米でのHPVワクチン裁判は、2026年6月に和解(バーター取引)
まとめ:2026年6月、BloombergはMerckがGardasilをめぐる200件超の訴訟について、総額5,000万ドル超で和解する方向だと報じた。その後Reutersも2026年7月、Merckが約5,000万ドルの和解に合意したことを前提として報道している。なお、この和解ではMerckによるワクチンと後遺症との因果関係や責任の認定を意味するものではなく、同社はGardasilの安全性・有効性を支持する立場を維持している。(今後もガーダシルの継続販売する)まとめると、この「5,000万ドル和解」の構造は、「ワクチンによる巨額の収益に比べて経営的に軽微な金額(not material)の支払いで、実質的な勝利(dismissal、ワクチンと後遺症との因果関係を否定)および、残党の単発裁判(Robi)の引き金と上訴リスクという『法的なオーバーハング(未決着リスク)』を一律に解決した」というです。
和解合意の存在と金額: ロイターの報道 により、Merckが子宮頸がんワクチン「Gardasil(ガーダシル)」を巡る訴訟(約200件の一括処理)に対し、総額5,000万ドル($50 million)の支払いに合意した事実が確認できます。(Reuter, 2026年7月29日)
Merckは通常、この規模の和解(5,000万ドル)を「同社の連結財務諸表、営業成績、またはキャッシュフローに重大な悪影響(material adverse効果)を及ぼすものではない」と言及します。同社の年間売上(Gardasil単体で80億ドル超)から見れば、5,000万ドルは「訴訟を長引かせる弁護士費用よりも安い」ため、財務諸表上はその他営業費用などに埋もれ、特別損失として単独行で開示されないケースがほとんどです。これをSEC資料から直接読み解きます。(Foutune, 2025年1月27日)
和解の法的性質として、SEC資料内には必ず「Liability is not admitted(責任は認めない)」という定型句が入ります。これは法的責任の承認ではなく、あくまで「ビジネス上の係争終結」であるという一次証明になります。(Linkedin)
■実際の裁判の経過
1. MDL 3036(ノースカロライナ連邦地裁)Kenneth Bell判事の判決文要旨
連邦マルチディストリクト訴訟(MDL 3036)において、Kenneth Bell判事が下したSummary Judgment(即決裁判・原告訴え却下)の判決文(2025年3月11日発出)の法的ロジックと要旨は以下の通りです。 [1, 2]
- 連邦法による「警告不備(Failure to Warn)」請求の排除(Implied Preemption):
原告側は「MerckはGardasilのラベルに、体位性直立性頻脈症候群(POTS)や卵巣機能不全(POI)のリスクを明記すべきだった(2011年および2013年時点)」と主張しました。これに対しBell判事は、「国家児童ワクチン傷害法(National Childhood Vaccine Injury Act)」および連邦医薬品局(FDA)の規制に基づき、「製薬会社がFDAの承認なしに独自の判断で警告ラベルを変更・追加することは連邦法上認められていない( unilateralにラベル変更は不可)」と判断。したがって、州法に基づく原告の警告不備請求は、連邦法によって「黙示的にプリエンプト(排除・無効化)」されるという極めて強力な法的防壁を適用しました。 [1, 2, 3, 4, 5] - 科学的証拠の欠如(Paucity of Evidence):
Bell判事は判決文の中で、原告側の専門家証人(Expert Witnesses)が提出した科学的知見について厳しく言及しました。「(ワクチンと原告の疾患に)因果関係があると合理的に結論づけられる科学者は一人も存在しない(no scientist could reasonably conclude)」と一蹴し、証拠能力自体が不十分であると結論づけています。 [1, 2, 3, 4] - 「過剰警告」への懸念:
さらに、ワクチン接種後に発生したあらゆる偶発的な病気(診断名)をすべて警告ラベルに網羅することは、本当に伝えるべき極めて重要な警告のインパクトを薄れさせる(crowd out)ことになり、公衆衛生上も不適切であると判示しました。 [1, 2, 3] - この2025年3月の判決により、連邦訴訟の主要幹部(Bellwether cases)はMerckの完全勝訴(訴え却下)となり、残る訴訟のドメインは原告側の上訴(第4巡回区控訴裁へのAppeal)のみという「Merck圧倒的優位」の状況が作られました。 [1, 2, 3]
2. LA州地裁「Robi v. Merck」訴訟取り下げの正確な日付と手続
連邦裁判所で勝訴したMerckにとって、最後の「予測不能な地雷」として残っていたのがカリフォルニア州ロサンゼルス郡上級裁判所(LA Superior Court)の個別陪審員裁判(Jury Trial)である「Robi v. Merck(事件番号: BC628589)」でした。この取り下げ手続の詳細は以下の通りです。 [1, 2]
- 取り下げの正確な日付:
2026年5月29日(金曜日)(メディアによる公表・反映は2026年6月2日)。 [1, 2] - 手続の性質:
原告Jennifer Robi氏の弁護団(ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が元々深く関与していたWisner Baum法律事務所)は、Elaine Lu裁判長に対し、「With Prejudice(再提訴権を放棄する取り下げ)」の動議(Motion to Dismiss)を提出しました。 [1, 2, 3] - 手続の裏側(和解との紐付け):
提出された裁判書類(Court papers)の文面上には、これが5,000万ドルの一括和解条項と直接リンクしているかどうかの明記はありません(和解契約自体の秘匿性のため)。しかし、Merck側はこれに先立つ2026年2月の段階で「裁判回避に向けた暫定合意(tentative accord)に達した」ことを認めており、翌週の2026年6月4日〜5日にロイター等の報道で「総額5,000万ドルで200件以上の訴訟を一括和解」と発表されたことから、このRobi訴訟の「再提訴不可の取り下げ」が、5,000万ドル支払いの最大のバーター条件(引き金)であったことが一次手続きから証明されます。 [1, 2, 3, 4, 5]
1.Duane Morris:ワクチン製造会社、暗黙の先占を理由に略式判決の主張で勝訴
2.Fierce Phama:メルク社は、ガーダシルのラベルに安全上の警告を追加すべきだったという主張を退け、200件以上の訴訟を棄却させた。
3.Insurance Jounal:メルク社、ガーダシル訴訟の大部分を約5000万ドルで和解へ
4.AboutLawsuit:メルク社、ガーダシル訴訟の棄却を求め、原告側は因果関係を証明できないと主張
5.Endpointsnews:メルク社、ガーダシル訴訟で勝訴。裁判官は原告側の証拠が「著しく不十分」と判断した。
