腋臭(ワキガ)を漢方で改善|論文
臭汗症(腋臭・狐臭・体臭)の病機を、湿熱内蘊によって生じた穢濁の気が汗孔から排出されるものと捉え、芳香化濁を中心とした治療を提唱している。病態を「穢濁内蘊型」と「湿熱熏蒸型」に分類する。穢濁内蘊型は先天的素因や遺伝との関連が強く、腋窩、鼠径部、外陰部などに黄色い汗と強い臭気を認める。治法は芳香辟穢・化濁斂汗とし、五香丸(豆蔻、丁香、藿香、零陵香、木香、白芷、桂心、香附など)を用いる。熱毒には蒲公英、紫花地丁、野菊花、黄連解毒湯を加え、血分への影響には当帰、鮮芦根を加える。短期的には改善しても再発しやすいとされる。湿熱熏蒸型は、脂っこい食事、辛辣物、飲酒、暑熱などによって湿熱が内生し、肝胆の疏泄が失調して湿熱が腋窩へ流注する病態である。治法は清熱利湿・芳香化濁とし、甘露消毒飲加減を用いる。藿香、白蔻仁、石菖蒲、薄荷、浮小麦、滑石、綿茵陳、木通などを使用し、湿熱が強ければ黄連解毒湯や五味消毒飲を加える。五味消毒飲による外洗も推奨している。症例は28歳男性で、3か月続く全身の悪臭と口臭を主訴とし、肥満傾向、肉類・海鮮の多食、舌淡紅、黄膩苔、脈濡を認め、湿熱熏蒸型と診断された。清熱利湿・芳香化濁を目的に、藿香10g、佩蘭10g、白芷10g、蒼朮6g、艾葉6g、砂仁5g、茯苓15g、炒白朮15g、蒲公英15g、薏苡仁30g、丁香3g、生甘草3gを7日間投与したところ、体臭はほぼ消失し、口臭も改善した。二診では酸棗仁10g、升麻6g、黄連3g、肉桂心1gを追加し、三診では升麻・肉桂心を除き木香10gを加えた。さらに1週間後の電話確認では悪臭が消失していた。本症例では、藿香・佩蘭による芳香化湿を中心に、蒼朮・白朮・茯苓・薏苡仁による健脾化湿、丁香・砂仁・艾葉による温中行気、蒲公英による清熱を組み合わせている。臭汗症を単なる湿熱ではなく、脾胃の運化失調に伴う湿濁の蓄積と捉え、芳香化濁によって治療する点が特徴的である。 ただし、治療成績は単一症例の短期経過であり、長期的な再発予防効果は明らかでない。(2022年、趙杭)
腋臭(狐臭)に対する民間療法として、11種類の外治法を紹介している。いずれも腋窩への塗布、湿布、摩擦を中心とした方法であり、内服方剤や中医学的な弁証論治についての記載はない。桃葉50g、南瓜葉50gを搗いて患部に1日2~4回貼付する方法、唐辛子2~3個を2~2.5%ヨードチンキ10mLに3日間浸漬し1日1~3回塗布する方法、生姜の切片で1日2回各5分間摩擦する方法、加熱した食塩を布袋に入れて摩擦する方法が紹介されている。さらに、艾葉20g、明礬20g、食塩200gを混合加熱して布に包み、腋窩に5分間挟む方法、胡椒50粒、花椒50粒、冰片2銭をアルコールで調製して貼付する方法、重曹粉末を湿らせたガーゼで塗布する方法、唐辛子粉50gをヨード酒300mLに15日間浸漬して塗布する方法、胡椒50粒と桂円核12粒の粉末を塗布する方法、加熱処理した明礬50gを粉末にして1日2回塗布する方法、新鮮な山薬の切片で1日1~2回摩擦する方法が挙げられている。本稿の特徴は、明礬、艾葉、食塩、生姜、胡椒などを利用した局所外治法にある。ただし、作用機序、症例数、客観的な治療効果の検証は記載されておらず、民間伝承的な処方の紹介にとどまる。特に唐辛子、ヨードチンキ、加熱した塩、アルコールなどは腋窩皮膚への刺激や接触皮膚炎、熱傷の危険があり、記載された方法をそのまま臨床応用することは推奨できない。(2012年〈誌面記載、掲載年未確認〉、厳立中)
腋臭に対して自家製外用散剤「紅僧爽腋粉」を使用した216例の臨床報告である。中医学では腋臭を気血不和、邪気の蘊積によって生じるものと捉え、外治による斂汗・殺菌・祛腐を治療原則としている。紅僧爽腋粉の構成は、公丁香10g、小茴香10g、紅升丹15g、石膏25g、硫黄15g、滑石15g、密陀僧25g、枯礬25g。 これらを細末にして混合し、綿またはスポンジで腋窩に塗擦する。1日1回、臭気が消失しても14日間継続する。対照群には狐臭粉(酸化マグネシウム10g、デンプン1.7g、炭酸水素ナトリウム32g、ラベンダー油0.3mL、滑石粉を加えて全量100g)を使用した。全288例を治療群216例、対照群72例に無作為に分けた結果、治療群は216例全例で臭気が消失し、治癒率100%、対照群は治癒26例(36.11%)、改善35例(48.61%)、無効11例(15.28%)であった。治療群では5回以内の塗擦で187例の臭気が消失した。一方、治癒後1年以内に25例、1~2年で43例、3年で54例の再発が報告されており、長期的な根治効果には限界がある。方剤の作用について、公丁香・小茴香は芳香による除臭、紅升丹・密陀僧は祛腐・殺菌、枯礬は収斂・燥湿、硫黄は殺虫、滑石・石膏は分泌物の吸収と皮膚保護を目的としている。著者は14回の治療後の血液・尿検査で異常を認めず、副作用もなかったと報告している。ただし、紅升丹は水銀・ヒ素を含む有毒な鉱物製剤、密陀僧は鉛を含む有毒な鉱物製剤であり、経皮吸収や慢性重金属中毒の危険があるため、現代の臨床での使用は推奨できない。 短期間の血液・尿検査で異常がなかったことは安全性の証明にはならない。本報告は外治による腋臭改善の歴史的資料として意義があるが、安全性と長期有効性について慎重な評価が必要である。(2009年、林中)
腋臭(狐臭・体気)の発生機序を、腋窩のアポクリン汗腺分泌物に含まれる有機物が皮膚常在菌、特にコリネバクテリウム属などによって分解され、特有の臭気を発するものと説明している。治療は局所の殺菌と汗腺分泌の抑制を基本とし、清潔保持、皮膚の乾燥、辛辣物の制限を推奨している。外治法として、十滴水・藿香正気液・風油精を衣服に塗布して臭気を覆う方法、明礬の細末を週1回腋窩に塗擦して収斂・除湿する方法、公丁香・紅升丹・石膏を粉末にして入浴後に塗布する方法、滑石・炉甘石・密陀僧・冰片を粉末にして外用する方法を紹介している。また、トマト汁を加えた水に腋窩を浸す方法、トマト汁を含ませた綿で拭く方法、歯磨き粉の塗布、市販の制臭剤の使用も挙げている。本稿の特徴は、腋臭の治療を内服による弁証論治ではなく、殺菌・収斂・除湿・臭気の遮蔽という局所治療の観点から整理している点である。ただし、各外治法の臨床試験成績や具体的な治癒率は記載されていない。紅升丹は水銀・ヒ素を含み、密陀僧は鉛を含むため、重金属中毒の危険性から使用すべきではない。その他の外用法についても、皮膚刺激や接触皮膚炎に注意が必要である。(2005年、胡献国)
腋臭(狐臭)に対して自家製外用薬「腋臭酊」を使用した女性5例の臨床報告である。腋臭の発生機序を、腋窩のアポクリン汗腺分泌物に含まれる有機物が皮膚常在菌によって分解され、短鎖脂肪酸やアンモニアなどの臭気物質が生じるためと説明している。治療は局所の殺菌・止汗・収斂・燥湿を基本としている。腋臭酊の構成は、枯礬10g、密陀僧40g、ウロトロピン50錠(1錠0.3g、合計15g)、46度白酒100mL。 各薬剤を粉末にして白酒に混合し、使用前に振り混ぜて腋窩に塗布する。1日2~3回、10日間を1療程とし、衣服の交換と皮膚の清潔・乾燥を併用する。対象は20~43歳の女性5例で、罹病期間は1~5年であった。3療程で3例、4療程で1例が治癒し、残る1例は治療を継続せず、明らかな効果が得られなかった。著者は密陀僧による燥湿・殺虫・収斂、枯礬による収斂・消炎・分泌抑制、ウロトロピンによる殺菌・止汗作用が相乗的に働くと考察している。本報告は、腋臭の外治において殺菌と汗腺分泌の抑制を組み合わせることを重視している点が特徴である。ただし、症例数は5例と少なく、対照群や長期再発率の記載はない。また、密陀僧は鉛化合物であり、経皮吸収による鉛中毒の危険性があるため、現代の臨床での使用は推奨できない。ウロトロピンも皮膚刺激や接触皮膚炎の可能性があり、安全性への配慮が必要である。(2004年、多運貴)
腋臭(狐臭)に対して外用散剤「冰石散」を使用した20例の臨床報告である。中医学的病機として、先天的な禀賦異常、あるいは湿熱内蘊によって穢濁が体表に鬱積することを挙げ、清熱祛湿・芳香化濁・燥湿除臭を治療原則としている。冰石散の構成は、冰片10g、密陀僧10g、滑石粉80g、炉甘石30g。 これらを細末にして混合し、入浴後に腋窩を乾燥させてから患部に塗布する。使用回数は1日2回である。著者らは20例に使用し、腋臭が徐々に消失して良好な効果が得られたと報告している。ただし、具体的な治癒例数、治療期間、再発率、副作用についての記載はない。方剤では、冰片が清熱祛湿・芳香化濁、炉甘石・滑石が水湿の吸収と抑菌を担う。密陀僧については『本草綱目』の腋臭治療に関する記載を根拠として配合している。本報告の特徴は、芳香化濁による臭気の改善と、鉱物薬による吸湿・抑菌を組み合わせた外治法にある。ただし、密陀僧は鉛化合物であり、鉛中毒の危険があるため、現代の臨床では使用を推奨できない。また、20例の治療成績について客観的評価がなく、有効性の根拠は限定的である。(2004年、王培満)
腋臭(狐臭)に対する中薬外用散剤の経験方を紹介した短報である。中医学的な病機や弁証論治についての記載はなく、局所への薬粉塗擦によって臭気を除去する治療法を提示している。処方構成は、公丁香18g、紅升丹27g、石膏45g。 3種類の薬物を細末にして混合し、褐色瓶に密封保存する。綿球に薬粉を付着させて腋窩に塗擦し、1日1回、5日間連続使用する。著者は32例に試用し、全例が治癒したと報告している。公丁香は芳香による除臭や抗菌作用、石膏は清熱・収斂、紅升丹は祛腐・殺菌を目的とした配合と考えられるが、本文には各薬物の作用機序についての説明はない。また、治癒判定基準、治療前後の臭気評価、再発率、副作用についても記載されていない。紅升丹は水銀・ヒ素を含む有毒な鉱物製剤であり、現代の臨床での使用は推奨できない。 本稿は伝統的な外治処方の記録として参考になるものの、有効性と安全性を裏付ける情報は不足している。(2002年、武利徳)
手術を希望しない、あるいは手術が困難な腋臭患者36例に対して、外用散剤「鳳仙粉」を使用した臨床報告である。中医学的病機を気血不和・湿熱内鬱によって濁気が汗孔から排出される病態と捉え、活血行気・清熱燥湿・除臭を治療原則としている。鳳仙粉の構成は、鳳仙草150g、山奈90g、姜黄90g、葛根80g、白礬60g、滑石60g、酸化亜鉛60g。 これらを超微粉砕して外用散剤とする。毎日、複方硫酸銅亜鉛液で腋窩を5~10分間湿布し、乾燥後に鳳仙粉を塗布する。1日1回、1か月を1療程とした。対象は男性12例、女性24例、年齢7~35歳、平均23.5歳であった。治療結果は36例中、痊癒30例、顕効3例、有効3例で、**治癒率83%、総有効率100%**と報告された。治癒までの期間は20~30日で、治療中に明らかな副作用は認められなかった。ただし、治療中止後、数週間から数か月で再発する症例もあり、反復治療が必要な場合があると記載されている。方剤では、鳳仙草が祛風活血・消腫止痛、山奈が芳香行気、姜黄・葛根が活血化瘀、白礬・滑石・酸化亜鉛が清熱燥湿・収斂を担う。著者らは、薬物が皮膚から浸透して局所の発汗を持続的に抑制するとともに、皮膚細菌の増殖や分解作用を抑えることで臭気を改善すると推測している。本報告の特徴は、活血行気による病機への対応と、収斂止汗・燥湿・抑菌による局所治療を組み合わせ、標本兼治を目指している点である。ただし、薬物の皮下浸透や持続的な汗腺抑制作用は実証されておらず、対照群もない。また、複方硫酸銅亜鉛液を併用しているため、鳳仙粉単独の効果は判定できない。(2001年、劉亜東)
腋臭患者123例に対して、中薬注射製剤「消痔霊(消痔灵)」を腋窩皮下に注射した臨床報告である。中医学的には、腋臭をアポクリン汗腺の分泌異常によるものと捉え、収斂止汗を治療原則としている。『黄帝内経』の「酸主収」「渋固脱」を理論的根拠とし、収斂作用によって発汗と臭気を抑制することを目的としている。消痔霊の主な構成生薬は、五倍子、明礬であり、各生薬の配合量およびその他の成分は記載されていない。消痔霊原液と1%プロカインを1:1で混合し、腋毛の生えている範囲の皮下組織に扇状の浸潤注射を行う。注射量は片側25~40mLで、腋毛の範囲や皮下脂肪の厚さによって調整している。対象123例は男性42例、女性81例で、年齢16~35歳であった。治療結果は**治癒85例(69.1%)、有効38例(30.9%)、総有効率100%**と報告された。著者は、薬液を腋窩皮下組織に直接注入することで、内服や外用よりも高い治療効果が得られると考察している。ただし、対照群、長期再発率、副作用についての具体的な記載はない。本報告の特徴は、五倍子・明礬の収斂作用を利用し、外用ではなく皮下注射によって汗腺分泌を抑制しようとする点である。ただし、消痔霊は本来痔疾治療に用いられる硬化剤であり、腋窩への注射には皮膚壊死、潰瘍形成、瘢痕、神経・血管損傷などの危険が考えられる。安全性の検証が不十分であり、現代の臨床で安易に実施すべき治療法ではない。(2000年、李春生)
腋臭(狐臭)に対して中薬の外治法と内服療法を併用した10数例の治療経験を報告している。詳細な弁証や病機の説明はないが、白芷・密陀僧による局所の芳香除臭・燥湿と、蒼朮・藿香・佩蘭などによる内からの芳香化湿・祛風を組み合わせた治療法である。外用処方は、白芷15g、密陀僧30g。 両薬を細末にし、胡麻油で練ってガーゼに包み、両腋窩に挟む。12時間ごとに交換し、約10日間で腋臭が完全に消失したと報告している。著者は、夏季は発汗が多く汗孔が開いているため、治療に適していると考えている。内服処方は、蒼朮10g、藿香15g、佩蘭15g、白芷15g、防風10g。 これを水煎して6剤服用し、外治法と併用すると、さらに良好な効果が得られるとしている。本報告の特徴は、外治による局所の除臭・燥湿と、内服による芳香化湿・祛風を併用している点である。ただし、具体的な治癒例数、再発率、長期経過、副作用の記載はない。また、外用の密陀僧は鉛化合物であり、鉛中毒の危険があるため、現代の臨床では使用を推奨できない。内服方は重金属を含まないものの、その有効性を独立して評価したデータは示されていない。(1999年、高希蘭)
腋臭症20例に対して、自家製外用薬「青蒿苦礬酊」を使用した臨床報告である。中医学的には、芳香涼血・和血を治療原則とし、芳香性薬物による除臭と局所の汗腺分泌抑制を組み合わせている。詳細な弁証分類や病機についての記載はない。青蒿苦礬酊の構成は、鮮青蒿50g、鮮玫瑰花30g、苦礬20g、60%高粱白酒400mL。 これらを10日間浸漬し、腋窩や足底の皮膚に1日2回塗擦する。主に夏季から秋季に使用する。対象は男性10例、女性10例、年齢18~35歳で、15例に遺伝的素因が認められた。治療結果は20例全例で臭気が明らかに軽減し、対人関係や夫婦生活に支障を来さなくなり、**改善率100%**と報告された。代表症例は30歳女性で、腋窩と足底に強いネギ様臭気があり、夏季に増悪していた。治療開始10日で効果が現れ、6か月間の継続使用で臭気はほぼ消失し、3年間の追跡でも再発を認めなかった。方剤では、鮮青蒿が芳香・涼血を担い、著者らはその揮発油に皮膚真菌や汗腺の抑制作用があると説明している。玫瑰花は芳香活血・解鬱、苦礬は硫酸銅を含む鉱物薬として局所消毒と腺分泌抑制を目的としている。本報告の特徴は、青蒿・玫瑰花による芳香涼血・和血と、苦礬による局所消毒・止汗を組み合わせた外治法にある。ただし、対照群や客観的な臭気測定はなく、20例全体の長期再発率も不明である。また、苦礬(硫酸銅を含む鉱物薬)や高濃度アルコールには皮膚刺激、接触皮膚炎などの危険があり、安全性の検証も不十分なため、そのまま臨床応用することは推奨できない。(1998年、万国峰)
腋臭患者80例に対して、中薬硬化剤「消痔霊(消痔灵)」を腋窩に局所注射した臨床報告である。腋臭の発生機序を、アポクリン汗腺の分泌亢進と、その分泌物の細菌による分解と捉えている。治療は局所組織の硬化・汗腺萎縮・分泌機能の抑制を基本とし、消痔霊の収斂・硬化作用によって臭気を除去することを目的としている。中医学的な弁証分類についての記載はない。注射液の構成は、通常例では消痔霊10mL、2%リドカイン10mL、生理食塩水20mL、重症例では消痔霊20mL、2%リドカイン20mL、生理食塩水20mL。 いずれも両側腋窩の合計量である。腋毛分布範囲の皮内に近い浅い層へ薬液を均一に浸潤注射し、汗腺周囲組織の硬化を図る。著者らは、局所の虚血と結合組織増生によって汗腺が硬化・萎縮し、分泌機能を失うことが治療機序と考察している。対象は男性59例、女性21例、年齢15~41歳、罹病期間1~23年であった。**80例中73例が1回の注射で治癒し、残る7例も30日後の再注射で治癒したため、最終治癒率100%**と報告された。全例を1年以上追跡し、再発や副作用は認めなかったとしている。代表症例の19歳女性では、3年間続いた腋臭が1回の注射で消失し、発汗も明らかに減少した。本報告の特徴は、中薬由来の硬化剤を用いて汗腺組織そのものを萎縮させ、外用薬より持続的な効果を目指している点である。ただし、対照群がなく、汗腺の組織学的変化や長期安全性の客観的検証も示されていない。また、消痔霊は本来痔疾用の硬化剤であり、腋窩への注射には皮膚壊死、瘢痕形成、神経・血管損傷、局所硬結などの危険がある。報告された高い治癒率だけを根拠に、現代の臨床で使用することは推奨できない。(1998年、陳振友)
腋臭(狐臭)に対して自分の尿を外用する民間療法を紹介した短報である。『本草綱目』に記載された人尿の性味を「鹹・寒・無毒」とし、潤肌膚、利大腸、通便、止労渇などの作用に加え、狐臭にも使用できるという伝統的な記述を根拠としている。具体的な中医学的病機や弁証論治についての説明はない。治療方法は、排尿時に自分の尿を少量採取し、温かいうちに脱脂綿に含ませて腋窩を拭き、その後、水で洗い流すというもの。 原文では数日間を1療程とし、2~3療程で効果が現れると述べている。ただし、具体的な症例数、治癒率、客観的な臭気評価、再発率は記載されていない。本稿の特徴は、生薬や鉱物薬を使用せず、人尿そのものを腋臭の外治に利用する点である。ただし、人尿の外用による殺菌作用、汗腺分泌抑制作用、持続的な除臭効果を裏付ける臨床的根拠は示されていない。尿は無菌とは限らず、皮膚刺激や汚染の可能性もあるため、現代の臨床で推奨できる治療法ではない。(1997年、沈雲祥)
腋臭117例、足臭22例の計139例に対して、中西薬を組み合わせた外用製剤「米蘭乳霜」を使用した臨床報告である。腋臭はアポクリン汗腺分泌物が局所細菌によって分解され、不飽和脂肪酸などの臭気物質が生じる病態であり、足臭はエクリン汗腺から分泌された汗が細菌によって分解されることで発生すると説明している。治療は汗腺分泌の抑制と局所細菌の増殖抑制・殺菌を基本としている。中医学的な弁証分類についての記載はない。米蘭乳霜の構成は、虎杖、蛇床子、鶴虱などの中薬抽出濃縮液に、西洋薬成分と乳霜基剤を加えたものであり、各生薬の配合量、西洋薬の具体的成分と含有量は記載されていない。患部に薄く塗布し、臭気が再び現れた時点で再塗布する方法を採用している。連続4回の使用によって除臭効果の持続時間を評価した。腋臭117例は男性68例、女性49例、年齢14~56歳で、13例に家族歴があった。治療結果は**顕効95例(81%)、有効20例(17%)、好転1例、無効1例で、有効率99.15%**と報告された。足臭22例では全例が有効で、有効率100%であった。顕効は1回の塗布で除臭効果が7日間持続すること、有効は4~6日間、好転は1~3日間持続することと定義されている。著者らは、米蘭乳霜が汗腺分泌を減少させ、局所細菌を抑制・殺菌することで臭気を改善すると考察している。ただし、汗腺組織を破壊する作用はなく、根治には至らないと明記している。本報告の特徴は、腋臭と足臭という発生機序の異なる臭汗症に対し、共通する細菌分解と発汗を標的とした外治法を用いている点である。一方、対照群がなく、西洋薬成分も不明であるため、中薬単独の効果や安全性は判断できない。長期再発率についても記載されていない。(1996年、武子龍)
腋臭に対して中薬外用散剤「膚爽(肤爽)」を使用した380例の臨床報告である。腋臭の発生機序について、アポクリン汗腺分泌物中の有機物が皮膚細菌によって分解され、不飽和脂肪酸などの臭気物質が生じるという説を重視している。治療は清熱解毒・殺菌・収斂止汗を基本とし、汗腺そのものを破壊せずに臭気を抑制することを目的としている。膚爽の構成生薬は、明礬、寒水石、鶏舌香、皂刺、冰片などであり、各生薬の配合量は記載されていない。 1瓶5gの散剤を毎晩入浴後に腋窩へ塗擦し、臭気と発汗の減少に応じて週1回、月1回へと使用間隔を延長する。対象380例は軽症80例、中等症180例、重症120例であった。1瓶使用後の治癒は68例(17.89%)、有効312例(82.11%)、無効0例であった。さらに継続治療した308例では、合計3瓶使用後の治癒103例(33.44%)、有効205例(66.56%)、無効0例と報告された。軽症では治癒率が高く、重症では臭気の改善は認めても完全消失は困難であった。副作用は軽度の腋窩掻痒が2例にみられたのみで、著者らは重篤な有害事象を認めなかったとしている。本報告の特徴は、腋臭の原因を単純な多汗ではなく、アポクリン汗腺分泌物と皮膚細菌の相互作用に求め、清熱解毒・殺菌作用を持つ外用中薬で対応している点である。著者らは薬物の皮下浸透を促進する配合によって効果を高めたと考察しているが、浸透性や抗菌作用の客観的検証は示されていない。また、対照群がなく、配合量も不明であり、長期的な根治効果や安全性の評価には限界がある。(2002年、屠国春)
腋臭(狐臭)の病機を肝経に穢濁の水湿が鬱結し、肝気の亢盛によって腋下の腠理が開き、湿濁が外泄することと捉えている。『霊枢』の「肝有邪、其気留于両腋」を根拠とし、治法は清肝・利水・祛湿・除臭である。竜胆瀉肝湯と防已黄耆湯の方意を組み合わせた竜胆防已湯を使用する。基本処方は竜胆草15g、防已10g、梔子10g、黄耆10g、白朮10g、藿香15g、浮小麦15g。肝鬱化火には牡丹皮8g、黄芩12g、白芍15g、肝胆湿熱には茵陳15g、金銭草12g、易激動・心神不寧には竜骨15g、石決明12g、酸棗仁15gを加える。水煎して1日1剤を2回に分服し、辛辣・脂っこい食品を避ける。竜胆草・梔子で清肝燥湿、防已で利水、黄耆・白朮・浮小麦で益気固表止汗、藿香で芳香化湿・辟穢除臭を図る。利水と固表、瀉法と補法を組み合わせることが特徴である。10例(男性4例、女性6例、13~31歳)に投与し、20日で6例、25日で3例、30日で1例が治癒したと報告している。治癒は腋窩が乾燥し、臭気が消失した状態と定義される。ただし、対照群のない少数例の報告であり、有効性の確証には至らない。(1997年、楊応成)
腋臭(狐臭)を先天的な体質や後天的な要因によって生じる臭汗症と捉え、中医学的には体気不和により津液が混濁・停滞し、穢濁の気が発散できず、汗液の変化によって悪臭が発生すると説明している。『諸病源候論』などの古典を引用し、体質的要因と汗腺分泌異常との関連を論じている。治療には芳香辟穢・収斂止汗を目的とした外用散剤を使用する。処方は金陀僧(密陀僧)5銭、紅升丹2銭、白芷3銭、滑石5銭、丁香2銭、冰片4分。各薬を極細末にして混合し、密封保存する。腋毛を剃り、石鹸水で腋窩を洗浄した後、乾燥した綿球に薬粉をつけて塗擦する。1日1~2回使用し、約5日間を1治療期間として、4日間隔で繰り返す。著者は通常1日で効果が現れ、約2~3治療期間で改善すると報告しているが、症例数や客観的な治癒率は記載されていない。なお、密陀僧は鉛化合物、紅升丹は水銀化合物であり、重金属毒性の問題から、この処方を現在の臨床でそのまま使用することは推奨できない。(発表年不明、張月波)
足の多汗と足臭(汗臭脚)の病機を、脾虚湿盛による水湿の運化失調と捉えている。暴飲暴食や不規則な食生活、肝火旺盛による脾胃損傷、先天的な脾虚体質などによって脾の運化機能が低下し、水湿が体内に停滞して下方へ流れ、足部の発汗過多と悪臭を生じると説明している。治法は健脾化湿を基本とし、内服と外用を併用する。内服には健脾丸を推奨しているが、構成生薬と用量は記載されていない。食養生として大棗・山薬・蓮子を加えた粥を勧め、飲酒、脂っこい食品、辛辣、甘味、生冷食品を控える。外用処方は艾葉10g、葛根30g、王不留行30g、透骨草30g、明礬10g。明礬以外の生薬を煎じ、明礬を加えて冷却後に足浴する。6日間を1治療期間とし、通常2治療期間で改善すると説明しているが、脾虚体質では長期治療が必要とされる。また、通気性のよい靴、吸湿性の高い綿靴下、五本指靴下の使用を勧めている。これは臨床試験ではなく専門医への取材記事であり、治療成績や有効率などの客観的データは提示されていない。(2008年、馮麗安)
汗臭の病機を肝熱による発汗過多と皮膚表面の細菌増殖と捉えている。中医学では、肝熱のある人は体温がやや高く、発汗しやすく、汗が赤黄色を呈して悪臭を伴うと説明される。辛辣・燥熱性食品の過剰摂取、飲酒、喫煙などが肝の負担を増加させ、体内の濁邪が汗を通じて排泄されるという考え方が示されている。また、汗そのものは基本的に無臭であり、皮膚表面の細菌による分解によって臭気が発生すると説明している。特に腋窩、足部、鼠径部では汗が蒸発しにくく、細菌が増殖しやすいため、臭気が強くなる。治療は発汗の誘因を減らすとともに、肝熱を改善することが重要とされる。ただし、肝熱と肝疾患を直接結びつける説明や、汗による毒素排泄という解釈は、現代医学的に十分裏付けられていない。具体的な方剤、構成生薬、用量の記載はない。臨床症例や治療成績も示されていない。(2008年、著者不明)
臭汗症の病機を脾虚胃熱を基盤とし、外界の湿熱が侵入して内外の湿邪が結合し、湿熱が肌腠に鬱結して腐敗し、悪臭を発すると捉えている。脾の運化失調によって水湿が停滞し、湿が熱を生じ、全身の臭気と四肢倦怠を引き起こす。治法は健脾燥湿・芳香化濁であり、「燥能勝湿、香可化濁、香能祛臭」を治療原則としている。治療には自擬方の**九香飲(藿香、佩蘭、木香、香薷、炒蒼朮、零陵香、白芷、檀香、草果)**を使用する。藿香・佩蘭・蒼朮・草果・檀香で健脾燥湿・芳香化濁、香薷・白芷・零陵香で芳香開散・祛風除湿、木香で行気し、気行によって水湿の運行を促進する。各生薬の用量は原文に記載されていない。対象は炭鉱坑内労働者30余例で、九香飲3~9剤の内服によって治癒したと報告している。代表症例は30歳男性で、入浴や着替えでも消えない全身の悪臭、四肢倦怠、淡紅舌、白膩苔、沈弦脈を呈し、九香飲6剤で臭気が完全に消失し、3年間再発しなかった。ただし、対照群のない症例報告であり、有効性の確証には限界がある。(1982年、劉沛然)
