線維筋痛症に対する漢方治療

まとめ:線維筋痛症の漢方治療は、附子を使う方法と、活血化瘀薬を使う方法があります。

線維筋痛症に対して葛根湯に蒼朮(ソウジュツ、去風湿、健脾)と附子(散寒止痛)を加味した漢方治療の有効性を報告しています。線維筋痛症は、ストレス、感染、外傷などの外的要因および死別、離婚、経済的困窮、解雇などの内的要因で発症することと、瘀血の原因であるストレス、過食、肉食、動脈硬化、内出血、打撲、運動不足との類似から、線維筋痛症は瘀血病態であると考察しています。(2019, 村井)(2009, 藤永)

瘀血

血瘀とも言う。瘀とは淀んでいる状態で、血液が停滞して流れないこと。

3つの概念があり、①一種の病理産物である。気虚、気滞、血寒、血熱、外傷などはすべて血行を悪くして瘀血を生じる。②発病因子。瘀血を生じると、血液の滋養作用を失うだけでなく、全身および局所の血行に影響を及ぼして難病を引き起こす。③一種の病証。

症状として、①刺すような痛み(刺痛)、夜間痛、固定痛、②舌、顔、身体所見、出血は暗紫色。

治法は、活血化瘀。血脈を疎通し瘀血を消散させる薬物を活血化瘀薬という。活血化瘀薬を用いる際は、気滞を消除する行気薬(陳皮、厚朴など)を同時に用いる。活血化瘀薬としては、川芎、鬱金、莪朮、丹参、鶏血藤、桃仁、五霊脂などがあります。

方剤は活血化瘀剤と言いますが、疎経活血湯(桃仁、川芎)、桃核承気湯(桃仁など)、桂枝茯苓丸(桃仁など)、温経湯(川芎など)などがあります。

入浴などの温熱刺激で症状が悪化する線維筋痛症に白虎湯加味方の有効例が報告されています。(2009, 橋本)

白虎湯加味方:石膏(清熱薬)30g、知母(清熱瀉火)8g、粳米(こうべい、補気)9g、桂皮4g、甘草2g、人参3g

清熱作用のある生薬を使って温熱刺激を抑制します。

十味剉散の線維筋痛症に対する有効例が報告されています。(2020, 宮西

十味剉散:芍薬(清熱解毒)3g、茯苓(利水滲湿)6g、当帰(助陽)4g、川芎(理血)3g、白朮(養血)3g、熟地黄(清熱涼血)1.5g、防風(散風解表)2g、附子(散寒止痛)1g、桂皮(散寒)2g

十味剉散に似た大防風湯、四物湯、茯苓飲の3つのエキス剤を用いて、慢性疼痛患者の改善例が報告されています。(2009, 熊野)

桂枝二越婢一湯加苓朮加防已黄耆湯葛根および甘草附子湯の著効例が報告されています。精神症状がある線維筋痛症の患者に甘草附子湯の適応の可能性があります。(2007, 小暮)

桂枝二越婢一湯加苓朮加防已黄耆湯葛根:桂皮3g、芍薬(清熱解毒)3g、甘草3g、生姜(辛温解表)1g、大棗(補益)4g、麻黄(辛温解表)3g、石膏(清熱薬)5g、茯苓(利水滲湿)5g、蒼朮(去風湿)5g、防已(利水滲湿)5g、黄耆(補気)5g、葛根(辛涼解表)3g

甘草附子湯:甘草3g、白朮(養血)6g、桂皮(散寒)4g、白河附子(散寒止痛)2g

線維筋痛症に対して通脈四逆湯(乾姜9g,甘草4g,烏頭6g)を処方後、ほとんどの症状の軽減がみら、複雑局所疼痛症候群(CRPS) 発作には大烏頭煎(烏頭1g,蜂蜜10g)の頓服が有効であった症例が報告されています。烏頭・附子は、寒冷を自覚し、他覚的にも強い冷えが存在し痛みや痺れが強い場合に適応があると考えられます。(2015, 伊関)

線維筋痛症の症例報告にて、化瘀止痛の効能のある桃仁と莪朮を使って有効であった2症例が報告されています。(2019, 木田)(2016, 木田)