LONG COVIDを漢方で改善|論文

ロングCOVIDの中医学的病機は、肺脾腎の気陰両虚を本とし、湿邪、痰濁、瘀血、気滞を標とする本虚標実である。感染によって正気が損傷し、肺脾の機能低下から気血の生成不足、湿邪の停滞が生じ、さらに心腎や脳髄へ波及することで、倦怠感、労作後の疲労増悪、息切れ、咳嗽、動悸、不眠、認知機能障害、筋肉痛、消化器症状などが遷延する。200例の解析では脾気不足30%、脾虚湿蘊17%、脾肺気虚17%、脾腎陽虚12%と脾虚が中心であり、治療は益気健脾、補肺益腎、養陰生津を基本に、祛湿化痰、疏肝理気、活血化瘀を組み合わせる。頻用生薬は黄耆、党参、白朮、茯苓、甘草、陳皮、砂仁、薏苡仁、山薬、白扁豆、紅景天、麦門冬などである。(2026年、張梅/2024年、王蘭)

症状別には、倦怠感に保元湯(人参、黄耆、炙甘草、肉桂)、咳嗽に補肺湯(人参、黄耆、熟地黄、五味子、紫菀、桑白皮)、動悸に炙甘草湯(炙甘草、生姜、桂枝、人参、生地黄、阿膠、麦門冬、麻子仁、大棗)、不眠に帰脾湯または酸棗仁湯、自汗に玉屏風散合桂枝湯、痺痛に当帰四逆湯を用いる。また、少陽枢機不利や営衛不和を重視する立場では、小柴胡湯、四逆散、黄連温胆湯、血府逐瘀湯などを用いて気機と血脈の運行を調節する。これらの方剤について、原論文には個別生薬の用量が記載されていないものが多い。(2026年、冷啓寧/2026年、李江紅)

臨床研究では、疲労症候群に対して疏泄扶正法(醋柴胡6g、醋香附10g、党参20g、麩炒白朮10g、茯苓10g、炙甘草6g、焦山梔子10g、知母10g、川芎10g)を14日間投与し、非投与群と比較して疲労、睡眠、抑うつが有意に改善した。疲労尺度に基づく有効率は89.7%、睡眠尺度では86.2%であった。また、480例を解析した二重盲検試験では、連花清咳片によって感染後の遷延性咳嗽の消失期間が有意に短縮した。総じて、単純な補気だけではなく、補虚と祛邪を併用し、特に脾虚湿滞と気機鬱滞を改善することが治療の中心となる。ただし、長期的な有効性を裏付ける質の高い臨床研究はまだ限られている。(2025年、申一鳴/2024年、徐小龍)

新型コロナウイルス感染後の長期症状に対する中医治療について、咳嗽、倦怠感、動悸、不眠、自汗、痺痛を中心に臨床経験をまとめた論文である。新型コロナウイルス感染は中医学の疫病に属し、疫毒が肺脾腎を中心とした臓腑機能を損傷し、気血陰陽の不足を引き起こすことで、感染後も多様な症状が遷延すると考えられる。咳嗽は肺気虚、肺失宣降を基本病機とし、咳嗽無力、喀痰困難、労作時息切れなどを呈する。治療には補肺湯(人参、黄耆、熟地黄、五味子、蜜炙紫菀、蜜炙桑白皮)を用い、補肺益気、降気平喘を図る。軽症で喀痰を伴う場合には陳皮、蜜炙桑白皮、乾性咳嗽には麦門冬、蜜炙桑白皮を茶飲として使用する。倦怠感は感染による正気損傷から肺気虚、脾気虚、腎気虚が生じたもので、全身倦怠、易疲労性、少気懶言、労作時息切れ、眩暈、腰膝酸軟、食欲不振などを呈する。治療には保元湯(人参、黄耆、炙甘草、肉桂)を用い、人参、黄耆、炙甘草によって肺脾の後天の気を補い、肉桂によって腎の先天の気を温補し、肺脾腎を同時に補益する。

動悸は感染による陰血損傷と陽気不足により、心脈失養、血脈運行障害が生じたもので、動悸、胸悶、息切れ、眩暈、胸痛などを呈する。治療には炙甘草湯(炙甘草、生姜、桂枝、人参、生地黄、阿膠、麦門冬、麻子仁、大棗)を用い、益気養陰、補血復脈、温通心陽によって心脈機能の回復を図る。不眠は心脾両虚、陰虚内熱、臓躁様症状の3証型に分類される。心脾両虚では脾虚による気血生化不足から心神失養が生じ、不眠、多夢、易醒、心悸、健忘、食欲不振などを呈し、帰脾湯(人参、白朮、炙甘草、当帰、黄耆、遠志、酸棗仁、茯神、竜眼肉、木香、生姜、大棗)を用いて補益心脾、養血安神を図る。陰虚内熱では肝血不足と虚熱内擾によって虚煩不眠、心悸、口咽乾燥、耳鳴などを呈し、酸棗仁湯(酸棗仁、川芎、知母、茯苓、甘草)を用いて養血安神、清熱除煩を図る。臓躁様症状では心陰不足と肝気失和によって精神恍惚、情緒不安定、悲哀感、易哭、不眠などが生じ、甘麦大棗湯(小麦、甘草、大棗)を用いて養心安神、和中緩急を図り、必要に応じて合歓皮を加味する。

自汗は感染後の衛陽損傷による営衛不和、腠理不固を基本病機とし、全身または頭頸部、胸背部の自汗、倦怠感、悪風、息切れ、心悸などを呈する。治療には玉屏風散(黄耆、白朮、防風)と桂枝湯(桂枝、白芍、甘草、大棗、生姜)を併用し、益気固表、調和営衛を図る。発汗が著しい場合には浮小麦、麻黄根、五味子、煅竜骨、煅牡蛎などを加味する。痺痛は感染後の気血損傷によって陽気の温煦作用と営血の滋養作用が低下し、寒凝経脈、気血阻滞が生じたもので、全身または頭頸部、肩、四肢、胸背部の疼痛、悪風、畏寒、寒冷による疼痛増悪などを呈する。治療には当帰四逆湯(当帰、桂枝、白芍、細辛、通草、甘草、大棗)を用い、温経散寒、養血通脈によって疼痛の改善を図る。

著者は、新型コロナウイルス感染後の長期症状について、肺脾腎を中心とした正気損傷と気血陰陽不足を共通病機とし、心神失養、営衛不和、血虚寒凝などの病態が症状に応じて現れると考察している。感染後の治療では、単なる祛邪ではなく、補気、養血、滋陰、温陽、調和営衛などによって損傷した臓腑機能を回復させることが重要である。本論文は古典方剤を用いた臨床経験の報告であり、各方剤の構成生薬は記載されているが、生薬ごとの投与量、治療期間、症例数、改善率などの定量的成績は記載されていない。また、対照群を設けた臨床試験ではないため、治療効果の確実性については今後の検証が必要である。(2026年、冷啓寧)

安徽中医薬大学第一附属医院の周大勇教授が治療したロングCOVID患者200例を対象に、データマイニングとネットワーク薬理学を用いて中医病機、証型分布、処方構成、核心生薬および推定作用機序を分析した研究である。2023年6月から2024年10月までの診療記録を後方視的に解析し、女性134例(67%)、男性66例(33%)、年齢は50~59歳が79例(39.5%)と最多であった。主な症状は倦怠感153例、不眠63例、腹部膨満54例、食欲不振50例、軟便47例、咳嗽45例、畏寒44例、自汗27例、咽喉の掻痒・疼痛26例、動悸22例であり、全身倦怠感と消化器症状が目立った。証型は脾気不足30%、脾虚湿蘊17%、脾肺気虚17%、脾腎陽虚12%、心脾両虚9.5%、脾胃虚弱5%、痰湿蘊肺5%、肝鬱脾虚4.5%であり、脾虚を中心とする病態が大部分を占めた。舌象は淡紅舌、歯痕舌が多く、舌苔は白苔46.5%、白膩苔35%、脈象は濡脈44.5%、沈脈24.5%が主体であり、脾気虚と湿邪停滞を反映していた。

処方には168種類の生薬が使用され、頻用上位は紅景天126回、甘草125回、薏苡仁115回、砂仁115回、茯神102回、陳皮102回、白扁豆102回、山薬99回、黄耆96回、桔梗85回であった。薬性は温性41.97%、平性30.27%、寒性18.84%が中心であり、帰経は脾経23.72%、肺経22.56%、胃経14.80%が多かった。薬効分類では補虚薬33.41%、利水滲湿薬9.87%、化痰止咳平喘薬8.21%が主体であり、扶正補虚と祛湿化痰を重視する処方傾向が認められた。関連規則分析では砂仁・陳皮、甘草・薏苡仁、砂仁・白扁豆、紅景天・白扁豆、紅景天・砂仁の組み合わせが多く、紅景天、甘草、茯神、砂仁、白扁豆、薏苡仁、黄耆、山薬、陳皮の9味が核心生薬として抽出された。

200処方のクラスター分析では4種類の核心処方が抽出された。最も多かったのは紅景天、白扁豆、砂仁、薏苡仁、甘草、陳皮の6味からなる組み合わせ(74例)であり、益気健脾、祛湿化痰を目的とする。次いで砂仁、紅景天、山薬、陳皮、茯神、桔梗(52例)は肺脾気虚、心脾両虚、痰湿阻肺に対応し、甘草、紅景天、茯神、黄耆、山薬、山茱萸(41例)は脾腎不足に対する補益と寧心安神を重視する。黄芩、薏苡仁、桔梗、牛蒡子、射干、甘草(33例)は清熱利咽、宣肺化痰を目的とする組み合わせである。これらはデータ解析によって抽出された生薬の組み合わせであり、各生薬の具体的な配合量は核心処方の一覧には記載されていない。

ネットワーク薬理学的解析では、核心生薬の主要成分としてケルセチン、キニシン、リノール酸などが抽出され、AKT1、TNF、IL6、TP53、IL1B、EGFR、SRC、BCL2、CASP3などが主要な標的候補として同定された。PI3K-Aktシグナル経路、脂質代謝・動脈硬化関連経路などの関与が推定されたが、これらは計算解析による予測であり、実際の薬理作用が臨床的に確認されたものではない。周大勇教授はロングCOVIDの基本病機を正気虧虚を本、余邪留恋を標とする本虚標実と捉え、気陰両虚、肺脾不足を中心に、湿、痰、瘀、鬱が複雑に関与すると考えている。治療では益気養陰、補益肺脾、扶正固本を基本とし、祛湿化痰、活血化瘀、疏肝解鬱、清解余邪を組み合わせる。本研究は処方傾向と病機の特徴を明らかにしたものであり、対照群との比較による治療有効性の検証は行われていない。(2026年、張梅)

新型コロナウイルス感染後に遷延する心血管症状と精神心理症状が併存する「双心疾病」について、中医学の「少陽為枢、少陰為枢」理論から病因病機と治療方針を考察したものである。双心疾病とは、心悸、胸悶、胸痛、不整脈、心不全などの心血管症状と、不安、抑うつ、不眠などの精神心理症状が相互に影響し合う病態を指す。新型コロナウイルス感染によって正気が損傷し、肺の宣発粛降、心の主血脈・主神明の機能が障害されると、気血陰陽の失調が生じ、身体症状と精神症状が悪循環を形成する。著者らは、少陽と少陰が全身の気機昇降出入と陰陽転化を調節する枢軸であり、この二つの枢機の障害が感染後双心疾病の重要な病機になると考えている。

少陽は三陽の枢として太陽の開と陽明の闔を調節し、胆と三焦を介して気機の疏通、陽気の升発、水液代謝、脾胃の昇降を統括する。少陽枢機が正常であれば、陽気が表裏に円滑に輸布され、外邪の侵入を防ぎ、脾胃で生成された水穀精微が全身に運ばれる。しかし、新型コロナウイルス感染によって少陽枢機が障害されると、疫毒が半表半裏に停滞して正虚邪恋となり、気機鬱滞、胆熱内鬱、三焦気化失調、水飲停滞、痰熱内生などが生じる。胆熱や痰熱が心神を擾乱すると不眠、不安、焦燥などが現れ、水飲が心肺を上犯すると心悸、胸悶などが生じる。また、少陽枢機の失調は脾升胃降を障害し、気血生化不足から心陽不足、心神失養を引き起こす。一方、少陰は三陰の枢として太陰と厥陰を連絡し、心腎の水火既済、陰陽平衡、気血生成、精神活動を調節する。少陰枢機が障害されると心腎不交、水火不済が生じ、腎陰不足による心火亢盛では心煩、不眠、精神不安が現れ、心陽不足による水飲上逆では心悸、胸悶などが生じる。さらに太陰の運化失調による水湿停滞、厥陰の蔵血失調による肝陽上亢、心包への邪気侵入なども心血管症状と精神症状の発症に関与する。感染急性期の高熱や過度の発汗は営衛と心の陰陽を損傷し、回復期にも営衛不和、陰陽失調、気血不足を残す。著者らは、少陽の気機運行障害が少陰の血脈循環を阻害し、逆に少陰の血脈障害が少陽の気機運行を妨げるため、両者が相互に影響して双心疾病を形成すると説明している。

臨床治療では「以枢調心」、すなわち少陽・少陰の枢機を調整することで心血管機能と精神活動の双方を改善することを基本方針とする。冠動脈ステント留置術後に不安・抑うつを合併した患者では、長期の血脈瘀阻に加えて感染後の炎症反応によって気滞血瘀が増悪し、肝失疏泄と少陽枢機不利が生じると考え、小柴胡湯(柴胡、黄芩、半夏、生姜、人参、甘草、大棗)を加減して使用する。柴胡と黄芩によって少陽を和解し、半夏と生姜によって降逆化痰し、人参、甘草、大棗によって扶正することで、気機を疏通し、営衛を調和させ、心血管症状と精神症状の改善を図る。心悸と不眠を合併する患者では、感染による心筋障害、全身性炎症、自律神経機能障害に加え、少陽枢機不利による痰熱擾心と少陰枢機不利による心腎不交を重視する。痰熱擾心には黄連温胆湯(黄連、半夏、竹茹、枳実、陳皮、茯苓、甘草、生姜)を用い、黄連と半夏の辛開苦降、枳実と竹茹の清熱化痰、陳皮の理気燥湿によって気機を調節し、痰熱を除去する。心陰血不足、心腎不交による心悸、不眠には天王補心丹(生地黄、天門冬、麦門冬、玄参、丹参、当帰、人参、茯苓、五味子、遠志、酸棗仁、柏子仁、桔梗、朱砂)を用いて滋陰養血、補心安神を図る。ただし、これらの構成は一般的な方剤組成を補記したものであり、原論文では全構成生薬および各生薬の用量は記載されていない。また、朱砂を含む伝統的組成は安全性上の問題があり、臨床使用には注意を要する。

心不全に抑うつを合併する患者では、少陰枢機不利による心陽不足、心腎水火失調に加え、少陽枢機不利による脾胃運化障害、気血生化不足、心神失養が関与すると考える。治療には四逆散(柴胡、白芍、枳実、甘草)を用い、柴胡によって少陽の気機を疏通し、白芍によって柔肝斂陰して少陰の陰血を調節し、枳実によって行気散結し、甘草によって脾胃を調和する。四逆散は単なる疏肝理気方ではなく、少陽の陽気運行と少陰の陰血調節を同時に行う方剤として位置づけられ、気血陰陽の協調によって心機能と精神症状の改善を図る。更年期女性の胸痹に不安・抑うつを合併する場合には、腎精の衰退と陰陽失調を背景に少陰の心血不足、少陽の気機鬱滞が生じ、胸悶、胸痛、焦燥、抑うつなどが出現すると考える。治療には血府逐瘀湯(桃仁、紅花、当帰、生地黄、川芎、赤芍、柴胡、枳殻、桔梗、牛膝、甘草)を用い、桃紅四物湯によって養血活血して少陰枢機を調整し、四逆散の理気作用によって少陽枢機を疏通する。桔梗は気機を上行させ、牛膝は血を下行させることで昇降を調節し、気血の循環と陰陽の調和を図る。

典型症例として、47歳女性が2022年12月の新型コロナウイルス感染後から反復する動悸、不眠を呈し、2023年7月2日に受診した。心電図では頻発する心室性期外収縮を認め、心エコーでは左室駆出率67%、左房拡大、左室拡張機能低下が認められた。高血圧の既往があり、動悸、息切れ、入眠困難、多夢、易醒、再入眠困難を訴え、舌は紫暗、薄白苔、少津、裂紋を認め、脈は弦細数であった。少陽少陰枢機不利による気血失調、心神失養と判断し、天王補心丹合血府逐瘀湯加減として、黄耆15g、当帰10g、麦門冬10g、醋五味子6g、甘松10g、紫草20g、黄連5g、乾姜2g、羌活10g、独活10g、片姜黄6g、路路通10g、桔梗10g、麩炒枳殻10g、熟地黄10g、生地黄10g、苦参15g、枸杞子10g、茯神15g、炒酸棗仁15g、生薏苡仁30g、陳皮6gを14剤投与した。再診時には動悸が軽減し、睡眠も明らかに改善して約30分で入眠できるようになったが、浅眠と倦怠感が残存したため、羌活10g、独活10gを除き、炙遠志15g、丹参20g、白芍15g、甘草6gを追加して14剤投与した。3診時には動悸がさらに軽減し、睡眠時間の延長、夜間覚醒の減少、睡眠の質の改善を認めたため、同方を7剤継続した。ただし、治療前後の心室性期外収縮数や心エコー所見の変化など、客観的な心機能改善の指標は報告されていない。

著者らは、ロングCOVID後の双心疾病を少陽の気機失調と少陰の陰陽失調が相互に影響する病態と捉え、少陽を調節して気機を疏通し、少陰を調節して心腎を交通させ、気血陰陽の動的平衡を回復させることが重要であると結論づけている。少陽枢機不利による気滞、痰熱、湿邪、瘀血と、少陰枢機不利による心腎不交、心陽不足、陰血不足を弁別し、小柴胡湯、黄連温胆湯、天王補心丹、四逆散、血府逐瘀湯などを選択することで、心血管症状と精神心理症状の双方に対応する。本論文は古典理論と臨床経験に基づく理論的考察および単一症例報告であり、比較試験による有効性の検証は行われていない。(2026年、李江紅)

ロングCOVIDにおける慢性炎症と免疫機能異常の病態を整理し、中医学治療による免疫リモデリングの可能性を検討した総説である。ロングCOVIDでは倦怠感、呼吸困難、咳嗽、認知機能障害、不眠、抑うつ、動悸、消化器症状などが遷延し、その背景にはウイルス成分の残存、慢性炎症、血管内皮障害、酸化ストレス、腸内細菌叢の変化などが関与すると考えられる。免疫学的にはIL-6、IL-8、IFN-γなどの炎症性サイトカイン増加、Th17/Tregの不均衡、CD4・CD8陽性T細胞の機能異常や免疫疲弊が報告されており、これらが肺線維化、神経炎症、自律神経障害、心血管障害、インスリン抵抗性などの多臓器症状に関与する可能性がある。

中医学治療では、呼吸器症状に対して清肺排毒湯(麻黄、炙甘草、杏仁、生石膏、桂枝、沢瀉、猪苓、白朮、茯苓、柴胡、黄芩、姜半夏、生姜、紫菀、款冬花、射干、細辛、山薬、枳実、陳皮、藿香)、宣肺敗毒方(麻黄、苦杏仁、生石膏、薏苡仁、蒼朮、藿香、虎杖、馬鞭草、葦茎、葶藶子、化橘紅、甘草、青蒿)、補中益気湯、参苓白朮散、補肺活血膠囊、補肺益腎方などが取り上げられ、TNF-α、IL-6、TGF-β1、NF-κBなどの炎症・線維化関連因子を調節し、肺組織障害や肺線維化を軽減する可能性が示されている。黄芩由来のバイカリンはIL-4、IL-6、IL-8、IL-17を抑制してTh17/Tregの均衡を調節し、黄耆由来のアストラガロシドIVは抗炎症、抗酸化、組織保護作用を示す。精神神経症状に対しては四逆散、開心散が取り上げられ、柴胡と白芍の組み合わせにはNLRP3インフラマソーム、IL-6、TNF-αの抑制による抗炎症・抗うつ作用が報告されている。また、人参サポニン、黄連由来のベルベリンなどにも神経炎症の軽減やミトコンドリア機能の調節作用が示唆されている。

心血管症状には栝楼薤白湯、党参二苓湯、連桂寧心湯などが取り上げられ、炎症性サイトカインの抑制や心筋細胞内Ca²⁺調節による心機能保護、不整脈改善の可能性が示されている。人参のジンセノシド類、丹参のタンシノンIIA、黄耆のアストラガロシドIVには抗炎症、抗酸化、心筋保護作用が報告されている。内分泌障害には金芪降糖片、知柏地黄顆粒、津力達顆粒などが取り上げられ、Th17やIL-17の抑制、インスリン抵抗性の改善が検討されている。消化器症状には連花清瘟顆粒、金花清感顆粒、血必浄注射液、宣肺敗毒方などが紹介され、腸管炎症、腸内細菌叢、Th1/Th2バランスの調節が作用機序として挙げられている。著者らは、中医学の多成分・多標的作用が慢性炎症と免疫異常を同時に調節する可能性を指摘している。ただし、引用研究には急性COVID-19、他疾患、動物実験、基礎研究が含まれ、ロングCOVID患者に対する臨床効果が確立されたわけではない。本総説には各方剤の完全な構成生薬と個別用量の記載はない。(2025年、趙倩茹)

ロングCOVID(新型コロナウイルス感染後症候群)の有病率、臨床症状、中医学治療の有効性と安全性を、疫学調査と複数のシステマティックレビューによって検討した博士論文である。45件のシステマティックレビューを分析した結果、一般集団におけるロングCOVIDの有病率は31.48~59%、小児・青少年23.36%、癌患者23.52%、HIV感染者43%であり、時間経過とともに低下する傾向が認められた。主な症状は労作不耐性、倦怠感、易刺激性、睡眠障害、呼吸困難、認知機能障害、筋肉痛などであり、呼吸器、神経精神、筋骨格系を中心とした多臓器障害が特徴であった。ただし、有病率は診断基準、調査時期、対象集団によって大きく異なり、研究間の異質性が高かった。

中国で実施されたオミクロン株感染者の多施設調査では、発熱、倦怠感、筋力低下、咳嗽、鼻汁、鼻閉、咽頭痛、頭痛が主症状であった。追跡調査では97.48%が中成薬を使用し、疏風解毒膠囊、連花清瘟膠囊が頻用され、95.24%が症状軽減を報告した。発熱、咽頭痛、鼻症状、咳嗽、倦怠感は服薬後1~3日で改善する例が多かった。ただし、これは主として急性感染期の観察結果であり、ロングCOVIDに対する薬剤の有効性を直接証明するものではない。

ロングCOVIDに対する中医学治療の直接的エビデンスとして98研究が解析され、内訳はランダム化比較試験25件、非ランダム化比較試験6件、単群研究11件、症例報告56件であった。補肺活血膠囊(黄耆、白芍、補骨脂)は息切れと倦怠感の評価スコアを改善し、金水宝膠囊(冬虫夏草)は息切れと乾性咳嗽の軽減率を改善した。香砂六君丸は倦怠感の評価スコアでは有意差を認めなかったが、腹部膨満、食欲不振、軟便などの消化器症状に改善が認められた。その他、参苓白朮散、玉屏風散、生脈飲、沙参麦門冬湯、香砂六君子湯合三仁湯などが使用されていた。各研究で用いられた方剤の構成生薬や用量は一部記載されているが、すべての処方について完全な情報が示されているわけではない。研究間の対象患者、処方、評価指標が異なるため、全体を統合した定量的評価には限界があった。

ウイルス感染後の嗅覚障害については9研究を解析し、鍼灸および穴位注射による改善の可能性が示されたが、研究の質は全体として低かった。呼吸器ウイルス感染に伴う呼吸困難については32件のランダム化比較試験、計3,844例を解析し、回復期における中薬と通常治療の併用は、通常治療単独より呼吸困難の消失率、軽減率、症状スコアを改善した。鍼灸、抜罐、気功、推拿にも一定の改善効果が報告された一方、艾灸では有意差が認められなかった。安全性については重篤な有害事象の報告は少なかったものの、有害事象の記載が不十分な研究も多かった。著者は、中医学治療がロングCOVIDの倦怠感、呼吸困難、咳嗽、睡眠障害、消化器症状などに対する補完的治療となる可能性を示す一方、現段階では研究の質や異質性に限界があり、長期的な有効性と安全性を検証するための高品質な多施設ランダム化比較試験が必要であると結論づけている。(2025年、劉雪寒)

ロングCOVIDに伴う疲労症候群について、「湿邪致虚、虚気流滞」を基本病機とし、疏泄扶正法による治療効果を検討した臨床研究である。著者は、新型コロナウイルス感染後に湿邪が残存すると脾胃の運化機能が障害され、気血生化不足から正気が虚損し、さらに虚した気の運行が停滞することで、倦怠感、労作後の疲労増悪、運動耐容能低下、睡眠障害、抑うつなどが遷延すると考えている。感染後患者273例を2年間追跡した結果、ロングCOVIDは42例(15.4%)に認められ、そのうち労作後の疲労不快感は95.2%、運動耐容能低下は69.0%と高頻度であった。年齢、慢性閉塞性肺疾患、冠動脈疾患が疲労症候群に関連する因子として抽出された。

治療には疏泄扶正法を用い、基本処方は醋柴胡6g、醋香附10g、党参20g、麩炒白朮10g、茯苓10g、炙甘草6g、焦山梔子10g、知母10g、川芎10gとし、1日1剤を煎じて2回に分服し、症状に応じて加減した。柴胡、香附によって疏肝理気して気機の鬱滞を改善し、党参、白朮、茯苓、炙甘草によって健脾益気して正気を補い、山梔子、知母によって清熱し、川芎によって活血行気を図る。すなわち、単純な補気療法ではなく、湿邪によって生じた虚損と気機停滞を同時に治療することを重視している。臨床研究では、ロングCOVIDによる疲労症候群患者を漢方治療群29例と非投与群30例に分け、14日間比較した。別に感染後ロングCOVIDを発症しなかった30例を対照群とした。治療後、漢方治療群は非投与群と比較して疲労尺度、中医証候スコア、抑うつ尺度、睡眠尺度、生活の質の評価で有意な改善を認めたが、不安尺度では群間の有意差は認められなかった。漢方治療群の有効率は疲労尺度89.7%、睡眠尺度86.2%であり、中医証候、抑うつ、不安の各尺度に基づく有効率は100%と報告された。ただし、非投与群でも自然改善がみられ、研究期間が14日間と短く、症例数も少ないため、長期的な有効性や再発予防効果は不明である。著者は、ロングCOVIDの疲労症候群では湿邪による正気損傷と虚気の運行停滞が重要であり、補気健脾だけでなく疏肝理気、清熱、活血を組み合わせる疏泄扶正法が有用であると結論づけている。(2025年、申一鳴)

ロングCOVIDの中医学的証型と病機を、文献調査および実臨床データから解析し、症状に基づく診断モデルを構築した研究である。5件の中医診療指針と4,033例を含む5研究を解析した結果、主要証型は気陰両虚、肺脾気虚であり、主な症状は倦怠感、息切れ、胸悶、不眠、咳嗽、身体疼痛、動悸、健忘などであった。舌診では胖大舌、淡白舌、紅舌、白苔、膩苔、脈診では細脈、弱脈、沈脈が多く認められた。証型・症候・証素のネットワーク解析では、気虚、陰虚、陽虚が中心的病機であり、脾虚湿阻、脾胃虚弱、肺脾気虚、心気不足と、倦怠感、白苔、軟便、心神・脳の機能障害との関連が示された。

さらに、オンライン横断面調査で得られた有効回答500例を解析した結果、ロングCOVIDの該当割合は24.2%であり、倦怠感、不安、記憶力低下、脱毛、睡眠障害が高頻度に認められた。従来の呼吸器症状に加え、精神神経症状や認知機能障害が重要な臨床的特徴となっていることが示された。著者は、感染初期には気虚・陰虚を中心とする虚証が主体であるが、病態の遷延に伴って精気血の不足、心神失養、陰虚内熱、痰湿内生、痰湿蒙竅へと進展し、虚実夾雑の病態を形成すると考察している。すなわち、肺脾の機能障害から始まり、心神・脳に病変が波及することが、記憶力低下、不安、不眠などの発症に関与するとする中医学的病機が提唱された。

診断モデルについては、疲労尺度FS-14、記憶力低下、脱毛、口渇を主要因子とするロジスティック回帰モデルを構築し、学習データと検証データで良好な識別性能を示した。ただし、オンライン調査による選択バイアス、症例数の制約、過学習の可能性があり、外部集団での検証が必要である。本研究は治療効果を検証した臨床試験ではなく、具体的な治療方剤の構成生薬や投与量は主要な研究結果として提示されていない。ロングCOVIDの病機を気陰両虚から痰湿・瘀血を伴う虚実夾雑、さらに心神・脳の障害へと捉える点が臨床的に重要である。(2025年、馬寧傑)

ロングCOVIDに伴う遷延性咳嗽に対する連花清咳片の有効性と安全性を検討した、多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験である。中国の19病院と23地域医療センターにおいて、新型コロナウイルス感染後に咳嗽が持続する患者482例を連花清咳片群とプラセボ群に1対1で無作為に割り付け、480例を主要解析対象とした。連花清咳片は1回4錠(1.84g)、1日3回、14日間経口投与した。主要評価項目は咳嗽消失までの期間であり、咳嗽軽減までの期間、咳嗽症状スコア、視覚的アナログ尺度(VAS)、咳嗽評価テスト(CET)も評価した。

その結果、連花清咳片群ではプラセボ群と比較して咳嗽消失までの期間が有意に短縮し、14日以内の咳嗽消失率も有意に上昇した。咳嗽軽減までの期間も有意に短縮し、治療7日目および14日目の咳嗽症状総スコア、VAS、CETも有意に改善した。試験期間中に重篤な有害事象は報告されなかった。連花清咳片は感染後の遷延性咳嗽に対して一定の有効性を示したが、今回提供された抄録には咳嗽消失率の具体的数値、効果量、非重篤な副作用の頻度、長期追跡結果は記載されていない。また、連花清咳片の構成生薬と各生薬の配合量も記載されていない。本研究はプラセボ対照二重盲検試験であり、従来の症例報告や経験的治療報告よりも高い水準の臨床的根拠を提供しているが、評価期間は14日間に限られる。(2024年、徐小龍)

カンボジア在住の中国人ロングCOVID患者60例を対象に、中医診断、証型および体質の分布を解析した横断研究である。対象は2022年5月から2023年7月までに受診した男性33例、女性27例で、平均年齢46.0歳、感染後の罹病期間は3~24か月であった。中医診断は重複を含む66例次で、久咳33例(50.0%)、虚労24例(36.4%)が大部分を占め、不眠、眩暈、心悸、喉痹、鼻閉などが少数認められた。久咳患者の証型は肺脾気虚27.3%、肺気不足・風邪内伏27.3%、肺胃気逆24.2%、痰湿壅滞21.2%であり、虚労患者では肺脾気虚70.8%、痰湿壅滞25.0%が主体であった。体質は久咳患者で気虚質、痰湿質、陰虚質が多く、虚労患者では気虚質、陽虚質が多かった。

著者らは、ロングCOVIDの基本病機を疫毒による肺脾の気陰損傷と正気不足に求め、感染後に残存する湿毒、痰飲、風邪が症状を遷延させると考察している。久咳は肺脾気虚による虚咳と、肺気不足・風邪内伏による風咳に大別され、虚咳では反復する咳嗽、白色希薄痰、悪風、自汗、食欲不振、腹部膨満、淡舌、白苔、沈細脈などを呈する。治療には玉屏風散(黄耆、白朮、防風)、六君子湯(人参、白朮、茯苓、甘草、陳皮、半夏)、麦門冬湯(麦門冬、半夏、人参、甘草、粳米、大棗)、金水六君煎(当帰、熟地黄、陳皮、半夏、茯苓、炙甘草、生姜)などを加減し、健脾益肺、補益肺腎を図る。風咳では刺激性乾性咳嗽、咽頭掻痒、冷気や異臭による咳嗽誘発を特徴とし、麻黄、杏仁による宣肺止咳、紫菀、款冬花による降気止咳、蝉退、木蝴蝶、牛蒡子による疏風利咽を行い、補肺湯(人参、黄耆、熟地黄、五味子、紫菀、桑白皮)や生脈飲(人参、麦門冬、五味子)を加減して補肺益腎、培元納気を図る。

虚労では倦怠感、胸悶、息切れ、身体の重だるさ、食欲不振、腹部膨満、軟便、淡舌、歯痕、白苔、細脈などが認められ、肺脾気虚と痰湿壅滞を中心に弁証する。治療では桑白皮、白前、桔梗によって清肺降気し、黄耆、党参、炒白朮、山薬によって補気健脾し、必要に応じて養心安神、祛湿化瘀、補腎培本を組み合わせる。カンボジアの高温多湿な気候と冷飲食の習慣は脾胃虚弱や痰湿形成に関与すると考えられ、気虚質、痰湿質、陽虚質がロングCOVIDの遷延に関係する可能性が指摘された。ただし、体質と発症リスクの因果関係は本研究からは確定できない。また、具体的な方剤構成は一般的な組成を補記したもので、原論文には全構成生薬および各生薬の投与量は記載されていない。本研究は60例の横断的観察研究であり、治療効果を検証したものではない。(2024年、蘇文文)

ロングCOVIDを中医学の「湿毒疫虚期」あるいは「虚労」に位置づけ、その病機と弁証論治を検討した臨床経験報告である。著者らは、湿毒疫邪が口鼻から侵入して最初に肺を侵し、病程の遷延に伴って脾胃、心、肝、腎、さらに脳髄へ波及すると考えている。基本病機は余毒未清、正虚邪恋、陰陽失調、絡阻竅閉であり、正気の虚損を基盤として痰湿、気滞、血瘀が複雑に絡み合う虚実夾雑の病態と捉えている。治療原則は平調陰陽、理気活血、疏調臓腑、扶正祛邪であり、気虚痰阻、肝鬱脾虚、気虚湿滞、気滞血瘀、肺腎両虚の5証型に分類している。

気虚痰阻型は肺気不足による宣降失調と痰濁阻絡を病機とし、咳嗽、粘稠痰、胸悶、胸痛、息切れ、倦怠感、嗅覚障害、肺結節、すりガラス陰影などを呈する。益気宣肺、化痰散結を治法とし、自擬三参保肺湯加減(党参、北沙参、丹参、炙麻黄、炒杏仁、清半夏、橘紅、浙貝母、白芥子、五味子、夏枯草など)を用いる。清稀痰には小青竜湯を併用し、肺線維化には芪麦肺絡平方加減(黄耆、党参、炒白朮、南沙参、北沙参、麦門冬、陳皮、茯苓、法半夏、知母、丹参、浙貝母、赤芍、桔梗、山薬など)を使用する。肝鬱脾虚型は胸悶、ため息、食欲不振、腹部膨満、軟便、抑うつ、不安、不眠、眩暈、四肢冷感を特徴とし、疏肝健脾を目的に逍遥散加味(柴胡、当帰、白芍、茯苓、白朮、香附、薄荷、炒枳殻、合歓花、川芎、炙甘草など)を用いる。

気虚湿滞型は肺脾気虚と水湿停滞を病機とし、倦怠感、息切れ、食欲不振、悪心、腹部膨満、軟便、筋肉痛、淡胖舌、白膩苔を呈する。培土生金を治法とし、参苓白朮散加減(党参、白朮、炒薏苡仁、砂仁、山薬、茯苓、炒白扁豆、忍冬藤、炙甘草など)を使用する。気滞血瘀型は胸痛、労作時呼吸困難、動悸、眩暈、耳鳴、暗舌、結代脈などを特徴とし、生脈飲合丹参飲加減(党参、麦門冬、五味子、丹参、檀香、砂仁、薤白、栝楼、甘松、苦参、紅花など)によって補気活血、通竅宣痹を図る。肺腎両虚型では手足心熱、少痰性咳嗽、自汗、盗汗、息切れ、耳鳴、健忘、腰痛、頻尿などを認め、生脈飲合六味地黄丸加減(党参、麦門冬、五味子、山薬、熟地黄、山茱萸、茯苓、淫羊藿、川貝母など)によって益気養陰、填精補腎を図る。これらの証型別基本処方について、原論文には各生薬の用量が記載されていない。

症例報告では、重症COVID-19後に肺線維化、咳嗽、息切れ、動悸が残存した56歳男性に、党参15g、沙参15g、五味子12g、百合15g、知母10g、山茱萸20g、醋鼈甲10g、丹参20g、川芎15g、川貝母10g、陳皮15g、煅竜骨20g、鶏内金12g、栝楼12gを1日1剤、21日間投与した。その後も治療を継続し、ステロイド減量、八段錦、経穴刺激を併用した結果、約5か月後には自覚症状が消失し、肺機能と胸部CT所見も改善した。また、感染後半年間にわたり腹泻、腹部膨満、倦怠感、体重減少が持続した49歳女性には、参苓白朮散加減として党参12g、太子参15g、炒白朮20g、茯苓20g、薏苡仁10g、山薬20g、砂仁10g、炒白扁豆15g、陳皮10g、浮小麦20g、桔梗10g、穿山竜20g、金銀花10gを投与し、症状に応じて加減した結果、腹泻、腹部膨満、動悸、倦怠感が段階的に改善した。

さらに、感染後5か月間に胸痛、胸悶、動悸が持続した66歳女性には、気滞血瘀痰阻証と弁証し、栝楼薤白半夏湯合玉屏風散加減(栝楼15g、薤白10g、法半夏10g、生黄耆12g、白朮10g、防風10g、太子参15g、丹参15g、山慈菇10g、金銀花10g、白芥子10g)を投与した。経過に応じて炙遠志12g、浮小麦20g、葛根15gなどを加え、生黄耆を20gに増量した結果、胸痛と動悸が消失した。著者らは、ロングCOVIDは多臓器に及ぶ複雑な病態であり、単一方剤による画一的治療ではなく、正虚を補いながら残存する湿毒、痰湿、血瘀を除く個別化治療が重要と結論づけている。ただし、本論文は病機の考察と3症例の報告であり、治療効果を対照群と比較した研究ではない。(2024年、趙蘭才)

ロングCOVIDに伴う倦怠感、息切れ、胸悶、動悸、胸痛、咳嗽、頭重感などの遷延症状を、中医学の「宗気」理論から考察した臨床経験報告である。宗気は肺から吸入した清気と脾胃で生成された水穀の精気が結合して胸中に集まり、心脈を貫き、呼吸を司り、全身の気血運行や四肢の活動、精神・感覚機能を支える。著者らは、新型コロナウイルス感染によって湿熱毒邪が上焦の心肺を侵し、肺気の宣降失調と脾胃機能の低下によって宗気の生成が不足するとともに、残存する痰濁や瘀血が宗気の運行を阻害すると考えている。したがって、ロングCOVIDの基本病機を宗気虧虚と宗気運行不暢と捉え、特に息切れ、全身倦怠感、胸悶、動悸と沈脈・細脈・虚脈・微脈などの虚弱な脈象を重視している。

治療は宗気の補益、升提、運行改善の3方向から行う。第一に、宗気の不足と下陥に対して升陽挙陥法を用い、補中益気湯または升陥湯を基本とする。中心生薬は生黄耆、柴胡、升麻であり、黄耆によって補気升陽し、柴胡と升麻によって清陽を上昇させる。必要に応じて桔梗を加えて宣肺・載薬上行を図り、知母によって黄耆の温性を調整し、党参、当帰によって気血を補う。補中益気湯は脾胃内傷による気虚を重視し、升陥湯は胸中大気の下陥に対する升提作用を重視する点で使い分ける。第二に、宗気の生成源である肺脾を補うため、健脾補肺法を用いる。人参、山薬、白朮、鶏内金、麦芽を中心に健脾益気、和胃消食を図り、食積や腹部膨満が強い場合には焦三仙、萊菔子、枳実、厚朴などを加える。特に脾胃の運化機能を回復させ、水穀精気の生成を促すことが宗気回復の基礎となる。一方、外邪が残存する感染初期には、白朮などの固表作用によって邪気を留める可能性に注意すべきとしている。

第三に、痰濁と瘀血による宗気の運行障害に対して化痰祛瘀法を用い、栝楼薤白半夏湯(栝楼、薤白、半夏)を基本として紅景天、地竜などを配合する。著者らは、感染後の肺間質障害、微小血栓、凝固異常などを中医学的な痰瘀互結・肺絡阻滞に対応する病態と考え、栝楼によって化痰散結・理気寛胸し、薤白によって通陽散結・行気導滞し、半夏によって燥湿化痰・降逆消痞を図る。さらに紅景天によって益肺健脾、活血化瘀し、地竜によって通絡平喘を図る。紅景天の抗疲労作用や抗酸化作用、地竜の気管支拡張作用や抗凝固作用などの基礎研究にも言及しているが、これらがロングCOVID患者における臨床効果を直接証明するものではない。

本論文の特徴は、ロングCOVIDの疲労や息切れを単純な肺気虚や脾気虚として捉えるのではなく、宗気の生成不足、宗気の下陥、痰瘀による運行障害という3つの病態を統合し、補気、升提、化痰活血を組み合わせる点にある。ただし、具体的な症例数、治療前後の評価指標、各生薬の投与量は記載されておらず、臨床試験による有効性の検証ではなく理論的考察と治療経験の報告である。(2024年、孫雪松)

鄒旭教授によるロングCOVIDの中医学的治療経験をまとめたものである。基本病機を正気不足、余毒未清、耗気傷陰とし、湿毒が体内に残存して気陰を損傷し、肺脾腎の機能障害を引き起こす虚実夾雑の病態と捉えている。治療原則は扶正祛邪であり、祛邪には祛湿化滞、扶正には益気養陰を用い、さらに補腎益精、固本培元を重視する。特に特徴的なのは「開五門」という治法であり、発汗、胃腸の気機調節、利尿、通便などを通じて湿邪の排出を促す。蒼朮、茯苓によって鬼門を開き、厚朴、半夏によって賁門を開き、枳実、檳榔子によって幽門を開き、滑石、通草によって水門を開き、大黄によって魄門を開くことで、湿毒を除去するという考え方である。

倦怠感や眩暈は脾胃気虚による気血生化不足と腎気虚、湿邪による清陽不升を病機とし、健脾祛湿に加えて熟附子3g、乾姜5g、炙甘草10gを用いて温腎助陽、培補元気を図る。咳嗽には三拗湯を基本とし、皀角刺、路路通、石菖蒲、藿香、茯苓、半夏、桔梗、蜜紫菀などを加え、熱が強い場合には生石膏30g、肺陰虚には北沙参、麦門冬を加える。遷延する咳嗽には烏梅、当帰も使用する。関節痛や筋肉痛は気血不足による不栄則痛と湿毒阻絡による不通則痛に分け、当帰、赤芍、五指毛桃、鶏血藤、忍冬藤、威霊仙などによって益気養血、祛湿通絡を図る。心悸、不眠、多汗は心陰不足と痰湿化熱による心神不安を中心に捉え、生地黄20~30g、麦門冬20~30g、炙甘草10gによって滋陰養血し、生竜骨30g、生牡蛎30gによって重鎮安神、斂汗を図る。胸悶には痰湿による胸陽痹阻を重視し、小陥胸湯合栝楼薤白半夏湯加減として栝楼皮30g、薤白30g、黄連5g、法半夏15gを使用する。

さらに著者らは、ロングCOVIDの疲労では単純な健脾補気のみでは十分な効果が得られない場合があり、腎陽を補うことで改善する症例があると述べている。腎陽不足は元気の低下だけでなく、水液の蒸騰気化を障害して痰湿の停滞を助長するため、山茱萸、熟附子、乾姜などによって補腎益精、温陽化湿を図り、太渓穴への鍼刺激を併用する。

症例として、新型コロナウイルス感染後2か月以上にわたり肩関節冷痛、全身倦怠感、眩暈、心悸、多汗、胃部冷感、不眠などが持続した51歳女性を報告している。痰湿内停化熱、気陰両傷証と弁証し、茯苓20g、麩炒枳実10g、厚朴10g、檳榔子10g、路路通10g、酒川牛膝10g、炙甘草10g、当帰10g、桂枝10g、赤芍10g、黄柏10g、代赭石10g、柴胡10g、黄芩10g、蒼朮15g、法半夏15g、乾姜5g、大黄5g、黄連5g、熟附子3g、生地黄30g、五指毛桃30g、忍冬藤30g、鶏血藤30g、仙鶴草30gを1日1剤、7日間投与し、太渓・中渚への鍼治療を併用した。1週間後には倦怠感、肩関節痛、心悸、多汗が改善したため、大黄、黄連、黄柏、生地黄、仙鶴草を除き、乾姜10g、熟附子5g、炙甘草15g、赤芍30gに増量し、川芎10g、威霊仙10gを追加した。これは初期には湿熱と気陰両傷を重視し、湿熱の改善後には残存する脾腎陽虚を主病機として温陽補虚へ治療を転換した症例である。著者らは、ロングCOVIDでは湿毒を除去するだけでなく、気陰を補い、腎陽を温めて元気と水液代謝を回復させることが重要と結論づけている。ただし、本論文は治療経験と単一症例の報告であり、治療効果を対照群と比較したものではない。(2024年、劉鵬)

中国・嶺南地域におけるロングCOVIDの中医学的処方の使用傾向を解析し、主要処方の作用機序をネットワーク薬理学によって検討した研究である。2023年4月から9月までのロングCOVID専門外来における初診処方350件、計194種類の生薬を解析した結果、主要証型は気陰両虚、肺脾両虚、心脾両虚であった。使用頻度の高い生薬は炙甘草、陳皮、黄耆、麦門冬、茯苓、党参、白扁豆、五味子、麦芽、巴戟天の順であり、薬性は温性、薬味は甘味が主体で、帰経は肺・脾・心経に集中していた。これらの結果から、ロングCOVIDでは感染後の気陰損傷を基盤として肺脾の機能低下が持続するため、益気養陰、健脾補肺を基本治法とする処方が多用されていることが示された。

処方の関連規則解析と複雑系エントロピークラスタリングによって6種類の生薬組合せが抽出された。第一群は炙甘草、陳皮、黄耆、麦門冬、茯苓、党参、白扁豆、五味子、麦芽、巴戟天であり、益気養陰、健脾補肺を中心とする基本処方である。第二群は白朮、法半夏、五指毛桃、紫菀、前胡、桔梗、苦杏仁、太子参、紫蘇子、麻黄であり、補肺益気に宣肺止咳、化痰降気を組み合わせた構成である。第三群は茯神、浮小麦、酸棗仁、白芍、女貞子、山薬であり、養陰安神、健脾補虚を中心とする構成である。第四群は柴胡、当帰、第五群は桂枝、第六群は防風であり、それぞれ疏肝養血、温通陽気、祛風解表などの治法に関連すると考えられる。これらは統計的に抽出された組合せであり、すべてが独立した完成処方として臨床使用されたことを意味するものではない。各生薬の具体的な投与量は、提示された主要研究結果には記載されていない。

さらに、第一群の10種類の生薬を専門医が中核処方として選定し、ネットワーク薬理学的解析を行った結果、192種類の活性成分、288個の薬物関連標的、503個の疾患関連標的が抽出され、両者に共通する51個の標的が同定された。主要標的はIL-6、TNF、MMP-9、PTGS2、IL-1β、STAT3などであり、関連経路としてAGE-RAGE、IL-17、ヒトサイトメガロウイルス感染関連経路などが抽出された。主要活性成分にはケルセチン、ケンフェロール、7-メトキシ-2-メチルイソフラボンが含まれ、分子ドッキング解析ではIL-6、TNF、MMP-9との結合可能性が示された。著者は、これらの生薬が炎症性サイトカインの調節、酸化ストレス軽減、免疫調節、抗線維化などの複数経路を介して作用する可能性を考察している。

本研究の特徴は、実臨床の350処方から炙甘草、陳皮、黄耆、麦門冬、茯苓、党参、白扁豆、五味子、麦芽、巴戟天という中核処方を抽出し、ロングCOVIDの主要病機を気陰両虚、肺脾両虚と位置づけた点にある。特に巴戟天を含むことは、益気養陰だけでなく補腎助陽も考慮した処方構成として注目される。ただし、本研究は処方データの後方視的解析とコンピューター上の薬理学的予測であり、症状改善率や治療前後の臨床効果を検証したものではない。推定された分子作用についても、細胞実験、動物実験および臨床試験による検証が必要である。(2024年、王蘭)

王慶国教授によるロングCOVIDの中医学的治療経験を、「転枢機、和営衛」という治法から考察した報告である。著者らは、ロングCOVIDの基本病機を少陽三焦の枢機不利、気機失調、営衛気血の不和と捉えている。新型コロナウイルス感染による湿毒が少陽に残存すると、表裏の開闔、気の昇降出入、三焦の気化機能が障害され、清陽不升、痰湿停滞、血瘀、心神不安などが生じる。また、感染による気血の消耗によって「血弱気尽」となり、営衛の運行障害がさらに悪化する。これにより倦怠感、息切れ、胸悶、動悸、筋肉痛、頭痛、頭重感、ブレインフォグ、不眠、不安などの多彩な症状が遷延すると考えている。治療では単純な補気や祛湿だけでなく、少陽の枢機を回復させ、脾胃の昇降を調整し、営衛と気血の運行を正常化することを重視している。

基本処方には柴胡桂枝湯を用いる。柴胡桂枝湯は小柴胡湯と桂枝湯を組み合わせた方剤であり、柴胡、黄芩、半夏、人参、炙甘草、生姜、大棗、桂枝、白芍によって構成される。小柴胡湯によって少陽の枢機を調整し、三焦の気機を通暢させ、桂枝湯によって営衛を調和し、脾胃の運化を回復させる。柴胡と黄芩は和解少陽、半夏は和胃降逆、人参と炙甘草は扶正益気、桂枝と白芍は調和営衛を担う。著者らは、柴胡桂枝湯には解表、清熱、調和、補虚、温通、疏肝という複数の作用があり、ロングCOVIDの虚実夾雑、多臓器症状に適していると考えている。なお、基本方の各生薬の用量は本文に一律には示されていない。

倦怠感と息切れが強く、口渇、紅舌、少苔などの気陰両虚を呈する場合には、柴胡桂枝湯に黄耆生脈飲を合方し、黄耆30g、人参20g、麦門冬20g、五味子10gを加える。倦怠感に冷えや陽虚を伴う場合には三仙湯を合方し、仙鶴草30g、仙茅5~10g、淫羊藿10gを加えて補腎温陽を図る。倦怠感が著明な場合には仙鶴草を50gまで増量し、血虚には当帰10g、強い息切れと疲労には升麻3~6g、刺五加10~30gを加える。ブレインフォグは清陽不升、脳竅失養、腎精不足、心腎不交を病機とし、孔聖枕中丹を合方して遠志15g、醋亀甲10g、生竜骨15g、蔓荊子20gを使用し、補腎寧心、清利頭目を図る。不眠には甘麦大棗湯を合方し、炙甘草30g、浮小麦20g、大棗20gによって養心安神し、驚恐を伴う場合には竜骨15g、牡蛎15gを加える。また、陰陽不交による不眠には双夏湯として半夏15~20g、夏枯草15~20gを配合し、陰陽の交通を促して安神を図る。

症例として、COVID-19肺炎後に頭重感、ブレインフォグ、記憶力低下、眼乾燥、視力のかすみ、不眠、下肢脱力が残存した32歳女性を報告している。清陽不升、清竅閉塞と弁証し、柴胡桂枝湯合孔聖枕中丹加減として、柴胡10g、酒黄芩12g、法半夏15g、桂枝10g、白芍15g、生姜10g、人参10g、炙甘草20g、制遠志10g、茯苓30g、醋亀甲10g、炒蔓荊子30g、川芎15g、生黄耆40g、麩炒白朮10g、当帰15g、生地黄20g、炒山梔子10g、黄柏10gを14剤処方し、1日2回に分服させた。患者は3剤服用後にブレインフォグが消失したと報告し、再診時には川芎、山梔子、蔓荊子、黄柏、遠志、茯苓、亀甲を除き、刺五加30g、紅景天10g、芦根30gを追加して気陰の回復を図った。

本論文の特徴は、ロングCOVIDを単なる気虚、陰虚、湿邪残存として捉えるのではなく、少陽の枢機障害と営衛不和を中心病機として統合し、柴胡桂枝湯を基本に症状別の合方を行う点にある。特に疲労には黄耆生脈飲または三仙湯、ブレインフォグには孔聖枕中丹、不眠には甘麦大棗湯または双夏湯を使い分ける。ただし、本論文は臨床経験と単一症例の報告であり、治療効果を対照群と比較した研究ではない。(2024年、武怡平)

新型コロナウイルスのオミクロン株感染後、PCR検査の陽性が長期間持続する「長陽」患者に対して、扶正托透・化濁解毒法の理論と臨床応用を検討した報告である。著者らは、感染初期には湿濁夾風・営衛不固、中期には正虚邪恋・湿熱内蘊、長期陽性期には正虚邪滞・湿毒内蘊へと病機が変化すると考えている。正気不足によって邪気を体外へ排出できず、湿毒が営血に深く停滞することがPCR陽性の遷延につながるとする中医学的解釈である。治療では、単純な清熱解毒や発汗解表ではなく、補気養血によって正気を扶助し、営血に停滞した邪気を外へ透出させる扶正托透法と、湿濁・熱毒を除去する化濁解毒法を組み合わせる。特に、長期陽性患者では邪気が衛気から営血へ深く侵入していると考え、麻黄湯などによる発汗よりも、当帰四逆湯に類似した温経通脈・養血透邪の治法を重視している。

症例は18歳女性で、2022年4月4日にPCR陽性となり、発熱39℃、咳嗽、喀痰を認めたが、約5日で自覚症状は消失した。しかしPCR陽性が持続し、4月28日に隔離施設へ転院した。初期には湿濁夾風・営衛不固と弁証し、金銀花9g、荊芥9g、黄耆12g、防風9g、広藿香9g、板藍根9g、桔梗6g、芦根15g、炒白朮9g、生甘草6gを1日1剤、8日間投与した。その後、5月6日には軽い咳嗽、白色痰、不安、不眠、食欲低下が出現し、正虚邪恋・湿熱内蘊と弁証して、金銀花30g、連翹30g、芦根30g、蒼朮6g、虎杖15g、熟大黄5g、北沙参18g、薄荷6g、藿香9g、蝉退10g、僵蚕10g、細辛6g、黄耆30g、生晒参10gを1日1剤、6日間投与した。

5月12日になってもPCR陽性が持続し、焦燥感、不安、食欲不振、不眠、便秘、淡紅舌、舌辺尖紅、薄黄膩苔、細弦脈を認めたため、正虚邪滞・湿毒内蘊と弁証し、扶正托透解毒方に変更した。処方は生黄耆40g、西洋参10g、当帰15g、桂枝15g、赤芍15g、大棗20g、通草10g、細辛3g、藿香30g、佩蘭30g、薏苡仁30g、黄芩15g、馬鞭草20g、鬼箭羽15g、金蕎麦15g、生甘草9gであり、1日1剤を2回に分服し、3日間投与した。黄耆、西洋参、当帰、桂枝、赤芍、大棗、通草、細辛、甘草によって益気養血、温経通脈、扶正托透を図り、藿香、佩蘭、薏苡仁、黄芩、馬鞭草、鬼箭羽、金蕎麦によって化湿解毒、清熱祛邪を図る構成である。5月14日と15日のPCR検査は連続して陰性判定となり、Ct値は35以上となった。不安、焦燥感、食欲不振、不眠、便秘も改善し、5月16日に退所した。論文最終ページには5月6日と12日の舌写真、およびPCRのCt値の推移が示されている。

本論文の特徴は、感染後の長期PCR陽性を正虚邪滞・湿毒内蘊として捉え、補気養血・温経通脈による托邪外出と、芳香化湿・清熱解毒を組み合わせた点にある。ただし、本研究の「長陽」はウイルス検査の長期陽性を意味し、感染後に症状が遷延する一般的なロングCOVIDとは異なる。また、単一症例であり、治療開始後のPCR陰性化が自然経過によるものか処方の効果によるものかは判定できず、感染性ウイルスの持続も証明されていない。したがって、扶正托透・化濁解毒法の臨床的有効性を確立した研究ではなく、病機の理論的考察と症例報告として位置づけられる。(2023年、陳勇)

駱傑偉教授によるロングCOVIDの中医学的弁証治療経験をまとめた報告である。著者らは、ロングCOVIDを単一臓器の障害ではなく、感染による正気の損傷と余邪の残存によって、気血陰陽の不足、湿濁、血瘀、気滞、熱毒が複雑に関与する多臓器疾患と捉えている。基本治法は扶正祛邪、調和陰陽、益気養血、活血化瘀、清熱解毒であり、倦怠感、不眠、血栓、脱毛、性機能障害、甲状腺機能亢進、腎機能障害、肝機能障害、心筋障害、耳鳴、消化器症状、嗅覚障害、息切れ、筋肉痛、皮膚症状など、15種類の症状・病態に応じた治療を提示している。

感染後の倦怠感は、正気損傷による気虚、陽虚、陰津不足を基本病機とし、労作後の疲労増悪、易疲労性、息切れ、動悸、自汗、盗汗、四肢冷感、紅舌、淡舌などを呈する。治療には西洋参、人参、党参、黄耆、白朮による補気を重視し、重症例では西洋参10~30g/日を使用する。生脈飲、八珍湯、十全大補湯を基本方とし、陰虚には杞菊地黄丸、知柏地黄丸を加減する。また、感染後に邪毒が残存する可能性を考慮し、金蕎麦、馬歯莧、白頭翁、金銭草、鬼針草、敗醤草、秦皮などの比較的穏やかな清熱解毒薬を併用する。不眠、不安、記憶力低下、集中力低下などの精神神経症状は肝鬱気滞と心神不安を中心に捉え、疏肝安神を治法として合歓皮30g、酸棗仁15~30g、石斛30gを基本的な薬対として使用する。

血栓形成や凝固異常は気虚血瘀を中心に弁証し、補陽還五湯加味を使用する。黄耆によって補気し、寒証には川芎、紅花、三七、小茴香、熱証には丹参、生地黄、水牛角、桃仁、牡丹皮などを加える。感染後の脱毛は血熱風燥と考え、清営湯(水牛角、生地黄、麦門冬、玄参、丹参、竹葉心、金銀花、黄連、連翹)によって養陰清熱、涼血解毒し、腎陰不足には二至丸(旱蓮草、女貞子)を併用する。性機能障害は腎気不足、肝鬱気滞、瘀血を重視し、六味地黄丸加減に枸杞子、黄精、菟絲子、牛膝、杜仲などを配合し、補陽還五湯を併用して益気活血を図る。甲状腺機能亢進については、橋本病患者2例で感染後に甲状腺機能亢進を認めた経験を報告し、血熱体質に対して知柏地黄丸と清熱解毒薬を使用している。

感染後の蛋白尿や腎機能障害は脾腎気虚を基盤とする湿濁血瘀、腎絡損傷と捉え、解毒活血湯(連翹、葛根、柴胡、当帰、生地黄、赤芍、桃仁、紅花、枳殻、甘草)を用いて益脾腎、解毒活血祛濁を図る。肝機能障害は脾虚不運と弁証し、四君子湯合升麻葛根湯加減として党参、太子参、白朮、牛膝、丹参、赤芍、山茱萸、白芍、甘草、葛根、升麻などを使用する。胸痛や心筋障害は気虚血瘀による胸陽不振、心脈瘀阻と捉え、血府逐瘀湯合丹参飲を基本に黄耆、党参、白朮、西洋参を加えて益気活血、理気止痛を図る。なお、心筋障害では救急診療による評価と支持療法を優先する必要性にも言及している。

耳鳴、聴力低下は肝鬱気滞による耳絡阻滞と清陽不升に分け、前者には逍遥丸、後者には聡明益気湯(黄耆、太子参、党参、白朮、当帰、橘紅、升麻、柴胡、防風、石菖蒲、荊芥、黄柏、甘草)を用いる。消化器症状は脾胃気虚または肝鬱犯脾と考え、六君子湯や和胃整腸丸を使用し、慢性下痢には木香、砂仁、太子参、霊芝、石斛を組み合わせる。嗅覚・味覚障害は肺心脾の機能低下による清竅蒙蔽と捉え、瀉黄散(藿香、山梔子、石膏、甘草、防風)に帰脾丸、通竅活血湯を合方する。息切れは宗気不足、胸中大気下陥を中心病機とし、升陥湯(黄耆、知母、柴胡、升麻、桔梗)を用い、必要に応じて人参、山茱萸を加える。

筋肉痛、骨痛は風寒湿邪の経絡残存による痹証と考え、杏仁薏苡湯加減として杏仁、薏苡仁、桂枝、生姜、厚朴、半夏、白蒺藜、防已を使用し、徐長卿、豨薟草、糸瓜絡、路路通、橘絡などを加える。瘀血が強い場合には身痛逐瘀湯を使用する。蕁麻疹は営衛失調、血分鬱熱、肺気損傷を病機とし、荊芥、防風、白芷、牡丹皮、茜草、生地黄、紫草などによって疏風清熱、涼血解毒し、枸杞子、旱蓮草、菟絲子を加えて扶正する。帯状疱疹の併発例では玉屏風散を基本に糸瓜絡、路路通、橘絡を加えて祛湿通絡し、金鈴子散、失笑散によって活血止痛を図る。

本論文の特徴は、ロングCOVIDを気血陰陽の虚損と、熱毒・湿濁・血瘀・気滞が併存する虚実夾雑の病態として捉え、症状別に補気、養陰、温陽、疏肝、活血、化湿、解毒を組み合わせる点にある。特に倦怠感に対する西洋参の比較的大量投与、血栓や心筋障害に対する補陽還五湯・血府逐瘀湯、息切れに対する升陥湯、蛋白尿に対する解毒活血湯などが特徴的である。ただし、各方剤の具体的な投与量は一部を除いて記載されておらず、本論文は治療経験の総説であって、症例数や改善率を示した比較臨床試験ではない。したがって、各治法の有効性については今後の臨床研究による検証が必要である。(2023年、池武)

中国天津市におけるオミクロン株感染後のロングCOVIDの発生頻度、臨床症状、中医学的証候の特徴を検討した観察研究である。2022年1~3月に感染した746例を対象として、退院後3か月および6か月に追跡調査を行い、3か月時点で身体診察、血液検査、胸部CT、中医証候調査を実施した。その結果、WHOのロングCOVID診断基準を満たした患者は58例(7.8%)であり、男性26例、女性32例、成人56例の平均年齢は45.2歳であった。主な症状は倦怠感36.2%、易疲労性29.3%、記憶力低下29.3%、入眠困難・多夢・中途覚醒17.2%、労作後の息切れ15.5%、めまい15.5%、胸悶12.1%、易怒性12.1%、咳嗽10.3%、不安10.3%であった。呼吸器症状だけでなく、疲労、認知機能障害、睡眠障害、精神神経症状が主要な後遺症であることが示された。

血液検査では、白血球数およびCRPは検査を受けた全例で正常範囲内であり、明らかな全身性炎症所見は認められなかった。一方、48例中、尿酸高値22例、クレアチニン高値12例、総コレステロール高値13例、LDLコレステロール高値19例、HDLコレステロール低値44例などの異常が認められたが、著者らは基礎疾患や生活習慣の影響も考慮している。胸部CTを施行した36例では、肺紋理増強25例、索状影11例、肺線維化2例、肺結節9例、すりガラス影1例であり、多くは陳旧性変化または臨床的意義の乏しい所見と判断された。従来株の感染後と比較して、オミクロン株感染後では肺の器質的障害が比較的軽度である一方、自覚症状が長期間持続する特徴が認められた。

中医学的証候解析では、主要な病位証素は**脾65.5%、心41.4%、肺36.2%、腎31.0%、脳29.3%、肝25.9%であり、病性証素は気虚75.9%、陰虚39.7%、湿34.5%、熱25.9%、血瘀19.0%、気滞17.2%**であった。中医症状としては倦怠感48.3%、情志不暢24.1%、健忘19.3%、不眠19.0%、息切れ17.2%、めまい15.5%が多かった。舌診では少苔44.8%、白苔43.1%、紅舌41.4%、淡舌25.9%、膩苔22.4%、胖大舌17.2%が認められ、陰津不足と脾気虚、湿邪残存が混在する病態を示唆している。証素のクラスター解析では、第一群が脾・腎・心・脳と気虚・陰虚、第二群が肺・肝・胃・筋骨と気滞・血瘀・湿熱に分類され、気陰両虚を基本としながら、湿熱、気滞、血瘀を兼ねる虚実夾雑が主要な病機と考えられた。

著者らは、新型コロナウイルス感染によって肺気が損傷し、湿邪によって脾胃の運化機能が障害され、さらに心神・脳の機能にも影響が及ぶことで、倦怠感、息切れ、健忘、不眠などが持続すると考察している。また、感染後に正気が十分回復せず、残存する湿邪を排除できないことが、咳嗽、喀痰、咽部不快感などの遷延につながり、気機の鬱滞や血行障害が胸悶、疼痛、情緒障害に関与するとしている。すなわち、ロングCOVIDの病機を正気未復、余邪未清と捉え、益気養陰を基本に、必要に応じて祛湿清熱、疏肝理気、活血化瘀を組み合わせる治療方針が示唆される。ただし、本研究は疫学調査と証候解析を目的としたものであり、具体的な治療方剤、構成生薬、投与量、治療効果は検証されていない。また、7.8%という発生率は本研究の退院患者集団における値であり、一般感染者全体の発生率とは区別する必要がある。(2023年、王凱)

オミクロン株感染後のロングCOVIDの経過を12か月間追跡するとともに、清金益気顆粒の長期的な治療効果を検討した天津中医薬大学の修士論文である。2022年1~3月に感染した746例を対象に、退院後3か月、6か月、12か月の症状を調査した。その結果、何らかの症状が残存していた患者は3か月後123例(16.5%)、6か月後83例(11.1%)、12か月後14例(1.9%)と経時的に減少した。このうちWHOのロングCOVID診断基準を満たした患者は58例(7.8%)であった。主な遷延症状は倦怠感、易疲労性、記憶力低下、労作後の息切れ、胸悶、不眠、不安、めまいなどであり、特に6か月後には倦怠感44.8%、記憶力低下38.6%、易疲労性36.1%が高頻度であった。感染急性期に普通型であった患者は無症状・軽症患者より6か月後、12か月後の症状残存率が高く、成人では未成年者より症状が遷延しやすかった。

ロングCOVID患者58例の中医体質では、平和質41.4%が最多で、偏頗体質では気虚質17.2%、陰虚質15.5%が多く認められた。舌診では少苔44.8%、白苔43.1%、紅舌41.4%、淡舌25.9%、膩苔22.4%であり、気陰両虚を中心に湿邪が残存する病態が示唆された。血液検査は全体として正常化傾向を示し、炎症性サイトカインには急性期の重症度別で有意差が認められなかった。一方、免疫細胞検査を受けた36例ではCD4陽性T細胞高値が23例(63.9%)に認められたが、その臨床的意義やロングCOVIDとの因果関係は明らかではない。

清金益気顆粒の長期効果については、746例中、服用歴のある212例と服用歴のない534例を比較した。退院3か月後、評価対象となる症状が残存していた患者は服用群16例(7.5%)、非服用群51例(9.6%)であり、症状残存率に有意差は認められなかった(P=0.388)。咳嗽、倦怠感、易疲労性、労作後の息切れ、消化不良、腹部膨満は服用群で少ない傾向を示したが、いずれも統計学的有意差はなかった。一方、煩熱については服用群で有意に少なく、舌診でも少苔と紅舌の割合に有意差が認められた。したがって、清金益気顆粒には感染後の煩熱症状を軽減する可能性があるものの、疲労や呼吸器症状を含むロングCOVID全般に対する有効性は、この研究だけでは確認できない。

清金益気顆粒の構成生薬は、人参、麦門冬、五味子、麩炒蒼朮、陳皮、甘草、茯苓、清半夏、黄芩、芦根、玄参、淡竹葉、薏苡仁、柴胡、升麻、馬鞭草の16味であり、原論文には各生薬の配合量は記載されていない。生脈飲を基礎とする人参・麦門冬・五味子で益気養陰し、蒼朮・陳皮・茯苓・半夏で健脾燥湿、黄芩・芦根・玄参・淡竹葉で清熱養陰、薏苡仁で利湿、柴胡・升麻で升陽、馬鞭草で解毒・活血を図る処方である。著者は益気養陰、健脾和中、清熱祛湿を中心とする治療法の有用性を考察しているが、本研究は無作為化比較試験ではなく、服用群の症例数も少ないため、選択バイアスや交絡の影響を否定できない。なお、本研究の746例とロングCOVID患者58例は、直前の王凱らの論文と同じ調査集団に基づくものであり、独立した研究集団ではない。(2023年、孫雪)

新型コロナウイルス感染症に対する中医学治療の臨床経験と研究成果を整理し、中国と米国における中西医結合治療の現状と課題を検討した総説である。著者はCOVID-19を「湿毒疫」と位置づけ、湿邪を中心とする病機によって軽症、中等症、重症、重篤、回復期の5段階に分類している。軽症では寒湿犯肺または湿熱蘊肺、中等症では湿毒鬱肺または寒湿阻肺、重症では疫毒閉肺または気営両燔、重篤例では内閉外脱が中心となる。回復期には肺脾気虚または気陰両虚が主体となり、補益肺脾、益気養陰を治療原則とする。湿邪が肺に侵入して気機を阻滞し、化熱すると肺や心の機能障害が進み、さらに全身の臓腑に波及するという病機を提示している。242頁の図では、肺を中心に心、肝、胃、大腸との関連を示し、COVID-19を肺だけでなく多臓器に影響する疾患として捉えている。

臨床研究については、7研究732例を対象としたメタ解析で、中医学治療と西洋医学の併用が通常治療単独と比較して症状スコア、炎症指標、肺CT所見を改善したと紹介している。連花清瘟膠囊の多施設ランダム化比較試験では、回復率が91.5%対82.4%、肺CT改善率が83.8%対64.1%、臨床治癒率が78.9%対66.2%であった。寒湿疫方の観察研究721例では、重症化が服用群430例中0例、非服用群291例中19例(6.5%)であり、傾向スコアマッチング後も有意差が認められた。また、重症・重篤患者111例を対象とした参黄顆粒のランダム化比較試験では、死亡率が通常治療群75.9%に対し併用群38.6%であった。243頁の表には、連花清瘟膠囊、宣肺敗毒湯、寒湿疫方、麻黄六君湯、参黄顆粒、金花清感顆粒、血必浄注射液、清肺排毒湯、化湿敗毒方の9種類の治療法と研究デザインが整理されている。ただし、本総説には各方剤の構成生薬および個別用量の記載はない。また、観察研究と非盲検試験を含むため、報告された効果をすべて確立した治療効果と解釈することはできない。

鍼灸については、重症COVID-19患者に対して扶正救肺方、血必浄注射液、西洋医学治療と併用した症例や、米国の女性医師が自己治療した症例が紹介されている。後者では雲門、孔最、足三里、曲池、大椎、定喘、喘息などを使用し、呼吸器症状が改善したと報告されている。しかし、当時はCOVID-19に対する鍼灸のランダム化比較試験がなく、有効性を判断する根拠は症例報告に限られていた。ロングCOVIDについては、倦怠感、頭痛、呼吸困難、嗅覚障害などの遷延症状に対して中薬や鍼灸が生活の質を改善する可能性を論じているものの、本論文はロングCOVIDに対する中医学治療の有効性を直接検証した研究ではない。

著者は、中国ではCOVID-19患者の90%以上に中医学治療が併用された一方、米国の病院ではほとんど導入されていないことを指摘し、その背景に医学体系の相違、医薬品規制、医療関係者間の意思疎通不足があると考察している。WHOによる中医学治療のエビデンス評価やICD-11への伝統医学分類の導入を踏まえ、米国のNIH、FDA、鍼灸関連団体などによる協議と、再現性の高い臨床試験の実施を提案している。本論文の特徴は、COVID-19の病機を湿毒から肺脾気虚・気陰両虚への移行として整理し、中西医結合治療の臨床研究と制度的課題を結びつけて論じた点にある。ただし、ロングCOVIDに対する具体的な処方選択や治療効果については十分な検証がなく、今後の臨床研究が必要である。(2022年、袁作標)

新型コロナウイルス感染後にPCR陽性が長期間持続する患者の中医学的病機と弁証治療を検討した報告である。著者らは、通常より核酸検査の陰性化が遅れる患者を「長陽患者」と定義し、その基本病機を湿熱疫毒の残存、正気虧虚、瘀血阻絡の3つに整理している。感染初期には湿毒が肺に侵入し、湿邪が停滞して化熱すると湿熱内蘊となり、さらに病程が長引くことで気陰を消耗し、痰湿と瘀血が肺絡を阻滞する。肥満、痰湿体質、陽虚体質では陰性化が遅延しやすいとする先行研究を紹介し、舌診では厚膩苔、黄苔、紅舌、暗舌などが病機の変化を反映すると考えている。治療では祛湿、清熱、扶正、化瘀を基本とし、病期と証候に応じて攻邪と補虚の割合を調整することを重視している。

湿熱留恋に対しては祛湿排毒、清泄鬱熱、分消湿熱を治法とする。表証を伴う場合には藿香、佩蘭、羌活、蒼朮、麻杏薏甘湯を用い、脾虚湿盛には蒼朮、茯苓、白扁豆、薏苡仁、利湿には猪苓、車前子、滑石、清熱には黄芩、山梔子を使用する。熱毒が強い場合には金銀花、連翹、貫衆、板藍根を用い、気分熱盛で口渇、咳喘が増悪する場合には麻杏甘石湯、高熱、多汗、強い口渇、洪大脈には白虎湯を選択する。湿熱が三焦に広がった場合には、金銀花、連翹、桑葉、薄荷によって上焦の肺熱を宣散し、蒼朮、藿香、党参、白朮によって中焦の気機を調整し、芦根、茯苓、猪苓、沢瀉によって下焦から湿邪を排出する。必要に応じて大黄を加え、大小便から邪毒を排出する分消走泄法を重視している。

正気虧虚に対しては、肺脾気虚、気陰両虚、陽虚を区別する。肺脾気虚には黄耆、人参、党参、太子参を基本とし、蒼朮、白朮、薏苡仁、山薬、藿香、砂仁を加えて健脾益気、培土生金を図る。黄耆による化熱を考慮して知母を少量配合する方法にも言及している。倦怠感、声の弱い咳嗽、息切れには玉屏風散、浮脈で無力を伴う正虚邪恋には人参敗毒散を用いる。口渇、食欲低下、倦怠感、紅舌少苔を呈する気陰両虚には麦門冬、沙参、太子参、五味子、西洋参を使用し、沙参麦門冬湯加減によって益気養陰、生津清熱を図る。一方、湿邪によって陽気が損傷し、痰飲が停滞する場合には桂枝、麻黄、半夏、白朮、茯苓によって温陽化飲し、喘息が強い場合には葶藶子、桑白皮、甘遂などによる瀉肺利水を考慮する。陽気が著しく衰えた重症例では附子、乾姜、人参による回陽救逆を提示している。

瘀血阻絡については、久病入絡、痰瘀互結、気虚血瘀を中心病機とする。湿毒の遷延によって気血の運行が障害され、肺の微小循環障害や血栓形成に関与すると考え、宣肺降気と活血化瘀を組み合わせる。肺気鬱閉には麻黄、射干、葶藶子、杏仁、前胡、百部を使用し、瘀血には丹参、桃仁、紅花、鬱金、延胡索を配合する。湿熱が営血に侵入して陰虚血瘀を形成した場合には玄参、麦門冬、生地黄、百合によって養陰し、金銀花、連翹、青蒿、牡丹皮、山梔子によって清熱解毒する。方剤として清営湯(犀角→水牛角、生地黄、玄参、麦門冬、丹参、黄連、金銀花、連翹、竹葉)、犀角地黄湯(犀角、生地黄、赤芍、牡丹皮)を挙げている。気虚血瘀には黄耆、白朮、人参で補気し、益母草、沢蘭、猪苓、牛膝などを加えて活血利水を図り、血府逐瘀湯も選択肢としている。なお、これらは著者の中医学的治療方針であり、各方剤の有効性を比較試験で確認したものではない。

臨床症例は52歳女性で、2022年4月6日に発熱38℃、倦怠感、鼻閉、咽頭乾燥、めまい、食欲不振、咳嗽、胸悶が出現し、抗原検査陽性となった。4月20日の入院時には微熱、頭重、食欲低下、黄色尿、軟便、紅舌、黄膩苔、浮滑脈を認め、湿熱疫毒と弁証した。初回処方は金銀花30g、連翹30g、薄荷6g、藿香9g、芦根30g、蒼朮6g、虎杖15g、製大黄15gであり、1日1剤を煎じて4日間投与した。4月24日には発熱が消失したものの咳嗽、黄色鼻汁が増悪し、連花清瘟顆粒を追加した。4月28日には鼻閉と軽い咳嗽のみが残存したため化湿敗毒顆粒を追加し、5月2日には黄耆45g、虎杖30g、馬鞭草30g、黄芩25g、青連翹18g、貫衆6g、藿香9g、薏苡仁30g、鬼箭羽30g、栝楼皮30g、生甘草9gを4日間投与した。5月6日には自覚症状が消失し、淡紅舌、薄苔、濡滑脈となったため、生脈飲と血府逐瘀膠囊を用いて益気養陰、活血化瘀による回復期治療を行った。ただし、論文にはPCR陰性化の具体的な日時やウイルス量の推移は記載されていない。

本論文の特徴は、長期PCR陽性を単なる湿熱残存ではなく、湿毒の遷延から正気損傷、気陰両虚、痰瘀互結へと進展する病態として捉え、祛湿清熱だけでなく補気養陰と活血化瘀を組み合わせる点にある。ただし、対象は主として感染中のPCR長期陽性患者であり、感染後に症状が持続する一般的なロングCOVIDとは区別する必要がある。また、病機の理論的考察と単一症例の報告であり、治療効果やPCR陰性化促進作用を証明した研究ではない。具体的な生薬用量は症例処方について記載されているが、本文中で紹介された各方剤の構成生薬と用量はすべてが記載されているわけではない。(2022年、劉晨陽)