胆管がんの漢方治療|論文

まとめ:胆管癌に対する中薬研究では、白花蛇舌草、半枝蓮、茵陳、柴胡、黄芩、黄耆、人参、紫草、青蒿、莪朮、姜黄、葛根、青風藤、淫羊藿などに、胆管癌細胞の増殖抑制、アポトーシス誘導、浸潤・転移抑制作用が報告されている。特に人参(人参皂苷Rg3)は胆管癌細胞の増殖を抑えるだけでなく、抗癌剤に対する多剤耐性を改善する可能性が示され、**柴胡(柴胡皂苷D)**にもゲムシタビンの作用を増強する可能性が報告されている。

胆管癌に対して、加味茵陳黄柴湯(白花蛇舌草、白芍、半枝蓮、柴胡、大黄、黄芩、金銭草、茵陳、郁金、梔子、枳殻)の作用機序をネットワーク薬理学で検討した。中医学的には胆管癌を正気不足、情志所傷、痰湿内聚、瘀血内結、熱毒内生などが相互に関与する病態と捉え、茵陳・梔子・金銭草・黄芩で清熱利湿退黄、柴胡・大黄・枳実(枳殻)・郁金で行気化瘀、白芍で養血柔肝・扶正、白花蛇舌草・半枝蓮で解毒祛癌を図る。

解析では143の共通標的と61の重要標的が抽出され、AKT1、IL6、VEGFA、JUN、MYCなどが主要標的として示された。また、槲皮素、木犀草素、山奈酚、漢黄芩素、β-シトステロールなどが主要活性成分として抽出され、PI3K/AKTシグナル経路などを含む171経路を介した、多成分・多標的・多経路による作用が推定された。本研究はネットワーク薬理学による作用機序の予測研究であり、臨床的な抗腫瘍効果を直接証明したものではなく、今後さらなる実験的検証が必要とされる。(2025年、劉璐)

胆管癌(CCA)における糖代謝リプログラミングを標的とした中薬活性成分の抗腫瘍作用をまとめた総説である。胆管癌ではGLUT1による糖取り込み、HKⅡ・PKM2・LDH-Aなどを介した解糖系が亢進しており、これらを抑制すると腫瘍細胞の増殖・浸潤・遊走が抑制される。また、IDH変異、ミトコンドリア酸化的リン酸化、G6PDを中心とするペントースリン酸経路、FBP1を介する糖新生なども胆管癌の増殖や薬剤耐性に関与するとされる。雷公藤(雷公藤内酯)、紫草(紫草素)、淫羊藿(淫羊藿素)、荷葉(荷葉鹸)、瓜蒂など(葫蘆素B)、柴胡(柴胡皂苷D)**には、糖代謝を標的として胆管癌細胞の増殖を抑制する作用が基礎研究で報告されている。雷公藤・淫羊藿・瓜蒂由来成分は主としてAKT/mTOR経路を介してHKⅠ、HKⅡ、PKM1、PKM2などを抑制し、紫草由来の紫草素はPKM2を抑制する。荷葉由来の荷葉鹸はAKT/mTOR/4EBP1経路を介してHIF-1α、HKⅡ、PKM2を低下させる。また、柴胡由来の柴胡皂苷DはHKⅡ・GLUT1およびMRP1・ABCG2を抑制し、ゲムシタビンの抗腫瘍作用を増強することが報告されている。 (2024年、趙方言)

胆管癌に対する中薬の作用として、増殖抑制・アポトーシス誘導、浸潤転移抑制、薬剤耐性の逆転、抗癌剤との相乗作用が報告されている。黄耆は槲皮素・山奈酚などを主要成分としてcaspase-3、MAPK8、MYC、EGFR、PARPなどに作用し、茵陳蒿湯は槲皮素、山奈酚、β-シトステロールなどを介してAKT1、IL6、MAPK1、TP53、VEGFAを標的とし、MAPK、PI3K-Aktなどの経路を介して胆管癌細胞の増殖を抑制しアポトーシスを促進した。 **青風藤由来の青藤鹸(sinomenine)および葛根由来の葛根素(puerarin)**はCaspase系を活性化してアポトーシスを誘導し、青蒿由来のジヒドロアルテミシニンは抗アポトーシス蛋白Mcl-1を調節して胆管癌細胞のアポトーシスを促進することが報告されている。

さらに、**莪朮由来の莪朮醇(curcumenol)**はCyclin D1を抑制して細胞周期を阻害し、**蛇床子由来の蛇床子素(osthole)**はG2/M期で細胞周期を停止させる。**呉茱萸由来の呉茱萸鹸(evodiamine)**はIL-6/STAT3経路、**紫草由来の紫草素(shikonin)**はPKM2/STAT3経路を抑制して胆管癌細胞の侵襲・遊走を抑え、大蒜由来のallicinはTGF-β1によるEMTを抑制する。また、木香由来のcostunolideはMMP-2・MMP-9を抑制して侵襲・転移を抑えることが示されている。

薬剤耐性については、人参由来の人参皂苷Rg3がMDR1を抑制して多剤耐性を逆転し、**姜黄由来の姜黄素(curcumin)**はシクロホスファミドや5-FUとの併用で耐性胆管癌細胞に対する抑制作用を増強した。また、細梗香草総皂苷+5-FU、槐耳+5-FUにも相乗的抗腫瘍作用が報告されている。 ただし、総説で取り上げられた研究の大部分は細胞・動物実験段階で、人体での臨床的有効性を示す研究は少ない。 (2023年、呂彦霖)

人参の胆管癌に対する作用について、ネットワーク薬理学と胆管癌細胞を用いて検討した研究である。人参(Panax ginseng)の活性成分14種、標的遺伝子52個を抽出し、胆管癌関連遺伝子1,733個との比較から24個の共通遺伝子を同定した。解析ではALOX5、CASP8などが重要標的として抽出され、とくに**人参皂苷Rg3(ginsenoside Rg3)**とCASP8との相互作用が示された。

胆管癌Hucct-1細胞に人参皂苷Rg3を25、50、100 μg/mLで投与すると、24・48時間で細胞増殖が有意に抑制され、50、100 μg/mLでは24時間で用量依存的な抑制を認めた。 またRg3 50、100 μg/mLでは、CASP8およびBaxを上昇させ、抗アポトーシス蛋白Bcl-2を低下させたことから、人参皂苷Rg3はCASP8を介してアポトーシスを誘導し、胆管癌細胞の増殖を抑制すると考えられた。 なお、本研究はネットワーク薬理学とin vitro細胞実験による検証であり、胆管癌患者での臨床的有効性を検証した研究ではない。(2021年、宋爽

人参由来の**人参皂苷Rg3(ginsenoside Rg3)**が、胆管癌の多剤耐性を逆転できるかを検討した実験研究である。アドリアマイシンで誘導したヒト胆管癌多剤耐性細胞株QBC939/ADMを用い、人参皂苷Rg3 80 μg/mLを、シクロホスファミド、マイトマイシン、5-FUとそれぞれ併用した。

Rg3を併用すると、化学療法単独と比較して胆管癌細胞の生存活性が有意に低下し、アポトーシス率はシクロホスファミドで11.79→22.51%、マイトマイシンで9.22→26.56%、5-FUで10.75→21.90%へ上昇した。さらにMDR遺伝子発現は8.17→0.55へ大幅に低下し、人参皂苷Rg3がQBC939/ADMの多剤耐性を逆転する可能性が示された。 ただし、本研究は培養細胞を用いた基礎研究であり、著者自身もRg3による耐性逆転の詳細な機序は未解明で、さらなる研究が必要としている。 (2017年、馬宏波)