寿命を予言する血清リン

まとめ:腎機能障害で血清リンは上昇しますが、健常者でも血清リンの高値は死亡リスクと相関しています。リンの多い乳製品と食品添加物系の食品には注意(酸性脱灰による転移性石灰化と骨量低下)が必要です。

血清リンは、腸で吸収され主に腎臓で排泄されるため(2008, Hruska)、腎機能障害では上昇します。高リン血症の結果として、血清カルシウムとリンが結合した生成物 (Ca x PO4) が上昇して、低カルシウム血症および転移性石灰化が起こります。高リンおよび低カルシウム血症が継続していくと、身体のフィードバック作用で二次性副甲状腺機能亢進症となってきて、今度は反対に高カルシウム血症になります。その結果さらに転移性石灰化が進みます。これらが腎不全患者の死亡リスクとなります。少なくとも 1 年間透析を受けている血液透析患者の場合、大部分が 血清リン濃度が6 を超えます。(1998, Blook)

副甲状腺ホルモンは、血清カルシウムと血清マグネシウムを上昇させて、血清リンを低下させるように働きます。

ビタミンDは腸管から、カルシウム、リン、マグネシウムの吸収を促進させます。

慢性腎臓病における死亡および心血管イベントのリスクは、高い血清リン濃度と関係しますが、血清カルシウムおよび副甲状腺ホルモンレベルとの関連はありません。(2011, Pulmer)

健常者では血清リンが高いほど、心血管疾患のリスクが高くなることが報告されています。血清カルシウムは健常者の心血管リスクとは関係ありません。(2007, Dhingra)

約93000人を対象とした大規模調査で腎機能が正常な成人において、血清リンと全死因死亡率とが相関することが報告されています。(2016, Yoo)

また、55歳以降では血清リンはゆるやかに低下します。

透析患者では、死亡リスクおよび心血管リスクは血清カルシウムおよび血清リンが低くても高くても高くなるU字の関係性があります。

成長期は盛んに骨形成を行うために、子供は大人に比べて、血清カルシウム、血清リン、アルカリフォスファターゼ、線維芽細胞増殖因子 23が高いことが報告されています。(2020, Jeddi)

高リン食を与えられたラットが、大動脈の石灰化と骨量の減少を起こすことが報告されています。(2010, Román-García)

リンの多い食品である乳製品を摂取するほど、心血管リスクおよびび骨折リスクが増えることが指摘されています。(医者が私についた嘘〜骨粗鬆症について)