野菜のにおい成分は硫黄

においのする野菜は、主にアブラナ科(キャベツ、ブロッコリー、大根、わさびなど)とアリウム科(ネギ属、ネギ、タマネギ、らっきょう、にんにくなど)に二分されますが、いずれも硫黄成分がにおいの元です。(2022, Marcinkowska)

■アブラナ科(キャベツ、ブロッコリー、大根、わさびなど)

キャベツ、ブロッコリーや大根、わさびなどアブラナ科の野菜には、硫黄化合物の一種であるイソチオシアネートという成分が含まれています。

イソチオシアネート(Isothiocyanate)とは、-N=C=Sという構造を持つ物質の総称であり、イソシアネートの酸素原子を硫黄原子で置換することによって得られます。

アブラナ科の植物にしばしば含まれるアリルイソチオシアネートはカラシ油、ワサビ、マスタードなどに含まれ、辛味の原因となっています。

アブラナ科の野菜の成分はチオール基(SH基)として反応して(2012, Crampsie)、グルタチオンをサポートする唯一の野菜であることが指摘されています。(2019, Minichi)

■アリウム科(ネギ属、ネギ、タマネギ、らっきょう、にんにくなど)

タマネギの催涙成分である硫化アリル(りゅうかアリル、diallyl sulfide)です。

2つのアリル基が硫黄原子(S)に結合した構造を持ち、硫化ジアリルまたはジアリルスルフィドとも呼ばれます。

硫化アリルは天然にはワサビやニラやラッキョウの成分として存在します。

アリウム科の野菜に含まれるスルフィドが、抗がん作用を持つことが知られています。(2004, Sengupta)

メカニズムとしては、細胞周期の停止とアポトーシスの誘導を引き起こすことにより、培養中およびin vivoでのがん細胞の増殖を抑制します。アリウム成分による血管新生および実験的転移の抑制が指摘されています。(2008, Powolny)

■きのこ

レンチオニン(Lenthionine)は、有機硫黄化合物の一つで、シイタケの香り成分です。

シイタケに含まれるレンチオニンは、血小板凝集能を阻害する効果があるため血栓症(Thrombosis)の治療に有効であることが報告されています。(2005, Shibuya)