ビタミンB12の特殊性

ビタミンB12に関する総論が出ています。

8種類のビタミンB群の中で、ビタミンB12だけが特殊な存在です。

ビタミンB12は動物性食品にだけ含まれています。

ハリソン内科学よりビタミンB12の量についての抜粋です。

最大で体内に5年分が肝臓に貯蔵されていると言われています。

主な代謝経路は、上記の2つです。

1.ビタミンB12の吸収は複雑

食品中のビタミン B12 は肉や魚のたんぱく質と結合しており、胃酸とペプシンの作用で遊離します。遊離したビタミン B12 は唾液腺および胃液由来のハプトコリンと結合し、次いで十二指腸においてハプトコリンが膵液中のたんぱく質分解酵素によって部分的に消化されます。ハプトコリンから遊離したビタミン B12は、胃の壁細胞から分泌された内因子へ移行します。内因子-ビタミン B12 複合体は腸管を下降し、主として回腸下部の刷子縁膜微絨毛に分布する受容体に結合した後、腸管上皮細胞に取込まれます。

2.内因子による吸収機構の飽和

食事当たり 2μg 程度のビタミン B12 で内因子を介した吸収機構が飽和するため、それ以上ビタミン B12 を摂取しても生理的には吸収されません。よって、ビタミン B12 を豊富に含む食品を多量に摂取した場合、吸収率は顕著に減少します。

ビタミンB12の吸収は、内因子によって厳重に管理されています。

ただし内因子を介する能動的取り込み以外にも、粘膜からの受動的拡散による吸収も微量(1~5%)で行われています。

ビタミンB12は食品ではタンパク質と結合しているため胃酸による切り出しが必要です。その後は内因子と結合して、回腸で吸収されます。つまり、胃酸、内因子、回腸のどれかに問題があると欠乏症になります。

ビタミンB12に含まれるコバルトと鉄の2つの必須ミネラルは、過剰になると有害ミネラルとなるため、厳密に体内量をコントロールされています。

3.ほとんどされない排泄(1日排泄量は体内貯蔵量の0.1%)は、便と尿

胆汁中には多量のビタミン B12 化合物が排泄されますが(平均排泄量 2.5μg/日)、約45% は内因子と結合できない未同定のビタミン B12 類縁化合物です。胆汁中に排泄される真のビタミン B12 の半数は腸肝循環により再吸収され、残りは糞便へ排泄されます。

肝腸循環では、胆汁酸、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビタミンD、エストロゲンなどが、人が持っていない酵素を持つ腸内細菌によって、還元や加水分解されて再吸収されます。

4.尿中排泄

水溶性のビタミンB群8種およびビタミンCは、体内の必要量が飽和された後に、余分な量が尿中に排泄されます。ビタミンB12だけが、この法則に当てはまりません。

ビタミンB12は健常者であれば微量ですが、一定濃度で尿中に排泄されます。

腎障害があれば、B12の尿中排泄量が減り、B12の血中濃度が高くなってきます。

ビタミンB12の尿中排泄量は尿量に比例し、他の水溶性ビタミンは(体内飽和後は)投与量に比例します。

ビタミンB12以外の水溶性ビタミンは、尿中排泄量から体内の必要量を満たしているか逆算可能です。

この尿中飽和量と日本人の食事摂取量を比較すると、国の基準の3倍量が必要です。

ビタミンB12以外の水溶性ビタミンは、ビタノート尿有機酸検査で、体内必要量を満たしているかを調べることが出来ます。

5.血清ビタミンB12濃度の測定結果は信頼できません。

ビタミンB12の血中濃度は、慢性骨髄性白血病、真性多血症では、ビタミンB12の測定は必須です。とくに慢性骨髄性白血病では正常の10倍、ないしは数10倍の高値となり、そして寛解とともに減少していくので、治療の指標としても有用です。一方で、悪性貧血では低値になると言われていますが、測定すると正常や高値になり、一定しないことが指摘されています。(2013, Stabler)

悪性貧血患者の最大 70% が内因子をブロックする抗体を持っていますが、この内因子ブロック抗体が、ビタミンB12の自動分析装置による測定を妨害するために、血清ビタミンB12濃度の正しい検査結果が得られないことが指摘されています。(2012, Carmel)(2012, Yang)(2014, Shar)(2015, Hermandez)

6.葉酸との関係

ビタミンB12と葉酸は、メチレーション回路でDNA合成に関与しています。これらの欠乏でDNA合成障害が起きて、造血に問題が起こり大球性貧血になります。またメチレーション回路で、ビタミンB12と葉酸は活性化とリサイクルを繰り返しており、どちらか片方が欠乏すると、両方の問題が起こってきます。ほとんどのビタミンB12欠乏症状は実際には葉酸欠乏症状であるとも言われています。

7.萎縮性胃炎に伴う大球性貧血の貧血の治療

悪性貧血の治療は、米国ではシアノコバラミン、欧州はヒドロキシコバラミンの1,000μgの用量の筋肉内投与が推奨されています。プロトコールでは、1 週間毎日または隔日投与し、その後 1 ~ 2 か月間毎週投与し、その後生涯にわたって毎月1回投与することとされています。(2013, Stabler)

ビタミンB12の筋肉注射が一般的ですが、舌下投与や鼻腔内投与する方法もあります。(山田)