知的障害の中医論文

益気聡明湯は、智的障害児に対して針治療へ併用することで、知能発達、日常生活能力、運動機能を有意に改善した。また、ドパミン(DA)、ノルアドレナリン(NE)、セロトニン(5-HT)の増加、神経障害マーカーであるNSEの低下を認め、神経伝達物質の調節作用も示された。中医学では「先天不足」「腎精不足・脳髄失養」を基本病機と考え、健脾・補腎・益髄・開竅を治療原則としている。益気聡明湯(黄芪、紅参、三七、熟地黄、陳皮、葛根、白芍、升麻、炙甘草、鹿茸)は補気昇陽、健脾補腎、益髄開竅により、脳神経機能の回復と認知機能の改善に寄与すると考えられた。(2024, 李剛

小児多動症(ADHD)は、中医学では「児童多動症候群」とされ、主な病機は①痰火内擾、②肝腎陰虚、③心脾気虚の3型に分類される。痰火内擾型では清熱化痰・開竅寧神を目的に、黄連温胆湯加減(黄連、半夏、茯苓、陳皮、竹茹、枳実、甘草、黄芩、琥珀粉、遠志、山梔子)を用いる。肝腎陰虚型では滋腎柔肝・安神定志を目的に、杞菊地黄湯加減(熟地黄、山薬、茯苓、丹皮、山茱萸、沢瀉、牡丹皮、枸杞子、菊花、生牡蛎、陳皮、竜山肉、遠志)を用いる。心脾気虚型では養心健脾・安神定志を目的に、帰脾湯加減(太子参、茯苓、麦冬、白朮、当帰、黄芪、遠志、木香、大棗、小麦、石菖蒲、陳皮)を用いる。(万慎曜

中学生の「智力障害総合征」は、学業成績の急激な低下、注意力低下、健忘、頭痛、頭暈、不眠などを主体とする機能性疾患として捉え、「移情易性」「脾益則智長」の理論に基づいて治療した。814例に益気聡明定志湯(黄芪、人参、葛根、升麻、蔓荊子、黄柏、白芍、茯苓、石菖蒲、酸棗仁、炙遠志、炙甘草)を投与し、症状に応じて加減した結果、総有効率は89.8%で、副作用は認められなかった。証型は①情緒不穏型(気機失調・心火亢盛:生梔子、石蓮子を加味)、②逆向心理型(気鬱化火・心神不寧:鬱金、珍珠母を加味)、③変態心理型(気滞血瘀・清竅不暢:桑寄生、細辛を加味)の3型に分類した。著者は、本症の本態を外界からの精神的ストレス(七情所傷)と脾胃機能失調による清陽不昇と考え、益気昇陽、調理脾胃、養血安神、開竅醒神によって認知機能や学習能力の改善を図ることを治療の要点としている。(1992, 艾鴻涛

大脳発育不全(脳性麻痺や知的発達障害を含む)は、中医学では「五遅」「五軟」「拘攣」「痴呆」「胎痙」などに相当し、病機は腎・肝・心の三臓を中心とした先天不足に、分娩障害や後天的損傷が加わることで発症すると考えた。70例を①肝腎虧損型(運動発達障害主体)、②心腎不足型(知的発達障害主体)、③混合型(運動・知的障害合併)に分類した。肝腎虧損型には治瘫散加減〔桑寄生、桑椹子、五加皮、木瓜、伸筋草、当帰、桑枝、淫羊藿、慈菇仁、秦艽、続断、何首烏、茯神、遠志、益智仁、蛤蚧、鉤藤〕で養肝補腎・柔筋祛風を行い、心腎不足型には益智散加減〔当帰、茯神、益智仁、石菖蒲、遠志、黒芝麻、黒豆、芡実、沙参、酸棗仁、通草、烏梅、徐長卿、白鮮皮〕で養心益気・補血安神を行った。さらに耳針(脳幹・皮質下・肝・心・腎)や人参注射液の経穴注射、機能訓練・教育訓練を併用した結果、有効例は60/70例であった。著者は治療の要点を「補腎益脳」を主とし、「佐治心肝」とすること、さらに訓育・機能訓練を継続する総合治療が重要であり、年齢が低く早期治療ほど効果が高いと結論している。(1984, 王烈)

智力発育障害は、中医学では「五遅(語遅)」などに属し、「元神-心神-五臓神」からなる神識システムの失調を本態と考える。治療は神識システムの調整を根本とし、①脏腑分証(先天性脳病・染色体異常は肝腎、栄養代謝異常は脾、不良環境や精神障害は心肝、感染・中毒・外傷は痰瘀として治療)、②奇経論治(任督二脈を中心に健脳益智・陰陽調和を図る)、③三焦分治(精・気・神の生成と運行を整え、肺・脾・腎の気化と心・肝・腎の相火を調節する)の3本柱で行う。治法は「益精填髄・安神増智」を基本とし、症例では六味地黄丸合左帰飲加減(熟地黄、山薬、山茱萸、知母、黄柏、枸杞子、茯苓、牡丹皮、亀板、石菖蒲、遠志、竜骨、牡蛎、炙甘草)を用い、さらに智三針・脳三針・四神針・焦氏言語区などの頭針、督脈・任脈を中心とした針治療と認知・言語訓練を併用した結果、IQや社会生活能力、言語・注意力・学習能力の改善を認めた。著者は、従来の臓腑弁証に神識システム・奇経・三焦の概念を組み合わせた総合治療が智力発育障害に有用であると結論している。(2016, 趙亮