フィブラート系薬剤について

フィブラート系薬剤は、高脂血症の治療で使われますが、特に中性脂肪を減らす作用を有する薬剤です。

18の研究のメタアナリシスにて、フィブラート療法は、心血管イベントのリスクを減らすことが出来ましたが、心血管死亡のリスクを減らすことが出来ないと総括されています。この結果からフィブラート療法は、スタチン抵抗性、単独の高TG血症、高脂血症の併用療法においての治療適応が推奨されています。(2009年のAboulbihら2010年のJunら

1930年代から臨床応用されて、作用機序は未だに完全には解明されていませんが、1990年代にPPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化レセプター、peroxisome proliferator-activated receptors)(特にPPARα)を活性化して、脂肪酸のβ酸化を促進させることが明らかにされました。(1998年、Staersら

また、フィブラートは構造的・薬理学的には経口血糖降下薬のチアゾリジンジオン系薬剤(PPARの内、特にPPARγを活性化させる)に類似しており、インスリン抵抗性を改善させることが報告されています。(2000年、Milloら

2018 AHA/ACCガイドラインによる高トリグリセリド血症管理では、二次的要因(肥満、糖尿病、甲状腺機能低下症、慢性肝疾患、慢性腎疾患、薬剤)に対処して、それでも不十分な場合にスタチンを優先的に使用することを推奨しています。重度の空腹時トリグリセリド500mg/dl以上においてのみ、フィブラート系薬剤を推奨しています

クリーブランドクリニックのガイドラインでは、まずは食事療法(低脂肪、糖質制限、特に精製糖質を避ける、アルコールを控える)を勧めており、薬物療法については、ACCORDとして知られる2型糖尿病における心血管リスクを調べる最近の大規模研究で、トリグリセリドレベルを下げるためにスタチンとフェノフィブラートを服用している2型糖尿病患者について調べられました。この研究では、フェノフィブラートとシンバスタチンの併用は、シンバスタチンとプラセボの併用療法と比較して、患者のトリグリセリドレベルは低下しましたが、心血管死、致命的でない心筋梗塞、致命的でない脳卒中の主要な複合エンドポイントの発生率を低下させませんでした。(2011年、Elamら

スタチンとフィブラート系薬剤は、ステロイドや細胞膜の合成、胎児の発育に必須の成分であるコレステロールを低下させることから、先天性異常、乳児の発達異常のリスクが懸念されるため、妊婦・授乳婦には禁忌とされています。(2007年、Ofoliら

横紋筋融解症(rhabdomyolysis)は、骨格筋を構成する横紋筋細胞が融解し筋細胞内の成分が血中に流出する症状、またはそれを指す病気のこと。重症の場合には腎機能の低下を生じ、腎不全により誘発される臓器機能不全を発症し、死亡する場合もあります。

高脂血症治療薬の横紋筋融解症のリスクは、アトルバスタチン、プラバスタチン、またはシンバスタチンによる単剤療法の10000人年あたりの平均発生率は、0.44(95%信頼区間[CI]、0.20-0.84)でした。セリバスタチンの場合、5.34(95%CI、1.46-13.68)、フィブラートの場合、2.82(95%CI、0.58-8.24)でした。アトルバスタチン、プラバスタチン、またはシンバスタチンとフィブラートの併用療法では5.98(95%CI、0.72-216.0)に増加し、セリバスタチンとフィブラートの併用療法では1035(95%CI、389-2117)に増加しました。セリバスタチンとフィブラートの併用は、治療を受けた患者の年間約10人に1人のリスクをもたらしました。(2004年、Grahamら)この副作用のため、日本ではセリバスタチンは2011年に市場から撤退してます。

この結果を受けて、日本ではスタチンとフィブラート系薬剤の併用は原則禁忌とされていましたが、2018年10月に定期的な腎機能検査の元で、併用可能に変更されています。

多数の短期研究により、フィブラートの投与がホモシステインの上昇させるために、中性脂肪低下による心血管保護効果を打ち消すことを指摘しています。(2004年のDiekes2007年のDiekesら

フェノフィブラート治療は循環シスタチンCレベルに悪影響を及ぼし、心血管イベントの軽減におけるフェノフィブラートの限られた有効性を部分的に説明する可能性があります。(2018年、Sehebkarら

特に、シスタチンCは、クレアチニンよりも糸球体濾過と腎機能のより信頼できるマーカーとして提案されています。さらに、シスタチンCは、クレアチニンよりも心血管疾患および死亡率のより良い不利な予測因子であると考えられています。

循環シスタチンCレベルはホモシステインのレベルと相関していることが示されています。