間質性肺炎の歴史、中医治療、西洋医学的治療

まとめ:間質性肺炎に対する治療は、西洋医学的にはKL-6を改善しにくい抗線維薬で中心あるが、中医学ではKL-6を改善する様々な治療があり、高い治療成績が報告されています。

■間質性肺炎の西洋医学的治療

肺は、吸い込んだ空気中の酸素を血液に取り込み、不要な二酸化炭素を体外へ排出する臓器です。空気は肺の最奥部にある「肺胞」に運ばれ、肺胞を取り囲む毛細血管との間でガス交換が行われます。

「間質性肺炎」は、肺の「間質」に炎症が起こる病気の総称です。ここでいう間質とは、肺胞や気道以外の肺組織を広く指します。原因や病態により多くの種類がありますが、共通して肺胞壁が炎症によって厚く硬くなり、酸素と二酸化炭素の交換がしにくくなるのが特徴です。

特発性肺線維症(IPF)は、罹患率と死亡率が高い線維性肺疾患です。従来、IPFはステロイドなどの免疫抑制剤の併用療法で管理されてきましたが、この療法は死亡率の上昇と関連することが示されています。近年、IPF治療薬として抗線維化薬であるピルフェニドンやニンテダニブがが承認され、これが現在のIPFに対する薬物療法の中心的役割を担っています。(2017, Heyton)

抗線維化薬であるピルフェニドンやニンテダニブが使用されます。しかし、これらの抗線維化薬はあくまで病気の進行を抑えることが目的であり、病気を完治できるものではありません。(2014, Richeldi)(2014, King)

抗線維化薬であるニンテダニブが、肺線維化の指標であるKL-6を有意に下げないことがメタアナライシスで報告されています。(2026, Boutel)

抗線維化薬であるピルフェニドンも、KL-6を有意に下げるわけではないことが報告されています。(2020, Ikeda)(2020, Yoshikawa)

■間質性肺炎の歴史

急性間質性肺炎(ハマン・リッチ症候群とも呼ばれる)は、1935年にハマンとリッチによって初めて記載された、まれで重篤な特発性
間質性肺疾患である。(2002, Bonaccorsi)

一方で中国医学では、西暦200年頃に張仲景 は『金匱要略』で肺痿を詳述しました。有名な条文として、「熱在上焦者、因咳為肺痿」とあります。

肺痿は、長期の熱、慢性咳嗽、肺津液の損傷によって肺が萎縮・乾燥することを特徴とする弁病であり、現代の間質性肺炎の特徴に似ています。その他に、中医学での咳嗽、肺癰も間質性肺炎の特徴と一部重なります。(現代中医内科学)

また、現代中医学の教科書には間質性肺炎は、特発性肺間質線維化として詳細に解説されています。(疑难杂症良法大全、山西科学技术出版社)

間質性肺炎の歴史において、西洋医学と中国医学に差がある理由は、間質性肺炎の西洋医学的診断のために顕微鏡やレントゲンの検査が必要であったためであると考えられます。

■間質性肺炎に対する中医治療の高い有効率

間質性肺炎に対して中医学と西洋医学を組み合わせた治療を行ったメタアナライシスでは、西洋医学的治療単独に比べてより肯定的な効果を示しました。(2022, Houng)

間質性肺炎の患者106名を2群に分けて、西洋学的治療と中医治療(清肺化瘀湯:黄芩、魚腥草、金銀花、連翹、桑白皮、桔梗、丹参、桃仁、紅花、川芎、赤芍、浙貝母、瓜蔞、甘草)で治療したところ、臨床症状の改善およびKL-6の低下で中医治療の方が好成績であった。(2025, Jun)

間質性肺炎の患者80名を2群に分けて、西洋学的治療と中医治療(肺活血促進漢方薬:丹参、桃仁、紅花、川芎、赤芍など)で治療したところ、観察群の総有効率(95.00%、38/40)は対照群(80.00%、32/40)よりも高かった(P<0.05)。治療後の観察群の血清KL-6およびCXCL13レベルは、治療前および対照群よりも低かった(P<0.05)。(2021, Li)

肝火肺型特発性間質性肺炎の治療における改良廷里清肺湯(黄芩、山梔子、桑白皮、桔梗、杏仁、貝母、麦門冬、天門冬、陳皮、茯苓、当帰、甘草)の治療効果、および肺機能、血清saa、KL-6への影響を検討する。方法:当院呼吸器科に入院した肝火肺型特発性間質性肺炎患者124名を無作為にコントロール群と治療群に分け、各群62例とした。コントロール群にはピフェニドンカプセルを漸増投与し、治療群にはこれに加えて改良廷里清肺湯を投与した。両群とも8週間治療し、治療効果を評価・記録した。治療前後の最大自発換気量(MVV% pred)、努力肺活量(FVC% pred)、努力呼気量(FEV1% pred)、全肺容量(TLC)の変化を両群間で比較し、 SAA、KL-6、およびTCM症状スコアを記録した。治療中の副作用も記録した。結果:対照群の総臨床有効率は66.1%、治療群は87.1%であった。統計的に有意な差が認められた(P<0.05)。治療後、両群の肺機能指標は改善し、SAA、KL-6、およびTCM症状スコアは低下し(P<0.05)、治療群は対照群よりも良好であった(P<0.05)。(2022, Jin)

軽度から中等度の通常型間質性肺炎(UIP)を伴う特発性肺線維症の治療における補肺活血カプセルと麦門洞湯の併用療法の臨床効果を評価する。 方法 2021年1月から2023年1月までに湖南省中医薬科学院附属病院に入院した、気陰虚血瘀症候群を伴う軽度から中等度のUIP関連特発性肺線維症患者78名を遡及的に選択した。異なる治療方法に従って、対照群と観察群に分け、各群39例とした。対照群にはアセチルシステインカプセルとプレドニゾン酢酸塩錠を投与し、観察群には対照群の治療に加えて補肺活血カプセル(黄芪、赤芍、補骨脂)と麦門冬湯を投与した。補肺活血カプセルと麦門冬湯の併用は、患者の生活の質と肺機能を有意に改善した。(2026, Li)

清金化痰湯(黄芩、栀子、桑白皮、川貝母、桔梗、瓜蔞仁(炒)、橘紅、茯苓、知母、麦門冬、甘草)(2024, 肖威)、清肺通絡合方(蜜麻黄、杏仁、生石膏、胆南星、葶苈子、桃仁、赤芍)(2023, 孙宇)、活血通絡益腎湯 (黄芪、当帰、川芎、丹参、杜仲、牛膝、熟地黄、桃仁、紅花、地龍、枸杞子)(2020, Li)、丹紅混合液(丹参、紅花)(2019, Minying)、古本康仙丸(蛹虫草菌粉、西洋参、川芎、当帰、赤芍)(2019, Wen)