前立腺癌と栄養
前立腺癌と食事との関係は、一般的な癌の食事療法、ゲルソン療法、糖質制限以外にもいくつかの注意点があります。
■カルシウムの過剰摂取、乳製品の摂取が、前立腺癌のリスクを高め、ビタミンDの摂取で、前立腺癌のリスクが下がります。
2006年にGiovannuicciらは、1日カルシウム摂取量が1500mgを超えると、前立腺癌のリスクが上がることを報告し、ビタミンDレベルの低下が前立腺細胞の細胞増殖を加速することが原因であると考察しています。
2001年にChanらは、カルシウムの過剰摂取、乳製品の摂取が、前立腺癌のリスクを高めることを報告して、ビタミンDレベルの低下との関連を考察しています。
乳製品は、カルシウムの含有量が多いこと以外にも、乳製品の中のカゼインに含まれるインスリン様成長因子が、ホルモン感受性の癌である前立腺癌のリスク因子である総論が出ています。
同じ理由で乳製品は、乳がんや結腸直腸癌のリスク因子あることも指摘されています。
ビタミンDの欠乏は発癌と関係しており、ビタミンDの補給が低コストで副作用もなく、癌の発生率と死亡率を減らすことができることが以前から知られています。
■果糖の過剰摂取は、前立腺癌のリスクを高めます。
以前は果糖の摂取は前立腺癌のリスクを下げると言われていましたが、2021年にCarrenoらは、フルクトースが前立腺癌の成長を促進することを基礎研究で示唆しました。
■必須ミネラルのアンバランスは前立腺癌のリスクと関係しています。
亜鉛はDNA修復に関係するために亜鉛欠乏症は発癌に関係してます。
亜鉛含有量が多い前立腺では特に、亜鉛欠乏症が前立腺癌のリスクを高めることが報告されています。
亜鉛と周期表で横並びである銅は、ミネラルバランスでは亜鉛と強い相関関係にあります。
多くの種類の癌では、腫瘍内での銅の増加を示します。銅が成長、血管新生、転移などの腫瘍進行の複数の側面の制限要因として機能することが報告されてます。
2003年にNayakらは、前立腺癌および大腸癌患者での血中の銅過剰症を指摘してます。
セレン欠乏症は前立腺癌のリスクを高めることが以前から報告されており、血中のセレン濃度が170nmol/ml以上になると前立腺癌のリスクが下がると報告しています。
一方で、最近の総論(83件の論文を解析)では、セレン投与による抗癌作用については否定されています。
■有害ミネラルの蓄積が、前立腺癌のリスクを高めます。
喫煙そのものは前立腺癌と関連していませんが、喫煙に伴うカドミウムの蓄積(前立腺組織中のカドミウム濃度)が前立腺癌のリスクと関連していることが指摘されてます。
無機ヒ素への曝露が前立腺がんのリスクを高めることが総論で指摘されています。
鉛への曝露が前立腺がんのリスクを高める可能性があることが報告されてます。
ラットでの研究ですが、水銀の経口暴露が前立腺癌のリスクを高めることが報告されています。
■その他にも前立腺癌との関連が指摘されている報告があります。
ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤は、いくつかの軟部組織の腫瘍との関連が指摘されており、特に前立腺癌との関連が報告されています。
フタル酸エステルは、ポリ塩化ビニルなどの可塑剤として多く使われ、食品パッケージ、おもちゃ、ビニールフロア、接着剤、洗剤、潤滑油、ヘアスプレー、医療用品など一般的に使用される為、多くの人間がフタル酸エステルに暴露されています。内分泌攪乱物質である可能性が高く、欧米では使用規制の動きが強まっています。