過敏性腸症候群の歴史
過敏性腸症候群は診断名が出来たのが1988年ですが、1818年にPowellによって「繰り返すお腹の痛みと張りと消化不良として」最初に報告されました。
感染後過敏性腸症候群は、1950年にStewartらが、第二次世界大戦中に北アフリカに進軍したイギリス軍で、急性のアメーバ赤痢に感染した後に、慢性の大腸炎を発病した34例を初めて報告しました。
過敏性腸症候群は、定義として「明確な器質性要因が腸に存在しない」とされています。
IBSの病名は、よくわかないお腹の不調に診断名を与えるという、言わば「ゴミ箱診断」のため、診断名が与えられるのが、他の腸疾患に比べて遅れてしまいました。
Romeにおいて国際消化器病学会が、1988年にIBSの国際的な診断ガイドラインを初めて提唱しています。
歴史的に見ると、膠原病がはじまった時期とIBSは一致しています。
下痢型のIBSについては、関連する自己抗体が明らかにされており自己免疫疾患であると考えられますので、膠原病の一種ということです。
自己免疫疾患の食事療法は、砂糖、穀物、加工食品、保存食品を避けることです。
下痢型のIBSの食事療法は、低FODMAP食に加えて、この4つが重要です。
食事回数については、日本では江戸中期の1700年頃から1日2食が3食になり、ヨーロッパでも15世紀から16世紀くらいには1日3食というのが増えて定着してきたと言われています。
これは穀物の獲得量が増えて食物の備蓄が可能になり余裕が出来たことと、穀物摂取により血糖値の乱高下が起こるようになり、空腹をより感じるようになったためと考えます。
1日3食になることで、ケトン体とグルコースの両方が使えるハイブリットのエネルギータイプから、グルコースしか使えないタイプに変化します。
ケトン体が使えなくなることで、覚醒度が下がり(ぼんやりする)大脳の機能低下を招いており、ある意味、植物(穀物)に人間が支配されているとも言えます。
下痢型IBSの病態はSIBOとほとんどオーバーラップするので、副交感神経支配の小腸の蠕動運動を促すために、食事回数を3回を2回に減らすことも治療的に有効です。