精神刺激薬と統合失調症

まとめ:精神刺激薬は覚醒剤と同じ作用を持っています。覚醒剤によって統合失調症の発症リスクは高くなります。

子供への精神刺激薬の処方は、このリスクを考慮する必要があります。

1975年から1994年の間に発表された論文から、統合失調症における精神刺激薬乱用の発生率が一般大衆のそれより2-5倍高いことから、統合失調症の発症に精神刺激薬の乱用が寄与する可能性が指摘されています。(1995年、LeDucら

オーストラリアの統合失調症と診断された13624人の中で、14%が覚醒剤乱用履歴があることが報告されています。(2014年、Saraら

精神刺激薬の代表であるコカイン使用の推定世界有病率は0.4%、アンフェタミン使用は0.7%です。(2019年、Farrellら

統合失調症の原因としては、ドーパミン感作(ドーパミン過敏)仮説が最も有力です。(2011年のPaparelliら2011年のSeeman

ニューロイメージング研究によると、健康な男性にアンフェタミンを繰り返し曝露すると、線条体のドーパミン放出が増加します。(2006年、Boileauら

統合失調症の人の線条体では、健康な脳と比較して、アンフェタミンによって誘発されるドーパミンがほぼ2倍になります。(1996年、Laruelleら

アンフェタミンの使用は精神病のリスクの増加と関連しており、人々がより若い年齢またはより多くの量でアンフェタミンを使用した場合、これは強化されます(2002年のFarrellら2003年のChenら

覚せい剤を使用した人の一部では、精神病症状が持続すること、また感作と言われる現象で、少量の覚せい剤の使用によって精神病症状が再燃すること、統合失調症の人が覚せい剤を使用すると、症状の悪化および促進させることが総括されています。(2019年、Farrellら

ADHDに対して処方された精神刺激薬が、精神病の発症のより早い発症年齢と関連することを報告されています。子供や青年への精神刺激薬の処方が増えることによって、精神病が増えることが懸念されています。(2015年、Moranら

新たに発症する精神病の発症リスクは、ADHDの精神刺激薬の処方を受けた13歳から25歳の患者110832人中343人が精神病エピソードがありました。精神病の発症リスクは660人に約1人でしたが、アンフェタミンを開始した患者のリスクはメチルフェニデートを開始した患者の約2倍でした。(2019年、Moranら