【天王寺の漢方内科】子宮内膜症の中医治療
子宮内膜症は、骨盤痛や月経痛として古代から報告されていましたが、病理学的な診断であるため、最初に報告されたのは、1860年です。
現在のエビデンスでは、子宮内膜症を確実に診断できる単独の血液マーカーは存在しません。そのため、各国のガイドラインでは、血液検査だけで診断することは推奨されていません。参考になるマーカーとして、CA125>>CA19-9があります。(2024, Gibbons)
子宮内膜症は現代医学からみると、異所性に発生した子宮内膜組織がホルモン作用によって増殖・分泌・脱落・出血を繰り返すことにより、一連の自・他覚症状をあらわすものである。月経血が卵管を逆行して子宮内膜細胞が腹腔内などに付着する逆行性月経説が有力な仮説です。
中国伝統医学の理論で本症を分析すると、発病機序は多くは七情の受傷と肝気鬱結である。古人が「そもそも血の行止・順逆は、すべて気の統率下に行われる。」といっているとおり、肝気鬱結による気滞がつよいと血瘀が生じる。気滞血瘀が生じると下腹部の緊張疼痛があらわれ、これが長く続くと、気・血が不足して気虚血瘀の症状がみられるようになる。さらに血瘀は脾の運化機能に悪影響を与え、下腹部の緊張膨満・便意頻数など脾気不昇と脾気虚の症状をあらわす。このほか、流産後あるいは月経時の不摂生により風寒が侵入すると、邪正闘争の結果腹中で腫瘤を形成する。そこでわれわれは、内膜症は七情の受傷あるいは風寒が主要原因で、気滞血瘀・気虚血瘀が発病機序、腫瘤形成が症状の重要なポイントであると考える。これが活血祛瘀法を用いた理由である。『医林改錯』に少腹逐瘀湯証として列挙されている一連の症状は、内膜症の症状と基本的に一致している。われわれも、大部分の内膜症患者に、舌質が紫または暗色で大きい瘀斑や瘀点があること、毛細管係蹄に瘀血があること、X線造影で腫瘤の骨盤内癒着があることを観察し、さらに開腹時に骨盤内に広範な癒着と大小不同の陳旧性血腫を確認した。(中医臨床10)
(1)疏肝活血方:肝気鬱血・気滞血瘀の症状がある患者に用いた。活血祛瘀・行気解鬱の効能がある。処方: 三稜9g・莪朮9g・当帰9g・皂角刺9g・製香附子9g・柴胡9g・蒲黄12g・五霊脂12g・異位粉² 6g(包)(地竜・虻虫・䗪虫・蜈蚣・水蛭の等量の粉末)。
(2)益気活血方:気虚血瘀の症状がつよい患者に用いた。活血祛瘀・益気升陽の効能がある。処方: 三稜9g・莪朮9g・当帰9g・皂角刺9g・蒲黄12g・五霊脂6g・炙升麻9g・党参12g・黄耆12g・異位粉6g(包)。
加減: 寒がるものには桂枝6~9g、寒がって性器出血をともなうものには蜀椒3g、便秘には大黄3~6gをそれぞれ加える。月経過多があれば、月経前に三稜・莪朮に代えて丹参12g・劉寄奴12gを加える。

