チック症と栄養〜その1

2018年にまとまっているレビューが出ています。

1.カフェイン

コカインや覚醒剤のような中枢神経刺激物質やADD/ADHDに適応のある精神刺激薬は、チック症状を増悪させることがあることが知られています。

これと同様に、脳への刺激作用を持つ「カフェイン」もチック症状を増悪させることがあると言われています。

2.精製砂糖

精製糖質である砂糖をを摂ることによって、血糖値の急激な上昇が起こり、気分の変動、糖尿病、肥満、癌などのリスクとなることが知られています。

砂糖を摂るとチック症状が増悪することも知られています。

ADHDの人は、砂糖の過剰摂取があるために、ドーパミンを使いすぎています。その結果として、ドーパミンD2レセプターの数が減っていたり、ドーパミンそのものが枯渇しています。

このドーパミンの欠乏を正常化するために、さらに砂糖を摂取する傾向が出てきます。

このドーパミン系の機能不全があって、その結果としてチック症を悪化させている可能性があります。

3.マグネシウム欠乏

マグネシウムの欠乏はけいれん、不安、筋肉のひきつけ、チック症、片頭痛、うつ病、慢性疲労などと関係しています。

チック症の子供のマグネシウム欠乏が、神経筋の過剰な興奮に関与することが報告されています。

マグネシウム欠乏は、サブスタンスP、キヌレイン、NMDA受容体、ビタミンB6を介して、チック症状を引き起こすと言われています。

また、マグネシウム欠乏は、ドーパミンの過剰放出、より防衛的な行動、さらなるセロトニン受容体の調整を引き起こし、その結果として、片頭痛(チック症の人によく見られる)の原因となると言われています。

ASDにおいては、マグネシウムとビタミンB6のサプリメントが、社会性やコミュニケーション能力の回復や知能の向上に有効であると言われています。

今後、このマグネシウムとビタミンB6がチック症に有効であることを示すさらなる研究が望まれます。

4.鉄欠乏

フェリチンおよび血清鉄の低下は、チック症ではたびたび報告されています。

脳内の尾状核と被殻(後部線状体を形成する)が、チック症の原因部位と言われているが、この部位でのフェリチン濃度の低下が報告されています。

尾状核の形成不全に鉄欠乏が関係して、結果としてチック症状が発病するという報告があります。

鉄欠乏によって、大脳皮質の形成不全が起こって、これがチック症状を制御しにくくさせると報告されています。

鉄代謝そのものが、ドーパミンなどの神経伝達物質を介して、チック症状の病因となっているとも考えられています。

5.グルテン不耐症

チック症の人は、グルテンやガゼインタンパクの分解に問題があり、摂取によって、チック症状が悪化するという報告があります。

セリアック病は、グルテンに対する異常な免疫応答があり、ASD、ADHD、LDと関係していると言われています。

2015年の報告として、チック症の10歳の少女がグルテンフリー食で、チック症状の完治例があります。

残念ながら、グルテンフリー食がチック症に有効であるという報告は、それ以外にはまだありません。

6.アミノ酸の不足

5-HTPの不足によって、チック症が起こるという報告がいくつかあります。

NAC(Nアセチルシステインは、システインから作られる。抗酸化作用を持つグルタチオンの前駆体である)は、OCDや抜毛症に有効であることが報告されています。

チック症は、OCDや抜毛症の近縁疾患と考えられていますので、NACの効果が期待されていました。

2016年にNACは、チック症に二重盲検無作為抽出法によって臨床試験が行われたが、有意な有効性は証明できませんでした。