がん検診でがん死亡率は下がるが、なぜ総死亡率は下がらないのか?

まとめ:一部のがん検診は対象がん死亡率を低下させることがRCTで示されているが、現在広く行われている主要ながん検診の多くについて、総死亡率を有意に低下させることは明確には証明されていない。

一般人口を対象とした無作為化比較試験を用いて、マンモグラフィ、便潜血検査、S状結腸鏡、大腸内視鏡、PSA検査、低線量CTによる肺がん検診について、検診を受けることで寿命が延びるかをメタ解析した。総死亡率の相対リスクは、マンモグラフィ1.00(95%CI 0.95–1.04)、隔年便潜血1.00(0.99–1.01)、大腸内視鏡0.99(0.96–1.04)、PSA 0.99(0.98–1.01)、肺がんCT 0.97(0.88–1.08)であり、これらでは統計学的に明確な総死亡率低下は認められなかった。S状結腸鏡のみ0.98(0.95–1.00)で、推定寿命延長は110日(95%CI 0–274日)であった。著者らは「がん検診をすべて中止すべき」としているわけではなく、対象がんの罹患率・死亡率低下と検診による害を含めた利益・不利益のバランスで判断すべきとしている。シグモイドスコピーによる大腸がん検診については例外と考えられます。(2023, Bretthauer)

がん検診RCTのメタ解析では、対象がん死亡率を低下させる検診は存在する一方、総死亡率の有意な低下が確認されていないと論じた。検診には偽陽性、過剰診断、その後の検査・治療による合併症などもあるため、「対象がんによる死亡が減る」ことと「最終的に人が長く生きる」ことは同義ではないとしている。医療提供者の皆様には、スクリーニングの限界について率直に申し上げるよう奨励いたします――スクリーニングの害は確実ですが、全体的な死亡率に対する利益は確実ではありません。スクリーニングの減少は、多くの人にとって合理的で慎重な選択となり得ます。(2016, Prasad)

無症状成人に対するスクリーニングをRCT・メタ解析で検討し、9つのメタ解析では、疾患特異的死亡を有意に減らしたものは一部あった一方、総死亡を有意に減らしたものは0でした。個々のRCTでは疾患特異的死亡の有意な低下が30%の推定値でみられたのに対し、総死亡では11%でした。死亡が一般的なアウトカムである疾患に対する現在利用可能なスクリーニング検査の中で、疾患特異的死亡率の減少は稀であり、全死亡率の減少は極めて稀であるか、全く見られない。(2015, Saquib)

インドのMumbaiで行われたクラスターRCTでは、VIAによる子宮頸がん検診を約12年間追跡しています。

子宮頸がん死亡:67人 vs 98人 → RR 0.69(95%CI 0.54–0.88)
総死亡:4,909人 vs 5,275人 → RR 0.93(95%CI 0.79–1.10)

つまり、子宮頸がん死亡は31%有意に減ったのに、総死亡は7%低い点推定だったものの統計学的には有意ではありませんでした(P=0.41)。(2007, Sankaranarayanan)