アトピーは日本の風土病?

アトピー性皮膚炎は日本の風土病という話があります。

海外生活の時は問題はなかったけれど、日本に住むとアトピーや湿疹が出る人が確かに居ます。

1960年頃にはほとんどアトピーは存在していませんでしたが、近年の日本ではどんどん増えています。

このことは現在の日本の環境に問題があることを示唆しています。

アトピー性皮膚炎の有症率を世界的な規模で調べたものとして,1994~1996年に実施されたInternational Study of Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC) による疫学調査があります。

37か国の90のセンターにある6〜7歳の256,410人の子供を対象とした過去12か月のアトピー性湿疹の症状の世界地図です。

56か国の153のセンターにある13歳から14歳の458,623人の子供における過去12か月のアトピー性湿疹の症状の世界地図です。

特に多い地域は、イングランド、ナイジェリア、エチオピア、フィンランド、スウェーデン、日本、ニュージーランドです。

2001~2003 年にも ISAAC による疫学調査(phase III)が実施された(日本は不参加)結果が、2008年に発表されました。

前回の有病率が高かった国では、概ね減少しているようです。他の地域の状況はまちまちですが、以前は有病率の低かった開発途上国が、特に若い年齢層で大幅に増加しています。

この図は有病率ではなくて、増減だけを示しています。

2018年にBarbarlotらが行った調査では、1年間の有病率(過去1年間にアトピーの症状が出現した人の全人口に対する割合)は、アメリカ4.9%、EU4.4%、カナダ3.5%、日本2.1%になっています。

現在アメリカでは、アトピー性皮膚炎の患者数は1800万人になっています。

現在は、世界的な流行が日本の増加率を上回ってしまって、日本は第一集団ではなく第二集団です。

論文から見ると、アトピーは日本固有の風土病とは言えません。

世界的に見ても有病率の差が、1%弱から20%までと非常に幅があります。

同じ国の中でも、地域差もかなりあります。

日本国内の都道府県別にみると、小学生から高校生までを通じて沖縄県が最も低く、小学生 3.0%、中学生 2.0%、高校生 1.9%でした。

一方で、有病率の高い都道府県は、小学生では鳥取県 10.8%、 島根県 9.3%、宮城県 9.2%、中学生では宮城県 7.2%、愛知県 7.2%、奈良県 7.0%、高校生では岡山県 7.0%、北海道 6.2%でした。

これだけ地域差があるので、転地療法が成立します。

このデータからは、環境汚染(特に大気汚染)を疑います。

一方でアトピーの増加の要因として、衛生環境の改善、生活水準の向上、予防接種の普及、食生活や栄養の変化、さらに抗生物質の乱用による幼少時の感染症の減少が考えられています。

幼少期にアレルゲンに多く接触することによって、免疫寛容(免疫過剰が起こりにくくなる)が起こってアレルギーが出にくくなるという考えです。

このような考えを衛生仮説 (hygiene hypothesis) と呼んでいます。

まとめると、衛生仮説(不衛生な環境の改善)と環境汚染の相乗効果で、都会ではアトピーが極端に増えて、田舎では少ないという地域差に繋がっています。