緑内障の栄養療法
緑内障(glaucoma)治療の唯一のエビデンスは眼圧を下げることで、そのための薬物療法と手術が行われていますが、科学では視神経への栄養障害が原因であると考えられています。
1.緑内障と血圧のU字型の関係
緑内障は高血圧と低血圧の両方に関係することが知られています。(2015年、Chungら)
グラフ化するとU字型の関係性です。(2010年、Memarzadehら)
高血圧による眼圧上昇の機械的影響、低血圧による眼灌流圧の低下とそれに続く虚血性損傷を引き起こす可能性が考察されています。
ホルミシスとは、生体が回復可能なレベルの侵襲的な刺激を受けた際に、身体が反応して元のレベル以上の健康な状態になることです。
ホルミシスの現象は毒素でも栄養素でも同じで、摂取量と有病率の関係はU字型になっており、タンパク質や抗酸化物質でさえも摂りすぎると問題が生じて来ます。
つまり、すべての栄養素には適量が存在するということです。
緑内障と血圧との関係で言えば、タンパク質が最も関係しています。
低たんぱく食は、高血圧にも低血圧にもなり得ますので、緑内障のリスクになります。
低たんぱく食と緑内障の関連が報告されています。(2020年のLeeら、2020年のHanyudaら)
2.緑内障と糖尿病
メタアナリシスでは、糖尿病のない患者と比較した糖尿病の患者における緑内障の相対リスクを1.48と報告しました。(2015年、Zahoら)
糖尿病が続くと微小血管の異常を起こし、網膜では糖尿病性網膜症となります。この微小血管の異常の原因は、ソルビトールの蓄積、酸化ストレス、終末糖化産物(AGE)の蓄積、プロテインキナーゼC(PKC)の活性化、血管新生因子など、いくつかの要因が関係しています。(2017年、Songら)
糖尿病の原因治療は、糖質制限です。
3.高繊維食、抗酸化治療
菜食主義者は肉食主義者よりも白内障のリスクが低いことが報告されています。(2011年、Applebyら)
地中海式食事療法を定期的に摂取することで、緑内障のリスクを減らすことも報告されています。(2012年、Moiseら)
一酸化窒素(特に高硝酸塩を含む濃い緑の葉野菜)は、血管を拡張させて血流を改善させることによって、緑内障に有益な効果をもたらします。(2014年、Cavetら)
反対に酸化ストレスは血管を収縮させるエンドセリンの放出を促すため(2000年、Kahlerら)、緑内障を悪化させます。(2007年のSaakaら、2010年のGoodら)
エンドセリン-1の血中濃度は、緑内障の患者で有意に高いことがわかっています。(2015年、López-Riquelmeら)
植物性化学物質であるイチョウ葉は、血管拡張作用および抗酸化作用を持っており緑内障に有効であることが報告されています。(2003年、Qarantaら)
ベリー、ナッツ、赤ブドウの皮に一般的に見られる天然のポリフェノールであるレスベラトロールは、抗酸化作用を持ち緑内障に有益であることが報告されています。(2009年、Lunaら)
抗酸化および解毒を行うグルタチオンは緑内障において重要な役割を担っています。(2005年、Ghelghelら)
緑内障では血清ホモシステインが高いことが報告されています。(2006年、Cumrucら)(2011, Tranchina)
緑内障の酸化的ダメージは、抗酸化防御とミトコンドリア機能の低下の2つの要素に関係しています。(2016年、Saccaら)
オメガ6脂肪酸が緑内障のリスクを高くすることが報告されています。(2014年、Arcelusら)
4.ビタミンとミネラル
緑内障とビタミンD(2015年、Goncalvesら)、ビタミンB3(2017年のWilliamsら、2020年のHuiら)、ビタミンE(2010年、Koら)、ビタミンC(2009年、Yukiら)、コエンザイムQ10(2019年、Martucciら)が関係していることが報告されています。
緑内障とビタミンの総論では、ビタミンAとC(2018年、Ramdasら)、ビタミンB1(2012年、Ramdasら)の有効性が総括されています。
緑内障では血清フェリチンレベルが高いことが報告されており、これは炎症との関係を示唆しています。(2016年のGyeら、2014年のLinら)
「生理学的カルシウム遮断薬」であるマグネシウムが緑内障に有効であることが報告されています。(2010年、Aydinら)
セレンと鉄の過剰が緑内障の悪化と関連することが総論で報告されています。(2018年、Ramdasら)
5.緑内障は現代病ではなく、大昔から存在する神経変性疾患
緑内障は、紀元前400年のヒポクラテスの時代に遡る極めて歴史の長い疾患です。自己免疫疾患と関連が深い現代病とは直接は関係していません。
リーキーガットを起こす原因となる小麦製品、乳製品、食品添加物などの制限食と緑内障との関連を検討した論文はありません。
6.緑内障は老化と関係しています
緑内障は加齢と相関しています。(2018, Liu)
AGEs(最終糖化産物)の生成は年齢に依存するイベントであることを考えると、緑内障組織での AGE 蓄積の増加は、加速された老化プロセスが緑内障眼の神経変性を伴うことを裏付けています。(2007, Tezel)
ミトコンドリアの機能は加齢とともに徐々に損なわれます。これは、より多くの電子が ATP に変換されるのではなく、活性酸素種に変換されるためです。加齢に伴うミトコンドリアの機能低下と緑内障の発症が関連しています。(2014, Osborn)
酸化ストレスがミトコンドリアの機能を障害して、緑内障などの加齢性疾患に関係しています。植物の抗酸化物質は、緑内障と神経変性障害の治療に有望です。(2022 Rocio Cáceres-Vélez)