慢性腎臓病の蛋白制限食について

慢性腎臓病では蛋白制限が推奨されています。

腎障害が進むと0.6〜0.8g/Kgに蛋白制限を行うというガイドラインになっています。

Fouqueら(2009)は、過去の40論文から10論文を厳選して、蛋白制限が、末期腎不全の相対リスクを軽減するが、適正な蛋白制限のレベルはわからないと結論付けています。

Menonら(2009)は、慢性腎不全患者を無作為に超低蛋白制限(0.28g/Kg)126名と低蛋白制限(0.58g/Kg)129名に分けて、4年間フォローしました。

超低蛋白制限群では、腎不全110名、死亡49名に対して蛋白制限群は、腎不全117名、死亡30名でした。

つまり、「超低蛋白食は、腎不全の進行を遅らせることも出来ないし、生命予後も悪い」と結論付けています。この論文では、予後が悪い原因を、摂取エネルギー不足と推察されています。

良質(動物性)タンパク質の窒素出納維持量を検討した過去の報告を平均すると、 タンパク質維持必要量は 0.65g/kg体重 /日となると言われています。

以上から、0.6〜0.8g/Kgに蛋白制限するという結論になっています。

食事中タンパク質制限の実践と問題点を参考にしました)

タンパク制限しながら、エネルギーを確保するためには、ケト酸サプリメント(日本未発売)や脂肪酸を摂取する方法も提唱されています。

私の考察です。

1.超低蛋白食の生命予後が悪い理由は、血管はコラーゲンやエラスチンから構成されますが、これは材料としてタンパク質、ビタミンC、鉄を要求します。材料が少ないと粗雑な血管となり、血管性障害の原因となります。

2.超低蛋白食を実践された場合は、糖質過食になることが多いです。糖質過食によって、酸化ストレスが増えて、動脈硬化の原因となります。近藤正二先生が報告された米大食偏食地域の早老、脳卒中の話に繋がります。

ガイドラインで糖質制限が認められていないので、タンパク制限+カロリー理論で治療論を組みたてると、結果として糖質過食になってしまって、現代人の病態と同様に血管性障害や生活習慣病になると言うことです。

3.クレアチニンを見ながら、蛋白制限量を決めていけば良いと考えます。

同時に糖質制限もやるべきですが、1日約100gレベルで行い、エネルギー不足を感じれば、ココナッツオイルなどの脂肪酸で補っていく方法が現実的です。

4.糖質の影響を軽減してインスリンの過剰分泌を抑えるため、また排便習慣を改善させるために、食物繊維の摂取も重要です。

5.ほとんどの人は、少ないタンパク量で身体の代謝を適切に回転させるためにビタミン、ミネラルもサプリで摂る必要があると思います。

6.酸化ストレス対策で、ファイトケミカルを摂る方法もあります。

7. 摂取タンパク質の中身も大事で、「より身になるタンパク質」を摂る必要があります。身体で利用できないタンパク質を摂取するとその分が腎臓に負担を掛けるからです。桶の理論です。

アミノ酸スコアを参考にせず、生物価やプロテインスコアを見て、食べ物を選択すべきです。

具体的にはホエイプロテインまたは、自然食なら卵、魚、肉になります。