夜尿症の中医論文
まとめ:小児夜尿症の中心病機は腎気不足・腎陽虚による膀胱の固摂・気化機能低下であり、これに脾肺気虚による水液代謝の失調が加わると考えられている。したがって治療は健脾益気・温補腎陽・固摂縮尿が基本となり、益智仁、桑螵蛸、山薬、黄耆、党参、補骨脂、覆盆子、菟絲子、烏薬などが頻用されている。もう一つ特徴的なのは、夜尿症を単なる膀胱の問題ではなく、深睡眠・覚醒困難と関連づけている点で、麻黄による宣肺・覚醒、石菖蒲・遠志による開竅醒神を組み合わせた「夜尿警覚湯」系の処方が繰り返し報告されている。また、鍼灸・推拿・夜尿点刺激・神闕穴への貼付などの外治法を併用する報告も多い。全体として、「腎を本、膀胱を標とし、脾肺を補いながら覚醒機能も改善する」ことが中医治療の基本的な考え方とまとめられる。
脾腎両虚証の小児遺尿症に対する「醒脾養児顆粒+五倍子臍療」**の効果を検討した60例の比較試験です。対照群30例はデスモプレシン、観察群30例はそれに醒脾養児顆粒内服と五倍子粉末の神闕穴貼付を追加し、3か月治療+3か月追跡しています。
中医学的には、小児遺尿を脾腎両虚・膀胱失約として捉え、脾虚による運化失司・水湿内停と、腎気不足による気化・固摂機能低下が遺尿につながるとしています。醒脾養児顆粒は一点紅、毛大丁草、山梔茶、蜘蛛香からなり、一点紅は温中健脾、毛大丁草は燥湿醒脾・温補腎陽、山梔茶は養血清虚、蜘蛛香は消食健脾と説明され、全体として温補腎陽・健脾固渋を図ります。五倍子は酸渋・収斂固渋により縮尿し、粉末を米酢で膏状にして神闕穴へ貼付しています。
結果は、総有効率が対照群73.33%に対し観察群93.33%、治療後の夜尿回数は2.52回/週 vs 1.81回/週で観察群が良好でした。睡眠についてもCSHQの全8領域で観察群が有意に良好でした。 3か月追跡では再発率が対照群31.82%、観察群3.57%でしたが、著者自身が症例数が少なく正式な統計学的検定を行っていないため、再発抑制については予備的結果としています。
要約すると、脾腎両虚証の小児遺尿症60例を対象に、デスモプレシン単独と、デスモプレシン+醒脾養児顆粒(一点紅、毛大丁草、山梔茶、蜘蛛香)+五倍子研末神闕穴貼付を比較したところ、併用群では総有効率、夜尿回数、睡眠の各指標が有意に改善し、有害事象は増加しなかった。中医学的には脾虚失運・腎気不足・膀胱失約を病機とし、健脾助運・温補腎陽・固渋縮尿を治法としている。(2026、及晶晶)
脾腎陽虚型の小児遺尿症70例を対象に、自擬方「夜尿湯」と小児遺尿寧顆粒を比較した研究です。35例ずつに無作為に分け、3週間治療しています。
中医学的には、小児遺尿では腎虚不固・下元虚冷によって膀胱を約束できないことを主要病機とし、脾腎陽虚型では「温腎固渋」を中心に「益気固脬」を加える治法を採用しています。夜尿湯は桑螵蛸、補骨脂、覆盆子、菟絲子、益智仁、麩炒山薬、炙黄耆、炙麻黄、当帰から構成され、桑螵蛸・補骨脂・覆盆子・菟絲子・益智仁を温腎固渋の君薬、麩炒山薬・炙黄耆を益気固脬の臣薬、麻黄を宣肺・通調水道、当帰を補血活血として、全体として温補脾腎・固渋止遺を図っています。
治療3週間後の総有効率は、**夜尿湯群94.28%(33/35例)、対照群85.71%(30/35例)**で、論文では夜尿湯群が有意に良好だったとしています。
脾腎陽虚型小児遺尿症70例を対象に、夜尿湯(桑螵蛸、補骨脂、覆盆子、菟絲子、益智仁、麩炒山薬、炙黄耆、炙麻黄、当帰)と小児遺尿寧顆粒を3週間比較したところ、夜尿湯群の総有効率94.28%は対照群85.71%より高かった。病機を脾腎陽虚・腎虚不固・膀胱失約と捉え、温腎固渋・益気固脬を基本治法として、温補脾腎・固渋止遺を図る処方である。(年号は本文記載から確認できず、劉智剛)
槐杞黄顆粒(槐耳菌質、枸杞子、黄精)+デスモプレシン酢酸塩(弥凝片)を、単症状性夜間遺尿症の小児42例に3か月投与し、デスモプレシン単独42例と比較した。槐杞黄顆粒は、槐耳菌質による扶正固本、枸杞子による滋補肝腎・益精、黄精による補脾・潤肺生津を目的とする方剤である。 併用群では有効率97.62%で、単独群73.81%より有意に高く(P=0.002)、治療後の夜間尿量・排尿回数および陰虚体質、舌質紅・苔薄・脈細などの中医証候スコアも有意に改善した。 また、治療後3か月・6か月・1年を通じた総再発率は併用群6.67%、単独群23.81%で、併用群が有意に低く(P=0.035)、有害事象発生率には有意差を認めなかった。以上から、槐杞黄顆粒併用はデスモプレシン単独より短期効果だけでなく再発抑制を含む長期効果にも優れる可能性が示された(2018、王花艳)。
夜尿警覚湯(益智仁12g、桑螵蛸15g、石菖蒲9g、麻黄9g)を小児遺尿症に用い、下元虧虚で小便清長・面色不華には鹿角霜、金桜子、肺脾気虚で易感冒・納呆には生黄耆、党参、茯苓、白朮、湿熱で舌紅・苔黄膩には薏苡仁、茵陳、淡竹葉を加味した。 遺尿の病機を「本は腎、標は膀胱」とし、腎気不固、脾肺気虚、肝経湿熱を主な病因と捉え、益智仁・桑螵蛸・石菖蒲によって開竅益智・固腎縮尿し、麻黄の興奮作用を組み合わせて大脳皮質に夜間排尿の警覚点を形成することを治療機序としている。 70例を夜尿警覚湯単独34例と、夜尿警覚湯+平衡鍼36例に無作為化して比較したところ、総有効率は単独群79.4%に対し併用群94.4%で有意に高く(P<0.05)、平衡鍼では腎病穴を主穴、腹痛穴・昇提穴を配穴として用いた。 以上から、夜尿警覚湯単独でも約8割の有効率を示し、平衡鍼を併用することでさらに治療効果が高まることが示された(2016、孫亮)。
猪浮湯(黄耆30g、茯苓15g、蜜炙甘草5g、炒白朮15g、酒洗牛膝10g、萆薢15g、金桜子肉15g、益智仁15g、高良姜5g、蓽茇5g、淮山薬10g、広木香10g、覆盆子15g、炒杜仲15g、烏薬20g、炮姜3g、柴胡10g、炙香附10g、姜厚朴10g、補骨脂15g)加味を、性徴発育に異常がなく器質的疾患などを伴わない睡眠時遺尿の小児20例に投与した。 本論文では小児睡眠遺尿を「病在下焦」とし、心・脾・腎の気虚、陽気衰冷により膀胱の制約が失われることを主な病機としている。 方剤は、黄耆・白朮・山薬・茯苓などで益気健脾し、覆盆子・杜仲・補骨脂などで温補腎陽、金桜子・益智仁などで固摂縮尿し、木香・烏薬などで行気、柴胡・香附・厚朴で疏肝理気・除満する構成とされている。 20例全例で夜尿回数の減少と尿量の正常化などの改善を認めたが、対照群を設けておらず、治癒率などの詳細な集計値も提示されていない。症例では3剤で夜尿3~4回から2~3回、さらに3剤で1回となり、最終的に尿意で覚醒して排尿可能となり、2年間の追跡で再発を認めなかった。 以上から、心脾腎気虚・陽気衰冷を背景とする小児睡眠遺尿に対し、健脾益気・温腎固摂・理気を組み合わせた猪浮湯加味が有効であったと報告されている(2013、徐華)。
小児夜尿症の病機は、主に腎気虚・下元虚寒、肺脾気虚、肝経鬱熱の3つに分類され、特に脾腎虚弱では脾の運化・水液統制と腎の固摂・膀胱制約が低下するため、治療は健脾益気・補腎縮尿を基本とする。著者らは脾腎虚弱型100例を対象に固定処方による前向き無作為化二重盲検試験を行い、臨床症状の改善を認めた。さらに小児が受け入れやすい治療として、**夜尿散(麻黄5g、桂枝5g、乳香5g、没薬5g、五倍子5g、桑螵蛸5g、菟絲子5g、益智仁5g、茯苓5g、麝香3g、蟾酥5g、雄黄5g)**を微粉末化し、95%アルコールとワセリンで膏状として、気海・中極・関元・神闕を主穴、腎兪・膀胱兪を配穴として外用する穴位貼敷療法を考案した。3日ごとに交換し9日間を1クール、最大3クール施行するもので、漢方薬外用と経穴治療を組み合わせ、健脾益気・補腎固摂・縮尿を図る治療法として報告されている。(2013, 岳绍战)
縮泉丸加味(淮山薬10g、益智仁10g、烏薬5g、桑螵蛸10g、覆盆子10g、菟絲子10g、補骨脂10g、炙鶏内金10g)と夜尿点への鍼刺を、小児遺尿症20例に施行した。肺脾気虚には党参、黄耆、白朮、茯苓、升麻、熟睡が深い場合には麻黄、石菖蒲、多汗には煅竜骨、煅牡蛎、夜臥不安には遠志、茯神を加味した。 病機は小児の腎気不足・下元虚寒を本とし、膀胱が温養されず固摂・気化機能が失調して夜間に遺尿すると捉え、温腎固渋・固精縮尿を治法としている。益智仁・烏薬・補骨脂・菟絲子で温腎散寒・固精縮尿、桑螵蛸・覆盆子で固精縮尿、山薬で補脾腎、鶏内金で健胃消食して補薬の滋膩を防ぐ構成である。 治療結果は20例中治癒16例(80%)、好転4例(20%)、総有効率100%であったが、対照群を置かない症例集積である(2013、楊素梅)。
夜尿警覚湯(生麻黄6~9g、桑螵蛸10g、石菖蒲10g、烏薬6~10g、益智仁6~10g、淮山薬10~15g、猪膀胱1個)を小児遺尿症138例に投与した。 病機は肺・腎・三焦の気虚不固、気化失常による膀胱不約と捉え、「肺は水の上源、腎は水の下源」として肺腎同治・標本兼固を治則とする。特に夜間に覚醒しにくい点を重視し、麻黄で宣肺・覚醒を促し、桑螵蛸で補腎止遺、石菖蒲で開竅し、烏薬・益智仁・淮山薬からなる縮泉丸の意を加えて、全体として宣肺補腎・固渋止遺を図る処方である。 服薬期間は5~25日で、138例中121例(87.7%)が治癒、10例(7.2%)が好転、7例(5.1%)が無効で、総有効率94.9%であった。治癒は遺尿消失かつ1年間再発なしと定義されているが、対照群を設けない症例集積である(2011、李擁平)。
補腎醒脳湯(桑螵蛸12g、益智仁12g、山薬15g、菟絲子10g、鶏内金10g、烏薬10g、五味子12g、石菖蒲12g、遠志10g)を小児遺尿症66例に投与し、夜尿点への鍼刺を併用した。脾虚には黄耆・白朮を加えて健脾益気・固渋止遺し、遺尿頻回には金桜子・煅竜骨・煅牡蛎、熟睡して覚醒困難な場合には半夏を加え石菖蒲を20gに増量して化痰開竅・醒脳を図った。 病機は腎虚不固・脾虚湿困・痰湿阻竅を中心とし、腎気・腎陽不足による膀胱失約に、脾虚による水湿停滞→痰湿阻竅が加わって、睡眠中の覚醒障害を伴う遺尿が生じると捉えている。桑螵蛸・益智仁・山薬・菟絲子・五味子・烏薬で培元補腎・温陽固渋、黄耆・白朮で健脾化湿、石菖蒲・遠志・半夏で化痰開竅・醒脳、鶏内金で消食健脾・止遺し、全体として補腎健脾・温陽化湿・豁痰開竅・醒脳止遺を図る。 66例中56例(84.8%)が治癒、9例が好転、1例が無効で、総有効率98.5%であったが、対照群を設けない症例集積である(2011、李志強)。
健脳霊(五味子、甘草、柏子仁、鹿茸、白芍、酸棗仁、地黄、当帰、肉蓯蓉、熟地黄、茯苓、川芎、紅参)+縮泉膠囊(山薬、益智仁、烏薬)の内服に伝統推拿を併用し、小児遺尿症354例を推拿併用177例と中薬単独177例に分けて3か月治療した。 病機は腎・膀胱の虚寒による固摂失調を中心に、肺脾気虚や肝の機能失調が関与すると捉え、縮泉膠囊で補脾腎・固精縮尿・温散下焦虚寒、健脳霊で健脾益気・補腎・安神を図る。推拿は腎兪、八髎、気海、関元、亀尾、夜尿点を主穴とし、脾腎陽虚、肝経湿熱、腎気不足、心腎不交などに応じて配穴を加減した。 有効率は推拿併用群96.6%、中薬単独群91.5%で併用群が有意に優れ、睡眠覚醒障害の改善まで14.09日対24.12日、夜尿減少まで12.05日対19.99日と、推拿併用により改善期間も有意に短縮した。 以上から、健脾益気・補腎縮尿・安神を目的とした中薬内服に、培元固本・補益下焦・益腎固精を目的とする推拿を併用することで、夜尿だけでなく睡眠覚醒障害などの改善も促進する可能性が示された(2010、周莹)。
遺尿飲(党参30g、枸杞子30g、山薬20g、芡実20g、蓮子20g、黄耆25g、附子10g、益智仁15g、桑螵蛸15g、鮮猪膀胱2個)を、遺尿または夜尿増多30例に投与した。 病機は腎気虚弱による水液の輸布・排泄および固摂機能の低下を基本とし、党参・黄耆・山薬・芡実・蓮子で健脾益気して後天から先天の腎精を養い、益智仁・桑螵蛸で温脾補腎・固精縮尿、枸杞子で滋補肝腎、附子で補火助陽し、全体として補脾益腎・壮陽縮尿を図る処方である。 2~3剤投与後、著効23例、有効5例、無効2例と判定され、著者は総有効率100%と報告しているが、本文の判定区分では無効2例を含むため数値上の整合性には注意が必要であり、対照群も設定されていない。小児症例では2剤で遺尿が著減し、再燃後4剤で治癒して3年間再発を認めなかった(2008、陳定熙)。
遺尿散(丁香、肉桂、五倍子、五味子、補骨脂、覆盆子、桑螵蛸)を小児遺尿に用い、丁香・肉桂・五倍子・五味子・補骨脂を細末として白酒で調え臍部に毎晩貼付し、覆盆子・桑螵蛸は煎じて内服する内外併用療法を行った。 病機は腎気不足・下元不固による膀胱失約とし、治法を補腎壮陽・収渋止遺とする。補骨脂・覆盆子・桑螵蛸で補腎壮陽・固精縮尿、五味子・五倍子で収斂固渋、丁香・肉桂で命門の火を補い、腎の気化・固摂作用を高める構成である。 典型例では、他の薬物・鍼灸・按摩・電気療法で改善しなかった遺尿に本法を施行し、7日で遺尿が消失、さらに7日継続して治癒し、1年間再発を認めなかった。論文には全症例数や詳細な治療成績が明確に記載されておらず、対照試験ではない(秦中輝)。
夜尿警覚湯(益智仁12g、桑螵蛸15g、麻黄9g、石菖蒲9g)を、6~12歳の小児遺尿症9例に投与した。患児は睡眠が深く覚醒困難で、夜間1~2回の遺尿、顔色蒼白、精神疲労などを呈していた。 病機について著者は、夜間の深睡眠・覚醒困難により大脳皮質に夜間排尿の「警覚点」が形成されていないことを重視し、益智仁・桑螵蛸・石菖蒲で開竅益智・固腎縮尿し、麻黄の中枢興奮作用を利用して覚醒を促すことで、正常な夜間排尿反射を形成するとしている。 7日を1クールとして治療した結果、9例中6例(67%)が治癒、3例(33%)が有効、無効0例で、総有効率100%であった。治癒は遺尿消失・精神状態回復・半年間再発なしと定義されているが、9例のみの対照群を設けない症例集積である(2005、王家成・姚慶俊)。
遺尿合剤(菟絲子12g、党参12g、補骨脂9g、烏梅9g、黄耆15g、桑螵蛸15g、石菖蒲15g、炙麻黄4.5g)を小児遺尿症60例に3か月投与し、膀胱機能訓練・覚醒反応訓練を併用した。中医弁証は腎気不固33例、脾肺気虚15例、肝経鬱熱12例であった。 病機は腎気不足・下元不固を基本とし、一部に脾肺気虚を伴うと捉え、菟絲子・補骨脂で補腎壮陽、桑螵蛸で固精縮尿、黄耆・党参で健脾補気、烏梅で生津止渇、炙麻黄で宣肺、石菖蒲で化痰開竅して膀胱充満時の覚醒を促し、全体として補腎固渋止遺を図る処方である。 治療後は治癒16例、好転24例、未治20例で総有効率66.7%、治癒16例は1年後にも再発を認めなかった。また関連因子として潜在性二分脊椎80%、深睡眠66.7%、家族歴33.3%、夜間多尿33.3%が認められ、著者らは特に潜在性二分脊椎と覚醒性低下を重視している(2002、汪永紅)。
夜尿警覚湯加味(党参12g、益智仁12g、石菖蒲9g、麻黄9g、桑螵蛸15g、烏薬8g、補骨脂8g、薏苡仁8g)を小児遺尿症23例に投与した。 病機は腎気不足・下元虚寒を基本に、肺脾気虚と脾虚による痰湿内蘊を伴うと捉え、腎陽不足による膀胱の制約低下に加え、肺脾気虚では水道を約束できず、さらに脾虚生湿・痰湿内蘊によって熟睡・覚醒困難が生じるとしている。このため治療の要点を温補腎陽・健脾益気・化湿としている。23例中17例が治癒、4例が好転、2例が無効で、総有効率91.3%、治療期間は6~15日であった。典型例では睡眠時の覚醒困難、肢冷、倦怠乏力、食少納呆などを伴う10歳児が9剤で遺尿消失し、1年間再発を認めなかった(2002、王艶華)。
加味夜尿警覚湯(益智仁、麻黄、桑螵蛸、石菖蒲)を基本方として小児遺尿症98例に投与し、下元虧虚で小便清長・面色晄白には鹿角霜・金桜子、肺脾気虚で易感冒・納呆には生黄耆・党参・茯苓・白朮、湿熱が強く舌紅・苔黄膩には薏苡仁・茵陳・竹葉などを加味した。 病機は**「本は腎、標は膀胱、治は肺脾」とし、腎気不足による膀胱失約に肺脾気虚などが関与すると捉えている。益智仁・桑螵蛸で温腎固摂・収斂止遺**、石菖蒲で醒脳開竅・固腎縮尿、麻黄で中枢・交感神経を興奮させて覚醒を促し、党参・黄耆などの加味により健脾益気を図る。 98例中、下元虧虚型22例、肺脾気虚型63例、湿熱型13例で、治癒75例、好転23例と報告され、無効例は記載されていない。治癒75例のうち20剤以内で30例、20~45剤で45例が治癒しており、肺脾気虚型が約64%と最も多い点も特徴である(2001、李秀育)。
加味縮泉丸薬蛋(益智仁10g、淮山薬10g、烏薬10g、枸杞子10g、鶏卵2個)を小児夜尿症41例に投与した。中薬と鶏卵を水500mLで煮て、鶏卵が煮えた後に殻を割り、さらに薬液がなくなるまで煮込み、薬材を捨てて鶏卵のみを1回1個、1日2回食べる方法で、3日を1クールとした。 病機は腎気不充による膀胱気化機能の失調・小便失控と捉え、益智仁で温腎固精・縮尿、淮山薬・枸杞子・鶏卵で滋腎益精・縮尿、烏薬で固摂縮尿し、全体として補腎益精・固摂縮尿を図る処方である。 41例中、治癒28例(68.3%)、好転8例(19.5%)、無効5例(12.2%)で、総有効率87.8%であった。煎じ薬を服用しにくい小児に対して「薬蛋」として摂取させることで服薬困難を軽減できる点も特徴とされている(1997、張四雄)。
夜尿散(益智仁12g、麻黄9g、桑螵蛸15g、石菖蒲9g、淮山薬15g)を小児遺尿症に用いた。論文では典型例として、約8年間遺尿が持続し他治療で無効だった12歳女児が本方服用後に再発を認めず、また毎夜1~2回の遺尿と深睡眠を呈した7歳男児では7剤で遺尿が停止し、その後も継続して計14剤服用、半年間再発を認めなかった。 著者は病態として夜間の深睡眠・覚醒困難と、大脳皮質に夜間排尿の「警覚点」が形成されていないことを重視し、益智仁・桑螵蛸・石菖蒲で開竅益智・固腎縮尿し、麻黄の興奮作用を加えることで大脳皮質の夜間排尿警覚点の形成を促すとしている。 本論文は典型例の報告が中心で、全症例の治癒率・有効率などの詳細な集計は記載されていない(1997、曹宗文)。
固泉飲(党参10g、太子参12g、山薬12g、麦冬8g、益智仁8g、肉桂3g、五味子3g、覆盆子8g、遠志5g、茯苓10g、桑螵蛸6g)を小児夜尿症126例に投与した。治法は固腎止遺・安神定志・益気健脾で、1日1剤を水煎し3回に分服した。 病機は、腎気不足・膀胱失約を中心に、肺脾気虚、心神不寧・熟睡による覚醒困難が関与すると捉え、小児では肺脾腎が不足しやすく、肺気未充・神気怯弱などの生理的特徴から夜尿が生じるとしている。方剤はこの病機に対し、補腎固摂に加えて健脾益気と安神醒覚を組み合わせる構成である。 126例中、治癒93例(73.8%)、好転20例(15.87%)、未治13例(10.32%)で、総有効率89.6%であった。典型例では8歳女児の毎夜2~3回の遺尿、熟睡・覚醒困難、神疲乏力などに15剤を投与して夜尿が消失し、さらに7剤継続後、半年間再発を認めなかった。対照群を設けない臨床観察である(陳寿元)。
小児夜尿散(麻黄10g、黄耆10g、鹿角霜10g、桑螵蛸各3g、烏薬5g、益智仁5g)と夜尿点への指圧を小児尿床72例に施行した。夜尿点は手掌側小指第2関節横紋中央とし、王不留行籽を固定して酸脹感が生じる程度に1回5分、朝・昼・晩に指圧した。 病機は腎気不足・膀胱虚冷、脾肺気虚、肝経鬱熱などがあるものの、著者は特に三焦気機不暢・膀胱気化失調による水道制約の低下を核心と捉えている。麻黄で宣肺・疏理気機・通調水道、黄耆で補益脾肺・升陽、鹿角霜で補腎助陽、益智仁で温腎利気・固渋下元、烏薬で理気・温腎散寒、桑螵蛸で補腎助陽・固精縮尿し、全体として宣肺益気・通調三焦・補腎固精・縮尿止遺を図る。 72例中、治癒25例、有效44例、無効3例で、総有効率95.8%であった。典型例では腎気不足と診断された9歳男児が2クールで尿床が消失し、さらに1クール継続後、1年間再発を認めなかった(1997、胡安安)。
加味縮泉丸(湯)薬蛋(益智仁10g、淮山薬10g、烏薬10g、枸杞子10g、鶏卵2個)を小児夜尿症41例に投与した。中薬と鶏卵を水500~1000mLで弱火煎煮し、鶏卵が煮えた後に殻を割って再び薬液がなくなるまで煮込み、薬材を捨てて鶏卵のみを1回1個、1日2回食べ、3日を1クールとした。 病機は腎・脾・肺三臓の不足、とくに腎気不充を中心とした膀胱気化失調と捉え、益智仁で温腎固精・縮尿、淮山薬・枸杞子・鶏卵で滋腎益精・縮尿、烏薬で固摂縮尿し、全体として補腎益精・固摂縮尿を図る処方である。 41例中、治癒28例(68.3%)、好転8例(19.5%)、無効5例(12.2%)で、総有効率87.8%、治癒例のうち20例は2年間の追跡で再発を認めなかった。対照群を設けない臨床観察である(1997、張四雄)。
潘東曙は小児遺尿症を、先天不足または後天失調から脾腎陽虚・下元虚冷となり、膀胱失約を来す病態と捉え、脾腎気虚型では益腎健脾・醒神固尿、腎陽不足型では温腎補陽・醒神縮尿を治法としている。基本方は桑螵蛸、石菖蒲、遠志、党参、当帰、茯苓、亀板、竜骨で、脾腎気虚・自汗気短には黄耆、脾腎陽虚・少腹冷脹・便溏には巴戟天、小便頻数・尿意不尽には鹿角霜・益智仁、久病で脾気虚が強い場合には補中益気丸を加える。 方意は、桑螵蛸などで温腎固摂、石菖蒲・遠志で交通心腎・芳香開竅して醒神し、茯苓などで健脾益肺することで、肺・脾・腎三臓を同時に調え、膀胱の気化・固摂を回復させることにある。 脾腎気虚・膀胱失約の症例では、桑螵蛸、覆盆子、党参、茯苓、遠志、石菖蒲、益智仁、鹿角霜、升麻、生牡蛎、山茱萸などを用い、3剤で覚醒しやすくなって夜尿が消失、その後加減しながら治療を継続して治癒し、半年間再発を認めなかった(潘東曙)。
夜尿警覚湯(益智仁、麻黄、桑螵蛸、石菖蒲)を基本方として小児遺尿症28例に投与し、下元虚寒には補骨脂・何首烏・杜仲・巴戟天、肺脾気虚には党参・黄耆・白朮・升麻・柴胡、肝経湿熱には車前子・竹葉・綿茵陳、痰湿が強い場合には半夏を加味した。 病機は**「病根は腎、標は膀胱」とし、腎気虚弱による封蔵・固摂失調と膀胱失約を基本に、肺脾気虚による気の生成不足・水液代謝失調が関与すると捉える。益智仁・桑螵蛸・石菖蒲で開竅醒脳・固腎縮尿し、麻黄で中枢神経を興奮させて膀胱充満時の覚醒を促し、党参・黄耆で益気補脾**、その後に補腎薬を加えて固腎縮尿し根本を治療する構成である。 28例中23例が治癒、5例が好転、無効0例で、総有効率100%であった。肺脾気虚の典型例では夜尿警覚湯に黄耆・党参・柴胡・升麻を加えて症状が消失し、その後、何首烏・補骨脂を加えて治療を継続したところ、1年間再発を認めなかった(1996、李秀育)。
夜尿散(補骨脂6銭〔塩水炒〕、益智仁4銭、五味子6銭、桑螵蛸6銭、覆盆子1両、菟絲子6銭)を小児遺尿症22例に単独投与し、1回1~2銭、1日2回朝夕空腹時に服用、7~10日を1クールとした。 病機は腎気不足・膀胱虚寒・下元虚寒による固摂失調を中心と捉え、「寒者温之」「虚者補之」の原則から、『幼幼集成』の益智散を基礎に、菟絲子・五味子・覆盆子・桑螵蛸などの温補腎気・固渋縮尿薬を加えた処方である。益智仁・補骨脂を中心に補腎縮尿し、五味子には固腎縮尿に加えて大脳皮質の興奮・抑制過程を調節する作用も期待している。 22例全例が治癒し、3日で遺尿が停止9例、1クールで治癒11例、2クールで治癒2例で、多くは治癒6か月後の追跡でも再発を認めなかった。鍼灸などを原則併用しない夜尿散単独の症例集積である(1974、蘇礼)。

