慢性疲労症候群とHHV-6

まとめ:慢性疲労、新型コロナ後遺症、ワクチン後遺症ではHHV-6などのヘルペスウイルスが再活性化してきます。抗ウイルス剤による治療の可能性があります。

■8種類のヘルペスウイルスとHHV-6

ヒトのヘルペスウイルスは現在までに8 種類が発見されており、いずれのウイルスも初感染時にウイルスが増殖した後に増殖を停止し、ウイルス遺伝子が生涯保持される潜伏感染状態となります。この潜伏感染したウイルスは、何らかのきっかけで再び活動を開始し宿主の体内で増殖します。この現象を再活性化と呼びます。潜伏感染状態をとるウイルスは、レトロウイルスやアデノ随伴ウイルスなど、ヘルペスウイルス以外にもありますが、自律的に再活性化を生じるのはヘルペスウイルスのみです。

ヒトヘルペス6型(HHV-6 )は,β-ヘルペスウイルスに属し、ほとんどの人で1 歳半までに初感染を生じ突発性発疹の原因となります。マクロファージと脳内において潜伏感染を生じ、小児期での再活性化は熱性痙攣や突発性湿疹の原因となります。健常者では通常は治療は必要ありません。(2010, 湯)

HHV-6は過度の就労で容易に再活性化して唾液中のウイルス量が増加し、休息により速やかにウイルス量が減少することからHHV-6 は現代人が抱える仕事のストレスによる疲労刺激で簡単に再活性化する性質を明らかにしました。HHV-6 の生存の戦略という観点からは、HHV-6 が仕事のストレスが中期的・長期的に続いて疲労している宿主の生存の危険を察知し、再活性化によって増殖し、他の宿主に移ることによって、自身の生存の確率を高くしているのだと推論しました。ヘルペスウイルスが、何らかのストレスによって生存の危機に立たされた宿主から再活性化という形で逃げ出す様は、船が沈む際に危険を察知していち早く逃げ出すネズミの様子を連想させる、と述べています。(2005, 近藤)

■慢性疲労症候群、新型コロナ後遺症とHHV-6

最新のレヴューでは、慢性疲労症候群とHHV-6との関連が指摘されています。(2022, Mozhgani)

HHV-6 の活動性感染が一部の患者において CFS を引き起こし、永続させる可能性があると考えられます。(2006, Komaroff)

慢性疲労症候群の患者200人の中で、マイコプラズマ感染症の高い有病率 (全体で 52%)、活性型ヒト ヘルペス ウイルス-6が30.5% で陽性でした。対照被験者100人のマイコプラズマの陽性は6%、活動性HHV-6の陽性は9%でした。(2003, Nicolson)

PASC症状の潜在的な原因としては、1つまたは複数の臓器に対するSARS-CoV-2の急性損傷による影響、特定の組織におけるSARS-CoV-2の持続的保有、新型コロナウイルス感染症の免疫調節不全の条件下でのヘルペスウイルスなどの神経栄養性病原体の再活性化などが挙げられる。(2021, Proal)

新型コロナ後遺症では、SARS-CoV-2、EBV、HHV-6などの持続感染が、自己免疫疾患の発症に関与することが報告されています。(2023, Vojdani)

新型コロナ後遺症では、EBV、HHV-6の再活性化が病因に寄与することが指摘されています。(2023, Davis)

新型コロナウイルス感染およびワクチン接種が、ヘルペスウイルスの再活性化を誘発して、予後マーカーとして機能する可能性があることが指摘されています。(2023, Navarro-Bielsa)

■抗ウイルス剤による治療

バルガンシクロビルは、ヒトヘルペスウイルス 6 (HHV-6) およびエプスタイン・バーウイルス (EBV) IgG 抗体力価が上昇した慢性疲労症候群 (CFS) 患者の身体症状および認知症状を改善することが報告されています。毎日900 mgのバルガンシクロビルで治療を受けた61人のCFS患者(そのうち55人は最初の3週間、毎日1,800 mgの導入用量を服用)を対象に、30% の改善を経験した場合、反応者として分類されました。32 人の患者 (52%) が反応者として分類されましたベースラインの抗体力価は反応との有意な関連性を示さなかった。バルガンシクロビル治療は、ベースラインの抗体力価とは無関係に、HHV-6 および/または EBV 血清学的検査が陽性である CFS 患者の身体機能および認知機能の自己評価の改善と関連していました。(2012, Watt)

慢性疲労症候群の患者27人に対して高ウイルス剤のアシクロビルが30日間投与されましたが、有意な改善は見られませんでした。(1988, Straus)

HHV-6の治療および再活性化のために、抗サイトメガロウイルス (CMV) 剤であるガンシクロビル、シドフォビル、およびフォスカルネットが最もよく利用されます。(2014, Pritchett)

イベルメクチンは、ウシヘルペスウイルス 1 DNA ポリメラーゼの核への取り込みを阻害し、ウイルスの複製を阻害することによって抗ウイルス効果を発揮します。(2020, Raza)