顔面神経麻痺の中医論文

まとめ:顔面神経麻痺の中医治療では、正気不足・脈絡空虚を背景に風邪が顔面経絡へ侵入し、痰・瘀を伴って気血運行を阻滞し、経筋が失養する「本虚標実」を基本病機とする報告が多い。治療は祛風通絡・化痰・息風止痙を基本とし、牽正散(白附子、僵蚕、全蝎)が中心的に用いられ、防風、川芎、当帰、蜈蚣、地竜、黄耆などを証に応じて配伍する。急性期では風寒・風熱・風痰を辨証して祛風散寒、疏風清熱、化痰通絡を重視し、病程が長くなるにつれて活血化瘀・益気養血・扶正通絡を強める傾向がみられる。特に慢性・難治例では、当帰、川芎、桃仁、紅花などの活血薬と、全蝎、僵蚕、地竜、蜈蚣などの虫類通絡薬が重視される。

郭員宏らは、2014年5月~2024年5月の文献を対象に、急性期の末梢性顔面神経麻痺に対する中薬内服930処方および中成薬32処方をデータマイニングし、使用頻度の高い生薬は僵蚕749回(80.54%)、白附子682回(73.33%)、全蝎672回(72.26%)、防風580回(62.37%)、川芎518回(55.70%)、当帰415回(44.62%)、蜈蚣356回(38.28%)、甘草352回(37.85%)、白芷317回(34.09%)、羌活250回(26.88%)、赤芍238回(25.59%)、黄耆237回(25.48%)、地竜236回(25.38%)、白芍201回(21.61%)、紅花185回(19.89%)、桂枝181回(19.46%)、鈎藤170回(18.28%)、荊芥164回(17.63%)、天麻156回(16.77%)、葛根139回(14.95%)、桃仁131回(14.09%)、蝉蜕128回(13.76%)、細辛123回(13.23%)、丹参109回(11.72%)、黄芩97回(10.43%)であった。 薬効分類では清熱薬、補虚薬、解表薬、活血化瘀薬、祛風湿薬などが多く、病機は「体虚受風」を基本とし、急性期には祛風邪・通経絡を重視し、病程が長くなると益気補血・扶正を重視する。 特に僵蚕・白附子・全蝎の使用頻度が突出しており、この3味からなる牽正散(白附子、僵蚕、全蝎)が治療の中心的位置を占め、関連分析でも全蝎-僵蚕、白附子-僵蚕、全蝎-白附子などの組み合わせが上位を占めたことから、著者らは急性期の末梢性顔面神経麻痺では証型に応じて「牽正散を軸に、防風・川芎・当帰・黄耆などをどう加えるか」という方向性がデータとしてかなり明瞭に出ています。 治法は祛風通絡を基本とし、祛風化痰・息風解痙・補益肺脾・祛瘀通絡を組み合わせ、必要に応じて補気補血および肝脾腎同調を行うとしている。(2025, 郭員宏

方春龍らは、特発性顔面神経麻痺(IFP)を中医の「口僻」「口歪」「面瘫」などに属する疾患とし、その病因病機には風・痰・瘀が重要で、素体虚弱に風痰の邪が侵入すると経絡の気血運行が障害され、さらに瘀血が形成されて経絡が濡養を失うと考え、内治では祛風・化痰・活血を基本とし、牽正散(白附子、白僵蚕、全蝎)や大秦艽湯(秦艽、甘草、川芎、当帰、白芍、細辛、川羌活、防風、黄芩、石膏、呉白芷、白朮、生地黄、熟地黄、白茯苓、川独活)などを用いるとしている。 また呉門医派の「百病湿為先」「絡病」理論から、IFPは初期には風痰の邪が経気を壅塞し、進行すると絡脈瘀阻を生じて難治化・後遺症化すると捉え、痰湿・絡瘀から治療することを重視している。『呉中秘方録』に収載された「卒然口歪」の外用験方として、王不留行、梔子、白芥子を等量で粉末とし、醋(社醋)と鶏子白(卵白)で調えて塗布し、左に歪めば右側、右に歪めば左側に塗布する方法を紹介している。 方中の白芥子は豁痰利気・散結通絡、王不留行は活血通経・消腫、梔子は利湿解毒・消腫止痛を目的とし、醋は散瘀解毒・活血行気・止痛を助け、鶏子白は清熱解毒するとともに白芥子の発泡・皮膚刺激を軽減し、薬粉を皮膚に固定する賦形剤としての役割を持つとしている。 以上から本方は、呉門医派の「百病湿為先」「絡病」の考えに基づき、化痰除湿・活血通絡・消腫止痛を目的とした特発性顔面神経麻痺の局所外治法として提案されている。(2024, 方春龍

藍青強は面神経炎(面瘫、中風―中経絡証)に対して、息風豁痰・平肝通絡・疏風清熱を治法とし、面瘫専方(全蝎8g、僵蚕15g、地竜15g、蜈蚣2条、防風15g、白蒺藜15g、白芍30g、金銀花15g、大青葉15g、甘草6g)を用いる。全蝎、僵蚕、地竜、蜈蚣、白芍、白蒺藜で平肝息風・豁痰通絡し、防風、金銀花、大青葉で疏風清熱、甘草で諸薬を調和する。 加減は、瘀血には桃仁、紅花を加えて活血散結し、頭痛には石決明、珍珠母、川芎、咽痛・口渇には生地黄、玄参、葛根、便秘には大黄、全瓜蔞、枳殻を加え、風寒症状が明らかな場合は荊芥、白芷を加えて金銀花、大青葉を去る。 症例では28歳男性の発症1週間の右顔面神経炎に対し、舌紅・黄厚略乾苔、弦滑脈、口乾、大便乾結、小便短黄などから疏風清熱・息風豁痰・通絡止痙を治則とし、面瘫専方を加減した防風15g、金銀花15g、連翹10g、大青葉15g、全蝎8g、蜈蚣4条、地竜15g、僵蚕15g、鈎藤20g、白蒺藜10g、甘草6g、大黄6gを7剤投与し、1週間後に症状が消失して顔面も正常に回復した。その後2008年に疲労・受寒を契機に再発した際も同法で治療し、1週間で回復した。(2024, 藍青強

周学鋭は、李妍怡教授が2018年1月~2023年12月に治療した末梢性顔面神経麻痺(PFP)310例・310処方をデータマイニングし、証型は経虚絡滞証119例(38.39%)、風熱襲絡証113例(36.45%)、風寒襲絡証50例(16.13%)、風痰阻絡証28例(9.03%)であり、風寒襲絡証には祛風散寒・温経通絡、風熱襲絡証には疏風清熱・活血通絡、風痰阻絡証には疏風化痰・活血通絡、経虚絡滞証には益気活血・温経通絡を治法とした。 310処方には160味、延べ3,786回の中薬が使用され、高頻度薬は僵蚕241回、全蝎232回、川芎180回、羌活162回、防風162回、白附子144回、当帰136回、黄耆121回、白芍115回、連翹94回、地竜85回、蜈蚣77回、紅花73回、葛根69回、赤芍66回、板藍根65回、桂枝61回、細辛61回、白朮58回、白芷58回、金銀花44回、茯苓44回であった。 薬効別では解表薬20.67%、補虚薬18.82%、平肝息風薬18.61%、清熱薬13.82%、活血化瘀薬11.35%が中心で、李妍怡教授は本症を本虚標実と捉え、正気虧損・脈絡空虚を本とし、風邪が寒・熱などを挟んで虚に乗じて脈絡を痹阻し、気血失調・筋脈失養を来すことを基本病機として、分期辨証、扶正祛邪、和血を重視し、虫類薬による搜風通絡を積極的に用いる。 関連分析から得られた核心薬物9味は僵蚕、全蝎、川芎、当帰、羌活、防風、黄耆、白附子、白芍であり、僵蚕・全蝎の組み合わせが195回と最も多く、僵蚕・全蝎・白附子という牽正散を基本としながら、川芎・当帰による和血活血、羌活・防風による祛風通絡、黄耆による益気扶正、白芍による養血柔筋を組み合わせる処方構造が示された。 ネットワーク薬理学では核心薬物群から47の活性成分、141の薬物-疾患共通標的を抽出し、山奈酚(kaempferol)、β-谷甾醇(β-sitosterol)、欧前胡素、亚油酸乙酯などがAKT1、IL-6、TNF、EGFR、SRC等を介し、HIF-1、MAPK、PI3K-AKT等のシグナル経路を調節することで、神経損傷修復・神経再生を促進する可能性が示された。(2024, 周学鋭

周美娜は、面瘫(顔面神経麻痺)72例を対象に、中薬封包+鍼治療36例鍼治療36例を比較した。中薬封包は証型別に処方し、風熱型:馬銭子1g、麝香1g、冰片1g、黄連6g、薄荷6g、連翹10gを粉末として布袋に入れ、水50mLを噴霧して半湿状態とし、50~70℃に加熱して下関、頬車、完骨、翳風などに5~10分温敷、風寒型:全蝎6g、肉桂10g、防風10g、白附子10g、川烏10gを粉末として布袋に入れ、生姜汁で半湿状態として加熱し、太陽、下関、頬車などに5~10分温敷、血瘀型:紅花6g、乳香10g、三稜10g、香附10g、炮三甲10g、没薬10g、莪朮10gを粉末として布袋に入れ、白酒を噴霧して加熱し、頭部運動区、阿是穴、牽正穴、太陽穴などに温敷した。封包療法は1回20~30分、1日1回、1包を5回使用し、その後に証型別の鍼治療を行った。 治療後、中薬封包+鍼群は鍼単独群に比べ、改良Portmannスコアが18.48±2.32対15.49±3.28、面神経機能スコアが5.26±3.45対7.52±2.79、入院期間が10.45±2.56日対14.64±2.24日と有意に良好で、総有効率も94.44%(34/36)対72.22%(26/36)、P=0.011と有意に高かった。 著者らは特に風寒型に用いる封包について、温熱作用に加え、白附子、全蝎、防風、肉桂などによる祛風散寒・通経活絡作用を重視しており、中薬封包と鍼治療の併用は顔面神経機能の改善と治療期間短縮に有用と結論している。(2022, 周美娜

『中医方剤大辞典(第二版)』から顔面神経麻痺の内服方514方を抽出し、そのうち牽正散類方37方を別に解析した研究です。牽正散類方は「全蝎・僵蚕・白附子を同時に含む」ことを基準として抽出されています。

特に重要なのは、顔面神経麻痺514方全体では、頻用薬として防風、酒、川芎、天麻、甘草、当帰、麻黄、全蝎、天南星、羌活、生姜が上位に入り、牽正散類方37方では、基本薬である全蝎・僵蚕・白附子を除くと、天麻31回、防風23回、天南星22回、朱砂19回、酒18回、麝香18回、麻黄16回、羌活16回、川芎15回、川烏14回、蘄蛇14回が上位でした。したがって、単純に「牽正散=白附子・僵蚕・全蝎」だけで考えるより、天麻、防風、天南星、川芎、麻黄、羌活などを加える処方パターンが歴代方剤では非常に多いことが分かります。

薬性・薬味・帰経では、顔面麻痺方・牽正散類方ともに温性、辛味、肝経が中心です。共通する高頻度薬対として防風+川芎、防風+天麻、防風+麻黄が抽出されています。 また聚類分析では、全蝎・僵蚕・天麻・白附子が一群を形成し、そのほか当帰・川芎・麻黄・防風・白芷・細辛天南星・半夏・陳皮薄荷・荊芥酒・草烏・川烏などの薬群が形成されています。

論文の結論を臨床的にまとめると、顔面神経麻痺の病機は「本虚標実」で、主要な標は風邪による面部経脈の阻滞。治療は祛風薬を基本として、活血薬・補益薬・引経薬を組み合わせるという考え方です。牽正散は特に「搜風通絡」に優れますが、著者は牽正散に軽清上浮の風薬と扶正固本の補益薬を加え、実際の病機に応じて配伍する方が幅広い面瘫に対応できると結論しています。

つまり処方構築としては、牽正散(白附子、僵蚕、全蝎)を核として、天麻、防風、川芎、羌活、麻黄、天南星などを証に応じて配伍するという方向性が、この514方のデータ解析から最も強く示されています。(2021, 骆晓晴

発症7日以内の特発性顔面神経麻痺70例を対象とし、通常の西洋薬+鍼灸に祛風通絡解毒湯を追加したところ、総有効率94.3%で対照群77.1%より有意に高く、顔面運動機能およびTFGS、SASも有意に改善した。祛風通絡解毒湯(当帰10g、赤芍10g、川芎10g、防風10g、蝉衣9g、蜈蚣3g、全蝎5g、鶏血藤30g、地竜9g、土茯苓30g、豨薟草15g、連翹15g、鬱金12g)は、祛風通絡・活血解毒を基本治法とし、著者は特発性顔面神経麻痺では風熱型が多く、風寒型から風熱型へ転化することも多いため清熱解毒薬の配伍が重要としている。(2020, 項万林

張永娟は、顔面神経麻痺86例を対象に、中医鍼灸・推拿のみ43例と、これに中薬内服を併用した43例を比較した。中医では本症を正気不足、陰陽失調、脈絡空虚、衛外不固を背景に、風邪が虚に乗じて経絡に侵入し、気血が痹阻して顔面経筋が濡養を失うことで発症すると捉え、舒筋活絡・扶正祛邪を治療原則としている。 中薬は白附子11g、当帰11g、桂枝9g、川芎9g、杏仁9g、蝉蜕9g、防風6g、甘草6g、全蝎3g、白芍6gを30分浸泡後に煎じ、朝夕2回に分服した。これに太衝、風池、合谷、太陽、人中、攢竹、迎香などへの鍼治療と、迎香、頬車、印堂などへの推拿を併用した。 治療有効率は中薬併用群95.35%(41/43)、鍼灸・推拿群**79.07%(34/43)**で、中薬併用群が有意に高く(P<0.05)、機能スコアも治療前6.82±1.16から治療後14.58±3.05へ改善し、対照群の10.14±2.68より有意に良好であった。 以上から、白附子・全蝎による祛風通絡、桂枝・防風・蝉蜕による祛風解表、当帰・川芎・白芍による養血活血を組み合わせた中薬と、鍼灸・推拿との併用が顔面神経麻痺の機能回復を促進する可能性が示された。(2020, 張永娟

王浩は、周囲性顔面神経麻痺38例を対象に、中薬内服+分期針刺による総合療法19例と、神経栄養・抗ウイルス・血管拡張・ステロイド抗炎症などの西洋医学的治療19例を比較した。中医では本症を正気不足・脈絡空虚・衛外不固を背景として外邪が虚に乗じて経絡に侵入し、気血痹阻、面部脈絡・経筋失養を来す病態と捉え、主な病因を風寒侵襲と気血虧虚として、辨証により祛風散寒または補益気血を行うとしている。 中薬は、気虚血瘀証には通絡止痙・益気活血を治法として補陽還五湯加減(黄耆、当帰、川芎、紅花、桃仁、赤芍、地竜、党参、僵蚕、全蝎)、風寒襲絡証には温経通絡・祛風散寒を治法として牽正散合荊防敗毒散加減(白僵蚕、白附子、全蝎、茯苓、川芎、枳殻、桔梗、柴胡、党参、独活、羌活、防風、荊芥、甘草)を用いた。 針刺も病期別に行い、急性期は通経活絡・祛風散邪、回復期は栄肌養筋・培補脾胃・活血化瘀、兼変症期は息風止痙・舒筋養肌・活血化瘀・培補肝腎を治則としている。 治療成績は、中薬+針刺群の総有効率100%(19/19)、治癒率73.68%(14/19)に対し、西洋医学群では総有効率73.68%(14/19)、治癒率15.79%(3/19)で有意差を認め、治療期間も17.86±3.27日対28.62±4.61日と中薬+針刺群で有意に短かった(P<0.05)。(2019, 王浩

朱慧敏は、特発性顔面神経麻痺94例を47例ずつに分け、通常の西洋医学治療と、それに加味牽正散を併用した治療を比較した。中医では本症を「面瘫」「口眼歪斜」に属し、正気不足・脈絡空虚・衛外不固・営衛失調・腠理疏松を背景として、過労や風邪侵入により面部脈絡が瘀阻し、気血運行不暢・経脈失養・筋肉縦緩不収を来すと捉え、温養通絡・化痰通絡・散寒解表を治法としている。 加味牽正散は、黄耆30g、羌活20g、当帰20g、防風15g、桂枝15g、川芎12g、白附子8g、全蝎8g、僵蚕8gで、1日1剤を水煎し150mLずつ朝夕服用、8週間を1クールとした。 方中、黄耆は補気固表、羌活は解表散寒・祛風勝湿、当帰は補血活血、防風は祛風解表・勝湿、桂枝は解肌・温通経脈、川芎は行気活血・祛風止痛、白附子は祛風・解毒散結、全蝎は息風止痙・通絡、僵蚕は息風止痙・祛風止痛・化痰散結として、全体で祛風止痙・活血通絡を図っている。 治療成績は、通常治療群の有効率82.92%、筋電図正常化率40.43%に対し、加味牽正散併用群では**有効率95.74%、筋電図正常化率61.70%**と有意に高く、眼裂閉合・口角歪斜・顔面麻木などの中医証候も有意に改善した。 また、HBスコアは78.15±8.66対86.62±9.71、FNFIは0.81±0.20対0.92±0.18と併用群で有意に良好で、血清GDNFおよびNGFも併用群で有意に高値となり、著者らは加味牽正散が神経機能の修復・再生を促進する可能性を示している。(2019, 朱慧敏

呉余糧らは、治療3か月以上経過しても改善しない頑固性顔面神経麻痺98例を対象に、中薬治療48例と、中薬+電気鍼治療50例を比較した。中医では本症を経絡空虚を背景に外邪が陽明・太陽経へ侵入し、顔面三陽経の気血運行不暢、脈絡失養、筋肉縦緩不収を来す病態と捉え、治療は祛風通絡・活血行気を基本としている。中薬は当帰15g、桃仁15g、紅花10g、川芎10g、僵蚕10g、全蝎10g、地竜10gを基本方とし、脾胃虚弱には白朮15g、党参15g、気虚には黄耆30g、党参15gを加え、1日1剤を水煎して300mLとし朝夕2回に分服、30日を1クールとして2クール治療した。 著者らは「治風先治血、血行風自滅」を重視し、当帰・桃仁・紅花・川芎によって活血祛風・養血理気を図り、僵蚕・全蝎・地竜によって解毒通絡・活血散瘀して祛風通絡作用を強め、脾胃虚弱には白朮・党参による健脾益気、気虚には黄耆・党参による補気扶正を加え、全体として通経活絡・養血益気・扶正祛邪を図っている。 電気鍼併用群では翳風、足三里、肩井透面瘫穴、陽白透魚腰、迎香透地倉、攢竹透陽白、合谷、四白、球後、承漿透地倉、地倉透頬車などから3~4穴を選択し、1回30分施術した。 治療後のTFGSは中薬単独群71.65±3.48に対し中薬+電気鍼群80.61±3.45、中医証候スコアは3.98±0.48に対し1.75±0.51と併用群で有意に良好で、総有効率も中薬単独群83.3%に対して併用群**94.0%**と有意に高かった(P<0.05)。(2019, 呉余糧

この論文は急性期ではなく「3か月以上改善しない頑固性面瘫」を対象としている点が重要で、処方も牽正散そのものではなく、当帰・桃仁・紅花・川芎という活血養血薬+僵蚕・全蝎・地竜という虫類通絡薬を中心にしており、慢性化した顔面神経麻痺では「祛風」だけでなく活血通絡を前面に出す処方構成になっています。

呉錦鎮らは、顔面神経麻痺について、正気虚を本、風・痰・瘀を標とする本虚標実を基本病機とし、初期には風寒が顔面経絡に侵入し、正気不足のため邪を外へ駆逐できなければ入裏化熱し、さらに素体の痰湿や久病による瘀血が加わると風・痰・瘀が互結して経絡を阻滞し、気血不通から遷延・難治化すると捉え、扶正祛邪・通経活絡を基本治則としている。 中薬治療では牽正散(白附子、全蝎、僵蚕)を基本とし、白附子を君薬として祛風散邪し、全蝎・僵蚕を臣薬として祛風・通絡・止痙し、全蝎は通絡、僵蚕は化痰に優れるとしている。証型別には、風寒型では牽正散に荊芥、防風、五味子、乾姜、桂枝などを加えて疏風散寒・祛邪通絡、風熱型では野菊花、金銀花、葛根、鶏血藤、黄芩などを加えて疏風清熱・祛邪通絡、久病では虚・鬱・瘀を挟むことが多いため蜈蚣、川楝子、鬱金、羌活、独活、黄耆などを加えて開鬱補虚・祛瘀通絡を図るとしている。症例は38歳、発症1か月余で他院の鍼治療1か月でも明らかな改善がなかった顔面神経麻痺で、舌淡暗、苔薄白、脈細などから風寒外侵・脈絡阻滞と辨証し、疏風散寒・祛邪通絡を治法として、牽正散加減(全蝎10g、僵蚕10g、白附子10g、荊芥8g、羌活12g、蜈蚣2条、防風20g、川芎12g、白芷12g、生甘草8g、乾姜10g)を投与し、面瘫針、顳三針、定神針、四神針などの鍼治療を併用した。 2週間後には額紋が出現し、左右顔面筋はほぼ対称となり、鼓気時の軽度漏気と患側筋力低下のみとなり、その後湯薬を継続して1か月後に諸症状が消失し、追跡でも再発を認めなかった。(2019, 呉錦鎮

張田田・胡国恒は、発症15日以内の急性期特発性顔面神経麻痺60例を30例ずつ無作為に分け、通常の西洋医学治療と、それに解毒化痰通絡験方を併用した治療を比較した。中医では本症を「面瘫」「口僻」に属し、正気不足・衛外不固・絡脈空虚を背景として風毒外邪が陽明・少陽の経脈に侵入し、経気阻滞・経脈失養・筋肉縦緩不収を来すと捉え、風邪を発症の先導因子として祛風化痰通絡を基本治法とし、さらに急性期では風熱型が多いとの臨床経験から清熱解毒を加えることを重視している。 解毒化痰通絡験方は、白芥子10g、全蝎3g、僵蚕10g、川芎10g、金銀花15g、野菊花15g、葛根20g、紫花地丁15g、天葵子15g、蒲公英15g、防風15g、黄耆20g、桂枝10g、甘草10gで、1日1剤、水500mLから200mLまで煎じ、朝夕2回に分服し4週間治療した。 方中、白芥子は祛風化痰して頭面の風・皮裏膜外の痰を散じ、僵蚕・全蝎は通絡、葛根は陽明胃経に帰して陽明経絡を通じ、防風は祛風散邪、川芎は養血活血し「上行頭目」、桂枝は解肌発表・温通経脈、金銀花・野菊花・紫花地丁・蒲公英・天葵子は清熱解毒、甘草は諸薬を調和し、全体として清熱解毒・化痰通絡を図っている。治療4週後、解毒化痰通絡験方併用群ではH-BⅠ度まで回復した症例が14/30例で、対照群9/30例より多く、TFGSは治療前39.00±3.77から81.40±2.08へ改善し、対照群の38.57±3.71から72.13±3.76への改善より有意に良好であった。総有効率も併用群93.3%、対照群**83.3%**で有意差を認め、両群とも薬剤関連有害事象は認めなかった。(2019, 張田田

この論文は、これまでの牽正散系の「祛風・通絡・止痙」に対して、急性期、とくに風熱・熱毒をかなり強く意識して金銀花、野菊花、紫花地丁、蒲公英、天葵子をまとめて配伍している点が特徴的です。

呉錦鎮らは、顔面神経麻痺を正気虚を本、風・痰・瘀を標とする本虚標実と捉え、初期には風寒が顔面経絡に侵入し、正気不足のため邪を外へ駆逐できなければ入裏化熱し、さらに素体の痰湿や久病による瘀血が加わると風・痰・瘀が互結して経絡を阻滞し、気血不通から遷延・難治化すると考え、扶正祛邪・通経活絡を基本治則としている。 中薬治療では牽正散(白附子、全蝎、僵蚕)を基本とし、白附子を君薬として祛風散邪し、全蝎・僵蚕を臣薬として祛風・通絡・止痙し、特に全蝎は通絡、僵蚕は化痰に優れるとしている。証型別には、風寒型では牽正散に荊芥、防風、五味子、乾姜、桂枝などを加えて疏風散寒・祛邪通絡、風熱型では牽正散に野菊花、金銀花、葛根、鶏血藤、黄芩などを加えて疏風清熱・祛邪通絡、久病では虚・鬱・瘀を挟むことが多いため牽正散に蜈蚣、川楝子、鬱金、羌活、独活、黄耆などを加えて開鬱補虚・祛瘀通絡を図るとしている。 症例は38歳、発症1か月余で他院の鍼治療を1か月受けても明らかな改善がなかった顔面神経麻痺で、舌淡暗、苔薄白、脈細などから風寒外侵・脈絡阻滞と辨証し、疏風散寒・祛邪通絡を治法として、牽正散加減(全蝎10g、僵蚕10g、白附子10g、荊芥8g、羌活12g、蜈蚣2条、防風20g、川芎12g、白芷12g、生甘草8g、乾姜10g)を投与し、面瘫針、顳三針、定神針、四神針などの鍼治療を併用した。 2週間後には額紋が出現し、左右顔面筋はほぼ対称となり、鼓気時の軽度漏気と患側筋力低下のみとなり、その後湯薬を継続して1か月後に諸症状が消失し、追跡でも再発を認めなかった。(2019, 呉錦鎮

畢金陽は、末梢性顔面神経麻痺67例(病程1日~3か月)に対して、鍼・電気鍼・TDP照射と中薬内服を併用して治療した。中医では本症を「口喎」「口僻」「口歪眼斜」に属し、正気不足・脈絡空虚・外衛不固を背景に風邪が虚に乗じて陽明・少陽経絡へ侵入し、気血痹阻・経筋失養・筋肉弛緩不収を来すと捉えている。 中薬は**牽正散合補陽還五湯加減(白附子10g、全蝎9g、白僵蚕15g、蜈蚣2条、黄耆45g、葛根30g、当帰9g、川芎15g、紅花10g、桃仁6g、地竜10g)を基本方とし、風寒盛には桂枝、防風、柴胡、風熱邪盛には金銀花、竹葉、肝陽上亢には鈎藤、菊花、気血虚には党参、何首烏、痰湿偏重には白朮、茯苓、口眼の蠕動を伴う場合には天麻を加え、1日1剤を水煎して朝夕2回に分服した。 鍼治療は陽白、頬車、太陽、牽正、四白、地倉、迎香を主穴として4~6穴を選び、証候・症状に応じて曲池、陽陵泉、血海、気海、足三里、風池、合谷、外関、太衝、攢竹、翳風、人中、承漿などを加え、急性期には疏密波、回復期には連続波による電気鍼を行い、中薬と同時に治療した。 67例中治癒60例(90%)、好転7例(10%)、無効0例、総有効率100%**であった。 典型例では、風寒外襲・脈絡空虚と辨証した右末梢性顔面神経麻痺に、疏通経絡・補気活血・祛風散寒を目的として、白附子5g、全蝎3g、白僵蚕15g、地竜15g、紅花9g、桃仁6g、当帰10g、川芎20g、天麻10gを投与し鍼治療を併用したところ、1週間で著明に改善し、2週間で顔面機能が完全に正常化した。(2019, 畢金陽

この処方は、牽正散(白附子、全蝎、白僵蚕)+補陽還五湯系の黄耆・当帰・川芎・紅花・桃仁・地竜+蜈蚣・葛根という構造で、これまでの論文の中でも特に益気活血・通絡を強くした処方です。

陳彦英は、顔面神経麻痺90例を45例ずつに分け、通常治療群と鍼灸+中薬穴位貼敷群を比較した。 中医辨証に基づき、風熱型では陽白、迎香、頬車、下関、太陽、地倉、顴髎、四白などに鍼治療を行い、遠位穴として魚際、曲池、大椎、合谷を選択し、瀉法または電気鍼を施行するとともに、連翹10g、薄荷6g、黄連6g、冰片2g、麝香0.2g、制馬銭子1gを粉末にして約2cmの薬餅とし、翳風、完骨、頬車、下関に貼敷した。風寒型では陽白、迎香、頬車、下関、太陽、地倉、顴髎、四白に加え、列缺、風門、合谷、風池などを選穴して温鍼灸を行い、制川烏10g、白附子10g、防風10g、肉桂10g、全蝎6gを粉末にして少量の生姜汁で調え、約2cmの薬餅として頬車、下関、太陽に貼敷した。 治療後の総有効率は、通常治療群**73.33%(33/45)に対し、鍼灸+中薬穴位貼敷群では93.33%(42/45)**と有意に高く(P<0.05)、著者は鍼灸に辨証別の中薬穴位貼敷を併用することで顔面筋機能の改善と治療効果の向上が期待できるとしている。(2019, 陳彦英

※この論文は内服方ではなく外用の穴位貼敷処方です。特に風寒型の白附子・全蝎・防風・肉桂・制川烏+生姜汁という構成が特徴的です。

仲海紅は、急性期の風寒型周囲性顔面神経麻痺60例を対象に、西洋医学的通常治療30例と、それに散寒解毒湯を併用した30例を比較した南京中医薬大学の修士研究である。 中医では本症について、面部脈絡空虚により御邪能力が低下したところへ風寒邪が侵入し、顔面経脈の気機が阻滞して筋脈が失養することを主要病機とし、祛風散寒・活血通絡を治法としている。散寒解毒湯は符為民教授の経験方で、牽正散を基礎に桂枝、防風、細辛、白蒺藜、白芷、川芎などを加えた処方である。 散寒解毒湯(制白附子10g、僵蚕10g、全蝎6g、桂枝6g、防風10g、白蒺藜10g、白芷10g、川芎10g、当帰10g、赤芍10g、細辛3g、甘草5g)を顆粒剤として1日1剤、朝夕2回に分服した。両群共通の西洋医学治療はプレドニゾロン30mg/日を5日間投与後、5日間で毎日5mgずつ減量して中止し、メコバラミン0.5mgを1日3回投与した。 方剤は白附子・全蝎・僵蚕を君薬とし、牽正散による祛風止痙・通絡を中核として、桂枝・防風・細辛・白芷などによる散寒祛風、川芎・当帰・赤芍による養血活血・通絡を組み合わせた構造であり、著者は全体として祛風散寒・活血通絡を狙った処方としている。治療期間は14日を1クールとして2クール、計28日間で、H-B面神経機能評価では14日後の有効率が散寒解毒湯併用群82.76%、対照群72.41%、28日後では89.66%対82.76%で、いずれも併用群が有意に良好であった(P<0.05)。中医症状評価でも14日後93.10%対75.86%、28日後**93.10%対89.66%**と併用群が有意に良好で、28日後のH-B機能スコアも6.83±1.20対6.24±1.73と有意に改善した。著者は、散寒解毒湯併用により風寒型周囲性顔面神経麻痺の臨床症状を改善し、面神経機能の回復を促進すると結論している。(2019, 仲海紅

この論文はこれまでの中でも、**「牽正散+祛風散寒薬+活血養血薬」**という構造が明瞭です。すなわち、白附子・僵蚕・全蝎 + 桂枝・防風・白芷・細辛・白蒺藜 + 川芎・当帰・赤芍という組み立てで、風寒型の急性期に特化した処方です。

袁栄金・周天梅は、**特発性顔面神経麻痺(Bell麻痺)について、周天梅の臨床経験をもとに『千金』三黄湯の運用法と2症例を報告している。病機の中心を「脈絡空虚、賊邪不泄」**と捉え、正気が虚して脈絡が空虚となったところに外邪が侵入し、邪が抜けず顔面経絡を阻滞することを重視する。したがって単純な祛風通絡ではなく、固表扶正しながら邪を外へ泄する「固表祛邪」を基本治法としている。 基本方は『金匱要略・中風歴節病』附方の《千金》三黄湯(麻黄、独活、細辛、黄耆、黄芩)で、麻黄で発表して邪を外泄し、黄耆で固表扶正する「一泄一補」を中心とし、独活・細辛で祛風散寒、黄芩で清熱除煩して邪鬱化熱を防ぐ。著者らは全体として固表祛邪を主とし、散寒除熱を兼ねる方剤と位置づけている。

臨床では麻黄の用量を特に重視し、体質の虚実に応じ10~15gから開始して3gずつ増量し、先煎して上沫を除く。細辛は寒熱の程度により5~10g、黄耆は通常15g前後だが、易感冒・倦怠・自汗・皮肉弛緩など表虚・気虚が明らかな場合には60g以上まで増量し、黄芩・独活は6~15gを用いるとしている。 また証に応じ、風寒には桂枝湯、風熱には僵蚕・葛根または黄芩増量、風痰には白附子・僵蚕、気虚血瘀には黄耆増量または党参・白朮・川芎を加える。

症例1は36歳男性、受風後2日で発症した表虚風寒襲絡証で、易感冒・自汗、頭痛、耳後脹悶を伴い、舌淡・苔薄膩、脈浮細軟であった。**三黄湯合桂枝湯(麻黄15g、黄耆15g、桂枝12g、赤芍12g、生姜12g、独活9g、黄芩6g、細辛5g、大棗10g、炙甘草8g)**を投与し、麻黄・黄耆を20g、さらに麻黄23g、28gへ漸増した。約1か月で額紋・鼻唇溝が左右対称となり閉眼可能となり、その後ほぼ回復した。著者は麻黄・黄耆の「一泄一補」に加え、桂枝・赤芍による調和営衛を重視している。

症例2は35歳女性、疲労後に発症し耳後痛・心悸・苔膩・脈浮滑略数を呈する風痰阻絡証で、**三黄湯合牽正散加減(麻黄15g、黄耆15g、桂枝12g、独活8g、細辛6g、黄芩6g、僵蚕6g、地竜6g、関白附6g、炙甘草6g、生白朮30g)**を投与した。耳後痛が残ったため二診で制附子15gを追加し、麻黄を18g、20gへ増量。約1か月で口角歪斜・耳後痛が著明に改善した。この症例では三黄湯に牽正散を合わせ、祛風化痰通絡を強めている。

したがって本報告の特徴は、顔面神経麻痺を単純な「風邪入絡」とせず、**「脈絡空虚」を背景とした「賊邪不泄」**として捉え、黄耆で扶正・固表しながら麻黄で邪を外泄する点にある。基本構造は 麻黄・黄耆 + 独活・細辛 + 黄芩で、そこへ証に応じて桂枝湯、牽正散、益気活血薬を組み合わせる治療体系といえる。(2019, 袁栄金・周天梅

李坤は、発症8~15日の静止期にある片側性顔面神経麻痺108例を54例ずつに無作為に分け、桃紅四物湯単独群と、透刺+桃紅四物湯併用群を比較した。対象は額紋減少、口眼歪斜、閉眼不全、眼裂拡大、口角流涎などを呈し、頭部MRIで中枢性顔面麻痺を除外した症例である。 中医では面瘫を「口僻」に属し、脈絡空虚を背景に熱毒または風寒が侵入し、気血瘀滞・脈絡阻滞・筋脈失養を来すと捉え、特に静止期では外邪がすでに去った後の瘀血・経絡不通を重視し、活血化瘀を主要治法としている。 両群に桃紅四物湯(紅花15g、桃仁15g、白芍15g、川芎15g、熟地黄15g、当帰15g)を1日1剤、水煎して300mLとし、朝夕150mLずつ投与した。観察群ではさらに攢竹透魚腰、承漿透大迎、地倉透頬車の透刺に合谷を配穴し、平補平瀉で20分留針、1日1回施行し、両群とも10日間治療した。 桃紅四物湯は、紅花・桃仁による活血祛瘀、川芎による活血祛瘀・祛風止痛、当帰による補血活血、熟地黄による補血滋陰・益精填髄、白芍による養血・斂陰を組み合わせ、全体として活血祛瘀・舒筋通絡・補血養血を図る処方としている。 治療後のHouse-Brackmann分類ではⅠ度まで回復した症例が桃紅四物湯単独群20/54例(37.04%)に対し、透刺併用群では30/54例(55.56%)と有意に良好であった(P=0.035)。また患側筋電図M波振幅は、口輪匝筋1.17→1.90mV、上唇方筋1.67→2.12mV、眼輪匝筋1.04→1.33mV、前頭筋0.42→0.82mVと、いずれも透刺併用群で単独群より有意に高値となった(すべてP<0.001)。著者は、透刺による局所血流改善・神経筋刺激と桃紅四物湯による活血祛瘀・養血通絡を組み合わせることで、顔面神経機能の回復を促進すると結論している。(2019, 李坤

この論文はこれまでの急性期の牽正散系とは治療思想がかなり異なり、発症8~15日の「静止期」に対象を限定して、祛風よりも「活血化瘀・養血通絡」を前面に出して桃紅四物湯を使用している点が重要です。

李娟芳は、発症3日以内の風痰阻絡型特発性顔面神経麻痺(IFP)60例を無作為に治療群30例と対照群30例に分け、基礎治療単独と、これに加味牽正散を併用した治療を比較した。風痰阻絡証は、顔面麻痺に加えて顔面のしびれ・抽搐、頭重、胸悶または痰涎嘔吐、胖大舌、白膩または白滑苔、弦滑脈を呈するものと定義している。 中医病機について、先天稟賦不足による正気虚、あるいは後天的な脾胃損傷による痰湿内生・気血生化不足を基礎とし、そこへ風寒・風熱などの外邪が侵入して顔面経絡の気血運行を阻害し、筋脈が濡養を失って面瘫を生じると捉え、「治風先治血、血行風自滅」の思想に基づき、養血活血・祛風通絡を治法としている。加味牽正散は牽正散合四物湯を基礎として柴胡・葛根・升麻・甘草を加えた方剤で、当帰20g、川芎10g、白附子10g、熟地黄15g、白芍15g、全蝎5g、僵蚕15g、蜈蚣5g、柴胡10g、葛根15g、升麻10g、甘草5gからなり、免煎顆粒を200mLの湯に溶かして朝夕2回服用した。 方中、当帰・川芎・白附子を君薬として養血活血・活血化瘀・祛風化痰を図り、熟地黄・白芍・全蝎・蜈蚣・僵蚕を臣薬として補血養陰と熄風止痙・通絡を強め、柴胡・葛根・升麻を佐薬として津精を頭面へ升挙し経絡を調暢し、甘草を使薬として益気扶正・調和諸薬を図り、全体として養血活血・祛風通絡の作用を形成する。著者は、牽正散の辛燥・祛風薬に四物湯を組み合わせることで、「駆邪而不傷正、搜風而不耗血」とすることを処方上の重要点としている。 両群の基礎治療にはプレドニゾロン漸減投与、ビタミンB1、メコバラミン、眼科的保護に加え、攢竹・陽白・四白・顴髎・頬車・地倉・迎香・水溝・承漿・翳風・合谷などへの鍼治療が含まれ、両群とも4週間治療した。 最終解析は治療群29例、対照群30例で、4週後のH-BⅠ度への回復は治療群18/29例、対照群13/30例、顔面神経麻痺程度スコアは治療群90.34±15.88、対照群79.75±25.21で、いずれも治療群が有意に良好であった。1か月後の追跡でもH-BⅠ度は20/29例対13/30例、麻痺程度スコアは93.10±13.37対81.33±22.87と治療群が優れていた。 4週後の愈顕率は82.75%対66.67%、総有効率は96.55%対83.33%で、治癒例の平均治療期間も21.78±2.26日対27.70±1.25日と加味牽正散群で短縮した。重篤な有害反応は認めなかった。(2019, 李娟芳

この論文の処方構造はかなり明瞭で、牽正散(白附子・全蝎・僵蚕)+四物湯(当帰・川芎・熟地黄・白芍)+蜈蚣+柴胡・葛根・升麻・甘草です。単なる祛風化痰ではなく、「治風先治血」から四物湯を全面的に組み込み、急性期から養血活血を併用している点が特徴です。

劉海麗は、発症5日以内の風寒襲絡型顔面神経麻痺64例を32例ずつ無作為に分け、九味羌活湯群とファムシクロビル群を比較した。両群ともメコバラミン、デキサメタゾン、赤外線照射、鍼治療などの基礎治療を併用しており、九味羌活湯単独療法との比較ではない。 中医では顔面神経麻痺を「卒口僻」「口眼歪斜」に属し、外邪が経脈に侵入し、営衛不和を来すことが病機と捉え、行気活血・舒経通絡を治療の基本としている。本研究では特に風寒襲絡型の急性期を対象として、外感風寒湿邪を散じる九味羌活湯を用いている。 九味羌活湯(羌活9g、蒼朮9g、防風9g、川芎6g、生地黄6g、黄芩6g、白芷6g、甘草6g、細辛3g)を1日1剤、水煎服し、白膩苔には半夏・僵蚕、表証が明らかな場合には蝉蜕・桑葉を加え、2週間治療した。対照群はファムシクロビル0.25gを1日3回投与した。 方剤について著者は、羌活を君薬として散表寒・祛風湿し、防風・蒼朮を臣薬として祛風除湿・散寒し、さらに細辛による祛風止痛、川芎による活血行気、生地黄による清熱涼血、黄芩による清熱瀉火、甘草による調和諸薬などによって、表裏兼顧・発汗祛湿を図るとしている。 治療後の総有効率は九味羌活湯群100%(32/32例)、ファムシクロビル群**93.75%(30/32例)**で、治癒6例・顕効19例・有効7例・無効0例に対し、対照群は治癒5例・顕効17例・有効8例・無効2例であったが、群間差は統計学的に有意ではなかった(P>0.05)。面神経機能についても両群間に有意差を認めず、著者は九味羌活湯がファムシクロビルと同程度の治療効果を示したと結論している。(2019, 劉海麗

なお、この論文には記載上の明らかな不整合があります。実際の処方欄は「羌活・蒼朮・防風・川芎・生地黄・黄芩・白芷・甘草・細辛」の9味ですが、考察ではなぜか独活・黄連・白朮にも言及しています。したがって、処方構成として採用すべきなのは方法欄に明記された上記9味です。

高超は、面神経炎40例を20例ずつに分け、鍼灸単独群加味牽正散+鍼灸群を比較した。対象の病程は1~49日で、観察群では加味牽正散を内服しながら、太陽、地倉透頬車、陽白、翳風、合谷などに鍼灸を1日1回、2週間施行した。 加味牽正散(赤芍12g、荊芥12g、全蝎7g、甘草5g、白附子10g、僵蚕10g、防風15g、川芎12g、蝉蜕6g、蜈蚣2条)を1日1剤、2回に分服し、風熱には金銀花15g、菊花12g、柴胡10g、風痰阻絡には胆南星7g、石菖蒲15gを加えた。 中医では顔面神経麻痺を「中風」の範疇に置き、正気不足を背景として風寒・風熱の邪が侵入し、気血・経絡が阻滞する病態と捉えている。処方では、白附子で祛風解痙・頭面の風邪を除き、全蝎で定風止痙・通絡止痛、僵蚕で化痰止痙・祛絡中之風、防風・荊芥・蝉蜕・蜈蚣で祛風散邪、川芎・赤芍で活血通絡を図るとしており、全体として祛風散邪・化痰止痙・活血通絡を狙った構成である。 治療成績は、加味牽正散+鍼灸群では顕効9例(45%)、有効11例(55%)、無効0例、総有効率100%、鍼灸単独群では顕効6例(30%)、有効7例(35%)、無効7例(35%)、総有効率65%とされ、併用群が有意に良好であった(P<0.05)。(2019, 高超

この処方は、牽正散(白附子、僵蚕、全蝎)+荊芥・防風・蝉蜕・蜈蚣+川芎・赤芍という構造で、これまでの処方と比較すると、補益薬を入れず祛風を強くしながら、川芎・赤芍で活血通絡を加えている点が特徴です。

花紅・沈翀奇は、面瘫64例を各32例に分け、鍼灸単独群と鍼灸+加味牽正散群を比較した。対象の病程は1~29日程度で、鍼灸は陽白、合谷、太陽、地倉透頬車、翳風などを用い、平補平瀉法で30分留針し、艾絨による温熱刺激を併用して1日1回、2週間治療した。 観察群ではこれに加味牽正散(蜈蚣2条、甘草5g、蝉蜕6g、全蝎7g、僵蚕10g、白附子10g、川芎12g、荊芥12g、赤芍12g)を1日1剤、水煎して朝夕2回に分服し、風痰阻絡型には石菖蒲15g、胆南星7g、風熱には柴胡10g、菊花12g、金銀花15gを加え、2週間治療した。 中医では顔面神経麻痺を中風・口僻の範疇とし、正気不足を背景に風寒・風熱などが侵入して気血・経絡が阻滞する病態と捉えている。方中、白附子は祛風・解痙して頭面の風を除き、僵蚕は化痰止痙、全蝎は定風止痙・通絡止痛、蝉蜕・荊芥・蜈蚣は祛風散邪、赤芍・川芎は活血通絡として、全体として祛風化痰・止痙通絡・活血を図る処方としている。 治療後、鍼灸+加味牽正散群では顕効25例、有効6例、無効1例、総有効率96.88%、鍼灸単独群では顕効18例、有効7例、無効7例、総有効率78.13%で、併用群が有意に良好であった(P=0.023)。面瘫スコアも併用群では12.3±2.5→4.6±2.0、鍼灸単独群では12.6±2.2→8.9±1.9となり、治療後は併用群が有意に低値であった(P<0.001)。(2019, 花紅

なお、この処方は直前の高超(2019)の加味牽正散とほぼ同一ですが、高超方に入っていた防風15gが、この花紅論文では入っていません。高超方は「赤芍、荊芥、全蝎、甘草、白附子、僵蚕、防風、川芎、蝉蜕、蜈蚣」、花紅方は「赤芍、荊芥、全蝎、甘草、白附子、僵蚕、川芎、蝉蜕、蜈蚣」です。

周光照は、面瘫68例を治療群35例と対照群33例に分け、牽正散加減+鍼灸と、マンニトール・デキサメタゾンを中心とした西洋医学的治療を比較した。治療群では病歴2日前後の症例が多く、基本方として牽正散に天麻・地竜・防風を加えた処方を用い、証型に応じて加減している。 基本方は白附子12g、白僵蚕12g、全蝎5g、天麻9g、地竜10g、防風6gで、風熱には葛根・菊花、風寒には桂枝・白芍、気虚には黄耆・党参を加えた。中薬は1日1剤を水煎して2回に分服し、絲竹空、頬車、地倉、陽白、睛明、合谷、足三里などへの鍼治療を1日1回施行し、10日を1クールとした。 著者は、白附子を祛風化痰して頭面の風を除く中心薬とし、白僵蚕の化痰作用を組み合わせ、全蝎で通絡し、さらに天麻・地竜・防風を加えることで祛風・通絡・止痛作用を強化すると説明している。鍼では関元・気海・足三里などで補益し、顔面局所穴で祛風通絡・活血止痛、合谷を遠位取穴として頭面部の経絡を疏通するという構成である。 治療成績は、牽正散加減+鍼灸群で治癒29/35例(82.8%)、好転3例(8.6%)、無効3例(8.6%)、総有効率91.4%、対照群では治癒17/33例(51.5%)、好転7例(21.2%)、無効9例(27.3%)、総有効率72.7%で、治療群が有意に良好であった(P<0.01)。治療群では明らかな有害反応を認めなかった。 典型例は31歳男性で、疲労後に冷風を受けて発症し、舌淡・苔白・脈沈細などから気虚・風邪入絡と辨証し、補益気血・祛風活絡を治法として、白附子12g、白僵蚕12g、全蝎6g、天麻9g、地竜10g、防風5g、黄耆15g、太子参15gを投与し鍼治療を併用したところ、10日で著明に改善、20日でほぼ治癒し、3クール後には後遺症なく正常に回復した。(2018, 周光照

この論文の基本処方は非常にシンプルで、牽正散(白附子・白僵蚕・全蝎)+天麻・地竜・防風です。これまでの論文と比較しても、天麻・地竜を加えて息風・通絡を強化する一方、基本方には活血薬や補益薬を入れず、気虚の場合だけ黄耆・党参を追加するという組み立てが特徴です。

賀冠軍は、周囲性顔面神経麻痺87例を鍼治療単独群40例と鍼治療+中薬正顔湯群47例に分けて比較した。治療群の病程は2~15日、対照群は3~14日で、両群とも片側性顔面神経麻痺であった。 中医治療では、翳風、頬車、合谷、太陽、下関、陽白、頭維、四白、迎香、地倉などを基本穴とし、発症1週未満の初期は少数穴への浅刺・軽刺激、7~14日の中期は平補平瀉、3週~1か月の後期は正気虚を考慮して培補正気・活血通絡を目的とした補法、1か月以降の後遺症期には正気虧虚を重視して遠位穴を併用するなど、病期によって鍼法を変更している。 治療群ではこれに正顔湯(防風9g、紅花10g、全蝎6g、僵蚕10g、荊芥9g、蜈蚣2条、鈎藤20g、桃仁10g、白附子6g、炙穿山甲6g、白芷10g、葛根12g)を1日1剤、水煎400mLとして朝夕2回に分服した。偏頭痛には生石決明20g、蔓荊子10g、川芎9g、口鼻乾燥・軽度咽痛・口渇・黄苔には生地黄15g、玄参15g、易怒・胸脇満悶・弦数脈には黄芩10g、香附10g、生白芍12g、数日ごとの便秘には全瓜蔞30g、枳実10g、酒大黄6gを加えた。 方中、荊芥・防風は祛風解表、全蝎は入肝祛風して口眼歪斜を治し、僵蚕は祛風化痰、白附子は祛風燥痰、白芷は解表祛風燥湿して陽明経に入り、鈎藤は祛風舒筋・清心涼肝、蜈蚣は祛風止痙、葛根は軽揚升発して陽明経に入り解肌開腠、桃仁・紅花は活血散結、炙穿山甲は通行経絡・引薬直達病所として、全体で散風活絡・化痰解痙を図る処方としている。 治療後のPortmann面神経機能スコアは、鍼+正顔湯群で6.73±0.84→18.76±1.69、鍼単独群で6.78±0.93→15.49±1.34となり、治療群が有意に良好であった。総有効率も**91.49%(43/47)対67.50%(27/40)**で有意差を認め、治療群では治癒7例、顕効22例、有効14例、無効4例であった。(2018, 賀冠軍

この正顔湯は、これまでの処方の中でも構造が明瞭で、牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)+防風・荊芥・白芷+鈎藤・蜈蚣+桃仁・紅花・炙穿山甲+葛根、すなわち祛風化痰・息風止痙・活血通絡+陽明経への引経を組み合わせた処方とみることができます。なお、穿山甲は現在は保護対象であり、日本で臨床使用する処方としては代替を考える必要があります

周栄生は、顔面神経麻痺74例を37例ずつに無作為に分け、鍼灸・推拿単独群鍼灸・推拿+中薬群を比較した。対象はいずれも突然発症し、患側顔面筋の麻木、額紋消失、皺眉不能、閉眼不全などを呈し、一部では味覚低下や耳後部不快感を伴っていた。 中医では本症を、正気不足・脈絡空虚を背景として外邪が侵入し、気血阻滞・営衛不和を生じ、邪気が長く停滞することで経脈が失養する病態と捉え、舒筋活絡・扶正祛邪を基本治則としている。 中薬は防風10g、白附子10g、川芎6g、桂枝10g、白芷10g、僵蚕6g、羌活10g、蝉蜕10g、全蝎3g、蜈蚣2条、鈎藤10g、皂角10g、甘草6gを1日1剤、水煎して2回に分服し、4週間治療した。鍼灸では地倉、翳風、攢竹、頬車、下関、合谷、四白、陽白を基本穴とし、寒証には風池、熱証には曲池、鼻唇溝が浅い場合には迎香、頤唇溝の歪斜には承漿を加え、さらに顔面への推拿を併用した。 方中、防風・桂枝は散寒祛風、白芷は消腫止痛、羌活は祛風除湿、蜈蚣・全蝎・僵蚕は通絡して経絡中の風邪を除き、鈎藤は息風止痙、皂角は消腫などを目的とし、甘草で諸薬を調和して、全体として祛風活絡・化痰解痙を図る処方としている。治療後の総有効率は鍼灸・推拿+中薬群94.60%(35/37)、鍼灸・推拿単独群78.38%(29/37)で、中薬併用群が有意に良好であった(P<0.05)。Portmann機能スコアも中薬併用群では6.6±1.1→14.1±1.6、対照群では6.7±1.3→10.3±1.8と有意差を認め、治療に要した期間も12.4±1.8日対19.5±1.4日と中薬併用群で有意に短かった。(2018, 周栄生

この処方は、牽正散系(白附子・僵蚕・全蝎)+蜈蚣・鈎藤+防風・桂枝・白芷・羌活・蝉蜕+川芎・皂角という構成で、祛風散寒・化痰止痙・通絡をかなり前面に出した処方です。補気・養血薬をほとんど用いず、川芎のみで活血を加えている点も特徴です。

守権は、面瘫78例を39例ずつに無作為に分け、鍼灸単独群鍼灸+中薬穴位貼敷群を比較した。対象の病程は対照群1~14か月(平均5.41±1.67か月)、観察群2~15か月(平均5.57±1.71か月)であり、これまでの急性期研究とは異なり、比較的病程の長い症例が対象となっている。 治療は風熱型・風寒型・血瘀型に辨証して行い、風熱型では四白、地倉、太陽、顴髎、下関、迎香、頬車、陽白などに合谷、曲池、大椎、魚際、外関などを加えて瀉法または電気鍼、風寒型では同様の顔面穴に合谷、風池、列缺などを加えて瀉法・温鍼灸、血瘀型では顔面穴に肝兪、内庭、血海などを加えて平補平瀉法を行った。 さらに観察群では辨証別に中薬穴位貼敷を併用し、風熱型:連翹10g、薄荷6g、黄連6g、冰片2g、制馬銭子1g、麝香0.2gを粉末として少量の生姜汁で調え、下関、頬車、翳風、完骨などに貼敷、風寒型:制川烏10g、防風10g、肉桂10g、白附子10g、全蝎6gを粉末として水で調え、下関、太陽、頬車などに貼敷、血瘀型:莪朮10g、香附10g、乳香10g、没薬10g、三稜10g、炮山甲10g、紅花6gを粉末として酒で調え、頭部運動区、太陽、牽正、阿是穴などに貼敷した。 治療後の総有効率は鍼灸+穴位貼敷群97.44%(38/39)、鍼灸単独群76.92%(30/39)で、併用群が有意に高かった(P<0.05)。H-B分類も併用群では3.92±0.41→2.01±0.33、対照群では3.89±0.28→2.87±0.35となり、治療後は併用群が有意に良好であった。(2018, 紀守権

この論文は中薬内服ではなく穴位貼敷ですが、病程の長い症例を含み、特に血瘀型に莪朮・三稜・乳香・没薬・紅花という強い活血化瘀・通絡薬をまとめて使用している点が興味深いです。一方、風寒型は白附子・全蝎+制川烏・防風・肉桂で温経散寒・祛風通絡を狙う構成です。なお、炮山甲(穿山甲)、麝香、馬銭子、川烏などを含むため、この処方をそのまま現在の日本の臨床に転用できるという意味ではありません。

王雅楠・付美艶・王朝輝は、顔面神経麻痺60例を30例ずつに分け、鍼灸理療単独群鍼灸理療+中薬湯剤群を比較した。論文では対象を「中風面瘫」と表記しているが、本文では面神経麻痺を「多くは急性発症」と説明しており、ウイルス感染・疲労・受涼などを発症要因として挙げている。 中薬は蜈蚣1条、防風10g、川芎10g、白附子10g、葛根15g、当帰10g、全蝎10g、地竜10g、菊花6g、甘草10g、川牛膝10gを1日1剤、水煎して300mLとし、朝夕2回に分服した。鍼治療は急性期には風池・合谷・太衝を取り、病状安定後には陽白・頬車・地倉などを用い、必要に応じて電気鍼を行い、1日1回30分施術した。 中医的な処方意図について著者は個々の生薬の方義を詳細には記載しておらず、中薬湯剤全体として**「調理気血・疏経活絡」の作用を有すると説明している。 処方構成からみると、白附子・全蝎・蜈蚣による祛風止痙・通絡、防風・菊花による祛風、地竜による通絡、川芎・当帰による養血活血、葛根による舒筋・陽明経への作用、川牛膝による活血通絡を組み合わせた処方と解釈できるが、この生薬別の分類は論文本文ではなく処方からの解釈である。治療成績は、鍼灸理療+中薬群で治癒18例、好転11例、無効1例、総有効率96.67%、鍼灸単独群では治癒10例、好転10例、無効10例、総有効率66.67%で、併用群が有意に良好であった(P<0.05)。また治療期間は10.34±1.24日対17.87±1.34日**、入院期間は21.34±1.23日対45.56±1.24日と、いずれも中薬併用群で有意に短縮した。(2018, 王雅楠

この処方は、これまでの処方と比較すると、白附子・全蝎を中核に蜈蚣・地竜を加えた「祛風通絡・虫類通絡薬」+川芎・当帰による養血活血という構造が明瞭です。一方で僵蚕を含まないため、典型的な牽正散そのものではありません。

馬悦・王恩龍は、発症4日未満の急性期周囲性顔面神経麻痺60例を30例ずつに分け、プレドニゾロン・アシクロビル・ビタミンB1・メコバラミンによる通常西洋医学治療群と、これに鍼灸+加味牽正湯を併用した群を比較した。中医では本症を「口僻」「面瘫」「吊線風」に属し、衛外不固・正気虧虚を背景として風寒または風熱の邪が顔面経絡に侵入し、気血痹阻・経筋失養を生じ、顔面筋が縦緩不収となると捉え、祛風通絡・疏調経筋を基本治則としている。 加味牽正湯(荊芥15g、防風15g、黄耆12g、当帰12g、川芎12g、白芷9g、鈎藤9g、白附子6g、炒白僵蚕6g、全蝎6g)を200mLに煎じ、朝夕各100mLを服用した。鍼灸は陽白透魚腰、地倉透頬車、四白、迎香、合谷、太衝を主穴とし、風寒証には風池・風府、風熱証には曲池・内庭、気血虧虚証には百会・足三里などを加え、急性期の顔面局所は浅刺・軽刺激とした。10日を1クール、クール間を2日空け、計3クール治療した。 方中では、荊芥・防風を君薬とし、荊芥は祛風解表して皮裏膜外の風邪を散じ、防風は宣表祛風して頭目の滞気を散ずる。黄耆・当帰は補気生津・活血通絡、川芎は祛風止痛・活血行気、白芷は祛風燥湿して陽明経への引経薬、鈎藤は涼肝祛風・通絡止痙、白附子は祛風化痰して頭面の風を治し、全蝎は祛風止痙、僵蚕は化痰散結としている。特に白附子・僵蚕・全蝎が牽正散を構成し、全体として祛風化痰・活血通絡を図る処方である。治療後の総有効率は鍼灸+加味牽正湯群96.66%(治癒10、顕効14、有効5、無効1)、西洋医学治療群90.00%(治癒8、顕効12、有効7、無効3)で併用群が有意に良好であった(P<0.05)。H-Bスコアも併用群では23.19±0.89→73.14±0.92、対照群では23.34±0.91→69.67±0.86となり、治療後は併用群が有意に良好であった。(2018, 馬悦・王恩龍

この処方は、牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)+荊芥・防風・白芷+鈎藤+黄耆・当帰・川芎という構造です。これまでの牽正散加減方の中でも、祛風薬を主体としながら、黄耆で扶正、当帰・川芎で養血活血を加えて「祛風化痰+益気活血通絡」を同時に行う点が特徴です。

夏清華は、顔面神経麻痺98例を49例ずつに分け、鍼灸単独群鍼灸+牽正復瘫湯群を比較した。著者は、本症を中医の「口僻」「口眼歪斜」に属するとし、衛気不固・正気不足を背景として風邪が経絡に侵入し、顔面の少陽・陽明経筋における気血運行が阻滞することで発症すると捉え、化痰・祛風・止痙を基本治則としている。 牽正復瘫湯(甘草5g、桂枝6g、紅花6g、僵蚕6g、白附子6g、全蝎6g、木香10g、木瓜15g、天麻15g、当帰15g、白芍20g、熟地黄20g、鶏血藤30g、黄耆40g)を水煎して200mLとし、1日1剤を朝夕2回に分服した。鍼灸は攢竹、陽白、四白、顴髎、頬車、地倉、合谷、足三里などを主穴とし、魚腰、申脈、迎香、牽正、承漿などを随証加減し、温鍼灸を1日1回施行、両群とも3か月間治療した。 処方は牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)を基礎とし、著者は黄耆・当帰・熟地黄を加えることで補気養血、木香・桂枝によって温経・行気・通脈を図り、方剤全体として活血通絡・柔肝緩急・調和営衛・養血補気の作用を持つと説明している。 さらに処方構成を見ると、紅花・鶏血藤による活血養血通絡、白芍・熟地黄・当帰による養血、黄耆による益気、木瓜による舒筋活絡、天麻による息風、桂枝による温通という組み合わせで、祛風止痙だけでなく「益気養血・活血通絡・柔筋」をかなり強くした牽正散加減方となっている。治療成績は、鍼灸+牽正復瘫湯群で治癒30例、顕効9例、有効8例、無効2例、総有効率95.92%、鍼灸単独群では治癒24例、顕効8例、有効7例、無効10例、総有効率79.59%で、併用群が有意に良好であった(P<0.05)。H-Bスコアも治療前は4.33±0.86対4.32±0.88と同等であったが、治療後は2.00±0.82対3.82±1.28と併用群で有意に改善した。(2018, 夏清華

この牽正復瘫湯は、これまでの処方の中でも特に慢性・陳旧性を意識した「扶正養血+活血通絡」型の構成です。牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)+黄耆40g・当帰・白芍・熟地黄・鶏血藤30g+紅花・木瓜・木香・桂枝・天麻となっており、急性期の祛風散邪主体の牽正散加減とはかなり性格が異なります。論文冒頭でも、通常治療後に改善せず陳旧性面瘫へ移行する症例を問題として挙げています。

何可旺・陳翼・呉清明は、発症7日以内の急性期・風寒型顔面神経麻痺50例を25例ずつ無作為に分け、鍼治療単独群鍼治療+小続命湯加減群を比較した。対象は発症前に顔面の受涼歴があり、突然の口眼歪斜・閉眼不全に加え、悪風悪寒、頭痛・鼻症状、顔面筋の緊張、筋肉・関節痛、舌淡・苔薄白、脈浮緊などを呈する風寒型であり、平均病程は治療群3.52±1.43日、対照群3.02±1.71日であった。 治療群では鍼治療に加えて、小続命湯加減(麻黄10g、桂枝10g、白芍12g、川芎10g、防風10g、杏仁10g、大棗10g、細辛5g、白芷12g、白朮10g、天麻10g、全蝎3g、甘草6g)を1日1剤、煎液を朝夕各100mL、8時間間隔で服用した。鍼は陽白、四白、顴髎、頬車、地倉、翳風、牽正、太陽、合谷、風池などを用い、発症1週以内は患側顔面を浅刺・軽刺激とした。1週間を1クールとして4クール治療した。 著者は『備急千金要方』の原方小続命湯(麻黄、防己、人参、黄芩、桂心、甘草、川芎、芍薬、杏仁、附子、防風、生姜)を、正気内虚・風寒外襲による顔面神経麻痺に応用し、本研究ではこれを加減している。方中、麻黄・防風・杏仁・桂枝・細辛・白芷で開表泄閉・疏通経絡して風寒邪を外へ祛り、白芍で養血斂陰して過度の発散を防ぎ、桂枝・白芍の配伍によって営衛を調和し、川芎で活血行気して上行頭目、白朮で補気健脾して正気の回復を助け、天麻・全蝎で祛風通絡、大棗・甘草で補益中気・調和諸薬を図り、全体として扶正祛邪・助陽散寒の作用を形成するとしている。 治療成績は、鍼+小続命湯加減群で治癒16例、顕効5例、好転2例、無効2例、総有効率92.0%、鍼単独群では治癒14例、顕効5例、好転3例、無効3例、総有効率88.0%で、両群間に有意差を認めた(P<0.05)。著者は、急性期風寒型では風寒から論治し、鍼治療と小続命湯加減を組み合わせることで、風邪を祛り、絡脈を通じ、風寒を散じ、顔面の気血を調えて脈絡を濡養すると結論している。(2018, 何可旺・陳翼・呉清明

この論文の特徴は、牽正散を基本方としていない点です。古方の小続命湯を急性期の風寒型に転用していますが、原方の防己・人参・黄芩・附子・生姜を外し、白芷・白朮・天麻・全蝎を加えています。したがって処方構造は、麻黄・桂枝・防風・細辛・白芷による強い祛風散寒・解表+桂枝・白芍による調和営衛+川芎による活血+白朮による健脾扶正+天麻・全蝎による祛風通絡と整理できます。

陳如松・陳如柏・陳程は、家伝の加味牽正散堅丸による顔面神経麻痺治療を報告している。中医では顔面神経麻痺を「面瘫」「口眼歪斜」に属し、風寒外犯によって経絡が阻滞し、気血運行不暢から局所に瘀滞を生じることを基本病機とし、さらに体虚時には風寒邪が虚に乗じて頭面の筋肉・経絡へ侵入すると捉えている。 本方は清末に著者の先祖が『楊氏家蔵方』の牽正散を加味して作った「牽正丸」に由来し、当初の基本方は天麻、天南星、僵蚕、白附子、全蝎、甘草であったが、祛風化痰・舒経活絡に偏り辛燥性が強く、治療期間も長かったため、麻黄を加えて表散風寒、珍珠粉を加えて濡養し、さらに後代に麝香を加えて開竅醒神・活血散結を強化した。その後、正気不足を重視し、気虚には党参・黄耆などの四君子湯系、陰血不足には熟地黄・当帰などの四物湯系を組み合わせ、扶正祛邪を併用する加味牽正散堅丸へ発展させたとしている。 著者らの治療思想は、牽正散で祛風化痰通絡、麝香で開竅醒神・活血散結、麻黄で発散風寒、珍珠粉で滋潤肌膚経絡、四物湯系で養陰養血、四君子湯系で益気扶正し、正気を補いながら邪を外へ駆逐して再発を防ぐというもので、全体として扶正祛邪・舒経活絡・活血化痰を図っている。 具体的な典型例は、19歳時の外感を契機に発症し30年間持続した陳旧性顔面神経麻痺の49歳男性で、経絡不和・痰瘀内阻と辨証し、活血化痰・舒経活絡・佐以表散を治法として、**加味牽正散堅丸(天麻、天南星、僵蚕、白附子、全蝎、紅花、茯苓、党参、白朮、黄耆 各6g、麻黄、甘草、珍珠粉 各3g、麝香0.16g)**を細末として糊丸とし、1丸9g、3日ごとに1丸服用した。6か月余り、計60余丸の服用で症状が消失し、3年間の追跡で再発を認めなかった。(2018, 陳如松

この論文は通常の臨床比較試験ではなく、家伝処方の変遷と症例報告です。処方構造は特徴的で、牽正散系(白附子・僵蚕・全蝎)+天麻・天南星+麻黄+麝香・珍珠粉+紅花+党参・白朮・茯苓・黄耆となっており、特に長期化・再発例では単純な祛風化痰ではなく、痰瘀を除きながら益気扶正するという考え方が強く出ています。なお、論文では服薬2付(4~8丸)で**有効率100%、治癒率80%**と記載されていますが、症例数や評価方法の詳細が示されていないため、この数字のエビデンスとしての評価には注意が必要です。

王麗は、周囲性顔面神経麻痺36例を18例ずつ無作為に分け、鍼灸単独群祛邪扶正湯+鍼灸群を比較した。対象の病程は観察群2~20日(平均9.21±1.25日)、対照群1~19日(平均9.11±1.27日)であった。中医では本症を「面瘫」「口眼歪斜」の範疇とし、気血不足・衛外不固・絡脈空虚を背景として風邪が侵入し、経絡・気血の運行が阻滞することを病機としている。 観察群では鍼灸に加えて、祛邪扶正湯(黄耆30g、白朮20g、党参20g、薏苡仁20g、女貞子12g、枸杞子12g、山茱萸12g、莪朮12g、瓜蔞12g、仙鶴草15g、補骨脂15g)を1日1剤、証型に応じて用量を調整し、朝夕2回に分服して42日間治療した。 鍼灸は患側陽白、太陽、牽正、翳風、両側足三里・合谷を主穴とし、太衝、風池、攢竹、四白、迎香、下関、承漿、頬車、人中などを随証加減し、急性期には浅刺して留針せず、回復期には刺激方法を変更した。 方中、黄耆・白朮・党参・薏苡仁で補肺益気・健脾、補骨脂・女貞子・山茱萸・枸杞子で滋陰補腎、瓜蔞で化痰、莪朮・仙鶴草で活血散結を図り、全体として益気活血・化痰散結の作用を形成すると説明している。 治療成績は、祛邪扶正湯+鍼灸群で治癒10例、好転7例、無効1例、総有効率94.44%、鍼灸単独群では治癒9例、好転6例、無効3例、総有効率83.33%で、併用群が有意に良好であった(P<0.05)。またKPS、ESCA、MUNSHの各スコアも併用群で有意に高く、著者は祛邪扶正湯併用が顔面神経機能だけでなく生活の質の改善にも有効としている。(2017, 王麗

この処方は、これまでの顔面神経麻痺方剤とはかなり異なり、牽正散を含まず、黄耆30g・党参・白朮・薏苡仁を中心とする益気健脾を主軸に、女貞子・枸杞子・山茱萸・補骨脂で補腎し、莪朮・瓜蔞で瘀血・痰を処理する「扶正主体」の処方です。したがって、祛風薬や虫類通絡薬を主体とする急性期の牽正散系とは別系統として整理すると分かりやすいです。

朱敏元は、発症1~3日の急性期面瘫44例を22例ずつに分け、常規西洋薬治療群と、それに龍胆瀉肝湯加減を併用した群を比較した。対照群では血栓通静注またはプレドニゾロンを使用し、試験群ではこれに中薬を14日間併用した。 中医では面瘫を「口僻」「吊線風」などに属し、復感風寒に痰湿内盛が加わって顔面筋の抽搐・痙攣を生じると捉え、祛風化痰・活血通絡を主要治法としている。 龍胆瀉肝湯加減(蜈蚣2条、炒黄芩16g、全蝎6g、板藍根15g、生甘草6g、車前子10g、酒炒当帰15g、沢瀉10g、酒炒生地黄20g、酒炒山梔子10g、柴胡10g、酒炒龍胆草10g)を水煎して300mLとし、1日1剤を朝・昼・夕の3回、各100mLに分けて14日間投与した。 方中、炒黄芩は清熱燥湿・解毒、沢瀉は清熱滲湿、車前子は清熱利水・化痰祛風、山梔子は清熱瀉火・涼血解毒、柴胡は解表・退熱、当帰は活血補血・祛瘀止痛、龍胆草は瀉肝、甘草は清熱解毒・祛痰、生地黄は清熱滋陰と説明され、これらに全蝎・蜈蚣を加えることで、全体として化痰祛風・活血通絡を図る処方としている。 治療後の総有効率は龍胆瀉肝湯加減併用群86.36%(顕効11例、有効8例、無効3例)、対照群45.45%(顕効4例、有効6例、無効12例)で、併用群が有意に良好であった(P<0.05)。FDIスコアも治療前は15.3±3.2対15.5±3.6と差がなかったが、7日後は18.5±3.0対17.4±3.2、14日後は20.6±2.5対18.5±2.6と併用群で有意に良好であった。(2017, 朱敏元

この処方はこれまでの牽正散系とはかなり異なり、龍胆草・黄芩・梔子・生地黄・板藍根による清熱瀉火・解毒+車前子・沢瀉による利湿+柴胡+当帰による養血活血+全蝎・蜈蚣による通絡という構造です。つまり、名前は「龍胆瀉肝湯加減」ですが、通常の龍胆瀉肝湯をそのまま使用したものではなく、木通を含まず、板藍根・全蝎・蜈蚣を加えて顔面神経麻痺向けに清熱解毒・祛風通絡を強めた加減方です。

金暁亮は、顔面神経麻痺70例を35例ずつ無作為に分け、鍼灸単独群牽正復瘫湯+鍼灸群を比較した。中医では顔面神経麻痺を「口眼歪斜」とし、正気不足・衛気不固を背景に筋脈の気血運行が不暢となることを病機として、祛風解痙・祛痰を治療原則としている。 治療群では牽正復瘫湯(黄耆40g、鶏血藤30g、熟地黄20g、白芍20g、木瓜15g、天麻15g、当帰15g、木香10g、白附子6g、紅花6g、僵蚕6g、桂枝6g、全蝎6g、甘草5g)を1日1剤、朝夕2回に分服した。鍼灸は陽白、攢竹、地倉、合谷、顴髎、四白、足三里を主穴とし、承漿、迎香、申脈、魚腰、牽正などを随証加減し、温鍼灸を1日1回、10回を1クールとして3日休薬後に第2クールを行い、計2クール治療した。 方中、著者は黄耆・当帰・熟地黄で行血補気、木香・桂枝で温経通脈、白芍・熟地黄で調和営衛、木瓜・甘草で柔肝緩急、鶏血藤・紅花で活血化瘀通絡すると説明し、全体として活血通絡・養血補気・柔肝緩急を図るとしている。 さらに処方構造を見ると、牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)+天麻による祛風止痙・通絡を基礎に、黄耆を40gと大量に配して益気扶正し、当帰・熟地黄・白芍・鶏血藤・紅花によって養血活血、桂枝・木香で温通行気、木瓜・甘草で舒筋緩急を加えた構成となっている。治療成績は、牽正復瘫湯+鍼灸群で顕効21例、有効13例、無効1例、総有効率97.14%、鍼灸単独群では顕効17例、有効10例、無効8例、総有効率77.14%で、併用群が有意に良好であった(P=0.012)。H-Bスコアも4.34±0.25→2.21±0.32に改善し、鍼灸単独群の4.37±0.21→3.29±0.69より有意に良好で、生活の質スコアも56.54±4.56→96.21±0.51と改善した。有害反応は両群とも2/35例(5.71%)で差を認めなかった。(2017, 金暁亮

なお、この牽正復瘫湯は先ほどの夏清華(2018)の処方と、生薬・用量まで完全に同一です。すなわち、黄耆40g、鶏血藤30g、熟地黄・白芍各20g、木瓜・天麻・当帰各15g、木香10g、白附子・紅花・僵蚕・桂枝・全蝎各6g、甘草5gです。したがって今後、生薬の使用頻度を論文単位で集計する場合は2報として数える一方、独立した異なる処方として数える場合は同一方剤として扱うのがよいと思います。

繆虹は、発症1~6日程度の顔面神経麻痺76例を38例ずつに無作為に分け、鍼灸+推拿群鍼灸+推拿+面瘫湯群を比較した。対象は突然発症した片側顔面筋の運動障害を呈し、頭部外傷・頭蓋内腫瘍などによる顔面麻痺は除外されており、平均病程は観察群3.20±0.75日、対照群3.10±0.74日であった。 中医では本症を**「脈絡空虚を背景として風寒が侵襲し、経脈が阻滞して気血失和となり、筋肌が弛緩不収となる」病態と捉え、祛風通絡・行気活血を治療の基本としている。 観察群では鍼灸・推拿に加えて面瘫湯を1日1剤、水煎して2回煎じた薬液を合わせ、朝夕食後に分服した。原文の処方欄から確認できる構成は、細辛3g、蜈蚣3g、附子6g、甘草6g、牙皂6g、全蝎10g、〔薬名欠落〕12g、独活12g、羌活12g、蝉衣12g、荊芥12g、姜黄12g、〔薬名欠落〕12g、防風15g、当帰15g、丹参30gである。PDFテキストでは12gの生薬名が2か所欠落しているため、この2味については原論文から確定できず、推測で補わない**。 鍼灸では合谷、頬車、太衝、牽正、地倉、風池、下関、迎香、承漿などを基本とし、閉眼不能・流涙には魚腰・攢竹・絲竹空、味覚障害には廉泉、耳後痛には翳風を加え、さらに顔面への推拿を毎日施行した。 著者は方中、甘草は緩急止痛、防風は祛風散寒、当帰は行気活血、蜈蚣・全蝎・蝉衣は祛風通絡すると説明している。 処方全体からみると、防風・荊芥・羌活・独活・細辛・蝉衣による祛風散寒、附子による温陽散寒、蜈蚣・全蝎による祛風止痙・通絡、当帰・丹参・姜黄による活血通絡を組み合わせた構成で、特に丹参30gを大量に用いて活血通絡を強化している点が特徴である。治療後の総有効率は鍼灸・推拿+面瘫湯群92.11%(顕効21例、有効14例、無効3例)、鍼灸・推拿群73.68%(顕効13例、有効15例、無効10例)で、中薬併用群が有意に良好であった(P<0.05)。治療期間も10.23±3.27日で対照群より有意に短く、入院期間も21.06±9.75日と短縮した。(2017, 繆虹

この面瘫湯は牽正散そのものではありませんが、全蝎・蜈蚣を中心とする虫類通絡薬+多数の祛風散寒薬+当帰・丹参・姜黄による活血という、かなり「祛風散寒・活血通絡」に重点を置いた処方です。ただし、原文の処方欄で2味の薬名が欠落しているため、生薬頻度集計ではこの2味を不明として扱う必要があります

孫軍祥は、顔面神経麻痺の病期を早期と回復期に分け、鍼灸と中薬内服を組み合わせる治療法を報告している。早期は発症後7~10日頃までの面神経の炎症・浮腫が強い時期とし、局所への強刺激を避け、陽明・少陽経気の疏通を目的に頬車、下関、太陽、合谷、外関、足三里、太衝、風池などを少数・浅刺・軽刺激で用い、合谷・外関・風池には温鍼灸を併用している。中医的にはこの時期を風寒侵襲経絡が主体と捉え、祛風散寒・温通血脈を重視している。 早期には牽正湯加減(羌活18g、独活18g、荊芥20g、防風20g、蝉衣15g、姜黄12g、桂枝18g、附子6g、当帰15g、丹参18g、紅花12g、全蝎10g、蜈蚣3g、細辛3g、甘草6g)を1日1剤、水煎服する。処方は羌活・独活・荊芥・防風・蝉衣・桂枝・細辛による祛風散寒、附子・桂枝による温経通脈、全蝎・蜈蚣による祛風通絡、当帰・丹参・紅花・姜黄による活血通絡を組み合わせた構成であり、著者も早期には風寒侵襲経絡を重視し、牽正散加減類を併用するとしている。 回復期になると局所取穴を増やし、陽白透魚腰、太陽透魚腰、四白透地倉、迎香透地倉、地倉透頬車などを用いて刺激量を増やし、疏密波による電気鍼も導入する。同時に治法を補益気血・祛風通絡へ転換し、牽正散合桃紅四物湯加減を用いる。原文で確認できる構成は党参30g、白朮20g、茯苓18g、黄耆30g、当帰15g、熟地黄20g、〔薬名欠落〕12g、赤芍12g、桂枝18g、防風12g、甘草12gで、PDFでは熟地黄と赤芍の間にある12gの1味の薬名が欠落しており、原文からは確定できない。 この回復期方は、党参・白朮・茯苓・黄耆による益気健脾・扶正、当帰・熟地黄・赤芍による養血活血、桂枝・防風による祛風温通を組み合わせたもので、著者は回復期には「補益気血、祛風通絡」を主とし、牽正散合桃紅四物湯を基本として辨証加減するとしている。 この論文の重要な特徴は、病期によって中薬の治療方向を明確に変えている点であり、早期:風寒侵襲→祛風散寒・温通・活血通絡、回復期:気血不足を重視→補益気血・祛風通絡という構造になっている。また比較試験ではなく臨床経験の報告であり、著者はこの方法で一般に5~7週以内に治癒すると述べているが、症例数・治癒率などの定量的な成績は提示していない。(2017, 孫軍祥

劉海永らは、風熱型周囲性顔面神経麻痺68例に対して自擬清熱通絡方を用いた臨床成績を報告した。対象は男性42例、女性26例、平均40.7歳で、病程2~7日が58例、8~15日が6例、15日超が4例と、主として急性期症例であった。風熱型は一般的な口眼歪斜に加え、悪風、微熱、口渇、舌紅、苔薄黄、脈浮数などを呈するものと定義している。 中医では、周囲性顔面神経麻痺の急性期は風邪を主要病因とし、風寒型と風熱型に分ける。本論文では、風熱邪が頭面部の経絡を侵襲、あるいは風邪が入裏化熱して頭面の経絡・気血が失和し、経筋が濡養を失うことで口眼歪斜を生じると捉えている。『霊枢・経筋』の「有熱則筋弛縦、緩不勝収、故僻」を根拠として、風熱型の治法を祛風・清熱・通絡としている。 清熱通絡方は、生石膏30g、知母15g、全蝎10g、蝉蜕10g、薄荷6gを基本方とし、熱象が強い場合は菊花・黄芩・金銀花、小便黄赤には木通・竹葉、病程が長く口眼歪斜が改善しにくい場合は蜈蚣・地竜を加減する。1日1剤を水煎服し、1週間を1クールとして4クール治療した。なおPDFの処方欄では「知母15g、〔文字欠落〕、蝉蜕各10g」となっているが、後の方義および典型症例から、この欠落薬が全蝎10gであることが確認できる。 方中、生石膏を重用して気分の熱を清し、知母を配して瀉火滋陰し、清熱しても陰を傷めないようにする。全蝎は祛風・通絡、薄荷・蝉蜕は辛涼疏風解表・清利頭目・解痙として働き、著者は「外風を解しながら内風を平らげる」構成としている。全体として清熱通絡・祛風解表・息風止痙を図る処方である。 治療成績は、治癒52例(76.5%)、顕効10例(14.7%)、好転4例(5.9%)、無効2例(2.9%)、総有効率97.1%であった。ただし、本研究は対照群を設けたRCTではなく、68例の治療成績を後ろ向きに解析した症例集積である。著者自身も、完全治癒しなかった14例について辨証や加減処方に改善の余地があるとしている。 典型例は32歳、右顔面の口眼歪斜を発症して2日で、悪風、口乾、口苦、咽乾、心煩、小便黄赤、舌紅・苔薄黄、脈浮数を認め、風熱之邪侵襲面部経脈、経絡不暢、気血失栄と辨証した。生石膏30g、知母15g、全蝎10g、蝉蜕10g、薄荷6g、菊花10g、黄芩10g、木通10g、竹葉10g、金銀花30gを投与し、1週間後に全身の熱症状は消失したものの口眼歪斜が残存したため、蜈蚣2条、地竜15gを追加し、その後さらに改善して最終的に治癒した。(2017, 劉海永

この論文はこれまでの風寒型・牽正散系とは明確に異なる「風熱型急性期」専用の処方として重要です。基本方はわずか生石膏・知母・全蝎・蝉蜕・薄荷の5味で、石膏・知母による清熱を主軸に、薄荷・蝉蜕で疏風、全蝎で息風通絡し、病程が長引いて絡阻が強くなると蜈蚣・地竜という虫類通絡薬を追加するという病期に応じた構成になっています。

劉愛萍は、顔面神経麻痺32例に対して僵蝎湯加味+鍼灸+顔面按摩による治療を行った。対象は男性18例、女性14例、12~84歳、病程3日~3か月で、急性発症または顔面の受涼・吹風歴を有し、一側顔面筋麻痺、額紋消失、眼裂拡大、口角下垂、患側への食物残留、鼓頬・口笛時の漏気などを呈する症例であった。 中医では本症を「口眼歪斜」の範疇とし、正気不足・脈絡空虚・衛外不固を背景として風邪が虚に乗じて経脈に侵入し、気血痹阻を来して顔面経脈が濡養を失い、筋肉が縦緩不収となることを基本病機としている。 僵蝎湯加味(全蝎5g、白僵蚕10g、赤芍30g、川芎20g、黄耆30g、白附子10g、地竜15g、補骨脂15g、白芷10g、甘草10g、淫羊藿30g)を1日1剤、2回煎じて朝夕に分服し、7剤を1クールとして計4クール治療した。随証加減として、頭昏脹痛には菊花・蔓荊子・天麻、肝鬱化火には柴胡・梔子・牡丹皮、気血虚弱には黄耆を増量して当帰を追加、言語不利には遠志・石菖蒲を加えた。 方中、著者は白僵蚕・全蝎を祛風・活絡・通経脈、白芷・白附子を祛風散寒、赤芍・川芎を活血祛風、黄耆を益気扶正祛風、淫羊藿・地竜・補骨脂を祛風解痙としており、全体として益気扶正・祛風散寒・活血通絡・解痙を図る構成である。特に赤芍30g・川芎20gによる活血と、黄耆30gによる扶正を同時に強くしている点が特徴である。 鍼灸は太陽、印堂、陽白、四白、攢竹、迎香、人中、承漿、地倉、頬車、翳風、合谷、外関、陽陵泉を用い、顔面穴は臥針透刺、その他は直刺し、平補平瀉で20分留針した。さらに顔面筋への按摩を毎日施行し、7日治療・1日休息を1クールとして4クール行った。 治療成績は治癒15例(46.88%)、顕効12例(37.50%)、有効3例(9.37%)、無効2例(6.25%)、総有効率93.75%であった。ただし対照群を設けていない32例の症例集積であり、中薬単独の効果を評価した研究ではない。典型例は48歳女性で、受涼・発熱後に左側口眼歪斜を発症し、舌淡紅・脈細などから風寒邪侵襲と判断され、基本方を4クール、鍼灸・按摩と併用したところ1か月後に治癒し、3か月後にも再発を認めなかった。(2017, 劉愛萍)

この僵蝎湯加味は、実質的には牽正散(白附子・白僵蚕・全蝎)+地竜・白芷+赤芍・川芎+黄耆+補骨脂・淫羊藿という構造です。これまでの処方の中でも、単純な急性期の祛風散寒型ではなく、黄耆30g・淫羊藿30g・補骨脂15gという扶正・補腎薬をかなり強く配しながら、赤芍30g・川芎20gで活血通絡を強化している「扶正+活血+祛風通絡」型として整理できます。

許家鋒は、急性期顔面神経麻痺250例を125例ずつに分け、中薬単独群中薬+鍼灸群を比較した。対象の病程はいずれも1~4日で、急性期の症例に限定されている。著者は顔面神経麻痺について、顔面の受涼、ウイルス侵入、物理的損傷などを発症要因として挙げ、進行すると口眼歪斜、眼裂拡大、鼻唇溝浅薄、額紋消失などを呈するとしている。 治療に用いた中薬は非常に単純で、白附子20g、全蝎20g、僵蚕20gの3味のみ、すなわち牽正散そのものである。3味を粉末として混合し、30包に等分して1日3回内服、10日を1クールとして連続3クール治療した。したがって本論文では煎薬ではなく散剤内服である。両群とも同じ牽正散を使用し、観察群だけに鍼灸を追加している。 鍼灸は攢竹、下関、風池、地倉、陽白、合谷、魚腰を主穴とし、人中、承漿、四白、迎香などを配穴した。急性期には患側を浅刺し、急性期後には太陽透頬車、絲竹空透攢竹、陽白透魚腰、頬車透地倉などの透刺へ移行し、翳風への温灸も併用した。また辨証により、風寒痹阻型には風門・腰陽関、肝胆湿熱型には陽陵泉・太衝、気血陰虧型には関元・気海・三陰交を加えた。 中医では本症を「口喎」などに属するとし、急性期を発症1週以内、回復期を1~3か月、後遺症期を3~6か月と区分している。病機については、脈絡空虚を背景として風寒邪が陽明・少陽脈絡へ侵入し、経気が阻滞して経筋が失養し、筋肉が縦緩不収となると説明している。鍼灸では手足陽明経を中心に少陽経を補助的に用い、祛散風寒・局所循環および神経機能改善を図るとしている。 治療成績は、牽正散+鍼灸群で治癒75例(60.0%)、顕効22例(17.6%)、安定18例(14.4%)、無効10例(8.0%)、総有効率92.0%、牽正散単独群では治癒58例(46.4%)、顕効22例(17.6%)、安定19例(15.2%)、無効26例(20.8%)、総有効率79.2%で、併用群が有意に良好であった(P=0.004)。 House-Brackmannスコアも、牽正散+鍼灸群では4.57±0.63→治療8日目3.41±0.78→治療終了時1.88±0.67、牽正散単独群では4.46±0.54→3.72±0.69→2.55±1.01となり、8日目および治療終了時とも併用群が有意に良好であった(P<0.01)。(2017, 許家鋒

この論文はこれまでの報告の中でも、加味を一切せず「白附子・全蝎・僵蚕」の牽正散3味だけを使用している点が重要です。しかも対照群にも同じ牽正散を投与しているため、この研究が直接示しているのは**「牽正散の有効性」ではなく、「牽正散に鍼灸を追加する効果」**です。生薬頻度集計では、白附子・全蝎・僵蚕を各1回として数えるのが適切です。

楊永鵬は、周囲性顔面神経麻痺64例を、中薬辨証治療+鍼灸群32例と鍼灸単独群32例に分けて比較した。研究群の病程は5~24か月(平均7.5±4.5か月)、対照群は6~28か月(平均8.2±4.9か月)であり、急性期ではなく長期経過例を中心とした研究である。中医では本症を「面瘫」「口眼歪斜・中風」の範疇とし、正気虚弱を背景として風邪・寒邪が顔面経絡に侵入し、さらに痰濁が経絡を阻滞して気血運行が障害され、顔面筋が弛緩することを病機としている。 中薬は白附子11g、川芎9g、全蝎4個、鶏血藤11g、防風8g、甘草3g、細辛3g、姜半夏9g、当帰8g、白芷9g、僵蚕9gを基本方とし、効果が遅い場合には地竜・紅花、気虚には黄耆、明らかな顔面筋痙攣には蝉蜕を加えた。 処方では、白附子・僵蚕・全蝎が牽正散を構成し、白附子で祛風化痰、全蝎で通絡、鶏血藤で活血、川芎で薬力を頭面部へ上行させると著者は説明している。これに防風・白芷・細辛による祛風散寒、姜半夏による燥湿化痰、当帰・川芎・鶏血藤による養血活血を組み合わせた処方であり、全体として祛風化痰・養血活血・通絡を図る構成と考えられる。 鍼灸は風池、絲竹空、太陽、地倉、四白を主穴とし、内庭、太衝、合谷、睛明を配穴として、患側に横刺・斜刺を行い、中等度刺激・平補平瀉とし、1日1回、2週間を1クールとして治療した。 治療成績は、中薬+鍼灸群で治癒13例(40.6%)、顕効10例(31.3%)、有効8例(25.0%)、無効1例(3.1%)、総有効率96.9%、鍼灸単独群では治癒6例(18.8%)、顕効9例(28.1%)、有効12例(37.5%)、無効5例(15.6%)、総有効率84.4%で、中薬併用群が有意に良好であった(P=0.015)。(2017, 楊永鵬

この処方は、牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)+防風・白芷・細辛+姜半夏+川芎・当帰・鶏血藤という構造で、これまでの処方の中でも**「風+痰+血瘀(血虚)」を同時に処理するタイプ**です。特に病程が平均7~8か月と長いため、急性期の単純な祛風散邪型ではなく、姜半夏による化痰と当帰・川芎・鶏血藤による養血活血を牽正散に加えている点が特徴です。

姚建新は、急性期・風痰阻絡証の周囲性顔面神経麻痺64例を32例ずつ無作為に分け、デキサメタゾン・メコバラミン・ビタミンB1による通常西洋医学治療群と、これに牽正散合半夏白朮天麻湯+鍼治療を併用した群を比較した。対象は初発・片側性、病程1~15日で、風痰阻絡証を、片側顔面の板滞・麻木・麻痺、額紋消失、鼻唇溝浅薄、閉眼・鼓頬・露歯不能などに加え、頭重如蒙、胸悶あるいは痰涎嘔吐、舌淡または胖大、苔白または膩、脈弦滑を呈するものと定義している。 治療群では牽正散合半夏白朮天麻湯(全蝎3g、僵蚕10g、白附子6g、地竜10g、半夏6g、白朮10g、天麻10g、茯苓10g、川芎10g、当帰10g、丹参10g)を1日1剤、水煎して300mLとし、朝夕2回に分服した。鍼治療は地倉、承漿、絲竹空、翳風、太陽、陽白、顴髎、攢竹、頬車、下関などの局所穴に、合谷、足三里、太衝などの遠位穴を組み合わせ、平補平瀉、30分留針とした。10日を1クールとして2クール治療した。 中医では本症を「口僻」「口眼喎斜」「吊線風」などに属し、正気不足・脈絡空虚を背景に風邪が侵入して気血痹阻・経脈失養を生じると捉える。著者は、急性期は一般に風寒・風熱から論じられることが多い一方、素体脾虚→痰湿内生、衛表不固・脈絡空虚→風邪侵入、さらに風邪が痰邪を挟んで上擾して経絡を閉阻する「風痰阻絡」を重視し、祛風化痰・通絡を治法として牽正散と半夏白朮天麻湯を合方している。 方中、全蝎・僵蚕・地竜・天麻は祛風止痙・活血通絡、白附子は疏風化痰・散寒通絡、川芎・当帰・丹参は活血通絡して「治風先治血、血行風自滅」を図り、半夏・白朮・茯苓は理気和中・燥湿化痰としている。したがって全体として祛風化痰・健脾理気・通経活絡を行い、標本兼治を図る構成である。 治療成績は、牽正散合半夏白朮天麻湯+鍼治療群で治癒23例、顕効5例、好転3例、無効1例、総有効率96.87%、治癒率71.87%、西洋医学治療群では治癒15例、顕効7例、好転6例、無効4例、総有効率87.50%、治癒率46.87%で、総有効率・治癒率とも併用群が有意に良好であった(P<0.05)。H-B分類も両群で改善したが、併用群の改善が有意に優れていた。(2016, 姚建新

この論文は、これまでの牽正散系の中でも「痰湿・風痰」を明確に病機の中心に置いている点が重要です。処方構造は、牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)+半夏・白朮・茯苓・天麻+地竜+川芎・当帰・丹参で、祛風止痙・通絡+健脾燥湿化痰+活血通絡という構成です。特に、頭重、胸悶、痰涎、胖大舌、白膩苔、弦滑脈など痰湿所見を伴う急性期顔面神経麻痺を対象としているため、単純な風寒型に対する牽正散加減とは分けて整理する価値があります。

陳付合は、顔面神経麻痺48例に対して、牽正散+通竅活血湯加減+鍼灸による治療を行った。対象は男性28例、女性20例、右側麻痺26例、左側22例で、病程は最短2日から最長1年、頭蓋底骨折など外傷歴を有する症例も2例含まれていた。全48例が同一の中薬+鍼灸治療を受けており、対照群を置かない症例集積である。 中薬治療は、まず**牽正散(白附子、僵蚕、全蝎〔去毒〕各等量)を細末として、1回3g、1日3回、黄酒で服用した。これに通竅活血湯加減(赤芍12g、川芎12g、桃仁9g、紅花6g、羌活12g、白芷12g、防風18g、生地黄24g、甘草6g)を併用し、1日1剤、水煎約400mLとして2回に分服した。随証加減は、初期の風寒:麻黄10g、細辛4g、風熱:桑葉10g、薄荷10g、後期の気虚:黄耆30g、党参24g、血虚:当帰15g、白芍15g、久病不癒・風痰恋絡:天麻12g、礞石20gを加え、その他、鈎藤・地竜・白花蛇舌草・川烏などの祛風通絡薬も随証選択するとしている。 鍼灸は攢竹、陽白、絲竹空、迎香、地倉、頬車、対側合谷を基本穴とし、陽白・攢竹から魚腰、絲竹空から太陽、地倉から頬車などへの平刺を行い、5回を1クール、クール間2日、計6クール施行した。 中医病機について著者は、過労などによる経脈気虚を背景に風邪が経絡へ侵入すると気血運行不暢・経脈痹阻を生じる、または頭部外傷によって気血が内損して瘀血が形成され、内風と外風が相引して発症すると説明している。このため、牽正散による祛風化痰止痙と、通竅活血湯による活血通竅を組み合わせ、さらに鍼灸で祛風通絡する治療構造となっている。 治療成績は、48例中治癒45例、好転2例、無効1例、総有効率97.92%**で、治療期間は最短2日、最長30日、多くは15~30日前後で治癒した。著者は病程の短い症例ほど効果が速く良好であり、病程2か月を超える症例では効果発現が遅く、成績も劣るとしている。(2016, 陳付合

この処方は、これまでの報告の中でも**「風」と「瘀血」を同時にかなり明確に治療対象としている処方です。基本構造は、牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)+通竅活血湯系(赤芍・川芎・桃仁・紅花・生地黄)+羌活・白芷・防風で、すなわち祛風化痰止痙+活血化瘀通絡+祛風散邪です。さらに病期が進んで気血不足が現れれば黄耆・党参、当帰・白芍を追加するため、著者の治療方針は初期:祛風+活血、後期:扶正養血+通絡と整理できます。なお、この論文では牽正散と通竅活血湯を同時に使用しているため、生薬頻度集計では基本処方として白附子、僵蚕、全蝎、赤芍、川芎、桃仁、紅花、羌活、白芷、防風、生地黄、甘草を各1回**として数えるのが適切です。

周宇は、面瘫120例を60例ずつに分け、鍼灸・推拿群鍼灸・推拿+中薬群を比較した。治療群は男性35例、女性25例で、急性発作期21例、慢性緩解期39例を含み、頭蓋内占拠性病変、頭蓋内炎症、脳血管病変、頭蓋骨損傷などによる顔面神経麻痺は除外されている。 治療法は病期によって変え、著者は発症15日以内を顔面神経の虚血・浮腫がみられる急性期とし、この時期には鍼刺激を避けて推拿を主体とした。中薬は川芎10g、白芷10g、紫蘇葉10g、生姜10g、大棗30g、生地黄20g、枸杞子10g、全蝎3只、天麻10g、党参15g、北黄耆15g、田七10g、柴胡10g、薄荷15g、白芍10g、菊花15g、防風10g、仏手10g、枳殻8gを基本として、患者の病情に応じて加減し、1日1剤を投与した。 顔面神経の虚血・浮腫が軽減した後には鍼治療を開始し、合谷、太衝、風池には瀉法、下関、牽正、迎香などには平補平瀉法を用い、陽白から魚腰、地倉から頬車などへの透刺を行った。さらに生姜末を患側顔面に局所貼敷し、温湿タオルによる温罨法および朝夕の自己按摩を併用している。治療成績は30日間の治療後、鍼灸・推拿+中薬群で有効49/60例、総有効率81.7%、鍼灸・推拿群では有効41/60例、総有効率68.3%で、併用群が有意に良好であった。また治療群では平均起効時間7日、平均治療期間21.3日、対照群ではそれぞれ9日、26.5日であり、中薬併用群で治療効果の発現および治療期間が短縮した。(2016, 周宇

この処方は牽正散を基本方としておらず、全蝎のみを使用している点がこれまでの報告と異なります。処方構造としては、白芷・紫蘇葉・防風・薄荷・菊花・柴胡による疏風解表+全蝎・天麻による息風通絡+川芎・田七による活血化瘀+党参・黄耆・大棗による益気扶正+生地黄・白芍・枸杞子による養血滋陰+仏手・枳殻による理気というかなり広い構成で、祛風通絡だけでなく扶正・養血・活血・理気を同時に行う処方と整理できます。なお、論文の結論は「中医鍼灸推拿+中薬」が良好な成績を示したというものであり、中薬単独の効果を検証した研究ではありません

李小燕は、周囲性顔面神経麻痺100例に対して、牽正散合補陽還五湯加味+鍼灸+中薬穴位貼敷による中医総合治療を行った。対象は男性70例、女性30例、12~65歳、左側60例、右側40例で、病程は10~43日であった。対照群を設けない100例の症例集積である。著者は本症を、顔面経絡が風寒を受け、気血不和・経筋失養を生じることによって発症すると捉えている。 中薬内服は牽正散合補陽還五湯加味(全蝎3g〔冲服〕、白附子6g、僵蚕9g、川芎9g、桃仁9g、紅花9g、地竜9g、防風9g、白芷9g、当帰12g、赤芍12g、葛根12g、黄耆45g)を1日1剤、水煎して3回に分服した。 処方構造は、牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)による祛風化痰・止痙通絡を基礎として、黄耆45gを中心に当帰・赤芍・川芎・桃仁・紅花・地竜を配した補陽還五湯系の益気活血通絡を組み合わせ、さらに防風・白芷で祛風、葛根で舒筋通絡を加えたものと整理できる。ただし、この個々の生薬の方義は論文本文には詳述されておらず、処方構成からの解釈である。鍼灸は風池、翳風、頬車、地倉、牽正を基本穴とし、遠位穴に両側合谷・太衝、気血不足には足三里、鼻唇溝平坦には迎香、鼻中溝偏位には水溝、閉眼不能には陽白・攢竹、頬部板滞には四白・巨髎を加えた。 さらに鍼灸の間欠期には、黄芥子または白芥子5~10gを細末にして水で糊状とし、患側の地倉・下関・頬車周辺に4~8時間貼敷した。額紋消失には陽白、閉眼不能には太陽・承泣にも貼敷しており、これは中薬内服とは別の穴位貼敷療法である。 治療成績は、100例中**治癒93例、顕効6例、有効1例、無効0例、総有効率100%**で、治療中に有害反応は認めなかったと報告している。ただし、対照群がなく、牽正散合補陽還五湯・鍼灸・芥子貼敷を同時に行っているため、内服中薬単独の効果を評価することはできない。(2016, 李小燕

この処方は、これまでの報告の中でも典型的な**「牽正散+益気活血通絡」型です。特に黄耆45gが突出して多く、牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)+黄耆・当帰・赤芍・川芎・桃仁・紅花・地竜+防風・白芷・葛根という構成から、祛風化痰止痙+大補元気・活血化瘀通絡を同時に狙った処方と整理できます。生薬頻度集計では、内服基本方として全蝎、白附子、僵蚕、川芎、桃仁、紅花、地竜、防風、白芷、当帰、赤芍、葛根、黄耆を各1回とし、外治の黄芥子/白芥子は別枠**にするのが適切です。

張柳燕・仲小青は、急性面神経麻痺60例を無作為に30例ずつに分け、通常西洋医学治療群と、これに牽正散+鍼刺を併用した群を比較した。中医では本症を、風痰の邪が頭面の経絡を阻滞し、顔面経筋が濡養を失って筋肉が弛緩不収となる病態と捉え、化痰祛風・止痙通絡を治療原則としている。 対照群は糖質コルチコイド、局所抗炎症薬、神経栄養薬、ビタミンB群などによる通常治療を行い、観察群ではこれに牽正散(全蝎・白附子・僵蚕、各等量)を加えた。3味を細末として1回3g、1日2回冲服し、さらに鍼刺を併用した。鍼穴は頬車、地倉、下関、迎香、陽白、太陽、健側合谷、風池などで、発症7日以内は軽刺、7日を超えた症例では平補平瀉法とし、1日1回、得気後30分留針した。両群とも1か月間治療した。 本論文の牽正散は加味を一切行わない原方3味、すなわち白附子・僵蚕・全蝎のみである。著者は、牽正散は『楊氏家蔵方』に由来し、止痙通絡・化痰祛風の作用を有すると説明している。方中、全蝎・僵蚕は通絡止痛・鎮痙熄風・散結攻毒、白附子は祛風化痰・解毒散結・定驚止搐の作用を担うとしている。 治療前の末梢血EPCs(血管内皮前駆細胞)は、観察群34.15±5.8、対照群35.02±6.1で差がなく、健常者群69.45±7.8より有意に低値であった。治療後は両群とも増加したが、7日後は45.71±7.5対40.32±6.1、14日後は63.46±8.1対54.85±7.2と、牽正散+鍼刺群で有意に高かった(P<0.05)。著者はこの結果から、急性面神経麻痺における面神経の虚血・圧迫との関連、および治療による血管内皮損傷修復の可能性を論じている。 治療成績は、牽正散+鍼刺+西洋医学治療群で治癒9例、顕効12例、有効7例、無効2例、総有効率93.33%、西洋医学治療群では**治癒7例、顕効10例、有効8例、無効5例、総有効率83.33%**で、併用群が有意に良好であった(P<0.05)。(2016, 張柳燕・仲小青)

この論文も、先ほどの許家鋒(2017)と同様に、牽正散を「白附子・僵蚕・全蝎」の3味だけで使用している研究です。ただし比較の構造が異なり、本研究では両群に西洋医学治療を行い、観察群だけに「牽正散+鍼刺」を追加しているため、牽正散単独の上乗せ効果と鍼刺の上乗せ効果を分離することはできません。生薬頻度集計では、基本処方として全蝎、白附子、僵蚕を各1回と数えるのが適切です。

李啓朧は、顔面神経麻痺60例を30例ずつに無作為に分け、通常西洋医学+電気鍼群牽正散加減+電気鍼群を比較した。著者は発症7日以内を急性期、8~15日を静止期、15日超を回復期として病期を区分している。中医では本症を「口僻」「口眼喎斜」などに属するとし、牽正散加減と電気鍼を組み合わせて治療した。 観察群の牽正散加減について、PDFの処方欄は文字欠落が多く、原文から確実に読めるのは白附子5g、〔薬名欠落〕5g、僵蚕10g、〔薬名欠落〕10g×複数、〔薬名欠落〕1〔単位不明〕までであり、この処方欄だけから全構成を確定することはできない。 ただし、論文の考察では使用薬について、「全蝎、僵蚕、白附子等」で祛風化痰・治痙、「防風、蜈蚣」で通絡止痙、「当帰、丹参、赤芍」で活血すると明記しているため、少なくとも基本処方には白附子、全蝎、僵蚕、防風、蜈蚣、当帰、丹参、赤芍が含まれていたことは本文から確認できる。著者はこれらを合わせることで疏風散寒・益気活血の作用を得るとしている。 また辨証・病期による加減として、風寒型には防風・荊芥各10g、風熱型には金銀花15g+〔薬名欠落〕10g、肝胆湿熱型には龍胆瀉肝湯を合方、回復期には補陽還五湯を合方した。 電気鍼は対照群と同様に顔面穴を用い、断続波、患者が耐えられる程度の刺激で顔面筋収縮を指標とし、1日1回30分、10日を1クールとして2~4クール施行した。対照群ではこれにデキサメタゾン、ビタミン類、リバビリンなどを使用した。 治療成績は、牽正散加減+電気鍼群で治癒5例、顕効11例、有効13例、無効1例、総有効率96.67%、対照群では治癒2例、顕効9例、有効13例、無効6例、総有効率80.00%で、観察群が有意に良好であった。また治療1か月後のMHBNスコアは76.28±18.39対54.17±13.64、治癒までの期間は18.3±1.6日対28.4±3.5日で、いずれも観察群が有意に良好であった。(2016, 李啓朧

この論文は牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)を核として、防風・蜈蚣による祛風通絡、当帰・丹参・赤芍による活血を加え、さらに証・病期によって加減する処方と整理できます。ただし重要なのは、PDFの処方構成欄そのものに薬名欠落が多数あることです。したがって生薬頻度を厳密に集計する際には、本文で明記される白附子、全蝎、僵蚕、防風、蜈蚣、当帰、丹参、赤芍は採用できますが、欠落部分を推測して補完するのは避けるのが適切です。

范宇雄は、周囲性顔面神経麻痺80例をサイコロ法により40例ずつ無作為に分け、鍼刺単独群牽正散加味+鍼刺群を比較したランダム化並行対照研究を報告した。治療群の平均年齢は31.7±3.1歳、平均病程10.6±3.3か月、対照群は32.1±3.1歳、11.5±3.3か月であり、平均病程が約11か月の長期経過例を対象としている。 中薬は牽正散加味(荊芥10~15g、防風10g、白附子6~10g、僵蚕10g、葛根10~15g、白芷10g、蘇木10~15g、紅花10g、細辛3~6g、全蝎3~6g、蜈蚣2~3条)を基本方とし、血瘀には地竜、気虚には黄耆、顔面筋痙攣には蝉蜕を加えた。1日1剤、水煎300mLとして朝夕に分服し、10日を1クールとして3クール治療した。 鍼刺は地倉透頬車、瞳子髎、攢竹透太陽、陽白透頭維、翳風、牽正、人中、風池などを用い、久治不癒例では翳風、牽正、地倉、足三里を選択し、平補平瀉、約2cm刺入、20分留針、1日1回とした。治療群にも同じ鍼治療を行っている。 中医病機について著者は、顔面経絡が寒邪を受けることで血液循環が阻害され、経筋が失調し、顔面の知覚・運動障害を生じると説明し、『金匱要略』の「脈絡空虚」を引用している。治療は化痰・祛風・活血・通絡を基本とし、局所循環を改善して水腫・虚血を除くことを目的としている。 方義については、白附子・僵蚕・全蝎・蜈蚣で化痰・祛風・止痛、防風で通絡祛風、葛根で煩熱を除き祛風寒、紅花で活血、細辛で止痛祛痰すると説明し、諸薬の併用により祛風通絡・補気養血を図るとしている。なお、荊芥・白芷・蘇木について個別の方義は本文では説明されていない。 治療成績は、牽正散加味+鍼刺群で治癒15例、顕効15例、有効9例、無効1例、総有効率97.50%(39/40)、鍼刺単独群では**治癒6例、顕効12例、有効11例、無効11例、総有効率72.50%(29/40)**で、治療群が有意に優れていた(P=0.002<0.01)。両群とも重篤な有害反応は認めなかった。(2016, 范宇雄

この論文の特徴は、牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)を基礎に、蜈蚣を加えて祛風止痙・通絡を強化し、荊芥・防風・白芷・細辛で祛風散寒、葛根で舒筋、蘇木・紅花で活血通絡する構成である点です。すなわち、牽正散(白附子・僵蚕・全蝎)+荊芥・防風・白芷・細辛・葛根+蜈蚣+蘇木・紅花という「祛風散寒+化痰止痙+活血通絡」型で、平均病程約11か月という長期例を対象としていることからも、単純な急性期祛風方とは分けて整理できます。生薬頻度集計では基本方として荊芥、防風、白附子、僵蚕、葛根、白芷、蘇木、紅花、細辛、全蝎、蜈蚣を各1回、随証加減の地竜・黄耆・蝉蜕は別枠とするのが適切です。