LDH

LDH(乳酸脱水素酵素、lactate dehydrogenase)は、赤血球や筋肉での嫌気性解糖においてピルビン酸と乳酸の反応の酵素として働き、2ATPを作ります。

LDHは逸脱酵素または組織損傷マーカーとして知られ、一般的には血中濃度の上昇はAST、ALTなどとともに肝障害を示唆します。

コリ回路(Cori cycle)は、嫌気性解糖の過程において、赤血球や筋肉などでグルコースから乳酸を作り、肝臓で乳酸からグルコースに戻すまでの経路のことです。

グルコース-アラニン回路(Glucose-alanine cycle)は、肝臓から筋肉にグルコースを供給する代謝回路です。肝臓ではアラニンからピルビン酸に変換され糖新生によってグルコースが作られます。筋肉ではグルコースが解糖系によってピルビン酸に分解され、アラニンが作られます。グルコースとアラニンの両物質は血液を介して循環しています。

LDHは全身に分布しています。心筋梗塞、溶血、感染症などでも上昇がみられ非常に非特異的であるため診断の参考としての有用性はあまり高くありません。LDHが上昇している時に、その由来を調べるために、LDHアイソザイムを検査する方法もあります。

ただし、単独で上昇しているとしたら悪性リンパ腫をはじめとした悪性腫瘍がかくれている可能性を考えるべきです。

体の細胞が壊れた時にLDHは上がるので、激しい運動や採血に時間が掛かった場合も上昇します。

正常細胞と比較した悪性細胞の主要な生化学的特徴の 1 つは、低酸素条件下であっても、酸化的リン酸化から解糖の増加への代謝スイッチであり、ワールブルグ効果(がん細胞は有酸素下でもミトコンドリアの酸化的リン酸化よりも,嫌気性解糖系でATPを産生する現象)と呼ばれます。乳酸脱水素酵素 A (LDHA) は、ピルビン酸から乳酸への変換を触媒し、嫌気性解糖の重要なチェックポイントであると考えられています。多くの種類の癌で上昇しており、腫瘍の増殖、維持、および浸潤に関連しています。(2013, Miao)

LDHもALPも亜鉛金属酵素(1979, Adragna)ですが、LDHは組織が破壊された時に血中に逸脱して上昇する逸脱酵素であるため血清亜鉛とは相関しませんが、ALPは誘導酵素であるので血清亜鉛と相関します。

LDHはNAD依存性酵素であり、170U/L以下はビタミンB3の低下を疑うと言われていますが、論文的根拠はありません。

ビタミンB3欠乏で起こるペラグラで、LDHが低値であるという報告はありません。(2014, Thornton)(2013, Qutub)(2014, Gupta)