桑白皮、升麻、茯苓、木香などを用いる。意が弱くなると注意力・記憶力・思考力が低下し、倦怠、健忘、心煩などを呈するため、補意・升意を図り、柴胡、淫羊藿、五加皮、柏子仁、荊芥などを用いる。志が不堅になると意志力や行動の自己調節が低下し、健忘、精神恍惚、気分低下などが現れるため、堅志・定志を図り、五加皮、遠志、山薬、木香、茯神、天麻、蒼耳子、烏頭、大棗などを用いる。すなわち精神萎靡を単純な「心神」の異常として捉えるのではなく、神・魄・魂・意・志という五神それぞれの異常を辨別し、対応する五臓を調整することが治療の基本とされている。(2015年、陸麗萍)
中医の五神学説を神・魂・魄・意・志から構成される精神心理・行動活動の理論として捉え、形と神を一体として考える「形神統一」の観点から、精神・心理疾患の辨証に応用することを提唱している。 Primary Study...pirits of TCM_D… **神は心に蔵され、生命活動全体を統括するとともに、記憶・認知・意識・情志などの精神心理活動を主る。魂は肝に蔵され、肝血の濡養と肝気の疏泄に支えられ、思考・決断・意志などの高次精神活動を担う。魄は肺に蔵され、感覚、知覚、運動など先天的・本能的な活動を担い、肺気が虚すると感覚低下や動作不利が生じる。意は脾に蔵され、外界から得た情報を加工・判断・分析する思考過程や記憶に関係し、脾気健運によって気血が充足すれば思考明晰・記憶良好となるが、脾が失調すると思慮低下や健忘が生じる。志は腎に蔵され、目標を定め、それを維持して行動に移す意志力を担い、腎精が充足して髄海が養われることで正常に働くが、腎虚では精神疲労、眩暈、健忘、意志の低下などが現れる。**五神の病変では、神は情志・認知・記憶・行動の異常、魂は精神異常・不眠・視覚や言語の異常、魄は感覚・聴覚・記憶・睡眠の異常、意は四肢無力・腹満腹脹・憂鬱、志は精神恍惚・健忘・行動異常・胃腸機能異常などとして現れる。著者らは、身体症状が乏しく精神・行動症状が中心となる症例では、従来の臓腑辨証などだけでは病態を捉えにくい場合があり、患者の精神・心理・認知・行動症状から神・魂・魄・意・志のどこに異常があるかを辨別する「五神辨証」を加えることで、身心両面から治療方針を組み立てられるとしている。(2012年、杜娟)
五臓藏神を「心藏神・肺藏魄・肝藏魂・脾藏意・腎藏志」とする精神活動の統合的な理論として捉え、神志病の辨証・治療に応用する意義を論じている。 Research on t...ental Illness_C… 神は生命活動と精神心理活動全体の基礎となり、魄は生来備わった感覚や本能的・比較的低次の精神活動、魂は思考・想像・評価・決断・情感・意志などの高次精神活動、意は意念の形成と記憶、志は明確な目標に向かう動機や意志を担う。五神はそれぞれ独立して働くのではなく、五臓の気血陰陽が協調することで一つの精神活動として成立しており、五臓藏神とは精神症状を特定の一臓へ機械的に対応させる理論ではなく、五臓全体が精神活動を支える統一的な体系であるとしている。また脳は精神活動と密接に関係するが、その正常な機能には心気の推動、肺気の作用、脾気の健運、肝気の疏泄、腎精・腎気による髄海の充養など五臓の協調が必要であり、五臓藏神は脳と精神活動との関係を中医学的に統合した理論と位置づけられる。治療では精神症状から関連する五臓・五神を辨別して方薬を選択し、例えば生脈散(人参、麦門冬、五味子)は補肺養心・安神定志、癲狂夢醒湯は心血瘀阻、当帰竜薈丸は肝火による狂乱譫語、帰脾湯は脾虚による思慮過度、大補陰丸は相火内擾による不眠などに用いるとしている。さらに、抑うつ症状にみられる興味・喜びの喪失、疲労、思考力低下、性欲低下、睡眠障害などを腎志衰・肝魂減と関連づけ、肝腎陽気を補益する治療を提示し、焦慮、不安、落ち着きのなさ、心煩、易怒、不眠、易驚などを腎志弱・心神浮と関連づけ、交通心腎を治法としている。したがって、身体症状が乏しく従来の臓腑辨証では捉えにくい精神疾患でも、認知・情動・意志・行動などの精神症状を神・魂・魄・意・志に分けて五臓へ結びつけることで、中医学的な辨証治療が可能になると論じている。(2011年、陳宝君)
