オリゴスキャンでリン低値、血清リン高値

まとめ:オリゴスキャンでリン低下+高リン血症は、ケトン体質で起こってきます。

■リンの体内分布

リンは人体に必要なミネラルの一種で、カルシウムに次いで多く、成人の体重の約1%を占めています。


その85%は骨や歯にリン酸カルシウム・リン酸マグネシウムとして存在しています。

残りの15%は細胞膜と細胞質に存在し、たんぱく質や脂質と結合し、細胞膜や核酸の構成要素として体内の細胞に存在するほか、エネルギーを発生させる化合物(ATP)の構成成分ともなっています。

0.1%が細胞外液(血液、組織液)に存在しています。

■高リン血症(血清リン濃度が4.5mg/dL以上)の鑑別

高リン血症は、①慢性腎臓病(リンの排出の低下)、②副甲状腺機能低下症(頻度はまれ)、③代謝性アシドーシス(体内のリンは減少)の3つで起こってきます。(MSDマニュアル

①慢性腎臓病では(A)が低下して、体内にリンが蓄積して高リン血症になります。(槙田、2020)

■オリゴスキャンでリン低下+高リン血症は、ケトン体質で起こってきます。

痩せた子供によく見られるアセトン血性嘔吐症や大人でも痩せ型の方などに見られるケトン体質では、血液中に増えたケトン体が酸性のために、それを中和するためにアルカリミネラルであるカルシウムとマグネシウムを含むリン酸カルシウム、リン酸マグネシウムが骨から溶け出して、高リン血症になります。高リン血症であっても、体内でのリンは減少します。参照:乳製品で骨折が増える理由

オリゴスキャンの相関関係で、リンと有害ミネラルのバリウムおよびビスマスが逆相関の関係にあるので、リンが低下するとバリウムとビスマスが上昇してきます。

また、low T3症候群を合併しており、冷え性になっていることが一般的です。

オリゴスキャンでのリン低値は、体内のリンが減少しているという意味なので、食事由来のリンの多い少ないは関係ありません。

ケトジェニックダイエットによる代謝性アシドーシスに対して、骨リン酸塩が酸性緩衝剤として酸性脱灰を起こして、高カルシウム血症になり、腎臓結石を起こすリスクが上がることが知られています。(2010, Choi)(2007, Sampath)

■治療は、複数回の複合炭水化物と高タンパク食

低血糖を起こさないように、イモや果物などの複合炭水化物を一日3回以上摂取するようにします。

吐き気などの激しい症状が出る場合は、バナナを食べたり、ブドウ糖入りの飲料を摂取します。

根治的には、筋肉量を増やすことがポイントで高タンパク食と運動も必要です。

筋肉が少ないと、筋肉に貯蔵するグリコーゲン量が少ないため、筋肉からのブドウ糖合成が困難になり、ブドウ糖よりケトン体をより優位に使うしかなくなります。(グリコーゲンの70~80%は筋肉に存在し、残りは肝臓に蓄えられています。)